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2025年10月 6日 (月)

高市政権は過半ソーシャルかも知れない

本ブログではこれまでも何回も書いてきたことですが、安倍政権以後の自民党は小泉政権時の全面リベラルから、その側面を維持しつつ徐々にソーシャルの傾向を強めてきていました。安倍首相辞任時に書いたこれがそれを端的にまとめていますが、

半分ソーシャルだった安倍政権

本日突然安倍首相が辞意を表明しました。政治学者や政治評論家や政治部記者のような話をする気はありませんが、労働政策という観点からすれば、14-13年前の第一次安倍政権も含めて、「半分ソーシャル」な自民党政権だったと言えるように思います。半分ソーシャルの反対は全面リベラルで、第一次安倍政権の直前の小泉政権がその典型です。(本ブログは特殊アメリカ方言ではなくヨーロッパの普遍的な用語法に従っているので、違和感のある人は「リベラル」を「ネオリベ」と読み替えてください)

安倍政権は間違いなくその小泉・竹中路線を忠実に受け継ぐ側面があり、労働市場の規制緩和を一貫して進めてきたことは確かなので、その意味では間違いなく半分リベラルなのですが、それと同時に、一般的には社会党とか労働党と呼ばれる政党が好み、労働組合が支持するような類の政策も、かなり積極的に行おうとする傾向があります。そこをとらえて「半分ソーシャル」というわけです。今年はさすがに新型コロナでブレーキを掛けましたが、第1次安倍政権時から昨年までずっと最低賃金の引き上げを進めてきたことや、ある時期経営団体や労働組合すらも踏み越えて賃上げの旗を振ったりしていたのは、自民党政権としては異例なほどの「ソーシャル」ぶりだったといえましょう。・・・

今回の自民党総裁選をこの視角から見ると、小泉進次郎は(今回はその側面をできるだけ隠そうとしたとはいえ)ソーシャルからリベラルへの再転換指向が強かったのに対し、高市早苗は(世間的には国粋右翼的側面ばかりが注目されたとはいえ)ソーシャルをより強化する方向性が垣間見られ、実はそれも意外な勝利の一つの原因になっていたのではないかと思われなくもありません。

自民党・高市総裁 病院・介護施設の経営改善 補正予算で対応へ「診療報酬改定の効果を待てない状況」

自民党の高市早苗総裁は10月4日の記者会見で、「物価高対策」に速やかに取り組む考えを表明した。高市総裁は、医療・介護問題に言及し、「病院、介護施設は、いま大変な状況になっている。病院に関しては7割が深刻な赤字。介護施設の倒産も過去最高になった。診療報酬改定まで待っていられない」と強調。物価高・経済対策を柱とする補正予算で対応する考えを表明した。

政策論としていろいろ問題のあるところでしょうが、高市早苗という政治家を見る際に、安倍晋三よりももっと国粋右翼で参政党に近いといった側面だけに注目するのではなく、すでにかなりそうであった安倍晋三よりももっとソーシャル寄りであるかも知れないという面もきちんと見ておかないと、"リベラル"な皆さんは判断を間違う可能性があるのではないかということです。

(参考)

ある介護職員の方のつぶやき:

ぼくが一番注目したのは、 高市早苗さんのこの言葉。 「秋の臨時国会で診療報酬を改定し、引き上げる。...介護報酬も前倒し改定を考える」 介護報酬を「上げる」と、 しかも「前倒しで」と言い切った。 これって、 介護現場にとってはめちゃくちゃ大きい。 だって、本来なら数年後の改定を待たなきゃいけないのに、今の厳しい状況を見て「先にやる」と言ってるわけだから。 ・・・・【 介護報酬も前倒し改定 】 この一言が実現するかどうかで、 介護業界の未来は大きく変わる。 現場で働いてきて、 報酬アップがただの数字じゃなくて、 「人が辞めない理由」になり、 「続けられる理由」になることを知ってる。 この約束が本当に実行されるのか。 本当に注目です。

2025年10月 6日 (月) | 固定リンク

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コメント

安部元首相の祖父、岸信介の主要業績の一つに、自民党厚労族の中心人物として、国民皆保険制度の創設をはじめ、多くの社会保障制度を確立していったことがあげられますが、これはもちろん、ご本人が国粋右翼ではあっても、「ネオリベ」とは正反対の国家社会主義者だったからであり、社会経済政策について、国家介入主義の立場にたっていたからですね。
(参考記事:岸信介政権研究 新安保条約成立と国民皆保険創設の功罪 週刊ポスト 2020年07月25日
https://www.news-postseven.com/archives/20200725_1579672.html/6 )

また、岸は、一高から帝大を通じての一番の親友だった、三輪寿壮(無産運動の弁護士であり、日本労農党から社会大衆党に加わり代議士に。戦後も社会党右派の代議士。1894年〜1956年)の影響を強く受けていたことも確かなことであり、このことは、三輪のお孫さんによる伝記、『祖父三輪寿壮-大衆と歩んだ信念の政治家』(鳳書房、2017、三輪建二著)に詳しく記載されています。
故安部元首相についても、この二人の関係を熟知した上で、主観的には、祖父の路線を推し進めようと尽力されていた、ということについての記述もありました。

しかしながら、高度経済成長が続いていたことにより、社会保障の財源について、それほど深く悩む必要が無かった岸信介の時代とは異なり、経済が停滞する中で、巨額の財政赤字を抱えるに至った現代において、高市氏が、安直に財源の裏付けなしの財政拡大による社会保障の拡充を行おうとすれば、間違いなく、国債金利の上昇および円安からくるインフレによる実質賃金の目減りによって、国民生活はさらに苦しくなり、今年の選挙で左派が壊滅状態となったここ日本においては、ますます極右が勢いを増す、という結果になることが予測できますね、残念ながら。

