クレジット
アイテム番号: SCP-2387-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-2387-JPによる活動は各種カバーストーリーで隠蔽され、活動が観測された際には近隣の機動部隊が確保作戦を展開します。
確保成功時にはサイト-81██のインターネットと断絶された人型実体収容室にて収容を行う予定です。
ハンドルネーム"スーパーヒーロー"に対しては他のインターネット上の要注意人物と同様に対処します。
説明: SCP-2387-JPはGoI-8139"超 電 救 助 隊 Hyper Electric Rescue Organization"(以降、超電救助隊HEROと呼称)の構成員、"悪党撲滅闘士マスクド・クリムゾン"を自称する身長200cmの人型実体です。声色から20歳前後の男性と推測されます。SCP-2387-JPは20██年初頭から指名手配犯の捜索や犯罪者に対する私刑行為などを中心とした活動が確認されています。
SCP-2387-JPの活動ジャンルは特定の犯罪や事件などに限定されておらず、他の超電救助隊の実働隊員に比べ広いと言えます。この特性上、より専門的な他の実働隊員と共同で作戦を展開する事もあります。
SCP-2387-JPはSCP-2387-JP-Aに分類される深紅の異常な装甲を装備しており、高い耐久性や装備者に対する大幅な運動能力の助長の他、特筆すべき異常機能を有しています。以下はその一覧です。
| 番号 | 説明 |
|---|---|
| SCP-2387-JP-A-1 | 破壊耐性及び飛行能力を有するマント。右腕を進行方向に掲げ操作する。実体は"フライングマント"と呼称。 |
| SCP-2387-JP-A-2 | 左掌から発射される深紅の収束光。物理的兵器としての能力評価は低いものの、痛覚ミーム災害により着弾者への多大な苦痛が保証される。実体は"ショックビーム"と呼称。 |
| SCP-2387-JP-A-3 | 顔部に搭載された、好感度ミーム災害を映す仮面型ディスプレイ。意思疎通の補助にも使われる。 |
| SCP-2387-JP-A-Ω | インターネットに接続された機器。後記の活動の発信地点及び投稿内容から機能が示唆された。そもそも異常であるのか、搭載されているのかは不明だがヴェールに対する脅威であるため記載。 |
SCP-2387-JPは5ちゃんねるやGoI-093"アニメキャラクターと結婚するための研究計画局 research Projects Agency for the Marriage With Anime Characters"(以降、PAMWACと呼称)の内部BBSなどの匿名掲示板にて特撮のトピックを中心に、サブカルチャー系統のスレッドに対して雑談やなりきりチャットなどの投稿を行っている人物、ハンドルネーム"スーパーヒーロー"と同一人物であると推測されています。PAMWACに関する情報は断片的であるため絶対的な情報ではありませんが、他構成員からの反応を考慮すれば殆ど正確な情報であると言えます。
20██年には大規模コスプレイベントに"仮面ライダーライア"に扮して参加したとの発言が観測されましたが対象の詳細な特定には至っていません。
なお、SCP-2387-JPは"英雄的"と評される喋り方をするのに対し、ハンドルネーム"スーパーヒーロー"は他のネットユーザーのようにインターネットスラングを多用するなどの差異が見られます。
補遺1-20██/██/██: PAMWAC内部BBSにて、SCP-2387-JP("スーパーヒーロー")が「何らかの目的のため活動している」との発言が観測されています。これを受け、第██次SCP-2387-JP事案にて現地の元エージェントによるインタビューが行われました。以下はその際の映像記録の書き起こしです。
日付: 20██/██/██
状況: ███銀行にて強盗事件が発生し、救助に来たSCP-2387-JPが鎮圧を終えて逃亡する所を現地のフロント企業に就職していた元エージェントが呼び止めた。
«記録開始»
[SCP-2387-JPが店外に出ようとしている。]
エージェント: 待ってください!
SCP-2387-JP: [振り向く] キミは...受付の金沢君だったかい?怖かったろう、よく頑張ったね。何か問題があったかな?
[SCP-2387-JP-A-3が疑問符を示す。]
エージェント: いえ...そんなことはありませんよ。ちょっと来てもらえますか?
[SCP-2387-JPを金庫室へ誘導する。]
SCP-2387-JP: なにやら沢山お金があるけどどうしたんだい?もしヤツらに奪われたっきりのお金があるのなら、取り返して来ようか?
エージェント: 違うんです。ただ礼を言いたくて...これだけあっても渡せるのは少しですが受け取って貰えますか?
