安定的な皇位継承への取り組みはさらに先延ばしに
皇室の将来を左右する「立法府の総意」の取りまとめに向けた国会を構成する全政党・会派による協議が再開された。
本来なら安定的な皇位継承を可能にするために、古いルールを抜本的に見直さなければならないはずだった。現在の皇室典範では、一夫一婦制で少子化が進んでいるのに、皇位継承資格を「男系男子」に限定する明治以来の"縛り"を、うっかりそのまま維持している。
しかし、代々必ず嫡出の男子に恵まれることは、もちろん期待しにくい。そうであれば、このようなミスマッチな構造的欠陥を抱えるルールを維持するかぎり、皇位継承の安定化は望めない。
天皇皇后両陛下にお子さまがおられて、誰よりも両陛下のお気持ちを受け継いでおられることが明らかなのに、その方が"女性なら"皇位継承のラインから"除外される"、というルールは、もはや時代錯誤と言うしかないだろう。
にもかかわらず、政府・与党はそこに手をつけるつもりはない。安定的な皇位継承への取り組みを、この期に及んでさらに先延ばしして、とりあえず皇族数の減少に目先だけの歯止めをかける方策が検討されている。
それも深刻な問題点を抱えたプランばかり。なので、昨年やっとスタートした協議は、たちまち暗礁に乗り上げてしまった。それなのに性懲りもなく、今回も同じ案をもとに議論を進めようとしている。
旧宮家プランをめぐる"都市伝説"
協議での検討対象とされている2つのプランのうち、1つは一般国民の中からいわゆる旧宮家系子孫の男性だけを特別扱いして、他の国民には禁止されている皇族との養子縁組を可能にする。それによって結婚を介することなく、例外的・特権的に皇族の身分を取得できるようにするという、長い皇室の歴史でもまったく前例がない新奇な制度だ。
これについては、「国民平等」の原則に反し、家柄・血筋=門地による差別に当たり、憲法(第14条)違反の疑いが指摘されている。また養子になろうとする国民も、その養子を受け入れて養親になっていただける皇族も、果たして実在するのかどうか、疑問視する声が強い。
ところが、驚いたことに政界の一部では、この旧宮家プランこそが皇室の望んでおられる制度ではないか、という"都市伝説"がまことしやかに語られているらしい。その根拠は何か。
旧宮家プランを推し進めようとしているように見える自民党最高顧問の麻生太郎・元首相が三笠宮家の信子妃殿下の兄に当たる、というそれだけのこと。しかし、そんなことが根拠になるとは考えにくい。