コンテンツにスキップ
Wikipedia

ムクロジ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ムクロジ
ムクロジの木
ムクロジの木
分類 (APG IV)
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : バラ上群 superrosids
階級なし : バラ類 rosids
階級なし : アオイ群 Malvidae / rosid II
: ムクロジ S. mukorossi
学名
Sapindus mukorossi Gaertn. (1788)[1]
シノニム
和名
ムクロジ
英名
Indian soapberry

ムクロジ(無患子[4] 学名: Sapindus mukorossi )はムクロジ科 ムクロジ属落葉高木

東アジアから東南アジア・インドの温帯域に分布し、日本では寺社に植栽された巨木も見られる。10枚前後の偶数の小葉を持つ大型の羽状複葉で、秋は黄色に紅葉する。果実は石鹸代わりになり、soapberryとも呼ばれる。種子は羽根つきの羽根の玉に使われる。

名称

[編集 ]

和名「ムクロジ」の由来は、実や種子に薬効があることから、中国名(漢名)で「無患子」といい、それを日本語で「ムクロシ」の読みを当てて、それが転訛したとされる[5] 。別名、ムク[1] 、シマムクロジ[1] 、ムニンムクロジ[1] 、セッケンノキ[5] ともよばれる。

学名

[編集 ]

ムクロジは1788年ドイツヨーゼフ・ゲルトナーの『植物の果実と種子について』(De Fructibus et Seminibus Plantarum ) で Sapindus mukorossi という学名が与えられた[6] が、種小名 mukorossi日本語の俗称、つまりまさに「ムクロジ」の名に基づいたものであると考えられる[7] 。その後ポルトガルジョアン・デ・ルーレイロが1790年に『コーチシナ植物誌』(Flora Cochinchinensis ) で記載した Sapindus abruptus[8] イギリスウィリアム・ロクスバラベンガル地方で見つけ報告した Sapindus detergens[9] [10] ヒマラヤ地域やネパールシレットに見られた Sapindus acuminatus[11] 1935年日本津山(たかし) (スペイン語版)小笠原諸島 母島の旧北村付近で採取された標本を基に『植物学雑誌』上で記載した Sapindus boninensis[12] は、後にいずれも S. mukorossiシノニムとして扱われるようになった[13]

分布

[編集 ]

インドから東アジア温帯およびインドシナにかけて分布し、具体的にはネパール、インド(旧ジャンムー・カシミール州ヒマーチャル・プラデーシュ州ウッタラーカンド州アッサム州を含む)、ミャンマータイラオスベトナム中華人民共和国(海南省、南中央部、南東部)、台湾朝鮮日本(南西諸島小笠原諸島火山列島を含む)に自生し、パキスタンジョージアにも持ち込まれている[13]

日本では新潟県茨城県以西の本州四国九州で見られる[4] [14] 。低地[15] 、あるいは山地に自生する[16] 。日本では、庭木にも植えられ[17] 、しばしば寺や神社に植えられている[4]

性質

[編集 ]

落葉広葉樹高木で、樹高は7 - 15メートル (m) ほどになり[18] 、中には20 mを超える巨木になる[4] 。樹形は逆円錐形になる[4] 雌雄同株 [17] 。樹皮は黄褐色で平滑、老木になると裂けて大きく剥がれる[4] [19] 。一年枝は、太くて無毛、皮目が目立つ[19]

互生し、40 - 70センチメートル (cm) の偶数羽状複葉で、小葉は8 - 16枚つき、先端の小葉はない[4] [5] 。小葉は長さ7 - 15 cm、広披針形で全縁[17] 。葉軸に対して小葉は完全な対生ではなく、多少ずれてつく[17] 。晩秋になると葉は黄葉する[20] 。鮮やかな黄色から、次第に色濃くなって、葉が散るころには縮れながら褐色が強くなる[5] 。枯れ葉も黄色を帯びた明るい褐色で、目立つ[15] ムクロジ目の樹木は紅葉が鮮やかなものが多い[15]

