梅雨深し山の見えざる山住ひ
山田弘子
春節
199503
梅雨の灯を寄せて追悼号を編む
山田弘子
春節
199503
梅雨近き晴の家居となることも
稲畑汀子
ホトトギス
199806
少しづつ梅雨の気配の戻る旅
稲畑汀子
ホトトギス
199806
梅雨鯰四ッ手の底の藻の上に
皆川盤水
春耕
199807
鯖鮨や梅雨のなかばの近江路に
皆川盤水
春耕
199808
端切屋の前まで梅雨の蝶と来し
山尾玉藻
火星
199808
五十階けぶり列島とつぷり梅雨
松崎鉄之介
濱
199808
一つ灯りあととめどなく梅雨の町
岡本眸
朝
199808
長梅雨や濁り井に錠おろす音
皆川盤水
春耕
199809
背伸びして声出て梅雨も峠かな
岡本眸
朝
199809
光秀の城も社も梅雨さ中
西田円史
円虹
199809
梅雨の蝶荒壁にひびはしりけり
小島美智子
風土
199809
梅雨の灯に集ふ丹波の光秀忌
西田円史
円虹
199809
梅雨霧のうつろひやすき笠ケ岳
大塚美孝
濱
199809
をとこらの梅雨の菅笠牛角力
島田万紀子
馬醉木
199809
まつくろな父の家あり梅雨の中
冨田正吉
朝
199809
梅雨ひぐらし一節のみに暮れにけり
水原春郎
馬醉木
199809
削らるる丘を見てゐし梅雨の駅
高村洋子
遠嶺
199809
二番芽や梅雨空重き牧の原
塩田博久
風土
199809
素うどんに葱たつぷりと送り梅雨
水原春郎
馬醉木
199809
つながれて目つむりゐたり梅雨の犬
佐々木市郎
朝
199809
ちちと血を重ねて梅雨の寺継がず
竹貫示虹
京鹿子
199809
ハイウェイバス待つ梅雨霧に包囲され
荒井千佐代
沖
199810
千年の杉の下より梅雨あがる
飯塚ゑ子
火星
199810
歩行器を押す音響く梅雨の晴れ
久保木千代子
春耕
199810
梅雨暮るる独り身に振る浄め塩
大柿春野
沖
199810
宵乗祭暁ヶを篠つく梅雨豪雨
松崎鉄之介
濱
199810
梅雨雲も町も浅間に張り付きて
村松紅花
ホトトギス
199810
荒梅雨の古書肆に本の崖をなす
前田千枝子
朝
199810
梅雨の端に仰向いてゐる冑蝦
浜口高子
火星
199810
桑畑に降りつつ梅雨の明けむとす
岡本眸
朝
199811
梅雨あけの梶の葉並べ机かな
竹内悦子
槐
199811
樹医と猫半可臭いこの長梅雨
山田緑光
海程
199812
缶コーヒー乳房のように抱き梅雨
須山つとむ
船団
199812
梅雨半ば心身症のダンボール
小枝恵美子
船団
199812
竜穴を斎く社の梅雨深し
稲岡長
ホトトギス
199812
梅雨の日々おもえばいきいきと万年筆売場
島津亮
海程
199812
たしかに死ねり梅雨雲低く居坐りいて
稲葉直
海程
199812
梅雨湿りして持国大多聞天
前田陶代子
朝
199901
仁清の窯跡とのみ梅雨深し
田井はつゑ
雨月
199901
折紙の裏の白さよ梅雨昼月
村田冨美子
京鹿子
199901
梅雨深し祈りの声のくぐもりて
斉藤由美子
ぐろっけ
199902
魚店の裸電球梅雨渡し
宇根綾子
遠嶺
199902
過去帳を紙魚も見放す梅雨の底
神蔵器
沖
199905
梅雨深しコンピューターの青き文字
山田禮子
遠嶺
199905
エプロンで手を拭いてをり戻り梅雨
小林あつ子
火星
199905
暈といふ美しきもの梅雨の月
鷹羽狩行
狩
199906
梅雨といふことも旅路の計画に
稲畑汀子
ホトトギス
199906
梅雨の傘乾く家居とならざりし
稲畑汀子
ホトトギス
199906
飛びやうも紋もおどけて梅雨の蝶
山仲英子
狩
199906
