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現役世代には「高額薬品は使わず逝ってほしい」が本音なのかヒルズ在住の70代夫婦「年金月30万」でも住民税非課税...通院し放題で自己負担月8000円の裏で現役イジメの冷酷

社会保険料の引上げや高額療養費制度の見直しなど現役世代の負担は重くなる一方だ。少子高齢化で公的医療保険の財政のさらなる悪化は不可避だが、医師の筒井冨美さんは「高齢者の多くは安価なコストで毎日のように病院通いをして、薬をもらっても使いきれずに自宅貯蔵している分は年1兆円にも達する可能性がある」という――。

度重なる社会保険料アップ、疲弊する現役世代

今年2025年に団塊の世代(1947〜49年生まれ)全員が75歳以上の後期高齢者となる一方、2024年の出生数は約72万人と過去最少を更新した。日本の少子高齢化は進行し「払う人」が減少して「受け取る人」が急増することが確定しており、今後の公的医療保険の財政悪化は小学生でも知っている。

【図表1】65歳以上人口割合の推移

これを受け、厚生労働省は2024年10月に国民健康保険の保険料上限の引き上げを決定した。同年12月には高額療養費制度を見直して、2025年8月と2027年に医療費自己負担の上限額を段階的に引き上げる方針を決定した。

なぜ、一省庁がこんな重要な施策をきちんとした議論なく勝手に決められるのか。

現役世代にとって健康保険料は税金的な色彩が強いが、仕組み上は「税金」ではなく「保険」である。そのため、国会審議が必要な消費増税などと比べて、厚労省の一存で簡単に負担増が可能である。

こうした国民負担を"自在"に上げられる構造自体に首を傾げる人は多い。実際、度重なる「社会保険料の値上げ」「受けられるサービスの切り下げ」に疲弊し、怒りをあらわにする現役世代も増加の一途である。先日、「財務省解体」と叫ぶデモが話題になったが、その矛先が「厚労省」に向かっても何も不思議ではない。

現役世代の怒りに油を注いだ国会答弁

そうした不満を募らせる国民にさらなる巨大な燃料を投下したのは、石破茂首相である。2025年2月21日の衆院予算委員会で首相はこう答弁した。

「『キムリア』という(抗がん剤の)薬があって、1回で3000万円ですよね。有名な『オプジーボ』が年間に1000万でございますが、一月で1000万以上の医療費がかかるケースが10年間で7倍になっているということは、これは保険の財政から考えて、これ何とかしないと制度そのものが持ちません」

高額薬品を名指しすることで保険料アップに理解を求めたのだろうが、社会保険料負担増を強いられる現役世代はSNSで猛反発し、炎上した。怒っているのは現役世代だけではない。医療関係者のSNSを見ると反対意見がほとんどである。

「医療費膨張の本丸は高齢者医療、それに比べれば抗がん剤など微々たるもの」
「高齢者医療の支出を減らさないまま、現役世代の負担だけ増やしても焼け石に水」

そんな声があふれている。これが医療や介護の現場を預かる者の「実感」なのだろう。

福岡資麿厚労相も同日の衆院予算委員会で、まるで朗報だと言わんばかりに、自己負担額の上限引き上げによる受診控えで約1950億円の医療費が削減できるとの試算を示したが、これまたSNSで炎上した。

「がんや難病、慢性疾患で治療している人の受診控え」ということは、すなわち国は「高額薬品は使わず逝ってほしい」とも解釈できる内容だからだ。厚労省トップの国会での発言であり、多くの患者団体や医学会が抗議をしたのはうなずける。

掲載: PRESIDENT WOMAN Online

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