研究トピックス
スーパーミトコンドリアと気嚢システム ―鳥の運動能力の秘密―
2025年05月08日 | 固定リンク 投稿者: 応用生物学部スタッフ
獣脚類や鳥が運動能力を高く持続するためには、酸素の需要(スーパーミトコンドリア)と供給(気嚢システム)のどちらも増加させる必要がある。生物の代謝であっては、酸素の需要と供給どちらも増加する必要があるのに、気嚢システムだけが議論されてきた。まずスーパーミトコンドリアの装着が起こって、その後に気嚢システムの進化が起こった、と筆者は推察する。
(1)スーパーミトコンドリア
哺乳類と鳥類の運動能力には超えられない大きな差がある。哺乳類の運動能力は鳥類の運動能力に遠く及ばない。酸素濃度が低下すると、哺乳類の運動能力との差はどんどん大きくなる。さらに言えば鳥類の運動能力は生物の中でも別次元のものである[1-3]。この理由は、鳥が別次元のミトコンドリアを持っているからだ[4-5]。筆者は、これを「スーパーミトコンドリア」と呼ぶ(図1)。スーパーミトコンドリアは、酸素消費が高く、活性酸素が低く、脂肪の合成が低い[6-8]。鳥はスーパーミトコンドリアで細胞が満たされているため、活性酸素を作らずに、常にフルパワーでエネルギー基質を生産することができる。
哺乳類は強度の高い運動をすると、酸素消費は増えるが、活性酸素の放出量はそれ以上に増える。この意味で、哺乳類ではミトコンドリアを活性酸素の発生源と理解することが可能だ。しかし鳥は異なる。むしろミトコンドリアは活性酸素を除去する装置である。だから細胞内に大量のミトコンドリアをかかえていてもほとんど活性酸素が増えることはない[4-5]。ジュラ紀になって酸素濃度が高くなると、スーパーミトコンドリアを持つ獣脚類の運動能力はさらに増強され、空へ飛び立つことになる。白亜紀には鳥は翼竜を生態系の端に追いやってしまった [4]。
いつスーパーミトコンドリアを獲得したのか?獣脚類が鳥に進化するのはジュラ紀後期とされているが、このとき既に酸素濃度は高いので、ミトコンドリアを急激にスーパーミトコンドリアに変える理由が見当たらない。唯一考えられるのが飛行のために、ミトコンドリアをスーパーミトコンドリアに変えたということである。これはありそうもない。それよりもスーパーミトコンドリアを既に装着していて、高い運動性能をもっていたから、飛行できたと考えるのがはるかに合理的である。スーパーミトコンドリアの装着は、PT境界(2億5千万年前)の直後、極端な低酸素に適応するため非常に短い時間の間で起こっただろう[4](図2)。
(2)気嚢システム
鳥類と哺乳類の決定的な差を生み出しているもう一つの要因は、気嚢システムである[1-3]。これにより鳥類の肺は常に酸素濃度の高い(新鮮な)空気で満たされる。空気が一方向に流れ、吸気と呼気(排気)が混ざり合わないからだ。これに対して、哺乳類の肺は行き止まりの構造(単なる袋状の構造)なので、新鮮な空気と酸素濃度の低い空気が混ざり合ってしまい、ガス交換能力が高くない。鳥類では大きな骨(たとえば脊椎、頸椎、胸骨、上腕骨など)の多くは、中が空洞になっていて、気嚢がこの空洞に入り込んでいる(図3)。
鳥類は気嚢を持つことによって、鼻腔から入った空気は流速をほとんど変えることなく、全身を回って口から出てゆくことになる。この体全体を通る空気の流速が速ければ速いほど、ガス交換能力が増加することになる。気嚢システムのもうひとつの機能は、放熱である。何せ、気嚢は全身を空気が循環する最高の空冷システムだ。特に特別な放熱システムがなかった骨盤や大腿骨周辺の放熱には最適だ。このため何時間でも持続して飛行できるのだ。
応用生物学部教授・佐藤拓己
「恐竜はすごい!鳥はもっとすごい!」の著者
参考文献
- 1. Scott GR. Elevated performance: the unique physiology of birds that fly at high altitudes. J Exp Biol. 2011 Aug 1;214(Pt 15):2455-62. doi: 10.1242/jeb.052548. PMID: 21753038.
- 2. Barve S, Dhondt AA, Mathur VB, Cheviron ZA. Life-history characteristics influence physiological strategies to cope with hypoxia in Himalayan birds. Proc Biol Sci. 2016 Nov 30;283(1843):20162201. doi: 10.1098/rspb.2016.2201. Erratum in: Proc Biol Sci. 2017 Jan 11;284(1846):20162715. doi: 10.1098/rspb.2016.2715. PMID: 27903874; PMCID: PMC5136601.
