2023年05月08日
情意フィルター、学習不安とchatGPT
[フレーム]
冒険家の皆さん、今日もラクダに揺られて灼熱の砂漠を横断していますか?
本日お話ししたいのは、情意フィルターと学習不安とChatGPTです。これを話す際に皆さんにも振り返っていただきたいのですが、例えば英語などの外国語や第二言語の授業で、恥ずかしかったことが皆さんにはありますか。
僕の場合は、昔サウジアラビアに仕事で行っていた時に、アラビア語の授業で感じたことがあります。アラビア語を全く知らない人が対象だと思っていたのですが、周りは、例えばパキスタン人やインドのイスラム教徒などばかりでした。パキスタン人の話すウルドゥー語は語彙や文法はヒンディー語に非常に近いのですが、文字はアラビア語とほぼ同じ文字を使っています。そういう人たちがサウジアラビアに働きに来ており、彼らは普通にコーラン(クルアーンとも言いますが、イスラム教の聖典でアラビア語で書かれています)を読んでいます。ほとんどそういう人たちばかりが、僕の通っていたアラビア語の授業に来ていました。そのため、僕ともう一人ぐらいのイスラム教徒ではないヨーロッパ系の人たちとはレベルが明らかに違っており、とても大変でした。それで結局、3週間ぐらい通ってから行かなくなってしまいましたが、皆さんにもそういう経験があるかもしれません。また、ベトナム語の発音が難しくてなかなか通じないことがあり、苦労した経験もあります。
このような体験が積み重なると、第二言語習得に悪い影響を及ぼしてしまうということが研究で明らかになっています。最初は仮説という形で、クラッシェンの5つの仮説が有名ですが、そのうちの一つが情意フィルターです。この情意フィルターとは、ネガティブな感情が第二言語習得に悪影響を及ぼしてしまうことです。クラッシェンが挙げた情意フィルターの例としては、不安、自信のなさ、動機の弱さなどがあります。こういったネガティブな感情があると、フィルターがかかってしまい、第二言語を吸収できなくなってしまいます。
例えば、タバコのフィルターなどもそうですよね。ニコチンなどをそこで吸収してくれるから、肺の中にあまり悪いものが入りません。そういうのがフィルターだと思いますが、この情意フィルターというのはそれとは逆にいいものも入ってこなくなってしまうわけですね。それで第二言語習得に悪い影響が出てしまうというわけです。
この中で不安と自信のなさと動機の弱さという3つを今ご紹介しましたが、特にこの不安に関しては情意フィルターとは別に「外国語不安」という言葉もあります。外国語不安というのは、1986年にホロビッツとコープという人たちの研究で最初に Foreign Language Anxiety という言葉が使われたんだと僕は認識しています。
要するにクラスの中で、「何か間違ったことを言ってしまったら恥ずかしい」とか、あるいは「発音が通じなかったら恥ずかしい」とか、あるいは「文法を間違えちゃったら嫌だな」とか、あるいは「前にも同じこと聞いたので質問できない」とか、あるいは「もう前にもほかの人が質問しているようなとても基本的なことなので、今さら質問できない」とかですね。そういうのがこの外国語不安と言っていいんじゃないかと思います。これは最初に言われたのが1986年ですから、もうそれから37年経っているわけです。しかし、37年経ってもそれほど根本的には一般的な一斉事業の中の教室では解決されていない問題だと思っています。しかし、これがChatGPTを使うことによって、簡単に解決されるというのを、僕は身を持って感じています。
確かに、ChatGPTならどれだけ馬鹿なことを聞いてもまったく恥ずかしくないですよね。そのようなことを全く考慮しないで質問が簡単にできます。例えば、「これはヒンディー語で何と言いますか?」と聞いてみたら、とても簡単で初歩的な単語だったり、何回も見たことがあり、よく知っている単語だったりすることが普通にあります。しかし、クラスの授業だと他の同じクラスの学習者にも恥ずかしく、先生にも恥ずかしく、他の学習者の時間を無駄に使ってしまったことに対して申し訳なく思ってしまうでしょう。さらに、そんな基本的なことを覚えていなかったということ自体について、自分に対しても恥ずかしく思うでしょう。ですが、ChatGPTの場合はそういうことがありません。
もう一つの利点として、chatGPTは基本的には一人で使うことができるため、他の学習者の時間を無駄に奪ってしまうこともありません。ですから、情意フィルターや学習不安、外国語不安などに関しては、ChatGPTを使うことで簡単に解決できると言っていいのではないかと思います。
ただ、現状では一つ、僕自身がまだ解決できていない部分もあると思いますが、それは発音です。僕の場合は基本的にインドのヒンディー語の発音ですが、ここでも問題があります。
ここでは何回もご紹介しているのですが、Talk-To-ChatGPTという拡張機能に、僕がヒンディー語を話すと、それを音声認識して文字に変えて、それでchatに入力してくれるという機能があります。それを使えばchatGPTと会話ができますが、僕がヒンディー語で何か言ったつもりでも、それがちゃんと音声認識されないことが結構あります。それは僕のヒンディー語の発音が悪いからですが、それが続くとちょっと情意フィルターが高まってしまうというところを感じています。ただ、これに関して言えば、ChatGPTの機能ではなくて、音声認識の機能です。なので、音声認識の方が僕の日本人なまりのヒンディー語をちゃんと聞き取れていないというところに問題があるという風に、僕は今は認識しています。
