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サーベイランスの結果

2017年9月

サーベイランスの結果

日本の薬剤耐性菌サーベイランスとして、厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)検査部門詳細があります。院内感染対策を目的としたサーベイランスのひとつです。2015年の集計対象医療機関数は国内の医療機関の16.9%(1,435 / 8,493 医療機関)を占めており、なかでも200床以上では45%、500床以上では77%と規模の大きな医療機関をよくカバーしています[1]。

このサーベイランスでは、特定の薬剤耐性菌が分離された患者数を検体提出した全患者数で割った薬剤耐性菌分離率を報告しています。対象は以下のようになっています。

分離対象となる薬剤耐性菌
グラム陽性菌
  • メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
  • バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)
  • バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)
  • ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)
グラム陰性菌
  • 多剤耐性アシネトバクター属(MDRA)
  • 多剤耐性緑膿菌(MDRP)
  • カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)
  • カルバペネム耐性緑膿菌
  • 第三世代セファロスポリン耐性肺炎桿菌
  • 第三世代セファロスポリン耐性大腸菌
  • フルオロキノロン耐性大腸菌

これを用いることで、全国の薬剤耐性菌分離率をベンチマークとして、自施設の薬剤耐性菌分離の状況と比較し病院内の感染対策に役立てることができます。例えば、自施設でMRSA分離率が全国に比して大幅に高い場合には、院内での薬剤耐性菌の水平伝播予防が十分にできているかを再確認する必要が出てきます。

また、主要な細菌の抗菌薬感受性についても報告されています。これは全国のアンチバイオグラム(主要菌の抗菌薬感受性一覧)として活用することができます。病院を対象に集計していますので、自施設で検出される細菌の感受性が全国の病院の中でどのような位置にあるのか参考にすることが可能です。

全国の傾向を見ると、MRSA、PRSP、MDRP、カルバペネム耐性緑膿菌の薬剤耐性菌分離率は緩やかな減少傾向にあります。一方で、第三世代セファロスポリン耐性肺炎桿菌、第三世代セファロスポリン耐性大腸菌、フルオロキノロン耐性大腸菌など腸内細菌科細菌の薬剤耐性は増加傾向にあります。

2015年度からは都道府県別の報告も始まりました。薬剤耐性菌分離率、主要菌の抗菌薬感受性のいずれも、より地域に則したベンチマークが提供されています。

薬剤耐性菌を広げない、作り出さないために、様々な角度からの対策が求められています。薬剤耐性菌のサーベイランスはその基礎になる重要なデータです。

関連文献

  1. 院内感染対策サーベイランス 検査部門 2015 年 1 月〜12 月 年報(全集計対象医療機関)【CLSI 2012 版】(2017年7月31日閲覧)

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