爪先で裏返し見る梅雨茸
金國久子
青葉潮
199907
一本を盾とし群るる梅雨きのこ
鷹羽狩行
狩
199907
梅雨茸や晒らす想ひを遠退ける
鈴鹿仁
京鹿子
199908
梅雨茸を鴉も嫌ふ夢合せ
鈴鹿仁
京鹿子
199908
梅雨茸のきのふの色を忘れけり
山尾玉藻
火星
199909
嵐亭の梅雨茸として月恋へり
山尾玉藻
火星
199909
そんな気はこれつぽつちも梅雨茸
田畑幸子
火星
199909
梅雨茸や鞍馬の奥の走り根に
中田寿子
ぐろっけ
199910
会者定離などと嘯き梅雨茸
村松彩石
海程
199911
空耳や嵯峨野の奥の梅雨きのこ
山田六甲
六花
200007
梅雨茸の色鮮やかな群れ一つ
内藤八重
俳句通信
200008
野面積みかくれ墓には梅雨茸
品川鈴子
ぐろっけ
200008
梅雨茸や蹴られて消ゆる生をもち
原教正
沖
200009
よく育ちたる梅雨茸は蹴つて置く
萩原記代
朝
200010
梅雨茸を傘に一と突き女どち
中野たけみ
雨月
200108
毒のある色を深めて梅雨茸
棚山波朗
春耕
200108
ふか入りて目玉をこする梅雨きのこ
丸山佳子
京鹿子
200108
梅雨茸話大きくなつてきし
大東由美子
火星
200109
切株に福耳の相梅雨きのこ
丸山佳子
京鹿子
200109
触れをりて煙いでたる梅雨茸
石脇みはる
槐
200110
梅雨茸をわざわざ蹴りて回覧板
岡野峯代
ぐろっけ
200110
梅雨茸の月に太りぬ一休寺
橋添やよひ
風土
200111
梅雨茸の白き一群れたよりなし
長谷川通子
雲の峰
200208
梅雨茸の笠そろへつつ栗林
阿部ひろし
酸漿
200208
林道にけものの匂ひ梅雨菌
高野美佐子
雲の峰
200208
雨やどりして梅雨茸の一家族
関根洋子
風土
200209
木雫や数へて殖ゆる梅雨菌
鈴木恭子
沖
200209
梅雨茸や警報装置作動中
奥田節子
火星
200210
熊野路の古木の根方梅雨茸
藤野澪子
春耕
200210
梅雨きのこ掃いて箒の重くなる
鷹羽狩行
狩
200307
梅雨茸安倍晴明墓の前
黒田咲子
槐
200309
人過ぎしあと腹見せて梅雨茸
今瀬剛一
対岸
200309
整然と倉庫の礎石梅雨茸
鵜狩道子
対岸
200309
おぞましや裏庭に生ふ梅雨きのこ
出口賀律子
雨月
200309
あいまいに応じ梅雨茸踏みにけり
風間史子
鴫
200310
幻の宮址に生えし梅雨菌
谷泰子
ぐろっけ
200311
梅雨茸を踏むや柳生へ道標
小林成子
苑
200402
梅雨茸庭師目こぼしなりにけり
稲畑汀子
ホトトギス
200406
梅雨茸庭の春秋あることを
稲畑汀子
ホトトギス
200406
梅雨茸のころがつてゐる蓮如道
渡辺周子
雲の峰
200407
聖堂の閉ぢられてゐし梅雨茸
飯塚ゑ子
火星
200408
癌にきくそんな噂の梅雨茸
村田薫
狩
200408
存在の脆くはかなき梅雨きのこ
中田寿子
ぐろっけ
200408
梅雨茸青い光を放ちけり
石脇みはる
槐
200409
切株の精根尽きて梅雨茸
竹腰千恵子
濱
200409
梅雨茸や白河の関深閑と
川島澄子
酸漿
200409
この山のいづれが前や梅雨きのこ
丸山佳子
京鹿子
200409
老いぬれば日々これ勝負梅雨きのこ
河西みつる
草の花
200409
梅雨菌踏みて日の濃き通りまで
川野喜代子
京鹿子
200409
泡立つがごとくに殖えて梅雨菌
藤井圀彦
狩
200409
使はねば錆びる鍬なり梅雨茸
園部蕗郷
春燈
200410
梅雨きのこ水牢跡へ径曲る
岡村葉子
栴檀
200410
梅雨茸を蹴散らしたくて勇み行く
金山藤之助
苑
200411
切株にきのふが坐る梅雨茸
伊藤希眸
京鹿子
200411
梅雨茸をややの赤靴蹴り損ず
中野英歩
八千草
200412
名園に踏まず踏まれず梅雨茸
森本美智子
築港
200508
うたた寝のあと一句あり梅雨茸
加藤君子
火星
200510
梅雨茸生えて生やしておきにけり
服部早苗
空
200510
牛小屋の裏にもありし梅雨菌
伊藤紫水
風土
200511
梅雨茸のきりりと黒き傘ひらく
