2017年10月
使用後の水はどのようにして綺麗にする?
2017年10月31日 | 固定リンク
みなさん、こんにちは。
水環境工学研究室の助教の筒井です。
朝起きてトイレに行ったり、食事の時に洗い物をしたり、夜にお風呂に入ったりと、私たちは日ごろ何の不自由もなく水を使って、使い終わった後の水は流してしまっています。その汚れた水は、そのまま環境中に流してしまうと汚染につながるので、綺麗にした上で河川や海に放流されています。
今回のブログでは水を綺麗にする技術についてお話しをしたいと思います。
日本の多くの地域では、流した水は下水道を通って下水処理場に集められて、そこでよごれを取り除いています。ここで活躍するのが、「活性汚泥(Activated Sludge)」という微生物の集団です(下の写真)。活性汚泥はもともと排水に空気を送り込むことで形成された沈殿物のことで、1914 年4 月に英国のアンダーソンとロケットが水をきれいにできることを発表しました。日本ではその後、1930年に名古屋にて下水処理システムに使われ、現在に至っています。活性汚泥中には非常に多様でたくさんの細菌、古細菌、真菌、微小動物が共存しており、空気を送り込んでやることで、細菌などが私達の排出した汚れ(有機物)を分解してくれます。活性汚泥に接触させた後、重力で活性汚泥を沈め、上澄みを消毒することでよごれ(有機物)の少ない水が得られるので、それを河川に放流しているのです。
活性汚泥を用いた排水処理技術は、社会の変化にともなって、有機物除去効率を上げたり、窒素やリンの除去に対応したり、省スペース化に対応したりするために、一部運転方法などが変更されているものの、100年間にわたって使われ続けており、シンプルながら合理的な技術であると言えるかもしれません。
一方で、その仕組み(どんな細菌が存在しているのか?それらはどんな働きをしているのか?)については、開発されて100年を超えた今でも十分に分かっておらず、謎が残ったまま世界中で活躍しています。また、名前やその見た目からはあまり良いイメージが無い活性汚泥は、従来は廃棄物として捉えられてきましたが、最近では視点を変えて農業への有効利用や、エネルギー源としての利用に向けた研究が進められています。このように、長い間使われている技術である活性汚泥法ですが、視点を変えたり、他の分野の技術の向上によって新しいチャレンジが可能になったりするため、現在でも多くの技術者・研究者が取り組んでいます。
普段目にすることはありませんが、私達はこのような生物に支えられて快適に過ごしているというお話しでした。
研究室OBが遊びに来てくれました!
2017年10月20日 | 固定リンク
生命科学・環境コースの矢野です。
先日私の研究室の卒業生が久しぶりに研究室に遊びに来てくれました。彼はお菓子のカントリーマアムでおなじみの株式会社不二家に勤務しています。このときも大学近くのスーパーでお菓子の市場調査をしたついでに研究室に寄ってくれました。彼が来るときはいつもお土産に大量のカントリーマアムや新商品を持ってきてくれるので、研究室の学生みんなで美味しくいただいています。
またこのとき、これから就職活動を行う3年生や、すでに就職が決まった4年生に対して、就活のアドバイスや会社での仕事の内容、社会人としての心構えなどを丁寧に教えてくれました。こういうときに、OBとのつながりは本当に大事だなあと感じます。在学生にとっても大いに刺激になったことでしょう。
在学生が卒業して立派な社会人となったら、ぜひ研究室に遊びに来て、今度は自分たちが後輩の学生にいい刺激を与えてほしいなと思います。
紅華祭の裏で・・・
2017年10月16日 | 固定リンク
先端食品コースの阿部です。
10月8、9日(日、祝)に紅華祭が行われましたが、楽しんでいただけたしょうか?今年来られなかった方は、ぜひ、来年遊びに来てください。
さて、その時、私は紅華祭には行けず、遙か遠い北の地網走(写真1)で実験をしていました。私の研究分野は食品タンパク質が主ですが、今回はちょっと系統の異なる実験をしてきました。詳しいことはまだお話しできませんが、なかなかユニークな研究です。
この研究はコンピューターサイエンス学部の先生とのコラボレーション企画で、写真はサケの写真を撮っている風景です。(写真2,3)今回は2トン弱のサケを撮影してきました。サケ1匹あたり約4キロなので、今回の撮影では、だいたい500匹くらいのサケの尻尾をつかんで撮影場所に運んだことになります。これを書いているときは、あちこちが筋肉痛ですが、これだけ動けるということは、まだまだ若いということですかね!??