- 3. Laguë SL. High-altitude champions: birds that live and migrate at altitude. J Appl Physiol (1985). 2017 Oct 1;123(4):942-950. doi: 10.1152/japplphysiol.00110.2017. Epub 2017 Aug 24. PMID: 28839002; PMCID: PMC5668450.
- 4. Satoh T. Bird evolution by insulin resistance. Trends Endocrinol Metab. 2021 Oct;32(10):803-813. doi: 10.1016/j.tem.202107007. Epub 2021 Aug 23. PMID: 34446347.
- 5. Hickey AJ, Jüllig M, Aitken J, Loomes K, Hauber ME, Phillips AR. Birds and longevity: does flight driven aerobicity provide an oxidative sink? Ageing Res Rev. 2012 Apr;11(2):242-53. doi: 10.1016/j.arr.201112002. Epub 2011 Dec 13. PMID: 22198369.
- 6. Barja G. Mitochondrial free radical production and aging in mammals and birds. Ann N Y Acad Sci. 1998 Nov 20;854:224-38. doi: 10.1111/j.1749-6632.1998.tb09905.x. PMID: 9928433.
- 7. Butler PJ. Metabolic regulation in diving birds and mammals. Respir Physiol Neurobiol. 2004 Aug 12;141(3):297-315. doi: 10.1016/j.resp.2004年01月01日0. PMID: 15288601.
- 8. Barja G, Cadenas S, Rojas C, Pérez-Campo R, López-Torres M. Low mitochondrial free radical production per unit O2 consumption can explain the simultaneous presence of high longevity and high aerobic metabolic rate in birds. Free Radic Res. 1994 Oct;21(5):317-27. doi: 10.3109/10715769409056584. PMID: 7842141.
トウモロコシヒゲ研究がNHKあさイチで紹介
2021年06月24日 | 固定リンク 投稿者: 応用生物学部スタッフ
花粉症等のアレルギー疾患は近年爆発的に増加しており、社会問題になっています。当研究室ではアレルギー等の免疫疾患の予防に有効な機能性食品についての研究を行っています。
先日、NHKのあさイチという番組で、トウモロコシのヒゲのアレルギー予防効果について紹介されました。トウモロコシのヒゲは、雌しべの柱頭と子房との間の部分である花柱のことで、コーンシルク、南蛮毛という呼び名で古くから漢方薬として消費されてきました。我々は、このヒゲにアレルギーを予防する効果が有ることを発見しました。ヒト単球様細胞にヒゲの抽出液を添加すると、インターロイキン12というサイトカインが大量に分泌されることを見出したのです。インターロイキン12の分泌がなぜアレルギー予防に繋がるかと言うと、インターロイキン12はアレルギーを増悪させるサイトカインであるインターロイキン4の産生を抑制するからです。
ヒゲは確かにインターロイキン12を誘導しますが、本当にアレルギーを予防できるのでしょうか?そこで、アトピー性皮膚炎を発症しやすいマウスにこのヒゲを食べさせて効果を試してみたのです。その結果、写真に示すようにヒゲを食べたマウスの皮膚炎はほとんど発症しませんでしたが、普通の餌を食べさせた対照マウスは、皮膚炎が発症しました。この結果をまとめたのがグラフです。食べさせた餌中のヒゲの量に従って皮膚炎のスコアーが小さいことが判ります。最近、乳酸菌がアレルギー予防に良いと宣伝されていますが、グラフの中の乳酸菌は我々が見つけた最も強い効果のある乳酸菌ですが、これよりも強く、ヒゲを食べたマウスの皮膚炎スコアーが低いことが判ります。
この様にトウモロコシヒゲにはアトピー性皮膚炎などのアレルギーを予防する成分が含まれていることが確認できたのです。現在はどの様な成分が関与するかを研究しています。活性成分の構造や、どのようなメカニズムでインターロイキン12を誘導できるのかなど、調べることはまだまだ沢山あります。高校生の皆さんは是非本学に入学して、当研究室でアレルギーを抑制する食品の研究をして下さい。
応用生物学部 免疫食品機能学研究室 今井伸二郎
尋常性白斑とイカスミ
2020年08月13日 | 固定リンク 投稿者: 応用生物学部スタッフ
皆さんは尋常性白斑という病気を知っていますか?