工藤ミネ子
風土
200601
能書は巷にあふれ梅雨きのこ
濱田萬里子
河鹿
200608
鐘を撞き励ますことも梅雨菌
戸栗末廣
火星
200608
杖先を押しかへしたる梅雨茸
山尾玉藻
火星
200609
変形の膝の軟骨梅雨茸
田中藤穂
あを
200609
梅雨茸木の枝拾ひ杖とせり
大西八洲雄
万象
200610
梅雨茸の紅大いなりリフト行く
東芳子
酸漿
200610
惹きつける言葉は要らず梅雨菌
丸井巴水
京鹿子
200610
梅雨菌影なす丈となりにけり
佐藤郭子
朝
200610
梅雨茸あまりに白く手にとらず
市場基巳
槐
200611
精霊や白梅雨茸のなれなれし
水野恒彦
槐
200611
梅雨茸けられてさめるなにもなし
豊田都峰
京鹿子
200708
森暗く凄き白かな梅雨茸
上原重一
峰
200709
足許に梅雨茸傘を開きをり
福澤乙
酸漿
200709
梅雨茸の百會に雨のたまりゐる
佐藤喜孝
あを
200709
梅雨茸の木の瘤笑ふまいとして
大島翠木
槐
200710
走り根に足とられたり梅雨茸
塩田博久
風土
200710
決りたるところと庭の梅雨茸
阿部ひろし
二の杉
200710
梅雨茸の腰なえてゐる笙の笛
根本ひろ子
火星
200710
黒木御所梅雨茸傘を重ね合ふ
武田幸子
濱
200710
梅雨茸や茜の雲の子沢山
梶浦玲良子
六花
200710
奥の院屋根にあまたの梅雨茸
馬越幸子
ぐろっけ
200710
梅雨茸勢揃いして留守居役
岡野峯代
ぐろっけ
200710
屋上のガーデニングの梅雨菌
堀志皋
火星
200710
梅雨茸といひて正体定らず
後藤比奈夫
ホトトギス
200711
梅雨茸の大きく育ち蹴られけり
大山妙子
酸漿
200711
梅雨茸や人の噂は二段跳び
伊東和子
璦
200808
梅雨茸の火いろの傘の朽ちゆける
杉浦典子
火星
200809
茶袋のやうな梅雨茸蹴りにけり
吉田康子
火星
200809
杣小屋に飯炊く匂ひ梅雨茸
吉田康子
火星
200809
梅雨茸や眠れば戒名ついてくる
小形さとる
槐
200809
滝不動梅雨茸あかく灯りをり
佐藤圀夫
馬醉木
200810
梅雨茸にあるかなきかの日の斑かな
大島英昭
やぶれ傘
200811
梅雨茸や古き図鑑に目を通す
萩原渓人
やぶれ傘
200811
先見えてきて梅雨茸の出るはでるは
高橋将夫
槐
200908
梅雨茸や日々の見出しの虚仮威し
赤座典子
あを
200909
切り株に八重なすフリル梅雨きのこ
品川鈴子
ぐろっけ
200909
梅雨茸の並ぶ小さき傘の列
木内美保子
六花
200910
梅雨茸芝生に並ぶ兵馬俑
大内幸子
六花
200910
梅雨茸や衣装ケースの文庫本
花岡花子
炎環
200910
梅雨きのこ帽子の縁がひらひらす
十川たかし
槐
200910
裏鬼門表鬼門や梅雨きのこ
竹中一花
槐
200910
梅雨茸育つ言葉の使ひやう
青山正生
鴫
200911
梅雨茸に真白きもののありにけり
瀬島洒望
やぶれ傘
200912
梅雨茸や踏み石に置く庭草履
有賀昌子
やぶれ傘
200912
訃の庭に梅雨茸茎も傘も白
品川鈴子
ぐろっけ
201008
陣笠の一つ遅れて梅雨きのこ
鷹羽狩行
狩
201008
梅雨茸や城跡辿る道すがら
岩上定子
酸奬
201009
梅雨茸きのふのやうにこはれけり
遠山みち子
鴫
201010
梅雨茸の傘の並べる根方かな
菊池由惠
酸奬
201010
走り根に転びし先の梅雨菌
井上美智子
苑
201010
二日来し庭師目こぼし梅雨茸
稲畑汀子
ホトトギス
201106
梅雨茸蹴つて通りし人の居て
稲畑汀子
ホトトギス
201106
帰りにはあとかたもなし梅雨茸
稲畑汀子
ホトトギス
201106
木の幹の捻り出したる梅雨茸
山田六甲
六花
201107
裏山に梅雨茸の生ゆ乱気流
木山杏理
京鹿子
201109
血液のさらさら梅雨の茸かな
近藤公子
槐
201109
みちのくや朽ち家の床に梅雨茸
藤田かもめ
ぐろっけ
201109
梅雨茸に虫の食み痕ありにけり
田尻勝子
六花
201109
杣小屋は梅雨茸のほか人を見ず