尚、このあたりの事情については、最近出版されたばかりの、井出英策先生の「令和ファシズム論 ――極端へと逃走するこの国で 」(筑摩書房)が非常に参考になると思います。

投稿: SATO | 2025年10月 6日 (月) 19時43分

上記の訂正(井出英策→井手栄策)

投稿: SATO | 2025年10月 6日 (月) 19時50分

このブログを通じて知りました、坂野潤治先生の枠組みを使うと、「富国強兵」的な高市政権に「格差是正」の要素もある、と言及できるのでしょうか。"リベラル"側としては、「富国強兵けしからん」だけでも、「地租軽減」(=減税)でもなく、我々こそがソーシャルな格差是正の真の担い手だ!とアピールすべきなんだろうなぁ、と思いました。(この辺、坂野先生が生前言及されていた日本の政治風景と全く変わってないですね...)

投稿: もんぶらん | 2025年10月 7日 (火) 17時17分

>高市総裁は、医療・介護問題に言及し、「病院、介護施設は、いま大変な状況になっている。病院に関しては7割が深刻な赤字。介護施設の倒産も過去最高になった。診療報酬改定まで待っていられない」と強調。

病院や介護施設の大変な状況を早急に改善する という事は素晴らしいと思います。しかし病院や介護施設の大変な状況を改善すると健康保険や介護保険の支出が増加します。増加分を内部努力で全て吸収出来れば良いですが、そうでないと外部が負担する事になります。
その場合の負担方法としては
1) 健康保険料や介護保険料の値上げ 正統派路線
2) 税金を投入 アホ路線
が考えられます。
1) の正統派路線は、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの国民民主党や参政党の支持者が
大変な状況の病院や介護施設を改善するために、もっと大変な状況の我々の手取りを減らすのか!
と反対しそうなので実現は難しいと思います。そうなると病院や介護施設の状況改善は2)のアホ路線で行う事になると思います。高市氏は以前から靖国神社の参拝だけでなく積極財政(アホ路線)を主張しているのでアホ路線で病院や介護施設の状況を改善する事を問題だと思わないかもしれません。
高市氏のアホ路線は広く知られているので高市氏の総裁選勝利直後に対ドル円相場は久しぶりに150円を割り込みました。また長期の日本国債の利率はじりじりと上昇してここ17年でで最も高くなっているそうです。
イギリスの先々代の首相も与党の党首選の決選投票で議員票で勝った男性の対立候補を党員票で逆転した女性でした。彼女は首相就任直後に国債を財源とする大規模な減税を発表しました。これは政府の財政収支を悪化させるという点で広義のアホ路線だと思います。この政策は市場から非常に嫌悪され発表直後から通貨や株価は下落し国債の金利は上昇しました。このため経済が混乱し彼女は辞任しました。
彼女の首相在任期間はレタスの賞味期間より短いと言われ、"レタスに負けた首相" として話題になったそうです。
私は高市氏が小松菜やほうれん草に負けない事を願っています。

話が変わりますが、トランプ大統領は高率の関税を発表しても実施間際に税率を下げたり実施を延期したりするので、
TACO (Trump Always Chickens Out トランプはいつも最後はビビる)
と言われているそうです。高市氏は以前から靖国神社の参拝を主張し、これまでは大臣在任時もずっと参拝してきました。しかし今秋の参拝は見送るそうです。日本にも蛸(Takaichi Always Chickens Out)がいるのかもしれません。このため靖国神社参拝と同じくこれまで主張してきたアホ路線もビビッて止めるかもしれません。
高市自民党と連立を噂されている国民民主党もアホ路線を主張しています。しかし国民民主党はアホ路線をビビッて止めると、アホ路線を支持している膨大な新規支持者が離れてしまい、シンデレラではありませんが馬車がカボチャに戻ったように魔法が解けて元の弱小野党に戻ってしまうので、2匹目の蛸(Tamaki Always Chickens Out)は存在しないようです。

投稿: Alberich | 2025年10月11日 (土) 20時20分

>高市早苗は(世間的には国粋右翼的側面ばかりが注目されたとはいえ)ソーシャルをより強化する方向性が垣間見られ、実はそれも意外な勝利の一つの原因になっていたのではないかと思われなくもありません。

自民党の新規党員獲得数は、最近何年かは青山繁晴参議院議員がトップで高市氏は2位か3位です。青山氏は、"日本の尊厳と国益を護る会"の代表で高市氏を支援しています。この2人がこれまで獲得した自民党員は非常に多いと思いますが、そのほとんどは今回の選挙で高市氏に投票したと思います。
自民党では各議員に党員獲得数のノルマを課して未達成者からは罰金を徴収しているそうなので党員獲得に熱心でない議員も多いようです。いくら支持者でも投票だけでなく年4000円を払って党員になってくれとは頼みにくいのかもしれません。
多くの議員が力を入れない党員獲得に地道に取り組み、獲得した党員の力で議員票を逆転した高市陣営を見ると、膨大な農村に地道に支持を広げ農村の力で都市を包囲して内戦に勝った毛沢東を連想しました。

投稿: Alberich | 2025年10月12日 (日) 21時01分

この記事の内容とは関係ない、どうでもよいコメントで申し訳ありません。

かなり昔ですが、田中真紀子氏が当時の自民党総裁選挙の候補者の 小渕恵三氏、梶山静六氏、小泉純一郎氏 を 「凡人、軍人、変人」 と批評して話題になりました。今回の総裁選挙の有力候補の 林芳正氏、高市早苗氏、小泉進次郎氏 も 「凡人、軍人、変人」 と言えるのではないかと思いました。

投稿: Alberich | 2025年11月 9日 (日) 21時11分

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