高尿酸血症について知ろう
高尿酸血症とは
尿酸とは、「プリン体」という物質が体内で分解されて生じる物質です。プリン体は運動したり臓器を動かしたりするためのエネルギー源となるアデノシン三リン酸(ATP)を構成しており、常に体内で作られています。また、我々の細胞内には遺伝情報を伝えるDNAやRNAといった核酸という物質がありますが、プリン体はこの核酸の構成成分の一つでもあります。ですので、古くなった細胞を分解する過程で核酸からプリン体が作られています。このように生体内における新陳代謝の過程で作られるプリン体のほかに、食品から体内へ入るプリン体もあり、DNA、核酸を多く含む食品にはプリン体も多く含まれており、種、豆類、ナッツ類や魚類の卵(卵巣)、精巣(白子)のほか魚の干物などに多く含まれています。これらのプリン体は主に肝臓で分解され尿酸となり、主に腎臓から尿の中へ(一部は腸管から便へ)排泄されます。
高尿酸血症とは、血液中の尿酸値が通常よりも高い状態のことをいいます。血清尿酸値 7.0 mg/dLを超えるものと定義されています※(注記)1。尿酸が過剰になると、体内で結晶を作り足の親指の付け根に激烈な痛み・発赤を伴う痛風関節炎や腎臓・尿管結石の原因となることがあります。食習慣の欧米化に伴い、わが国の高尿酸血症患者数は年々増加しています※(注記)1。
参考文献等
1 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版 日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改定委員会編
高尿酸血症はどうしてなるのか? 症状は? 合併症は?
高尿酸血症の原因は大きく分けて2つあります。「尿酸の産生過剰」と「腎臓からの排泄低下」です。両者が混在していることも多くみられます。
- 尿酸の産生過剰 :
- プリン体を多く含む食品の過剰摂取は尿酸の産生過剰につながり、高尿酸血症の原因となります。ビールにはプリン体が多く含まれることがよく知られていますが、アルコール自体も尿酸を増加させる作用があります。
- 腎臓からの排泄低下 :
- 尿酸は主に腎臓から尿中に排泄されるため、腎臓の機能が低下すると血清尿酸値は高くなる傾向があります。また利尿薬を内服していると尿酸の排泄が低下し、尿酸値が上昇しやすくなります。
痛風関節炎や尿路結石などを起こせば、激烈な症状が出ますが、高尿酸血症自体には全く自覚症状はありません。しかし、近年、痛風関節炎などを起こさない程度の軽度の尿酸値上昇であっても、慢性腎臓病や心血管疾患といった病気の発症との関連性を示唆する研究結果が次々報告されています※(注記)2,3。このため、高尿酸血症の早期発見や高尿酸血症にならないようにすることで、様々な病気の予防につながる可能性があります。特に症状がなくても、定期的に健康診断などで血清尿酸値を確認することがとても重要です。
参考文献等
2 Krishnan E, et al. Hypertension 2007; 49: 298-303.
3 Li L, et al. BMC Nephrol 2014; 15; 122.
高尿酸血症の予防法や治療法等
近年、肥満・メタボリック症候群や糖質、特に果糖(フルクトース)の過剰摂取が高尿酸血症の大きな原因となっていることが注目されています。特に内臓脂肪型肥満では尿酸の産生過剰に加え、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌過剰により腎臓からの尿酸排泄が低下することが知られています。また、清涼飲料水などに多く含まれる果糖(フルクトース)も肥満の原因となるだけでなく、直接尿酸の産生を過剰にさせる可能性が示唆されています。このように高尿酸血症の発症にはプリン体や糖質の過剰摂取、アルコールに加え、運動不足や肥満といった生活習慣が大きく関連しています。
県民健康調査の結果からも、震災後の避難が、特に男性の高尿酸血症と関連していたことが示されています※(注記)4。実際、アルコール多飲やBMI高値も高尿酸血症と関連しており、避難に伴う食生活や生活環境の変化が関連していた可能性があります。
痛風関節炎を起こすととても痛いですが、自覚症状がなくても高尿酸血症は痛風以外にも様々な病気の発症や進行に関連している可能性があります。慢性腎臓病や心血管疾患といった病気は一度発症・進行してしまうと、もとに戻すのは非常に難しく、発症を予防することがとても大事です。痛風を起こしたことがある人はもちろん、痛風を起こしたことがない人でもプリン体や糖質の摂りすぎに気をつけ、適度な運動、肥満の是正、節酒などの生活習慣改善を心がけ高尿酸血症を予防することが重要です。次回の定期健診ではぜひ尿酸値を確認してみてください。
参考文献等
4 Honda K, et al. Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2021; 31:1177-88.
2023年9月20日
田中 健一
福島県立医科大学 腎臓高血圧内科学講座 准教授
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