安武晨子
空
201110
自から張裂けてゐし梅雨きのこ
山田六甲
六花
201207
大塚小塚不吉に匂ふ梅雨の茸
坂上香菜
璦
201208
梅雨茸や魔女現はれさうな昼
岩月優美子
槐
201209
切株のどっしりとあり梅雨茸
吉成美代子
あを
201209
梅雨茸の飛んで行きやる百道浜
瀬川公馨
槐
201210
おもいきり蹴り甲斐のある梅雨茸
北村香朗
京鹿子
201210
草取りの腰折りにけり梅雨菌
杉浦典子
火星
201210
蹴り応へ残らぬ脆さ梅雨菌
湯川雅
ホトトギス
201211
梅雨茸役小角の吐息とも
北村淳子
ろんど
201211
咲くやうにひとかたまりの梅雨茸
戸栗末廣
空
201211
踏みすべりたる梅雨茸のしたしき香
丸山佳子
京鹿子
201306
先見えてきて梅雨茸の出るわでるわ
高橋将夫
如意宝珠
201306
梅雨茸を育んでゐる湿りとも
稲畑廣太郎
ホトトギス
201307
梅雨茸を踏まねば行けぬ径かな
稲畑廣太郎
ホトトギス
201307
踏みくだく気はなかりしを梅雨茸
田中藤穂
あを
201308
切株の残るいのちに梅雨茸
松田泰子
末黒野
201310
伐採のすすむ公園梅雨茸
森清信子
末黒野
201310
梅雨茸のぽこぽこ本堂裏にかな
岡淑子
雨月
201310
梅雨きのこ不思議の国の親衛隊
鷺山珀眉
京鹿子
201401
足元に雲のごとくに梅雨茸
大日向幸江
あを
201408
句碑の杜摂社末社の梅雨茸
磯野しをり
雨月
201409
湿り帯ぶ風にへなへな梅雨茸
磯野しをり
雨月
201409
梅雨茸何があつても生地出ぬ
田中貞雄
ろんど
201409
梅雨茸百年先もつゆきのこ
田村園子
鴫
201410
ぽつかりと白色白光梅雨茸
相良牧人
鴫
201410
夢の山はいつも絶景梅雨きのこ
堀内一郎
堀内一郎集
201412
梅雨菌小びとの楽隊やつてくる
寺田すず江
明日葉
201505
椨の木に宿り寝をする梅雨茸
能村研三
沖
201508
梅雨きのこ踏まれて人の顔になる
山田六甲
六花
201508
梅雨茸を払い腰にてイツポン
瀬川公馨
槐
201509
白樺の根方にあまた梅雨きのこ
濱谷和代
万象
201511
梅雨茸や遠州作の庭に燦
高木典子
雨月
201609
梅雨茸の踏まるるまでの白清し
岩井京子
空
201610
梅雨茸や庚申堂の屋根傾ぐ
久留島規子
万象
201610
桟橋の潟波のあと梅雨の茸
川村みよき
万象
201610
あらかたは捨てる選別梅雨茸
荒井和昭
鴫
201610
大川の風に太りし梅雨茸
前田美恵子
槐
201710
枯れさうな柳に大き梅雨茸
赤堀洋子
万象
201710
旅果てる庭の梅雨茸掃き取りて
神田惣介
京鹿子
201711
嫌はれてゐるも生甲斐梅雨茸
丸井巴水
京鹿子
201808
七人の小人がここに梅雨茸
田尻勝子
六花
201809
梅雨茸の傘寄せ合うて両想ひ
谷口一献
六花
201909
名石の間にひそと梅雨茸
小林陽子
沖
201910
酔つぱらひたる色なるや梅雨茸
志方章子
六花
201911
マシュマロのやうな手触り梅雨茸
山本久枝
やぶれ傘
201912
自から張り裂けてゐし梅雨茸
田尻勝子
六花
202009
あつけなく崩れし梅雨の茸かな
平居澪子
六花
202009
梅雨茸の翌日は消ゆるはかなさよ
望月郁江
春燈
202009
群れて生ふ城の死角の梅雨茸
橋添やよひ
風土
202010
梅雨茸くるぶし撫づる風過ぎて
小原芙美子
風土
202010
美しき毒の匂ひを梅雨茸
住田千代子
六花
202109
幹の瘤にによきによき白き梅雨茸
佐藤稲子
やぶれ傘
202110
根戸城址今も私有地梅雨茸
光成敏子
萱
202110
梅雨茸のひとかたまりに友の墓所
小林輝子
風土
202110
梅雨茸や樹齢千年太郎杉
吉原世都子
春燈
202209
梅雨茸や見れば見るほど訝しき
石黒興平
末黒野
202210
2023年6月21日
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