SCP-4479
評価: +7

クレジット

翻訳責任者: Tetsu1 Tetsu1
翻訳年: 2024
著作権者: Captain Kirby Captain Kirby , Weryllium Weryllium
原題: D-11424 and The Land of Too Many Doors
作成年: 2019
初訳時参照リビジョン: 17
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-4479

評価: +7
4479.jpg

SCP-4479

アイテム番号: SCP-4479

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-4479はサイト-31最下階に位置する30m垂直シャフトの底に配置された、標準Safe金庫内に収容されます。このエリアには、そこへ通じる一時的または恒久的な扉を設置してはなりません。

SCP-4479-1への新たな入口は発見後直ちに確保され、コンクリートで固定されます。

説明: SCP-4479は磨かれた真鍮製のドアノブです。SCP-4479が扉のような構造物と接触すると、磁気に引き寄せられたかのように構造物の表面に貼りつきます。一度貼り付けられると、それを妨げる既存のドアノブや錠前、障害物と無関係に、SCP-4479を回すだけで構造物を開けることができます。

SCP-4479を使用して構造物を開くと、SCP-4479-1に指定されるポケット次元に繋がります。SCP-4479-1の性質とサイズは使用されたポータルごとに異なります。SCP-4479-1の内壁は通常、ポータルの材質に組成が類似しています。

実験番号: 003
手順: SCP-4479は12番廊下の詰まった違反ゲートに貼り付けられた。ゲートは前回の収容違反で発生した破片が機構に詰まっており、以前誤動作していた。
結果: ゲートがスライドして完全に開き、標準収容チャンバーに類似した広大な空間に繋がった。元々ゲートの中にあった破片は部屋の隅に横たわっていた。

実験番号: 008
手順: 溶接されて閉まり、ロック機構が修理不可能なほど壊れた金庫。SCP-4479が貼り付けられた。
結果: 金庫の扉は抵抗なく開いた。結果として得られたSCP-4479-1実例は、連結した歯車と鋼板で構成されていた。空間の最奥には、密閉された第二の金庫の扉があった。

実験番号: 037
手順: 予定外。SCP-4479は検査中に誤ってメンドーサ研究員の瞼に貼りついた。
結果: SCP-4479を回転させ動かすと、メンドーサ研究員の眼窩を通してアクセス可能なSCP-4479-1実例が生成された。内視鏡チューブを通してこの空間を画像化すると、静脈が並び硝子体液に覆われた半径約1.5mの球状の空間が映し出された。

実験番号: 062
手順: SCP-4479は丘の中腹にある、大きく平らな岩に貼り付けられた。
結果: SCP-4479を回転させると岩の一端が、蝶番が付いているように容易に持ち上げられるようになった。岩の下には、以前は存在しなかった落とし戸のような開口部が現れた。この開口部は容積約2500m3の洞窟に繋がっていた。

実験番号: 119
手順: 単独の扉が平原に配置され、SCP-4479が貼り付けられた。
結果: 扉が開くと、扉枠のものと似たアルミニウムで構成されたSCP-4479-1に繋がった。反対側の突き当りには木製の扉が一つあった。補遺4479.2を参照。

補遺4479.2 SCP-4479-1を探査する試みとして、探査スペシャリストD-11424がポケット次元のマップを作成するために派遣されました。D-11424は標準的な通信手段、1日分の食料が入ったバックパック、基底現実に取り付けられたテザーが与えられました。

<記録開始>

D-11424はSCP-4479-1に入り、SCP-4479を手に裏口に近付く。

D-11424: じゃ、ドアノブをドアにくっつけて、開けてみてほしいと。

司令部: いや。まずは普通に開けてみてくれ。

D-11424: わーった、わーった。

D-11424は現在取り付けられているドアノブで扉を開けようとする。扉は開かない。

D-11424: 鍵かかってる。 [ドアノブの下の鍵穴を指して] 俺鍵持ってねぇみたいだけど。

司令部: よろしい、では別のドアノブで試してくれ。

D-11424はバックパックからドライバーを取り出し、扉に取り付けられたドアノブを取り外す。その後、SCP-4479を枠にはめ込む。SCP-4479を扉にねじで留めてから、彼はそれを回して扉を開く。

D-11424: じゃ…… ドアに入ってみればいいのか?

司令部: ああ。何か問題でも?