晩御飯は「きんき」という魚をCSの先生と学生の3人で食べてきました。この魚は網走では「めんめ」といいます。身がとても柔らかく、脂もしっかりのってて、結局、背骨しか残らないほど綺麗に食べてきました。(写真4,5)
出張は大変ですが、こういう地方の美味しいものを食べれるのは醍醐味ですねっ!!
ビタミンCの不思議
2017年10月13日 | 固定リンク
ビタミンEが脂溶性ビタミンの代表選手とすれば、ビタミンCは、最も有名な水溶性ビタミンである。化学的には L-アスコルビン酸という化合物であり、構造的にはブドウ糖とよく似ている。実際マウスのなどでは、ビタミンCはブドウ糖から酵素で合成され、細胞の中に入る時はブドウ糖と同じ経路で細胞内に入ることが知られている。生体の活動においてさまざまな局面で重要な役割を果たしている。食品に含まれるほか、ビタミンCを摂取するための補助食品もよく利用されているほど不思議で面白い栄養素は他にないのではないか。ビタミンCの血中の生理学的な濃度は70マイクロモル程度だと言われているが、10マイクロモル以下に低下すると、壊血病という重大な病気になる。壊血病になるレベルでなくともビタミンCの濃度が低下すると老化が促進されるという。ビタミンCの不足によって起こる壊血病は霊長類特異的な疾患である。なぜなら哺乳類の中で霊長類だけがビタミンCを自身で合成できないからである。これは霊長類がブドウ糖からビタミンCを合成する酵素が失活しているためである。またこの酵素を失活したのは約6000万年前だと言われている。この時期は地球の歴史の中でそれまでになかった「樹冠」という環境が生まれた時期であり、この樹冠に最も適応したのが霊長類である。この霊長類は樹冠にある豊富にある果実を常に食することができたため、ビタミンCを合成する酵素が失活しても問題はなかったのではないかと推察される。またミトコンドリアの遺伝子変異の研究から、げっ歯類から霊長類が分かれたのがまさしく6000万年前であるとされ、ビタミンCを合成する酵素を失った時期とぴたりと一致する。これらの知見は、ビタミンCの生理的な重要性を示唆しているのである。またこの有力な証拠として、ビタミンCを自身で合成できるマウスでは、この酵素の遺伝子をノックアウトすると、あたかもヒトの壊血病のような症状を示すことが知られている。興味深いことにこのノックアウトマウスは、ガンの発生確率が有意に増加するとい。これはビタミンCの存在がガンの進行を抑制する可能性を示唆するものである。最近ガン治療で流行している高濃度ビタミンC点滴が有効である生理学な根拠としてビタミンCの抗ガン作用が挙げられるが、ひとつはこれである。
ビタミンCが関わる歴史上有名な事例として、バスコ・ダ・ガマのインド航路の発見(1494年)の航海がある。この航海によって、インド航路が開発され、大航海時代が開始されたとみてよい。このような世界史の教科書に書いてある事実の他に、ビタミンCに関する重大な出来事がある。すなわちリスボンに帰港したとき、船員の半分以上が壊血病で死亡していたという。イギリス海軍の軍人がレモンにこの壊血病を予防する効果があることが発見し、長い航海の場合はレモンを積み込むことをするようになるのは、バスコ・ダ・ガマのインド航路の発見から200年以上経過した後だったのである。逆に言えば、18世紀に至るまで、欧州から南米、欧州からアジアに至る航路を超えて旅行するのは、常に船員の何割かが壊血病で死亡していたと考えられ、文字どおりに命がけの航海だったのである。レモンの中に含まれる抗壊血病因子の発見はさらに200年を要しいている。すなわちセント・ジョルジュというハンガリー出身の生化学者がアスコルビン酸という物質を発見し、これがレモンに含まれる壊血病を予防する成分であることを証明し、ノーベル医学生理学賞を受賞したのは、1937年のことである。まさにセント・ジョルジュのビタミンCの発見によって、ビタミンの研究が当時の医学研究の中心になったといってよい。また本当の意味で壊血病は非常に稀な病気になったのである。