これはメラニンが減少し,皮膚の色がまだらに抜けて白くなってしまう皮膚疾患で,故マイケル・ジャクソン氏がこの病気に罹患していたとも言われています.原因はまだよく解っていませんが,患者の皮膚には過酸化水素が多く含まれていることや,過酸化水素を除去すると皮膚の色が回復することから,過酸化水素などによる酸化ストレスが関与していると考えられています.
私たちの研究室は,この酸化ストレスの観点から尋常性白斑の研究を始めています.メラニンはドーパクロムなどが重合した化合物で,非常に複雑な構造をしています.身近にあるメラニン源としては,パスタなどに使われるイカスミがあります.このイカスミを酸化するとどうなるか楽しみです.
藤沢章雄
Ika2_20200813122101
Ika32
Ika4
研究成果を論文として発表しました!
2020年06月18日 | 固定リンク 投稿者: 応用生物学部スタッフ
分子生物学研究室の西です。最近、我々の研究室の研究成果(論文)が「Oncogenesis」という、がん関連の事象を扱う科学誌に掲載されました。DNA二重鎖切断という重篤なDNA損傷を修復するシステムに関わる新しい因子の同定と機能解析についてです(下図を参照して下さい)。もう少し詳しい解説は研究室のホームページをご覧ください。
論文掲載URL:https://www.nature.com/articles/s41389-020-00244-4
研究室URL:https://nishi-lab.bs.teu.ac.jp/
この研究に限らず、今回の論文でこの研究は終わりというわけではありません。この結果から考えられる新しい疑問・仮説が湧いてきます。この疑問に向き合っているときが研究の中で一番楽しい時間かもしれません。
論文が掲載されました!
2020年06月09日 | 固定リンク 投稿者: 応用生物学部スタッフ
応用生物学部の吉田です。最近、本研究室の研究成果が「Analytical and Bioanalytical Chemistry」という分析化学の専門誌に掲載されました。がんの目印となるゲノムDNAのメチル化レベルを簡単に測定する方法を開発したという研究成果になります。この研究では遺伝子組換え技術を用いて、メチル化DNAを酸化するヒトの酵素を大腸菌に作らせて、それを利用して新たな測定方法を開発しました(図)。
ご興味があればぜひ、下記URLをクリックして頂きたいのですが、科学論文は基本的にはすべて英語です。研究を行うためには、これまでの研究成果を知る必要があり、そのためには論文を読まなければなりません。つまり、研究を行うためにも研究成果を発表するためにも英語が必須です。私も常に(?)英語を勉強しておりますので、皆様も一緒に英語を勉強しましょう!
https://link.springer.com/article/10.1007/s00216-020-02745-y
"ラクトフェリン"—脊髄損傷治療薬への挑戦—
2020年03月03日 | 固定リンク 投稿者: 応用生物学部スタッフ
アンメットメディカルニーズ (Unmet Medical Needs)という言葉をご存知でしょうか?未だ治療法が見つかっていない疾患に対する医療ニーズのことで、より具体的なものとしては、治療法が見つかっていない疾患の治療薬が含まれます。私の研究室ではこのアンメットメディカルニーズに応える治療薬の開発を目的として、大学院生や学部生が日々新しいバイオ医薬品の開発に取り組んでいます。特に我々の身体で我々の健康を保つために自然免疫で機能する"ラクトフェリン"というタンパク質に着目して研究を進めています。
ラクトフェリンはミルクに多く含まれるため、機能性食品としての開発が進んでいる分子ですが、医薬品としての開発実績はありません。えっ、食品が薬になるの?と驚いた方も多いのではないでしょうか?ここでは、私達の研究グループが見出した意外な?ラクトフェリンの機能をご紹介したいと思います。