D-11424: いやいや! 不吉な洞窟とか渦とかの方が慣れてるってだけだ。俺はドア派ってよか穴派なんだろうな。

司令部: 何事にも初めてというものはある。

D-11424: よし。んじゃ行くぞ。

.D-11424は扉を開く。中には部屋があり、壁と床と天井が全て並んだ木製の扉で構成され、それぞれが個別のフレームにはまっている。各扉に取り付けられたドアノブはSCP-4479と同一である。D-11424は最初の扉からSCP-4479を取り外し、バックパックに入れる。

D-11424: ワオ。まるで中つ国にいるみてぇだ。

司令部: 何だって?

D-11424: と、どこを見てもモルドールしかねぇ。

司令部: 何でまたお前にこういうのをやらせたんだ? その部屋に何があるのかだけ教えろ。

D-11424: いや、あるのは俺とこの……

D-11424は部屋の中央へと歩き、屈みこむ。彼は床にある扉の匂いを嗅ぐ。

司令部: 何をしている?

D-11424: 俺は前に大工仕事やってたんだ。

司令部: ではお前はドアに詳しいのか?

D-11424は扉をノックする。

D-11424: あぁ、戻ったら宿舎に戻ったらそんことメモしとく。

D-11424は壁に移動し、そこの扉をノックし、匂いを嗅ぎ始める。

D-11424: オーク。

司令部: 何だって?

D-11424: 全部オーク材でできてる。

司令部: ほう! 記録した。うーむ…… だがどれか開くのはないか?

D-11424: 今やってる。

D-11424は壁の扉の一つを開き、セルフストレージ施設に類似した場所に入る。長い廊下の両側に波型の持ち上げ式扉がある。

deep.jpg

廊下。

D-11424はこの廊下を300m進み、突き当りにたどり着いて新たな部屋に入る。これは以前の部屋とほぼ同一だが、全ての扉が木製ではなく金属製になっており、部屋の中央には、脚がドアフレームで、台が一つの扉全体でできたテーブルに似た構造物がある。

D-11424: へえ、ここにゃ家具が置かれてるみたいだ。

司令部: それでもし冒険したい感じなら、もっとテストのアイデアがあるが。

D-11424: おぉう、冒険ね。是非聞いてみたいね。

司令部: テーブルのドアにノブを付けてみなさい。

D-11424: 付けたぞ。

D-11424はテーブルへと歩き、台の上にSCP-4479を取り付ける。SCP-4479を回転させて引くと、扉を固定するものがないにも拘らず、その場で扉が回転する。D-11424はSCP-4479を回収して扉の中に足を踏み入れる。彼は突然90度回転し、別の同様の部屋に着地する。

この部屋の扉は全てガラス製のようであり、蝶番やドアノブはない。部屋の中央には標準的な身障者アイコンの描かれた青いボタンのついたパイロンが1つある。

D-11424: [立ち上がって埃を払いながら] いってぇ。

司令部: 大丈夫か?

D-11424: あぁ、ちょっとへましただけだ。もっと実験するか?

司令部: 今のところはこれで十分だと思う。

D-11424: 本気か? めちゃ面白そうなボタンあるけど。

D-11424はボタンに接近する。

司令部: 本気だ、D-11424。ボタンを押すな。

D-11424: じゃあま、非公式ってことで行ってみますか。

D-11424はボタンを押す。D-11424が立っている床のものも含め、部屋の全ての扉が同時に開く。D-11424は別の部屋の天井から落下するが、映像がぼやけていて部屋の特徴を適切に識別できる前に視界から通り過ぎる。

D-11424: ありゃ、1回出ただけで2つ目に行っちゃった。

カメラが焦点を取り戻すと、D-11424は光源のない狭い空間にいることが明らかになる。D-11424はバックパックから懐中電灯を取り出し、それを点ける。空間が照らされると、D-11424より僅かに大きい回転扉が映される。扉のウイングと床は着色ガラスで造られ、外周は金属製である。D-11424のテザーは左右の壁が接する地点に挟まれている。

司令部: さ— 触るなと言っただろ!

D-11424: 好奇心が勝ったってこった。

司令部: 帰還したら命令への不服従で懲戒処分だ。

D-11424: わーってる、わーってる。今んとこはここから出ようとしてみる。

司令部: よろしい。今どこにいると思う?

