開館70周年記念展示「本の玉手箱―国立国会図書館70年の歴史と蔵書―」
国立国会図書館は、平成に入ると新たな転機を迎えた。平成12(2000)年にわが国初の国立の児童書専門図書館である国際子ども図書館が、平成14(2002)年に高度情報化社会に対応した図書館サービスの拠点となる関西館が開館したこと、一挙に資料のデジタル化やサービスの電子化が進んだことは、その代表であろう。そして、平成23(2011)年の東日本大震災は、記録など資料・情報を次の世代へ伝えていくという当館の役割を改めて認識するきっかけとなった。
京都に国会図書館を!
中央公論 95巻4号 通号1118号 中央公論社 昭和55(1980)年4月【Z23-9】
京都郊外に「国民文化都市」をつくり、第二国会図書館を設置する構想を語っている。この提言をきっかけに「関西学術研究都市」構想は、「関西文化学術研究都市」構想となった。平成14(2002)年に関西館が京都府相楽郡精華町に設置された遠因ともいえる記事である。
493点中の最優秀作品
公共建築協会 平成9(1997)年【UL521-G5】
関西館の建設にあたっては建築設計競技(コンペ)が行われた。新国立競技場の設計で知られる隈研吾(くま けんご)など著名な建築家が多数参加し、最優秀賞に輝き採用されたのは陶器二三雄(とうき ふみお)の案であった。
明治・昭和・平成の建物が一体に
平成14(2002)年【UL521-H5】
国際子ども図書館の庁舎は、本展示でも紹介した帝国図書館(昭和24年以降は支部上野図書館)を安藤忠雄らの設計のもと再生・利用したものである。木製扉などの建具は完成当時のものを再利用あるいは復元している。平成27(2015)年には新館(アーチ棟)も竣工し、サービスを拡充した。
手書きから印刷へ
かつては、資料を請求するにあたり、書名、著者名などの順に並べられた目録カードの中から目的の資料のカードを探し出す必要があった。カードは時代を経るごとに手書きから印刷へと姿を変えていった。印刷された目録カードは全国の図書館に頒布され、目録の標準化の一助となった。
印刷から電子へ
国立国会図書館 編 日本図書館協会〔平成14(2002)年〕【YH231-H550】【YH231-H551】
28 J-BISC Japan MARC on disc 2002 3rd ed. / 4th ed.の画像 28 J-BISC Japan MARC on disc 2002 3rd ed. / 4th ed.の画像
昭和56(1981)年には磁気テープを用いた機械可読形式での全国書誌(当館が網羅的に収集した国内出版物の標準的な書誌情報)データ提供が始まった。その後、昭和63(1988)年にはデータをCD-ROMに収めたJ-BISCの頒布が開始される。さらに、平成14(2002)年からはインターネットでも提供されている。
電子図書館時代へ
国立国会図書館〔著〕国立国会図書館 平成10(1998)年【UL214-G8】
29 国立国会図書館電子図書館構想の画像デジタルコレクション
当館が実現すべき電子図書館のあり方を示した構想である。電子出版物の収集や印刷物の電子化により電子図書館の「蔵書」を構築していくこと、国会情報を電子化し広く国民に提供することなど、のちに実現されるさまざまな事業を目標として掲げている。
29 震災翌日の当館書庫の様子
震災翌日の当館書庫の様子
平成23(2011)年3月11日、マグニチュード9.0の巨大地震が日本を襲った。
この震災に関するあらゆる記録・教訓を次の世代へ伝え、被災地の復旧・復興事業、今後の防災・減災対策に役立てるため、国立国会図書館東日本大震災アーカイブ(愛称:ひなぎく)を平成25(2013)年3月7日に公開した。
「ひなぎく」には、被災地において懸命に努力した人々の記録が刻まれている。機械が全く使えない中で手書きの壁新聞を発行した『石巻日日新聞』(いしのまきひびしんぶん)はその代表と言える。
また、当館の持つ資料保存に関する専門知識・技術を生かし、東日本大震災復興支援活動の一環として、被災した岩手県指定有形文化財「吉田家文書」を修復した際の記録なども掲載している。