コンテンツにスキップ
Wikipedia

交響曲A (ハイドン)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

交響曲「A」変ロ長調 Hob.I:107は、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが作曲した交響曲。ホーボーケン番号に従って「交響曲第107番」とも呼ばれる。

自筆楽譜は残っていないので正確な作曲年は不明だが、初期の交響曲のひとつである。フュルンベルク・コレクションにハイドン本人によって強弱の指定が加筆された信頼性の高い筆写譜が残っており、このコレクションに含まれる交響曲はすべてハイドンがエステルハージ家に仕える前に作曲されたと考えられることから、ハイドンがボヘミアのモルツィン伯爵に仕えていた時期(1757-1760年ごろ)の作と考えられる[1]

もともと交響曲として作られたものだが、管楽器を除いた版が1764年にシュヴァルディエル(Louis-Balthazar de La Chevardière)によって出版された6曲からなる弦楽四重奏曲集のひとつ(作品1の5、Hob.III:5)として含められ、19世紀はじめにパリプレイエルによって編纂されたハイドン弦楽四重奏曲全集や、ハイドン作品目録(HV)でもこの分類が引きつがれたため、ながらく弦楽四重奏曲と考えられていた[2] 。1950年代にランドンによって実際は交響曲であることが明らかにされた[3]

初期の交響曲に多い、メヌエットを欠く急-緩-急の3楽章形式を取る。ただし、他の初期の交響曲が38拍子で終わるのに対し、本曲の最終楽章は68拍子になっているところがやや異例である[3]

楽器編成

[編集 ]

構成

[編集 ]

第1楽章 Allegro

[編集 ]

34拍子、ソナタ形式。第1主題は分散和音からはじまり、弦楽器のトレモロでヘ長調に転ずる。展開部は第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンのかけあいで始まる。

第2楽章 Andante

[編集 ]

変ホ長調24拍子、ソナタ形式。初期ハイドンの交響曲の通例に従って弦楽器のみで演奏され、第1ヴァイオリンによって極端な跳躍音程の多い旋律が演奏される(「sempre piano」と指定されている)。

第3楽章 Allegro molto

[編集 ]

68拍子、ソナタ形式。ごく単純な楽曲であり、再現部もほぼ提示部をなぞって進行する。最後に短いコーダが附属する。

脚注

[編集 ]
  1. ^ 音楽之友社ミニスコア、ランドンによる「全体への序」
  2. ^ 大宮(1981) p.45,198
  3. ^ a b デッカ・レコードのホグウッドによるハイドン交響曲全集第1巻、ウェブスターによる解説。1993年

参考文献

[編集 ]
  • 大宮真琴『新版 ハイドン』音楽之友社〈大作曲家 人と作品〉、1981年。ISBN 4276220025 
  • 『ハイドン 交響曲集I(1-12番, "A", "B") OGT 1589』音楽之友社、1981年。 (ミニスコア、ランドンによる序文の原文は1965年のもの)

外部リンク

[編集 ]

A - B - 第1番 - 第2番 - 第3番 - 第4番 - 第5番 - 第6番『朝』 - 第7番『昼』 - 第8番『夕』 - 第9番 - 第10番 - 第11番 - 第12番 - 第13番 - 第14番 - 第15番 - 第16番 - 第17番 - 第18番 - 第19番- 第20番 - 第21番 - 第22番『哲学者』 - 第23番 - 第24番 - 第25番 - 第26番『ラメンタチオーネ』 - 第27番 - 第28番 - 第29番 - 第30番『アレルヤ』 - 第31番『ホルン信号』 - 第32番 - 第33番 - 第34番 - 第35番 - 第36番 - 第37番 - 第38番『こだま』 - 第39番 - 第40番 - 第41番 - 第42番 - 第43番『マーキュリー』 - 第44番『悲しみ』 - 第45番『告別』 - 第46番 - 第47番『パリンドローム』 - 第48番『マリア・テレジア』 - 第49番『受難』 - 第50番 - 第51番 - 第52番 - 第53番『帝国』 - 第54番 - 第55番『校長先生』 - 第56番- 第57番 - 第58番 - 第59番『火事』 - 第60番『うかつ者』 - 第61番 - 第62番 - 第63番『ラ・ロクスラーヌ』 - 第64番『時の移ろい』 - 第65番 - 第66番 - 第67番 - 第68番 - 第69番『ラウドン将軍』 - 第70番 - 第71番 - 第72番 - 第73番『狩』 - 第74番 - 第75番

イギリス交響曲
パリ交響曲
トスト交響曲
ドーニ交響曲
ロンドン交響曲

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /