「女性宮家の実現」が意味するもの
野田氏は代表選期間中に「女系天皇を認めるかどうかが問われるのは決勝、女性天皇を認めるかどうかが問われるのは準決勝、今は皇族数の確保をめぐる準々決勝」という趣旨の発言をしていた(9月15日)。
このような整理の仕方は、あるいは問題解決を先延ばしする消極的な姿勢と受け取られるかもしれない。
しかし政界の現状は、先に紹介した12をそのまま押し通そうとする自民党とそれに同調する党派も多く、立憲民主党がほとんど孤立無援で懸命に押し戻そうとしている、という残念な構図の中にある。
もちろん、共産党など自民党に同調しない党派は他にもある。だが、それらはもともと天皇・皇室に対して冷淡なので、政府・自民党とのギリギリの綱引きによって粘り強く事態を動かそうとする熱意が感じられない。
このような困難な状況の下で、公然と女性天皇・女系天皇という課題を明示的に取り上げた事実は評価できる。
野田氏としては、決勝までを視野に入れた展望の中で、一歩ずつ勝ち上がろうとしているのではないか。まずは準々決勝で「女性宮家」を実現して、次の女性天皇の可能性につなげることを最優先しているのだろう。
しかし、立憲民主党が「女性天皇」を可能にする皇室典範の改正を鮮明に打ち出せば、幅広い国民の支持を集めることができるのではないか。
改めて言うまでもなく、敬宮殿下は「直系の長子」なので、今後、女性天皇を認めるルールが採用されれば、直系優先の原則(皇室典範第2条)により即位への道が開ける。
1957年、岡山県生まれ。国学院大学文学部卒、同大学院博士課程単位取得。皇位継承儀礼の研究から出発し、日本史全体に関心を持ち現代の問題にも発言。『皇室典範に関する有識者会議』のヒアリングに応じる。拓殖大学客員教授などを歴任。現在、日本文化総合研究所代表。神道宗教学会理事。国学院大学講師。著書に『「女性天皇」の成立』『天皇「生前退位」の真実』『日本の10大天皇』『歴代天皇辞典』など。ホームページ「明快! 高森型録」