ただ、これは実は英語に関してもあるのですが、少なくとも英語に関しては音声認識には多くのバリエーションがあります。イギリス英語とアメリカ英語だけではなく、カナダ英語もありますし、もちろんインド英語もあります。インド英語で話すと、それがちゃんと文字化してくれるという機能もありますし、それから音声認識の逆に、Text-to-Speechもインド英語に対応しています。つまり文字を音声化してくれるサービスにも、同じようにインド英語があって、同じ英語のテキストでも音声化してもらうと、インド人の英語で音声化してもらえます。つまり、インド人の英語をたくさん聞くことができるというわけです。英語に関しては、世界のいろんな国の人のなまりの英語をなるべく入れて、例えば日本人の日本語なまりの英語も音声認識が対応してくれるようになると、この辺はもうちょっと解決されてくるのではないかと思います。
そして冒険は続く。
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https://groups.google.com/g/muralog/about
【参考資料】
この記事の音声版
https://spotifyanchor-web.app.link/e/aHJyYT0JCzb
情意フィルター仮説とは?第二言語習得に関するクラッシェンの5つの仮説(5) | おすすめ英会話・英語学習の比較・ランキング- English Hub https://englishhub.jp/sla/the-affective-filter-hypothesis
Horwitz, E. K., Horwitz, M. B., & Cope, J. A. (1986). Foreign language
classroom anxiety. The Modern Language Journal 70(2), 125-132.
https://www.jstor.org/stable/327317
This article explains how to use ChatGPT to reduce learning anxiety. By using ChatGPT, users can ask questions and share their thoughts and feelings. This is an effective method to alleviate learning anxiety and make learning more enjoyable. This article serves as a good example of how ChatGPT can be used and demonstrates its potential applications in education and other fields.
この記事では、ChatGPTを使用して、学習不安を軽減する方法について説明します。ChatGPTを使用して、ユーザーは質問をしたり、自分の考えや気持ちを共有したりできます。これは、学習不安を軽減し、学習をより楽しくするための効果的な方法です。この記事は、ChatGPTの使用方法の良い例であり、教育やその他の分野でどのように使用できるかを示す良い例です。
冒険家の皆さん、今日もラクダに揺られて灼熱の砂漠を横断していますか?
本日お話ししたいのは、情意フィルターと学習不安とChatGPTです。これを話す際に皆さんにも振り返っていただきたいのですが、例えば英語などの外国語や第二言語の授業で、恥ずかしかったことが皆さんにはありますか。
僕の場合は、昔サウジアラビアに仕事で行っていた時に、アラビア語の授業で感じたことがあります。アラビア語を全く知らない人が対象だと思っていたのですが、周りは、例えばパキスタン人やインドのイスラム教徒などばかりでした。パキスタン人の話すウルドゥー語は語彙や文法はヒンディー語に非常に近いのですが、文字はアラビア語とほぼ同じ文字を使っています。そういう人たちがサウジアラビアに働きに来ており、彼らは普通にコーラン(クルアーンとも言いますが、イスラム教の聖典でアラビア語で書かれています)を読んでいます。ほとんどそういう人たちばかりが、僕の通っていたアラビア語の授業に来ていました。そのため、僕ともう一人ぐらいのイスラム教徒ではないヨーロッパ系の人たちとはレベルが明らかに違っており、とても大変でした。それで結局、3週間ぐらい通ってから行かなくなってしまいましたが、皆さんにもそういう経験があるかもしれません。また、ベトナム語の発音が難しくてなかなか通じないことがあり、苦労した経験もあります。
このような体験が積み重なると、第二言語習得に悪い影響を及ぼしてしまうということが研究で明らかになっています。最初は仮説という形で、クラッシェンの5つの仮説が有名ですが、そのうちの一つが情意フィルターです。この情意フィルターとは、ネガティブな感情が第二言語習得に悪影響を及ぼしてしまうことです。クラッシェンが挙げた情意フィルターの例としては、不安、自信のなさ、動機の弱さなどがあります。こういったネガティブな感情があると、フィルターがかかってしまい、第二言語を吸収できなくなってしまいます。
