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2023年04月05日

chatGPTが格差を解消する可能性

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冒険家の皆さん、今日もラクダに揺られて灼熱の砂漠を横断していますか?

本日、お話ししたいテーマは、ChatGPTが格差を拡大しないということです。この話題を取り上げようと思ったきっかけは、ある方のツイッターでの発言です。その方は、3月31日に、ChatGPTやDeepLの有料契約を持っている人と持っていない人の間に生産性の格差が生じると書いていました。そのツイートを引用して紹介します。

けんすう @kensuu Mar 31
「何気に「DeepLを有料契約して、サイトをさっと翻訳して読んでいる」とか「ChatGPTを有料契約している」とかで、生産性がすごく上がる、みたいなことが起きていると「そこにすぐに投資できる余裕がある人」が、より仕事の成果を出せるようになる・・・みたいな、格差の拡大につながる面はありそう。」


このような意見について、僕も同様の考えを持っています。確かに、ChatGPTやDeepLなどの人工知能を使う人と使わない人の間で、格差の拡大が起きる可能性はあります。しかし、視点を変えてみると、総合的には必ずしもchatGPTによって格差が拡大するとは限らないと僕は考えています。それは、以前からお金を持っている人はchatGPTではない別の方法で問題を解決できていたからです。

けんすうさんのツイート以外にも、chatGPTなどの人工知能によって格差が拡大するという懸念は見たことがあって、たとえば、国際通貨基金(IMF)のブログに「人工知能が持ち得る先進国と貧困国の格差拡大」という記事がありました。この記事は2020年12月2日のもので、当時はまだChatGPTが大きな注目を集める前の話ではありますが、人工知能によって格差が拡大するという議論は存在していました。

それに対して、僕は人工知能が必ずしも格差を拡大させる要因となるとは考えていません。

例えば、DeepLもその一つです。これまでは、プロの人間の翻訳家と契約して、それでたくさん欲しいものはいくらでも翻訳してもらえるような立場の人もいらっしゃったわけですね。なので、そういう人たちだけに独占されていた「自分が理解できない外国語の文献を読む」という能力が、このDeepLなどやChatGPTなどで解放されたという側面もあるのです。

これを教育の面で考えてみたいですが、ChatGPTは家庭教師のように一対一で色んなことを教えてくれます。家庭教師も色んな種類があると思いますが、多分日本で一番有名なのは家庭教師のトライという会社だと思います。しかし、その料金については公式サイトにはっきり書いていないので、「家庭教師のアーチ 最安値級格安家庭教師」というウェブサイトに、この家庭教師のトライの料金システムを分かりやすく解説する記事があったので、ちょっと見てみましたが、やはり見てみると、これは本当に富裕層の人しか正直使えないサービスだと思っていいのではないでしょうか。

例えば、入会金だけでも15,000円かかり、管理費というのが毎月3,500円から4,500円かかり、授業料も1時間で3,000円からあるいは5,000円といった金額がかかり、交通費というのも一回500円ぐらい平均すると払わなければいけません。それで高校生の場合、週一回90分教えてもらうだけでも、それでも1カ月に34,000円かかります。これが週一回120分というコースもあるのですが、そうなると毎月44,000円がかかるということです。そして、これをコンスタントに支払い続けることができる人というのは、やはり富裕層に限られると言っていいでしょう。

しかし、その一方で、ChatGPTに関しては有料版と無料版がありますが、少なくても無料版は文字通りインターネットの利用料金と電気代だけで使えるのです。パソコンの電気代などかかりますが、それだけで基本的にはもう利用可能です。仮にその有料版を使うにしても、1カ月に20ドルだけです。なので、この家庭教師のトライが週一回90分で34,000円、週一回120分で44,000円といった金額ですが、1カ月で考えると、はるかに安く家庭教師と同じような効果を得ることができるということがわかります。もちろん、家庭教師の場合は人間であり、「明日家庭教師の先生が来るから宿題やっておかなきゃ」とか、そういうプレッシャーがあったりして、ChatGPTとは全く違う効果があるのはそのとおりだと思います。しかし、家庭教師の場合、基本的に週に一回か二回だけなわけですね。

