レストランやカフェ勤務を経て独立。季節の食材を使ったやさしい味の料理が評判を呼び、雑誌や広告などで活躍中。器選びや盛り付けに至るまで、その料理の美しさでも注目を集めている。著書に『ONE PLATE OF SEASONS-四季の皿』(アノニマ・スタジオ)、『スープとパン』『さっと煮サラダ』(ともにグラフィック社)など。
スポーツ誌、カルチャー誌、女性誌などで活躍。また、広告やカタログ、CDジャケット、俳優の写真集なども担当。書籍に『8月の写真館』『JAIPUR』など。アメリカ、ワシントンDC生まれ。
1980年兵庫県生まれ。出版社勤務を経て独立。山岳や自然、動物、旅などにまつわる雑誌、書籍の編集を多く手がける。女性クリエイター8人から成る山登りと本づくりユニット〈ホシガラス山岳会〉発起人。著書に『最高の山ごはん』(パイ・インターナショナル)、『いきもの人生相談室』(山と溪谷社)、野川かさねとの共著に『山と山小屋』(平凡社)など。
料理家・冷水希三子(ひやみず・きみこ)さんがリクエストに応えて料理を作ってくださるという夢の連載。今回はこれからの季節にぴったりの冷たい和(あ)え麺。自家製の干しエビオイルでいただく、ちょっとエスニックな風味です。
―― 冷水先生、こんにちは。ちょっとムシムシするような日も増えて、少しずつ気温も高くなってきましたね。
冷水 はい、夏の気配を感じますね。
―― その前に憂鬱(ゆううつ)な梅雨もありますが、それを越えたら待ちに待った夏到来です!
冷水 暑いような日も増えてきて、お料理にも変化が出てきたのではないですか?
―― はい、冷たいお料理を食べたい日も増えてきました。
冷水 じゃあ今日は、ひんやり系のお料理がいいですかね?
―― はい、湿気が多くてちょっと疲れるな〜という日もあるので、冷たくて、さっぱりと食べられるお料理を欲しています。
冷水 じゃあ、冷たい麺とかがいいですかね?
―― 賛成! ツルツルッと食べられる麺料理はこの時期にいいですね。和え麺なんて、どうでしょうか?
冷水 いいですね! 和え麺は手軽ですし、いろいろアレンジできるので重宝します。どんな感じがいいかなあ?
―― う〜ん、やっぱり暑い時期はエスニック系が食欲をそそりそうです。
冷水 わかりました! じゃあ自家製の干しエビオイルを使った和え麺を作りたいと思います。干しエビオイルは簡単に作れて、麺以外にも色々な料理に応用できるので、覚えておくと助かりますよ。
―― それはありがたいです!
冷水 じゃあ、まずは干しエビオイルと同様、味の決め手になる「かえし」を作っていきたいと思います。
―― 「かえし」......ですか?
冷水 「かえし」は「煮かえし」の略で、蕎麦(そば)つゆに使われるものです。蕎麦つゆの場合は砂糖を入れて少し甘めにするのですが、今日は砂糖を入れずに作ります。
―― エスニックだけど、ちょっと和風な感じなんですか?
冷水 あとで黒酢を入れるので、和風感はそこまでないのですが、今日は素麺(そうめん)を使おうと思っているので、醤油(しょうゆ)が入った方が相性がいいかなと。
―― なるほど、黒酢が入るので中華っぽい感じもありそうですし、なんだか多国籍で面白そうですね!
冷水 かえしは、できたら前日か、もう少し前に作っておいて、冷蔵庫で寝かせておくのがおすすめです。そのほうが醤油のカドが取れてまろやかになりますので。あと濃口醤油を使った方が旨(うま)みが出るので、おすすめです。
―― わかりました!
冷水 かえしの作り方はとても簡単で、濃口醤油、みりん、酒を小鍋に入れて弱火で沸かすだけです。アルコールが飛べばOKですので、粗熱が取れたら密閉できる瓶に入れて冷蔵庫で寝かしておきましょう。
―― そして......いよいよ干しエビオイル作りですね。こちらは当日作るんですか?
冷水 はい、オイルはどうしても酸化してしまうので、食べる直前に作るのがいいでしょう。こちらも簡単で、干しエビと油を小鍋に入れて、弱火でじわじわと揚げていきます。
―― わ〜、エビのいい香り! でもこれ、どのくらいまで揚げたらいいのか、そのタイミングが難しいですね......。
冷水 エビの表面がカリッとしてきて、油の気泡が小さくなってきたらOKです。黒くなると風味が悪くなるので、赤茶色くらい?
―― おお、油の気泡がだんだん小さくなってきましたね。シュワシュワと炭酸飲料みたいな感じです。
冷水 はい、それがサインです! エビの水分が抜けた証拠です。
―― では取り出します!
冷水 ここで大切なのは、揚げた後の油を捨てないこと。これが干しエビオイルですからね。
―― ああ、そうだった! うっかりしてると捨てちゃいそうです(笑)。
冷水 エビが冷めたら粗く刻みます。同時に万能ネギも小口切りにしておきましょう。
―― エビ、刻んじゃうんですか......。
冷水 今回はエビ単体を楽しむというより、麺としっかり絡ませて食べるのが目的なので、刻んだ方が一体感が出るんです。
―― そうか、和え麺は一体感が命ですものね!
冷水 あとは素麺を茹(ゆ)でたら完成です。お好みの素麺で結構ですが、今日の和え麺には細麺が合うと思います。
―― 素麺って、夏場は登場回数が多くて飽きたり、余ったりしがちなので、こうやって味を変えて楽しめるレシピがあるのは、本当に助かります......。
冷水 素麺が茹で上がったら、流水で洗ってしっかり氷水で締めてください。麺がぬるいと、おいしさが半減してしまうのでね。
―― つい氷をケチりたくなりますが(笑)。たっぷりの氷水でキンキンに冷やします!
冷水 では器にまずかえしと黒酢、干しエビオイルを入れて、その上に水気を切った素麺を盛り付けます。ここで水気が残っていると、せっかくのかえしやオイルの味がぼやけてしまうので、しっかりと水を切ってくださいね。
―― はい、ぬかりなく!
冷水 最後に刻んだ干しエビと万能ネギをかけて完成です。よく混ぜて食べてくださいね。
―― わあ、干しエビオイル......! 思った以上にエビの香りと旨みが凝縮していて、これはおいしいですね! 黒酢が入っているおかげで、さっぱりと食べられるのもいいです。
冷水 よかったです。お好みで黒酢やオイルを足して食べてくださいね。
―― 刻んだ干しエビもいい仕事をしています。カリカリとした食感がアクセントになっていて、楽しいですね!
冷水 これからの季節、じめじめとした湿気や暑さで食欲が出ないこともあるかと思いますが、旨みがありつつ、さっぱりと食べられる和え麺ならいいかなと思って。
―― はい、まさにこれからの季節に食べたい和え麺でした!
材料(2人分)
A
B(かえし)
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