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補完的保護対象者認定制度

第1 補完的保護対象者認定制度の概要

日本は、1981年に「難民の地位に関する条約」(以下「難民条約」という。)、1982年に「難民の地位に関する議定書」に順次加入し、同条約・議定書上の難民に該当する外国人を難民として認定し適切な保護を行ってきました。一方で、近年、紛争避難民のように、迫害を受けるおそれがある理由が、難民条約上の5つの理由である人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見のいずれにも該当せず、条約上の「難民」に該当しないものの、保護を必要とする外国人が存在しています。
このような、条約上の「難民」ではないものの「難民」と同様に保護すべき紛争避難民などを確実に保護する制度として、2023年12月1日より、補完的保護対象者の認定制度が開始されました。
「補完的保護対象者」とは、難民条約上の難民以外の者であって、難民の要件のうち迫害を受けるおそれがある理由が人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見であること以外の要件を満たすものであり、補完的保護対象者の認定手続とは、外国人が補完的保護対象者に該当するかどうかを審査して決定する手続です。

第2 補完的保護対象者の認定を受けた外国人が享受できる権利又は利益

補完的保護対象者の認定を受けた外国人は、次のような権利又は利益を受けることができます。

1.安定した在留資格の付与
補完的保護対象者の認定を受けた外国人には、難民の認定を受けた外国人と同様、原則として在留資格「定住者」が付与されます。

2.永住許可要件の一部緩和
 在留資格を有する外国人が永住許可を受けるためには、
  • (1) 素行が善良であること
  • (2) 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
  • の2つの要件を満たし、かつその者の永住が日本国の利益に合すると認められなければならないとされています。
  • しかし、補完的保護対象者の認定を受けて在留する外国人は、このうち(2)の要件を満たさない場合であっても、法務大臣の裁量により永住許可を受けることができます。

3.定住支援プログラムへの参加
補完的保護対象者の認定を受け、希望する外国人は、日本で自立して安定した生活を送ることができるようになることを目的とした定住支援プログラムに参加できる場合があります。
定住支援プログラムについては「補完的保護対象者等への支援について」をご覧ください。

(注記)補完的保護対象者の認定を受けた外国人は、難民の認定を受けた外国人が交付を受けられる難民旅行証明書の交付を受けることはできませんが、再入国許可書の交付を受けることはできます。

第3 補完的保護対象者認定手続

1 申請手続
(1)申請に必要な書類・申請方法・申請先
申請に際しての必要書類、申請方法、申請先についてはこちら。

(2)補完的保護対象者であることの立証
補完的保護対象者の認定は、申請者から提出された資料や、申請者の供述等に基づいて行われます。したがって、申請者は、補完的保護対象者であることについて、自ら立証することが求められます。
なお、申請者の提出した資料のみでは十分な立証が得られない場合には、難民調査官が公務所等に照会するなどして、申請者の申し立てる事実の有無について調査し、補完的保護対象者の認定が適正に行われるように努めます。

2 仮滞在の許可
不法滞在者等の在留資格未取得外国人から補完的保護対象者認定申請があったときは、その者の法的地位の安定を図るため、当該外国人が本邦に上陸した日(本邦にある間に補完的保護対象者となる事由が生じた者にあっては、その事実を知った日)から6か月以内に補完的保護対象者認定申請を行ったものであるとき又は迫害を受けるおそれのあった領域から直接本邦に入ったものであるときなどの一定の要件を満たす場合には、仮に本邦に滞在することを許可し、その間は退去強制手続が停止されます。
なお、仮滞在許可の判断は、補完的保護対象者認定申請者から提出のあった難民・補完的保護対象者認定申請書等の書類により行いますので、別途、仮滞在許可のための申請は必要ありません。

(1)仮滞在許可による滞在
仮滞在許可を受けると一時的に退去強制手続が停止され、仮滞在期間の経過等当該許可が終了するまでの間は、適法に本邦に滞在することができます。

(2)仮滞在許可書
法務大臣が仮滞在の許可をした外国人には、仮滞在許可書が交付されます。
許可を受けている間は、この許可書を常に携帯する必要があります。
仮滞在許可書の確認ポイントについてはこちら。

(3)仮滞在期間及び同期間の延長
仮滞在期間は、原則として6月です。
仮滞在期間の更新申請は、許可期限の10日前から受け付けており、申請書は、各地方出入国在留管理局、支局及び出張所の窓口に備え付けてあります。

(4)仮滞在許可の条件
仮滞在許可を受けた外国人は、住居や行動範囲が制限されています。また、難民調査官から出頭の要請があった場合には、指定された日時、場所に出頭して、補完的保護対象者認定手続へ協力する義務が課されるなど、種々の条件が付されます。

(5)報酬を受ける活動の許可
仮滞在の許可を受けた外国人が生計を維持するために必要な範囲で行う報酬を受ける活動について、相当と認められるときには許可される場合があります。
報酬を受ける活動許可申請書についてはこちら。

(6)仮滞在の許可の取消し
仮滞在の許可を受けた外国人がその付された条件に違反した場合、許可なく報酬を受ける活動を行った場合、不正に補完的保護対象者の認定を受ける目的で偽変造された資料を提出した場合、虚偽の陳述をした場合等には仮滞在の許可が取り消されることがあります。

3 補完的保護対象者認定証明書の交付
法務大臣が補完的保護対象者であると認定した外国人には、補完的保護対象者認定証明書が交付されます。補完的保護対象者としての各種の保護措置を受ける際に、補完的保護対象者であることの証明を求められた場合には、この証明書を提示してください。

第4 審査請求

1 審査請求手続

(1)審査請求人
 補完的保護対象者の認定の申請をしたものの認定されなかった外国人や補完的保護対象者の認定を取り消された外国人は、法務大臣に対し、審査請求をすることができます。


(2)審査請求ができる期間
 審査請求期間は、補完的保護対象者の認定をしない旨の通知又は補完的保護対象者の認定を取り消した旨の通知を受けた日から7日以内となっています。ただし、天災その他やむを得ない理由があるときは、7日経過後であっても審査請求をすることができます。


(3)審査請求先
 審査請求は、補完的保護対象者認定申請の場合と同様、審査請求人の住所又は現在地を管轄する地方出入国在留管理官署で行うことができます。
なお、代理人による審査請求が認められるほか、必要書類を郵送して審査請求をすることもできます。

地方出入国在留管理局・支局における審査請求窓口は、下記のとおりです。

札幌出入国在留管理局 審査部門
仙台出入国在留管理局 審査第二部門
東京出入国在留管理局 難民審判部門
成田空港支局 第二審判部門
羽田空港支局 審判部門
横浜支局 審判部門
名古屋出入国在留管理局 難民審判部門
中部空港支局 審査管理部門
大阪出入国在留管理局 審判部門
関西空港支局 審判部門
神戸支局 審査部門
広島出入国在留管理局 審判部門
高松出入国在留管理局 審査部門
福岡出入国在留管理局 審判部門
那覇支局 審査部門

(4)審査請求に必要な書類
  次の書類を提出してください。
  ア 審査請求書(窓口に備え付けてあります。) 1通
  イ 審査請求の理由を立証する資料(陳述書でも差し支えありません。) 1通

2 難民審査参与員

難民審査参与員制度についてはこちら。

3 法務大臣の裁決
法務大臣が、審査請求には理由がある旨の裁決をし、補完的保護対象者と認定された外国人には、補完的保護対象者認定証明書が交付されます。
また、補完的保護対象者と認められた外国人には、原則として在留資格「定住者」が付与されます。

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