SCP-2387-JP: ハハハッ、そんな事か。ワタシが提供するのは無償の隣人愛さ。対価は貰わない主義でね。この仮面で正体を隠しているのはヒーローらしく、もしまた会った時に恩をお返しできないようにするためなのさ。ハハ、なんちゃって。気持ちだけ受け取っておくよ、ありがとう。
[この時点で別の元財団関係者により近隣サイトへの通報が完了する。また、簡易収容作戦が開始される。これにより金庫室の扉が閉まり始める。]
SCP-2387-JP: おや?キミ、キミ。扉が閉じていくが大丈夫かい?早く出よう。
エージェント: いいえ、大丈夫ですよ。ここに居てください。
SCP-2387-JP: ねえキミ...何を企んでいるんだい?何者かね?
[金庫室の扉が閉まる。]
エージェント: 端的に済ませましょう。我々は財団です。降伏しなさい。
SCP-2387-JP: フハハッ!驚いた。会いたかったじゃないか!仲間たちを開放したまえ。民衆の親愛なる隣人に相応しいのは、ワタシたちだ!
[SCP-2387-JP-A-3が攻撃的な赤色で感嘆符を示す。]
SCP-2387-JP: あの強盗団はキサマらの仕込みだったわけか。善意を利用しているといつか大きな悪意にのみ込まれるぞ!
エージェント: いえ、あれは偶然ですよ。それに関しては感謝しています。あなたはまるでスーパーヒーローの様でした。えぇ、はい。そして実際、あなたはスーパーヒーローでしょう?
[SCP-2387-JPの挙動が少し不自然になる。ハンドルネームである"スーパーヒーロー"に対して反応していると思われる。SCP-2387-JP-A-3の発光は少し弱くなる。]
エージェント: さて、すぐにあなたにかける枷がやって来ます。それまでお喋りでもしましょうか、ハンドルネーム、スーパーヒーロー。
SCP-2387-JP: 何のことだい?
エージェント: ["スーパーヒーロー"による投稿を読み上げ始める]
[SCP-2387-JP-A-3が消灯する。]
SCP-2387-JP: おい、あっ... [沈黙]
SCP-2387-JP: そうかよ。もう。スーパーヒーローが僕だって?やめてくれよ。
[SCP-2387-JPは段ボール箱に座り込む。]
SCP-2387-JP: はぁ、いいよ。分かった、あんたとお喋りしてやるよ。まずは本名でも聞くか?ふざけんなよ、クリムゾンの仮面どころかスーパーヒーローの仮面まで剥がそうってか。
エージェント: 私個人としては、あなたの名前よりも何故こんな事、つまり身分を隠して英雄的活動をしているのか気になりますね。
SCP-2387-JP: 英雄だと?僕がなりたいのはそんな小さい器に収まる存在じゃぁねぇよ。
エージェント: では何に?英雄もなかなか美しい器だと存じますが。
SCP-2387-JP: 言おうとしてたことが被ったな。あぁそうだ、宇宙で一番美しい器だ。でももっと美しい器がある。創作物だ。僕も、僕だって、誰かの創作物になってやるんだ。
エージェント: それは...つまり?
SCP-2387-JP: あんた、これを見ろよ。
[SCP-2387-JP-A-3に過去私刑行為を行った人物たちが数人映し出される。]
SCP-2387-JP: そして、これだ。
[SCP-2387-JP-A-3にC社やK社、P社の製作したアニメやゲームの登場キャラクターがいくつか映し出される。]
SCP-2387-JP: どっちが美しいかは自明だろ。現実の人間は第一に心が淀んでる。他にも顔とか悪い所は言い切れないほどある。でも創作物なら?
エージェント: あなたが嫌悪する、現実の人間の特徴が当てはまる創作物もあると思いますが。
SCP-2387-JP: だとしても誰かには絶対好かれるように作られてる。ほら、美しいだろ?僕はそうなりたいんだ。だって僕はこの現実に生きてる、キモい存在だから。何かしらの創作物のロールプレイをすればいつか、僕はそのキャラクターにのみ込まれる。上書きされる。そしたら、僕に汚れは無くなるだろ。
SCP-2387-JP: 道は色々あった。仮面をかぶったヒーローってのは、一番大好きで一番三次元に近い創作物だったから、僕は選んだ。そうなるんだ。完全に僕じゃない、僕を取り除いた、まっさらで完璧に美しい存在に。超電救助隊HEROの創作物に。あの日からずっと正義のヒーローとして生きてきた。夢をかなえるために。
SCP-2387-JP: みんなに愛されるために。
«記録終了»
備考: 記録終了後、機動部隊が到着し確保を目指しましたが、SCP-2387-JPに"悪党撲滅闘士マスクド・クリムゾン"としての通常時の体制で応戦され収容作戦は失敗しました。
補遺2-20██/██/██: PAMWACの内部BBSにて、SCP-2387-JP("スーパーヒーロー")に対して以下の投稿が送られました。
>>1
お前さ、そろそろ自分語りばっかでうざったいぞ。言わせて貰うけど創作物になりたいってなんだ?「創作物になりたい」って思ってるうちはお前はお前だし、仮に願望が叶って喜んでたらそれはお前の意思が混じった存在なわけで、"お前"の夢は永遠に叶わないんだよ。本気で完全な創作物になりたいならお前自身の魂を殺さないといけない。
分かったか?残念だったな。頑張ろうぜ。ムズいが次のフェーズについて考え始めたほうが良いんじゃないか。現状お前は非パラテックのコスプレと同義だ。
当事案以降SCP-2387-JPの"悪党撲滅闘士マスクド・クリムゾン"としての活動は途絶えています。
補遺3-20██/██/██: 大規模コスプレイベントにて、以下の書き起こしの様子が防犯カメラにより観測されました。
日付: 20██/██/██
場所: ████████・地下一階男性更衣室
対象: SCP-2387-JPと思われる男性、超電救助隊の構成員PoI-7352
«記録開始»
[男性が"仮面ライダーライア"の衣装に着替えている。]
[映像が一瞬歪む。]
[PoI-7352が出現する。]
男性: あ、あんたは
PoI-7352: こちらで会うのは二度目ですね。去年、貴方をお誘いした時もそんな恰好をしていたのを記憶しています。偽物などに憧れるとは。
男性: ...美しい存在を馬鹿にするな。
PoI-7352: あなたは本当の英雄になれるはずだったのに、私たちを裏切りました。いまだ"美しい創作物"を崇めているというのに、なぜです?