例えば、タバコのフィルターなどもそうですよね。ニコチンなどをそこで吸収してくれるから、肺の中にあまり悪いものが入りません。そういうのがフィルターだと思いますが、この情意フィルターというのはそれとは逆にいいものも入ってこなくなってしまうわけですね。それで第二言語習得に悪い影響が出てしまうというわけです。
この中で不安と自信のなさと動機の弱さという3つを今ご紹介しましたが、特にこの不安に関しては情意フィルターとは別に「外国語不安」という言葉もあります。外国語不安というのは、1986年にホロビッツとコープという人たちの研究で最初に Foreign Language Anxiety という言葉が使われたんだと僕は認識しています。
要するにクラスの中で、「何か間違ったことを言ってしまったら恥ずかしい」とか、あるいは「発音が通じなかったら恥ずかしい」とか、あるいは「文法を間違えちゃったら嫌だな」とか、あるいは「前にも同じこと聞いたので質問できない」とか、あるいは「もう前にもほかの人が質問しているようなとても基本的なことなので、今さら質問できない」とかですね。そういうのがこの外国語不安と言っていいんじゃないかと思います。これは最初に言われたのが1986年ですから、もうそれから37年経っているわけです。しかし、37年経ってもそれほど根本的には一般的な一斉事業の中の教室では解決されていない問題だと思っています。しかし、これがChatGPTを使うことによって、簡単に解決されるというのを、僕は身を持って感じています。
確かに、ChatGPTならどれだけ馬鹿なことを聞いてもまったく恥ずかしくないですよね。そのようなことを全く考慮しないで質問が簡単にできます。例えば、「これはヒンディー語で何と言いますか?」と聞いてみたら、とても簡単で初歩的な単語だったり、何回も見たことがあり、よく知っている単語だったりすることが普通にあります。しかし、クラスの授業だと他の同じクラスの学習者にも恥ずかしく、先生にも恥ずかしく、他の学習者の時間を無駄に使ってしまったことに対して申し訳なく思ってしまうでしょう。さらに、そんな基本的なことを覚えていなかったということ自体について、自分に対しても恥ずかしく思うでしょう。ですが、ChatGPTの場合はそういうことがありません。
もう一つの利点として、chatGPTは基本的には一人で使うことができるため、他の学習者の時間を無駄に奪ってしまうこともありません。ですから、情意フィルターや学習不安、外国語不安などに関しては、ChatGPTを使うことで簡単に解決できると言っていいのではないかと思います。
ただ、現状では一つ、僕自身がまだ解決できていない部分もあると思いますが、それは発音です。僕の場合は基本的にインドのヒンディー語の発音ですが、ここでも問題があります。
ここでは何回もご紹介しているのですが、Talk-To-ChatGPTという拡張機能に、僕がヒンディー語を話すと、それを音声認識して文字に変えて、それでchatに入力してくれるという機能があります。それを使えばchatGPTと会話ができますが、僕がヒンディー語で何か言ったつもりでも、それがちゃんと音声認識されないことが結構あります。それは僕のヒンディー語の発音が悪いからですが、それが続くとちょっと情意フィルターが高まってしまうというところを感じています。ただ、これに関して言えば、ChatGPTの機能ではなくて、音声認識の機能です。なので、音声認識の方が僕の日本人なまりのヒンディー語をちゃんと聞き取れていないというところに問題があるという風に、僕は今は認識しています。
ただ、これは実は英語に関してもあるのですが、少なくとも英語に関しては音声認識には多くのバリエーションがあります。イギリス英語とアメリカ英語だけではなく、カナダ英語もありますし、もちろんインド英語もあります。インド英語で話すと、それがちゃんと文字化してくれるという機能もありますし、それから音声認識の逆に、Text-to-Speechもインド英語に対応しています。つまり文字を音声化してくれるサービスにも、同じようにインド英語があって、同じ英語のテキストでも音声化してもらうと、インド人の英語で音声化してもらえます。つまり、インド人の英語をたくさん聞くことができるというわけです。英語に関しては、世界のいろんな国の人のなまりの英語をなるべく入れて、例えば日本人の日本語なまりの英語も音声認識が対応してくれるようになると、この辺はもうちょっと解決されてくるのではないかと思います。
そして冒険は続く。
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【参考資料】
この記事の音声版
https://spotifyanchor-web.app.link/e/aHJyYT0JCzb
情意フィルター仮説とは?第二言語習得に関するクラッシェンの5つの仮説(5) | おすすめ英会話・英語学習の比較・ランキング- English Hub https://englishhub.jp/sla/the-affective-filter-hypothesis
Horwitz, E. K., Horwitz, M. B., & Cope, J. A. (1986). Foreign language
classroom anxiety. The Modern Language Journal 70(2), 125-132.
https://www.jstor.org/stable/327317
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