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2020年5月
ワンヘルスアプローチ

薬剤耐性(AMR)とワンヘルス

ワンヘルス(一つの健康)という言葉があります。これはヒトの健康を守るため動物や環境にも目を配って取り組もうという考え方です。人も動物も環境も同じように健康であることが大切だというわけです。公害や気候温暖化を思い起こせばわかりやすいですね。しかし、薬剤耐性(AMR)対策とワンヘルスには一体どのような関係があるのでしょうか。

薬剤耐性(AMR)とワンヘルス

動物と薬剤耐性

抗菌薬は人間だけではなく畜産業、水産業、農業など幅広い分野で用いられています。なかでもよく使われているのは畜産業です。畜産ではおきてしまった感染症を抗菌薬で治すだけではなく、発育促進を目的に飼料に混ぜて使われることがあります。国別にみると畜産業が盛んな中国、米国、ブラジルで抗菌薬の使われる量が多いですが、日本など他の国々でも多くの抗菌薬が使われています。ヒトに使うよりも動物に使う抗菌薬の方が多い国もたくさんあります。

動物に抗菌薬を使うと、皮膚や消化管にいる細菌が薬剤耐性菌に置き換わってしまいます。そのような菌が畜産業で働くヒトに直接うつってしまったり、食肉を通じて消費者に広がってしまったりすることがあります。また、動物に投与された抗菌薬の成分が食肉に残ることがあります。そのため出荷前には一定期間抗菌薬投与を禁止するなどの方法がとられています。食肉から抗菌薬成分が検出されることよりも細菌が検出されることの方がずっと多く、動物に抗菌薬の成分そのものが残るよりも、薬剤耐性菌が食肉と一緒に広がる方が現実的な問題です。

このように、動物に抗菌薬を投与すると巡り巡ってヒトの健康に影響を及ぼしかねません。そこで、さまざまな国が畜産で使う抗菌薬を制限するなどの対策を行うようになっています

環境の汚染

薬剤耐性菌や抗菌薬によって環境が汚染されることがあります。家畜の排泄物に薬剤耐性菌が含まれていると、耐性菌が水を汚染したり農産物を汚染したりすることがあります。調理が不十分だと食卓にのぼってしまう可能性があるというわけです。

川の水を調べると薬剤耐性菌が検出されることがあります。抗菌薬の成分を検出することもあります。その濃度はかなり低いものではありますが、環境への薬剤耐性菌や抗菌薬の広がりがおきているのです。 東南アジア、南アジア諸国への旅行者の便を調べてみると、現地で多剤耐性菌を保菌して帰国していたとの報告が複数あります。このことからも多剤耐性菌が環境を汚染している可能性が示唆されます。

ヒト以外の分野はまだ研究が十分には進んでおらず、幅広い取り組みを通じた対策が求められます。このようにAMR対策はまさにワンヘルスの考え方で取り組む必要があるのです

薬剤耐性AMRワンヘルス動向調査2017年度レポート

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