男性: 僕を騙してたんだろ?ホントは、僕は創作物になって、美しくなるなんて......無理なのに。
PoI-7352: 誰に何を吹き込まれたのやら、相変わらず騙されやすい方ですね。活動を続けていれば貴方は誰にでも好かれる、貴方の憧れの存在になれたのに。
男性: でも、それは作られた違う"僕"なんだろ。僕は僕が美しくなりたい。悪いけどもうあんな事はしないし、あんたたちを信じたりはしない。
PoI-7352: やれやれ...それでも貴方は選ばれたのです。期待に応えて頂かなくては。貴方は完全な創作物とやらになりたかったのでしょう?あの頃のあなたにも、今のあなたにもそれぞれ良い夢を見せてあげましょう。
[PoI-7352が男性に歩み出す。]
男性: あ、あんた達のやり方じゃダメなんだ、やめろ、来るな...!僕にもう構わないでくれ!
[男性が叫ぶと、映像が一瞬乱れる。映像回復後、SCP-2387-JP-Aを装着した男性が映し出される。]
男性: [SCP-2387-JP-Aの機能を用いてPoI-1752より逃亡を試みる]
[PoI-7352が指を鳴らす。すると、SCP-2387-JP-A-3が剥がれ落ちる。]
男性: [逃亡を中止する] ...あぁ、すまなかった。ワタシとした事が少し血迷っていたようだ。だがしかし安心せよ!全ての邪念を捨て、再び親愛なる隣人として、これまで以上に最高の英雄として、このワタシが活躍するのをお見せしよう!
剥がれ落ちたSCP-2387-JP-A-3: [「助けてくれ」「違う」「僕はここだ」など、命乞いをする文面を映し出している]
PoI-7352: あなたたちには我々の英雄として、これまで以上に頑張ってもらいましょう。心機一転、新たな活躍を期待していますよ。
«記録終了»
当事案以降SCP-2387-JPの"スーパーヒーロー"としての活動は途絶えています。
補遺4-20██/08/██: 補遺3事案以降、"悪党撲滅闘士マスクド・クリムゾン・バージョン2"を自称しての活動が再確認されています。以前のSCP-2387-JPとは差異が見られます。差異は以下に記します。
- インターネットへの接続が観測できなくなった。
- SCP-2387-JPの人格が"英雄的"な口調の人格に限られ、"スーパーヒーロー"としての記憶や思想が失われている。
- SCP-2387-JP-A自体の性能は以前と同様であるにも拘らず、指名手配犯の捜索や私刑行為の執行速度・効率が格段に上昇している。
- SCP-2387-JP-A-3が異常性を持たない仮面に置換されている。なお、ミーム災害は使用せずに以前と比べて極めて高レベルな話術により好感度を上げている。
以上のように、主に装着者であるSCP-2387-JP本体自体の能力が格段に上昇しています。これは被救助者の増加及び救助後の精神安定につながっており、SCP-2387-JPを慕う被救助者が増えています。
さらに、"リバース"と呼称されるロボットが同時に出現しています。エイを模したデザインで、一部の非救助者は"美しい"と評します。実体は自立行動しますがSCP-2387-JPの命令には逆らえず、被救助者の避難を強制的に担当させられているようです。
実体は発話能力を持ちませんが、以前のSCP-2387-JPに搭載されていたSCP-2387-JP-A-3と一致する仮面が接続されており、アスキーアートを使っての意思疎通が可能です。SCP-2387-JPへの反応から、実体は新たなSCP-2387-JPに対して強い羨望を抱いていることが推測できます。