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2025年11月18日 (火)

海老原嗣生『外国人急増、日本はどうなる?』

9784569860237 海老原嗣生さんの『外国人急増、日本はどうなる?』(PHP新書)をお送りいただきました。

https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-86023-7

日本社会において長らくタブーとされてきた「外国人問題」が、2025年参議院選を機に突如として主要な政治テーマとなった。背景には、クルド人による事件や不法滞在者の存在がクローズアップされたことがあるが、議論の多くは全体のわずか2%に過ぎない「不法在留外国人」に集中している。しかし、残り98%の正規在留外国人の存在こそ、今後の日本社会にとって本質的な論点であると著者は指摘する。

日本は深刻な人口減少と労働力不足に直面している。2030年代後半には、年間約100万人規模で労働人口が減り続けるといわれる中で、外国人の受け入れは避けて通れぬ国家的課題である。外国人労働が賃金低下や治安悪化を招くという通念についても、著者はデータをもとに再検証を試みており、感情論ではなく事実に基づいた議論を呼びかけている。

また、難民認定制度の運用の歪みや、就労目的の偽装申請問題にも触れ、リベラルな性善説にも冷静な視点を持ち込む。一方で、在留外国人との共生を拒み続ければ、将来日本が危機に陥った際、支援を申し出てくれる国が現れないかもしれないという、地政学的リスクにも警鐘を鳴らす。

本書の後半では、日本で学び働いた外国人が帰国後に"親日派"として各国に影響力を持つ可能性を取り上げ、その存在を活用した外交・安全保障戦略を提案する。さらに、日本語を世界に広める構想をも含み、外国人政策を「守り」から「攻め」へと転換すべきであると論じている。

本書は、外国人問題に関する論点を幅広く網羅しつつ、冷静かつ実証的に考察した実用的な一冊である。極端な排外主義でも、性急な受け入れ論でもない、中庸かつ未来志向の政策ビジョンがここにある。感情ではなく、理性と戦略で外国人問題に向き合うべき時が来ている――その現実を突きつける書である。

海老原さん流の外国人労働者問題へのアプローチが展開されているのは第3章で、ここは『HRmics』誌で繰り返し論じていた話が出てきますが、全体としては、昨今の外国人「問題」に対する話が中心になっています。特に、第1章は例のクルド人問題から不法滞在者や難民申請者、送還忌避者をめぐる話が主で、確かに昨今の過熱気味の外国人フォビアへの冷水としては有用ですが。

また、第4章は海老原さんらしい大風呂敷を広げて見せていて、帰国する外国人労働者の社会保険の企業負担分を財源にして、いろんな政策を打てるぞ、という話で、面白いは面白いのですが、実際にはどうかなという感じもします。

本書自体が、新書本としてはやや薄い作りなのですが、肝心の外国人労働者問題を取り上げた第3章が、ちょっと薄くて、やや大づかみな議論になっていて、もう少し個別制度に立ち入って細かく論じてほしかったな、という感じがしました。

まあでも、これだけ外国人問題が話題になっているからこそ、最近立て続けに外国人関係の本が出版されているのでしょうね。

Chukogaikoku_20251118134301 ちなみに、わたくしも来年早々、『外国人労働政策』(中央公論新社)というのを出します。

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