花期は6月ごろで[4] 、花は淡緑色で、枝先に30 cm程度の大きな円錐花序となって多数咲く[16] 。花は直径4 - 5 mm[17] 、雄花には8-10個の長い雄蕊、雌花には短い雄蕊と雌蕊がある。花穂はほとんどが雄花である。

果期は10 - 11月ごろで、果実は直径2 cmの球形で[17] 、液果様で黄褐色に熟して[16] 、落葉後でも1月ごろまで残っている[19] [5] 。果実のなかに黒くて大きな球状の種子を1個含む[17]

冬に落葉すると、葉痕の面は蝋質感があり、中央がやや色づいていて[19] 維管束痕が3個あることから、笑った顔や猿の顔のようにも見える[20] 。冬芽は葉痕に比べるとかなり小さい円錐形で、副芽を下に付ける[19] 。仮頂芽は側芽より小さく、芽鱗は4枚つく[19]

利用

[編集 ]

果皮サポニンを含み、サポニンには水に溶かすと泡立つ成分があり、サイカチ同様石鹸代わりに用いられる[16] [4] 。種子はかたく、数珠羽根突きの羽根の元にある黒い玉の材料にされる[4] [14]

ムクロジの黒い果実の皮を、漢方薬では延命皮と称している[4] 。女性用避妊具として利用された。

脚注

[編集 ]
  1. ^ a b c d 米倉浩司・梶田忠 (2003-). "Sapindus mukorossi Gaertn. ムクロジ(標準)". BG Plants 和名−学名インデックス(YList) . 2023年3月25日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). "Sapindus saponaria auct. non L. ムクロジ(シノニム)". BG Plants 和名−学名インデックス(YList) . 2023年3月25日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). "Sapindus boninensis Tuyama ムクロジ(シノニム)". BG Plants 和名−学名インデックス(YList) . 2023年3月25日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k 田中潔 2011, p. 62.
  5. ^ a b c d e 亀田龍吉 2014, p. 119.
  6. ^ Gærtner, Josephvs (1788). De Fructibus et Seminibus Plantarum. [Stuttgart]: Typis Academiæ Carolinæ. p. 342. https://biodiversitylibrary.org/page/37174324  
  7. ^ "Sapindus mukorossi Gaertn. in GRIN". 2021年8月3日閲覧。
  8. ^ Loureiro, Joannis de (1790). Flora Cochinchinensis. [Lisbon]. p. 238. https://biodiversitylibrary.org/page/48860177  
  9. ^ Roxburgh, W. (1814). Hortus Bengalensis, or a Catalogue of the Plants Growing in the Hounourable East India Company's Botanical Garden at Calcutta. Serampore. p. 29. https://biodiversitylibrary.org/page/46014389  
  10. ^ Flora Indica; or, descriptions of Indian Plants. by the late William Roxburgh. 2. Serampore. (1832). p. 280. https://biodiversitylibrary.org/page/788051  
  11. ^ Royle, J. Forbes (1839). Illustrations of the botany and other branches of the natural history of the Himalayan Mountains, and of the flora of Cashmere. London: Wm. H. Allen and Co.. p. 139. https://biodiversitylibrary.org/page/2912680  
  12. ^ Tuyama, Takasi (1935). "Plantae Boninenses Novae vel Criticae II". The Botanical Magazine [植物学雑誌] 49 (583): 449. doi:10.15281/jplantres1887.49.445. 
  13. ^ a b POWO (2019). Plants of the World Online. Facilitated by the Royal Botanic Gardens, Kew. Published on the Internet; http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:784657-1 Retrieved 3 August 2021.
  14. ^ a b "ムクロジ". 筑波実験植物園. 2016年6月15日閲覧。
  15. ^ a b c 林将之 2008b, p. 58.
  16. ^ a b c d 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 254.
  17. ^ a b c d e f g 西田尚道監修 学習研究社編 2000, p. 220.
  18. ^ 林将之 2008a, p. 171.
  19. ^ a b c d e f 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 104.
  20. ^ a b 林将之 2011, p. 157.

参考文献

[編集 ]

外部リンク

[編集 ]
ウィキメディア・コモンズには、ムクロジ に関連するカテゴリがあります。
ウィキスピーシーズにムクロジ に関する情報があります。

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /