子どもの肥満について詳しく知ろう
子どもの肥満は増えているの?
子どもの肥満のほとんどは、単純性肥満(原発性肥満)といって摂取エネルギーが消費エネルギーを上回っているために生じるものです※(注記)1。食事やおやつ、ジュース類などの過剰摂取、バランスの悪い食事、長時間座ったままのゲームやテレビの視聴などによる運動不足のほか、睡眠不足や朝食を抜くことも肥満を悪化させる要因となります※(注記)2。
わが国では、1970年代後半から2000年代前半にかけて、食生活やライフスタイルの変化などによって、男女とも子どもの肥満の割合が大きく増加しました※(注記)1,3。2006年以降は減少傾向にありましたが、2016年から再び増加傾向に転じ、2020年では11歳男児の13.31%、女児の9.36%が肥満度 20%以上の肥満傾向児(注1)となっています(図1)※(注記)3。
また、県民健康調査「小児健康診査」によれば、震災後、小児健診受診者の3〜4%がBMI 2SD以上(注2)の肥満を呈していたことが示されています※(注記)4。
図1:全国の肥満傾向児の推移と肥満が増加する背景
※(注記)2006年度から肥満傾向児の算出方法を変更(注1)しているため、2005年度までの数値と単純な比較はできません。
注1:2005年度まで、性別・年齢別に身長別平均体重を求め、その平均体重の120%以上の体重の者を肥満傾向児としていましたが、2006年度から、性別、年齢別、身長別標準体重から肥満度(過体重度)を算出し、肥満度が20%以上の者を肥満傾向児としています。肥満度の求め方は次のとおりです。
肥満度(過体重度)=〔実測体重(kg)-身長別標準体重(kg)〕/身長別標準体重(kg)×ばつ100(%)
注2:BMI(体重(kg)/身長(m)2)≧ SD(年齢別に算出された標準偏差)×ばつ 2
子どもの肥満はなぜいけないの?
幼児期の肥満者の25%、学童前期の肥満者の40%が将来成人肥満に移行すると言われ、思春期の肥満者は、体格が形成されてしまうことや生活習慣が身についてしまうことなどから、実にその70%〜80%が成人肥満になります(図2)。成人肥満は、高血圧症や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病につながります。また、これらは動脈硬化を促進するため、将来的に心筋梗塞や脳卒中となる危険性が高まります(図2)。生活習慣病は、大人だけでなく子どもでも発症し、子どもの頃から動脈硬化が進行することがあります。また、脂肪肝や睡眠時無呼吸をおこすこともあります※(注記)1。
そのため、子どもの肥満も早期に治療することが重要です。また、肥満にならないよう幼少期から予防に取り組むことも大切です。
図2:子どもの肥満は大人の肥満や生活習慣病等につながる
肥満につながる生活習慣は?
食事、運動、睡眠など様々な生活習慣が形成され身についてくるのが幼児期です。この時期に肥満にならない生活習慣を身につけることが重要です。肥満形成につながる生活習慣としては、食事や菓子類、ジュース類を過剰に摂取する、朝食を食べない日がある、油を使った料理をよく食べる、外遊びが少ない、1日2時間以上テレビやゲームに費やす、睡眠時間が短いなどが挙げられます(図3)※(注記)1。
図3:肥満につながる食習慣、運動不足、ゲーム依存
子どもの肥満を予防するには?
幼児期に、早寝・早起き・朝ごはんの規則正しい生活リズムを身につけるようにしましょう。幼児期は、1日3回の食事と1回の間食を基本とします。食事では、大皿盛りにせず、一汁二菜(主食、汁物、主菜、副菜)を組み合わせて個別に盛り付け、主菜は肉類に偏ることなく、卵類、魚介類などもまんべんなく用意します。また、野菜や海藻を使ったよく噛んで食べるメニューを増やし、好き嫌いなく食べられるようにします。できるだけカロリーや塩分の多い加工品や外食、甘い飲み物は減らしましょう※(注記)1。
身体活動量を増やすことは、食生活の改善とともに、子どもの健康の維持増進、肥満やメタボリックシンドローム、生活習慣病の発症予防に有益です。ゲームやスマホ、テレビを利用する時間を減らし、その時間で体を動かしましょう。外で遊んだり、体操やストレッチをしたり、またお風呂掃除などの体を動かすお手伝いも運動になります。1日合計60分以上の運動がお勧めです(図4)※(注記)1。
図4:肥満を予防する適度な運動
参考文献等
1 日本小児科学会ホームページ 「幼児肥満ガイド2019」
2 小児内分泌学会ホームページ 「病気の解説 肥満」
3 文部科学省 学校保健統計(学校保健統計調査報告書)
4 Kawasaki Y, et al. Pediatr Int 2020
2023年4月19日
細矢 光亮
福島県立医科大学 放射線医学県民健康管理センター 健康診査・健康増進室 副室長
小児科学講座 主任教授
まとめ <生活習慣病の予防には幼児期の生活習慣が大切です>
小児の肥満は、肥満の発症時期により乳児期肥満、幼児期肥満、学童期肥満、思春期肥満に区分して考えます。乳児期肥満の多くは幼児期には自然に解消していく生理的な肥満であり、将来の肥満との関連は少ないですが、幼児期肥満は学童期肥満、思春期肥満と関連し、さらにその後の成人肥満〜生活習慣病へとつながっていきます。したがって、幼児期に肥満にならないことが大切です。
幼児期は食事、運動、睡眠など様々な生活習慣が形成され身につく時期であり、2歳以降、その生活習慣の獲得は始まっています。ですから、幼児期に健康的な生活習慣を身につけることが、その後の肥満予防においてとても重要です。
子どもの生活習慣の調査から、朝食を食べないことは、肥満につながるとされる生活習慣(就寝時間が遅い、睡眠時間が短い、夜食頻度が多い、テレビ視聴時間が長いなど)と関連することが報告されています。また室内での一人遊びが多い、時間を決めずにおやつを食べる、ジュースの摂取が多いなどが思春期の肥満に関連していたとも報告されています。
生活習慣病を予防するため、幼児期に以下の生活習慣を身につけましょう。
- 早寝・早起き・朝ごはんの規則正しい生活リズムを身につける。
- 1日3回の食事と1回の間食(おやつ)を基本とし、カロリーや塩分の多い加工品や外食、甘い飲み物は減らす。
- ゲームやスマホ、テレビを利用する時間を減らし、その時間で体を動かす。
参考文献等
- 日本小児科学会ホームページ 「幼児肥満ガイド2019」
2024年8月13日
細矢 光亮
福島県立医科大学 周産期・小児地域医療支援講座 教授
お問い合わせ
福島県立医科大学 放射線医学県民健康管理センター
〒960-1295 福島県福島市光が丘1番地
- ※(注記)おかけ間違えのないようにご注意ください。
- ※(注記)メールでのお問い合わせは、お返事を差し上げるまでに数日いただく場合がございます。
- ※(注記)医師、医師が所属する講座への直接のお問い合わせはご遠慮ください。