上述したアンメットメディカルニーズの一つに、脊髄損傷治療があげられます。脊髄損傷とは事故などで、脳と身体を繋ぐ神経の束である脊髄が損傷することで、運動や感覚機能などに障害を生じる病態を指します。この治療薬として、ラクトフェリンが有望ではないかいう可能性を我々は見出しました。脊髄損傷の病態主要因は、脊髄損傷後に起こる活性化アストロサイトからのコンドロイチン硫酸プロテオグリカン (CSPG) の産生、分泌であり、CSPGを受け取った神経の成長円錐はその機能が崩壊して、神経軸索伸長が著しく阻害されることがわかっています。ラットの脊髄損傷モデルで、CSPGを消化する酵素コンドロイチナーゼABCを投与すると、その病態が著しく回復することから、CSPGは脊髄損傷の病態主要因であることが改めてわかります。したがって、CSPGは脊髄損傷治療の創薬ターゲットとして有望なことから、製薬企業はCSPGに結合して、その毒性を中和する分子を探索してきましたが、有望な分子は報告されておりません。
私の研究室では、中村真男助教を中心とする研究室グループが世界に先駆けてヒトラクトフェリン (hLF) が硫酸化グリコサミノグリカンに結合すること、特に脊髄損傷時の原因分子であるコンドロイチン硫酸 E (CS-E) に結合して、その毒性を中和することを見出しました(特許出願済み)。具体的には、ニワトリ胚脊髄神経節(DRG) 神経細胞を用いて、CS-Eによってもたらされた成長円錐の崩壊、並びにそれに伴う神経軸索伸長阻害がhLFにより回復できることを確認しました。さらに、研究室で開発した血中安定性が向上したヒト血清アルブミン (HSA) との融合製剤であるhLF-HSAは(特許出願済み)、hLF単独よりその効果を示しました。我々が狙っているアンメットメディカルニーズは、例えば、上述した脊髄損傷、敗血症(動物実験で病態発症後の治療効果を確認済み)、ガンなどで、製薬会社の知人らからはチャレンジングだねえ・・・とからかわれていますが、大いに本気です。何より嬉しいことは、この苦難を伴うチャレンジを学生がやりがいに感じてくれて、一生懸命に取り組んでくれることなのです。
日豪フリーラジカル学会と国際CoQ10シンポジウム
2017年12月01日 | 固定リンク 投稿者: 応用生物学部スタッフ
12月9-12日に日豪フリーラジカル学会と国際CoQ10シンポジウムを本学メディアホールと川口湖のホテルで開催します.国際学会ではややシャイな日本人とオーストラリア(ニュージーランド)人がお互いに切磋琢磨しようと,旧友と2001年から隔年で始めた学会です.今回が8回目となります.工科大のキャンパスと温泉と富士山を楽しみながら,大いに友情を育みたいと思っています.テーマはFriendship makes all the differenceです.興味のある方はHP(http://sfrra-j2017.org/ )をごらんください.
紅華祭の裏で・・・
2017年10月16日 | 固定リンク 投稿者: 応用生物学部スタッフ
先端食品コースの阿部です。
10月8、9日(日、祝)に紅華祭が行われましたが、楽しんでいただけたしょうか?今年来られなかった方は、ぜひ、来年遊びに来てください。
さて、その時、私は紅華祭には行けず、遙か遠い北の地網走(写真1)で実験をしていました。私の研究分野は食品タンパク質が主ですが、今回はちょっと系統の異なる実験をしてきました。詳しいことはまだお話しできませんが、なかなかユニークな研究です。
この研究はコンピューターサイエンス学部の先生とのコラボレーション企画で、写真はサケの写真を撮っている風景です。(写真2,3)今回は2トン弱のサケを撮影してきました。サケ1匹あたり約4キロなので、今回の撮影では、だいたい500匹くらいのサケの尻尾をつかんで撮影場所に運んだことになります。これを書いているときは、あちこちが筋肉痛ですが、これだけ動けるということは、まだまだ若いということですかね!??
晩御飯は「きんき」という魚をCSの先生と学生の3人で食べてきました。この魚は網走では「めんめ」といいます。身がとても柔らかく、脂もしっかりのってて、結局、背骨しか残らないほど綺麗に食べてきました。(写真4,5)
出張は大変ですが、こういう地方の美味しいものを食べれるのは醍醐味ですねっ!!
ガン細胞の栄養補給ルートを利用して、ラクトフェリンでガンを死滅させる
2017年09月28日 | 固定リンク 投稿者: 応用生物学部スタッフ
医薬品コースの佐藤 淳です。私の研究室で取り組んでいる研究の一つを簡単にご紹介したいと思います。ちょっと、難しいかもしれませんが、医薬品コースで目指している研究、教育の方向性を理解いただけるのではないでしょうか?