D-11424: 回転扉に囚われちまったように思う。まだ回るはずなのにテザーが引っかかっちまった。

司令部: 実は— ちょっと待った。

D-11424: 好きなだけ時間使ってくれ。どこにも行かねぇよ。

司令部からつぶやく声が聞こえる。

司令部: よし、まだそこにいるようだから別の実験を試そうと思う。

D-11424: あら、甘くしてくれるじゃないの。

司令部: 戻ったら懲戒処分には変わりない。ただ…… 都合がいいだけだ。

D-11424: 好きにしてくれ。

司令部: まだドアノブは持っているか?

D-11424はバックパックからSCP-4479を引き抜く。

D-11424: ここに。

司令部: よし、では回転扉の左側のドア部分に貼り付けてみてくれ。

D-11424: 起こりうる最悪ってのはどんなパターンだ?

D-11424はSCP-4479をガラスに貼り付ける。

司令部: そんなことを聞くほど馬鹿ではないはずだ。

D-11424はSCP-4479を回し、引っ張る。ガラスの壁は20°動いて引っかかり、僅かにひび割れる。D-11424はより強く引っ張る。

D-11424: おら、この安モンが……

D-11424は隙間から無理やり入ろうとするが、ガラスの壁は完全に砕け散る。D-11424はできた開口部から前方に落ち、別の大きな木製の扉に着地する。SCP-4479は約10m離れた地点に落ちる。立ち上がって振り返ると、カメラは焦点を取り戻してより広い空間を映す。この空間は、スポークの代わりに扉が収まった、巨大な連動歯車に似た構造物で埋め尽くされている。ほぼ全ての「歯車」が着実に動いている。

D-11424: おぅ。

D-11424はSCP-4479を拾い上げ、彼が立っている歯車の中心へと歩く。

D-11424: よし、オーケー。どっかの方向に少なくとも4、500メートルは離れて話してるわけだが、歯車が多すぎて地平線らしきものは見えない。考えてみりゃ、どうやって物が見えてんのかもわからん。空も目に見える光源もありゃしない。またノブを付けてみようか、それかちょっとただ探索してみようか?

司令部: あぁ、今はこのエリアの偵察を続けてくれ。

D-11424: 了解。

D-11424はSCP-4479をバックパックに戻し、隣接した垂直の歯車に登り、その上に乗る。

ギシギシと大きな音が聞こえる。D-11424の背後に明るい白色光が現れ、彼は振り返る。D-11424の上空で、巨大で不明瞭な物体が視界に入る。D-11424は扉のスポークからスポークへと飛び移り、物体に到達しようとする。物体がD-11424から引きさがる中、彼は物体の頂上に登ることに成功する。物体は輝くポータルへと後退し、カメラが一時的に光で見えなくなる。

D-11424: こいつは一回くらいちゃんと立たせてくれねえのか? この場所じゃずっとこけっぱなしで膝をすりむきっぱなしだ。

カメラが周囲の光に合わせて再調整されると、D-11424はコンクリートの床と壁を持つ倉庫らしき部屋の地面に横たわっている。地面からは天井は見えない。D-11424は立ち上がる。

D-11424: うわぁ。

司令部: 今度は何だ?

D-11424: ドアがいっぱい。

司令部: 数は?

D-11424: 知らねぇよ、数学者でもなし。世界中からドアを全部盗んできたって想像してみな。この場所は天井も向こうの壁も見えんくらいデケェ。

司令部: 探索する前に、自分がどこから入ってきたか特定できるか?

D-11424は振り返る。

D-11424: ……クソ。よくわかんねぇ、テザーは地平線の彼方まで伸びてる。てか一体どんだけ綱あるんだ!?

司令部: それは気にするな。最初に特にふさわしい扉はあるか?

D-11424: 待て。何か聞こえる気がする。物がぶつかるみたいな、ノックみたいな。

D-11424は11番目の扉、以降"扉-K"に近付く。

D-11424: いびきか? [扉-Kに] もしもし?

扉-K: [扉-Kは言葉を発するとともに開閉する。] あ? 何だ?

D-11424は飛び退く。

D-11424: 何じゃこりゃ?

扉-K: 俺の眠りを邪魔するなんざどこのどいつだ?

D-11424: 喋るドアだ。なるほど、オーケー。

扉-K: そりゃま俺はドアだ、パンピー。それ以外に何だってんだ?