一方で、ChatGPTの場合は毎日使えるわけですし、一日24時間利用できます。それを考えると、特に家庭教師には人間だからこその利点もあるかとは思いますが、ChatGPTは人間ではないので1日24時間使えるという利点もあるわけです。

それで、僕が見ると、少なくとも僕の目からは、ChatGPTが格差を拡大しているようには見えないのです。もちろん、ChatGPTはインターネットにアクセスできない人が使うことは難しいので、それを考えると、確かにインターネットにアクセスできる人とできない人の格差が今までもあったが、それをさらに拡大してしまうという懸念は実際にあると思います。ですが、インターネットが使える人の中で、家庭教師を雇える富裕層とそうでない人たちの間の格差は解消すると言えるのではないかと思います。

では、どのくらいの人がインターネットにアクセスできるのかということも考えてみましょう。

現在僕はインドに住んでいるためインドの話をします。日本では、インドは途上国であると考えられている方が多いと思います。そのインドの例を挙げますが、2020年に携帯の契約数が11億あったということです。2020年は今から3年前ですから、全人口13億人を考慮すると、ほとんどの人が携帯契約を持っていると言えるでしょう。ただし、携帯電話はインターネットと同義ではありません。携帯で電話ができるが、インターネットが使えないサービスもあります。それでも、「途上国だからインターネットが使えない」というようなイメージが正確ではないことが分かります。

日本のインターネット普及状況については、「世界経済のネタ帳」というウェブサイトによると、インターネット普及ランキングで27位であり、普及率は90%です。つまり、日本では10人のうち1人がインターネットにアクセスしていないのです。これが意図的にアクセスしていないのか、経済的な理由でアクセスできないのかは分かりませんが、少なくとも10人のうち1人がChatGPTなどの人工知能の恩恵を受けられない状況にあることは確かです。

このような状況を考慮すると、インターネットやChatGPTを使えない人たちを置き去りにしてしまって良いのかという問題が浮上します。その場合、確かに、GPTが格差を拡大させるために利用を禁止すべきだという意見も理解できますが、一方で、家庭教師を雇うことができるのは上位の富裕層だけだと思われます。そのような富裕層だけに、1対1で教えてもらえる機能を独占させてしまって良いのでしょうか。もし独占させてはいけないと考えるなら、ChatGPTを積極的に活用していくべきだと思います。

では、活用していくとして、ネットにアクセスできない(しない)10%をどうすればいいかというと、少なくとも教育に関しては、学校教育があるので、この学校教育をネットにアクセスできない人たちだけに集中させればいいと僕は思います。

実を言うと、富裕層は家庭教師も雇えますし、塾などにも行けるでしょうから、別に学校はそれほど必要としていません。また、富裕層以外も、日本の国民の90%の人たちは、ChatGPTのような人工知能が使える環境にある訳です。そういう人たちにとっては学校が必要なくなったとまでは僕は言い切りませんが、現状では30万人の不登校児を始め、発達障害の子供や、日本語を母語としてない子どもたち、さらには10%のネットにアクセスできない人たちが置き去りにされています。こういう社会的経済的に恵まれてない人たちが、僕はちゃんと平等に扱われているとは思えない状況にあります。日本の教育機関で、そういう人たちにリソースを集中するためだったら、ネットにアクセスできる90%の人たちは、chatGPTなどの人工知能の利用を拡大して、人間の先生による授業は諦めてもいいレベルなのではないかと思います。「諦めてもいい」というのは、もし人工知能に一対一で教えてもらえるんだったら、人間の先生たちのリソースをインターネットにアクセスできない人たちに集中させる。そしてそのかわり、自分たちはChatGPTなど、人工知能を使った勉強方法を採用する。そういう選択を検討する必要も出てくるのではないかと思います。

【参照】
この記事の音声版
https://spotifyanchor-web.app.link/e/lpfUxYytIyb




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