自然免疫で機能するラクトフェリン
私の研究室では、自然免疫という先天的に我々の身体が持っている免疫(感染やガンなどから我々を守っている仕組み)で機能するラクトフェリン (LF) というタンパク質に着目して、バイオ医薬品としての開発をバイオベンチャー企業と進めています。LFはミルクに含まれるタンパク質で、機能性食品としての開発が進んでおり(サプリメントはもちろんのこと、粉ミルクやヨーグルトなどに入っています)、耳にされた方も多いのではないでしょうか?そう、皆さんの身体の中でも、毎日LFがかなりの量作られていて、我々の身体を守ってくれているのです。
ラクトフェリンはガン細胞を攻撃する
LFはガン細胞を攻撃する機能を持っており、主に2つの方法でガン細胞を死滅させます。第1の方法は、ガン細胞を攻撃する免疫細胞を元気にして、元気になった免疫細胞がガン細胞を死滅させる方法。身体の中では、主にこの働きでガン細胞を攻撃します。もう一つは、LF自身がガン細胞を直接死滅させる方法。残念ながら、この働きは強くありません。研究室では、後者のLFのガン細胞を直接死滅させる機能に着目して、この機能を高めることで、より強力な抗癌剤を開発しようと、院生を中心に取り組んでいます。詳しいことは省略しますが、LFは分子まるごとの形でガン細胞に取り込まれると、細胞内に入って、ガン細胞を死滅させます。どうも、ガン細胞に取り込まれる量が少ないために、ガン細胞を上手く死滅させられないようなのです。それなら、ガン細胞に取り込まれるLFの量を増やせば良いのでは?・・・・と考えて研究を進めています。
どうやってガン細胞により多くのLFを取り込ませるのか?
では、どのようにしてもっと多くのLFをガン細胞に取り込ませるのか?・・・これが大きな課題です。ガン細胞は、その早い増殖を維持する為に栄養分が必要であり、細胞外からグルコースやアミノ酸、さらにはタンパク質などを大量に細胞内に取り込んで生きています。LFの細胞内取り込みのために、我々はこのガン特有の代謝様式に着目しました。詳しいお話しはしませんが、簡単に言えば、ガンが細胞外からいろいろな栄養分を取り込む代謝様式を使って、このルートでどさくさ紛れに?LFを細胞内に導入しようという作戦です。実際にこの作戦をヒト肺がん細胞株に対して試みたところ、ガン細胞に対するLFの増強した細胞増殖阻害が観察され、ガン細胞の形が変化しました。現在、実際に、ガン細胞内により多くのLFが導入されているのか?など、その増強効果をもたらすメカニズムを調べています。
我々の夢は、大学発のバイオ医薬品を開発することであり、大学院生を中心として日夜、この夢を追っています。現実は厳しく、難しいですが、これを夢に終わらせることなく、ぜひ現実のものにしたいと願っています。
医薬品コース 佐藤 淳
日本発のALS治療薬
2017年05月23日 | 固定リンク 投稿者: 応用生物学部スタッフ
脳梗塞の治療薬であるエダラボンは世界唯一のフリーラジカル消去薬として有名ですが,2015年6月にALS治療薬として日本で追加認可されました.2017年5月5日には米国でもALS治療薬として認可されました.1990年から開発に関係してきた者として大きな喜びです.
ALS治療ではフリーラジカル消去よりも炎症時にできるペルオキシナイトライトという活性種の消去が重要と考えています.よろしければ小生の総説https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcbn/60/1/60_16-63/_article をごらんください.
応用生物学部 山本順寛
Edaravone_5
より以前の記事一覧
- 植物だって日々考えています!〜紅葉に見る植物の栄養リサイクル〜 2015年06月26日
- 研究の紹介(阿部周司先生) 2015年03月17日
- 個性のある皮膚の細胞 2015年02月24日
- 2014年度のバイオニクス専攻修士課程の優秀研究 2015年02月16日
- 2014年度の応用生物学部優秀卒業研究が決定しました 2015年02月10日
- 日本ラクトフェリン学会、第6回学術集会で学会賞を受賞いたしました 2014年11月10日
- 大学院生の国際学会デビュー 2013年11月20日
- Are we alone in the universe? 2013年10月25日
- 都市河川の薬剤耐性菌 2013年09月27日
- 3次元プリンター 2013年07月30日
- 3回目のブログ 2013年06月27日
- 2012年度の大学院修士研究の優秀研究が決まりました 2013年02月23日
- 2012年度の優秀卒業研究が決まりました 2013年02月21日
- 国際バイオEXPOで発表してきました! 2011年07月09日
- 屋上緑化 2010年11月08日
- 脳神経細胞の蛍光イメージング 2010年07月21日
- 鉄呼吸微生物 2010年07月16日
- 国際バイオEXPOで講演してきました! 2010年07月08日
- コエンザイムQ10の魅力 2010年07月02日
- 新しい研究テーマ 2010年06月25日
- 研究紹介その5 2010年05月20日
- 研究紹介その4 2010年05月20日
- 研究紹介その3 2010年05月20日
- 研究紹介その2 2010年05月20日
- 研究紹介その1 2010年05月19日
その他のカテゴリー
オープンキャンパス ニュース 入試 出張講義(模擬授業) 学生実験 実験講座 工科大学の行事 日記・コラム・つぶやき 研究トピックス 研究室の紹介