梅雨に咲く傷みし花も活けらるる
稲畑汀子
ホトトギス
199906
梅雨宿に辿りつきたる思ひあり
稲畑汀子
ホトトギス
199906
梅雨といふ今日も降らねばならぬかに
稲畑汀子
ホトトギス
199906
句碑梅雨に濡るることより親しさよ
稲畑汀子
ホトトギス
199907
梅雨の闇本当のこと知りたいかい
田中桜子
船団
199907
絢爛の僧を囲みて梅雨の葬
鷹羽狩行
狩
199907
梅雨の蝿大きな皿で虫の息
丸山佳子
京鹿子
199907
梅雨空を八枚綴りの手紙くる
田中桜子
船団
199907
すれ違ふ人に湯の香や梅雨の月
山村桂子
遠嶺
199908
行口(いけるくち)なり梅雨鯰ほど淡淡
中原道夫
銀化
199908
前梅雨のうす紅色の鳩の脚
浪花洋子
火星
199908
校門に吸ひこまれゆく梅雨の傘
広場伝
俳句通信
199908
梅雨霧の消す島の峰極めきし
小西石蕗
円虹
199908
梅雨ふかき霧曼陀羅や小仏路
阿部ひろし
酸漿
199908
磴険し梅雨のさなかの古祠
渡辺政子
俳句通信
199908
紺色の農衣が似合ふ梅雨山河
能村研三
沖
199908
梅雨激し指呼の小島を掻き消して
小西石蕗
円虹
199908
人とゐてこころほぐれぬ梅雨催ひ
保坂加津夫
いろり
199908
枝折れて生ま木の匂ふ梅雨嵐
林翔
沖
199908
柄長らの一樹を去らず梅雨あかり
阿部ひろし
酸漿
199908
裏返る犬の食器や梅雨の雷
那須淳男
馬醉木
199908
梅雨曇り気分爽快とは云へず
熊谷みどり
いろり
199908
日暮れずともよし梅雨雲重けれど
中原道夫
銀化
199908
梅雨滂沱警笛遠くより電車
大橋晄
雨月
199908
轆轤蹴る音にも梅雨の深みけり
中川晴美
俳句通信
199908
鬱の日の日記三行梅雨ふかし
那須淳男
馬醉木
199908
梅雨の国蕎麦しろじろと咲きゐたり
阿部ひろし
酸漿
199908
百本の絵筆遺され梅雨兆す
杉浦典子
火星
199908
悼む声低く這はせて梅雨の寺
山本潤子
いろり
199908
出戻りの梅雨もあらむを裏戸より
中原道夫
銀化
199908
梅雨雲がうごく雲間の光源も
林翔
沖
199908
梅雨きざす胸突坂の青けぶり
加瀬美代子
朝
199908
どの枝も流儀考へをれぬ梅雨
丸山佳子
京鹿子
199908
ラーメンに豚の匂ひや梅雨じめり
那須淳男
馬醉木
199908
ソロバンの動きも重く梅雨深む
福田みさを
いろり
199908
一列に乾く海女桶梅雨の明
金子きくえ
春耕
199908
梅雨の嶺梅雨の細滝仰がしむ
阿部ひろし
酸漿
199908
後向く回転木馬の梅雨しぐれ
保坂加津夫
いろり
199908
梅雨焚火時効の文を焼べしかな
能村研三
沖
199908
戻り梅雨鴉の目線不穏なり
松本高兒
京鹿子
199908
天平のみ仏九体梅雨灯
渡辺政子
俳句通信
199908
梅雨ふかき円空一の里よぎりけり
阿部ひろし
酸漿
199909
どしや降りのあと軽々と梅雨の蝶
井口初江
酸漿
199909
父の木の枝張る樅も梅雨の中
中森百合子
澪
199909
枝深くかさねて蒼し梅雨木立
阿部晶子
澪
199909
仲見世のせまき夜空も梅雨兆す
藤木竹志
馬醉木
199909
降り止みて安達ヶ原の梅雨の月
瀬戸悠
風土
199909
三の糸よく切れ梅雨の灯下かな
高橋さえ子
朝
199909
磨崖仏梅雨の瀬音を聞きをはす
朝妻力
俳句通信
200007
2021年6月13日
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