ライナス・ポーリングという化学者は蛋白質の2次構造の発見でノーベル医学生理学賞(1954年)また反核運動で1962年にノーベル平和賞をとった、当時でも今でのビックネームである。彼の業績の中で当時の医学者にあまり認められなかった仕事に、ビタミンCの関する仕事がある。1950年代から、分子矯正医学という学問を唱えて、彼がビタミンCの大量点滴を行うことになった。特に彼が想定したのはガン治療であり、ガン患者に1日数十グラム(50グラム以上)を点滴することによって抗ガン作用があると報告して、当時の学会に波紋を与え、多くの学者から強い批判を浴びた。このビタミンCの抗ガン作用は、一度はライナス・ポーリングの間違った報告として黙殺されていた時間が長く続いた。これから50年程度経過して、ビタミンCを大量に点滴するとガン患者に有効であるという報告され、多くの研究者がライナス・ポーリングの報告を追試し、その結果が正しかったことを認めた。現在ではビタミンCの大量点滴(1日100グラム程度を毎日点滴)はステージ4のガン患者に効果があるという事例が多数蓄積している。日本においても多くの病院で保険適用外ではあるが、放射線治療、化学治療及び外科治療の補助治療として、末期ガン治療に使われることがある。ライナス・ポーリングのグループは患者に点滴で投与したのに、それに異を唱えて実験を行った人々はビタミンCを経口投与で行うという基本的な齟齬があったのは有名な話である。以下の図で示すように、ビタミンCの経口投与ではビタミンCの血中濃度がmMオーダーまで増加することは殆どないのに対して、大量点滴ではmMオーダーをはるかに超えることも容易である。もうひとつの違いを述べれば、ビタミンCの経口投与では腸管の中で大部分が酸化されてデヒドロアスコルビン酸になるのに対して、大量点滴は血中に酸化されていないビタミンCが大量に存在できるという点で異なっている。酸化されていないビタミンCがmMオーダーで体内に存在できるようにすることが、ビタミンCの大量点滴の抗ガン作用のエッセンスであると考えらえるのである。
応用生物学部 佐藤拓己
1年生頑張っています!その2
2017年10月06日 | 固定リンク
先端食品コースの阿部です。
10月1日(日)に八王子市教育委員会と東京八王子プロバスクラブが主催する「宇宙の学校」の第3回目が本学で開催されました。前回もお話しましたが、「宇宙の学校」とは実際の宇宙に関することだけでなく、日常で起きている現象を実験や工作を通じて、近隣の子供たちに理解してもらうプログラムです。応用生物学部の1年生は毎年このイベントのお手伝いをしています。また、2年生、3年生数名も本イベントの手伝いに参加してくれています。
今回は「コマの性質を知ろう」と「スポイトロケットを飛ばそう」といった内容でした。コマなんかは子供の頃よく遊んだりするものですが、なぜあんなに綺麗にコマは回るのか、大きいコマと小さいコマで回り方はどう違うのか等を考えていくと、意外に面白いものです。スポイトロケットについても、どうやったらスポイトを高く飛ばすことができるのか、学生と一緒に色々と考えて工夫している子供たちが多く、子供たちだけでなく学生にとっても大変有意義な一日になったと思います。(写真は宇宙の学校の様子)
宇宙の学校で使用する教材のほとんどは物理を題材にしているため、応用生物学部の一部(多く!?)の学生はその題材にやや抵抗感があるようです。しかし、大学を卒業して、食品工場などに就職したときはあちこちで、物理で習うような事象が出てきます。また、食品コースでは、将来は食品の企画開発をやってみたいという学生がよくいます。しかしながら、企画開発をするにしても、そこで出たアイディアを工場に落とし込まなければならないため、最終的には企画開発の段階で物理の知識を用いた工学的なセンスが問われます。そのため、こういうところで物理に対しても少しでも苦手意識をなくし、幅広い分野で力強く活躍できる人材になってくれればなと思います。