D-11424: お前は…… ずっとドアなのか?

扉-K: 知るかよ、てめぇこそずっと能天気なのか?

D-11424: 別のドア探した方がいいな。

扉-K: 待て! 訪問者は多くねぇんだ…… 俺の話の枠を組み立てていいか?

D-11424: 別にいい、俺は—

司令部: 聞きなさい。

D-11424: わかった。 [扉-Kに] どうぞ。

扉-K: この話は何年も、何年も前に始まる。今てめぇが見てる形に俺がなる前。前は俺もてめぇみてえな迷子で、さまよってて、ちょっと留め金のねぇ野郎だった。

D-11424: お前は元人間なのか?

扉-K: 悪ぃがこれは俺の話だから、大人しく座って集中してやがれこの気ぃキー抜け野郎。あぁ、俺は元人間だ。俺はあるアーティファクトに出会った。そん時はその発見が俺の運命を全部閉じちまうなんて知らなかった。

D-11424: へぇ…… 閉じちまうねぇ。

扉-K:ドアノブだ! それを俺の人生のポータルに置いて、回して新しい人生への扉を開いた! 俺は一つ賢くなったんだよ。

D-11424はSCP-4479を持ち上げる。

D-11424: それはこんな感じのやつだったか?

扉-K: 全然。でも結局どのドアノブも同じだ。俺のは金ピカでもっと派手だった。とにかく! 俺はドアからその後ろのドアへと、それからドアを超えたドアへと、更にはドアじゃないドアへと、奥へ奥へ進んでいって、やがて発見したものの恐ろしい代償を払うことになった。

D-11424: で、その時お前はドアになったと。

扉-K: あぁ! 俺はドアになってるってのに一々てめぇは心開きたくなくなるようなことしてくれんなぁ! あぁ、俺のエスカレーションを台無しにしてくれたからな。だが神がドアを一つ閉じる時、神は窓を開けてくれる。俺の場合は別のドア、かもな。

D-11424: 何言ってやがんだ?

扉-K: もういい! この侵入はもう十分長く楽しんだ。もう安らかなお休みに戻る。

D-11424: 待て! 少なくともここから出る方法だけ教えてけ。

扉-K: やだ。

D-11424: そうしてくれないと、俺もドアになって一生お前と一緒にここに動けなくなるぞ。

扉-K: わかりやすい説明をどうも。そのドアノブ見せてみろ。

D-11424: 待った、どうやって見えてるんだ?

扉-K: 鍵穴から。

D-11424は扉-Kに近付く。

扉-K: もっと近くだ、小僧。ドアになった時に眼鏡外れちまったからな。

D-11424はドアノブを鍵穴から数インチ離して置く。扉-Kが突然回転して開き、D-11424の顔面を打つ。

D-11424: いって! あんだ?

扉-K: パーソナルスペースってもんを聞いたことねぇのか?

D-11424: もっと近くっつったのはお前だろ!

扉-K: 待て、そこにドアノブをキープ。ふむむ。ふむむむむむ! こんな感じのドアノブが付いたドアを見た気がする、右に、無きゃ左に、9か10ドアほど行った先に。

D-11424: [鼻をこすりながら] ありがとよ。

D-11424は5分間扉の列に沿って歩き、SCP-4479と同一のドアノブが付いた扉を見つける。

司令部: 待て。

D-11424: ん?

司令部: さっきまで話していた実体は知性のある家庭用物品に関わる調査に役立つと考えている。

D-11424: ほう……

司令部: 一緒にそれを持っていくことはできるか?

D-11424: あれ持ち帰ってほしいのか…… ドアを?

司令部: あれは木でできているだろう? そんなに重くないはずだ。

D-11424: 顔面にぶつかってきやがったぞ!

司令部: 後ろから向かったらどうだ?

D-11424は最も近い扉周辺の地面を調べる。

D-11424: どっちにしろ全部ボルトで地面に固定されてんぞ。

司令部: わかった、わかった。進んでくれ。

D-11424は扉を開き、彼が入った元々のSCP-4479-1実例へと進む。

<記録終了>

Footnotes
. 訳注: 小説『指輪物語』に登場する国名で、中つ国の東よりにある山に囲まれている。
. 訳注: 入りきらない家具などを一時的に保管できる倉庫サービス。
ページリビジョン: 1, 最終更新: 24 Oct 2024 15:28
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