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広岡威吹の作家ブログ

たくさん落選しましたが第6回GA文庫大賞前期で奨励賞をいただきました。受賞作は「魔王子グレイの勇者生活(チートライフ)」と改題してGA文庫より発売されました。全三巻発売中!

・・星新一感想

「できそこない博物館」は昭和54年に刊行された。
この本はショートショートや短編を書く上での素晴らしい参考書と言える。


あらすじというか内容を端的に言うと。
20年間の創作人生の中で使わなかった創作メモ155枚を収録した上で、星新一自らがその話をどう膨らませるつもりだったか、どうして没にしたかを、一つ一つ丁寧に解説してくれているエッセイ集。

ちょっと手を変えたら今でも通用しそうなネタがごろごろ収録されていて、思わず「もったいない!」と呟いてしまうこと請け合いです。
まあそれだけ風化しないアイデアを考えるのが上手かった人なのでしょう。


例えば冒頭のメモのあらすじは。
『正体不明の物体が発見される。長さ一メートル半ほどのナメクジみたいな機械。先が三十センチほど丸く膨れ上がっている。金属製で細かな鱗に覆われている。
学者達が調査するが何のための道具なのか全く見当がつかない。詳しく調べようにも精密機械らしく、下手に分解すると壊しかねない。
世界中の優秀な者たちが集められるがまったく解明できなかった。
しかしある日謎が解ける。その機械の持ち主が現れた。
人ではなく宇宙人だった。
そして人々は納得する。
「そうか。知的生命体は自分に似せてロボットを作るのか」』

ほほう、なるほどとメモだけを見ても感心させられてしまいます。
そしてここでは省略しますが、これだけ面白いアイデアなのになぜ没にしたのか、その理由も読めば納得です。
そこまで考えていたのかと、本当に頭の良い人だったんだと思います。


知的でユーモアに富んでいるが少し神経質、そんな星新一の人となりが垣間見えるエッセイ集でもありました。

読物としても面白く、創作教材としても優秀。
この本だけは発想の転換になるので何度も読み返してます。
アイデア出しに困ったときに、良い刺激になるかもしれません。

終わり。

友情の杯」は星新一のショートショート集「マイ国家」に収録された作品。
あらすじはこんな感じ。


製薬会社の社長だった裕福な老人が病床についていた。
ある日看護婦に荷物の中にある古びたビンの酒を飲ませてくれと頼む。

一杯だけならと言われてグラスを注ぐ。
残りの酒は捨てられビンも洗った。
まるで他人には飲まれたくないとでも言うように。


その酒はライバルとも言うべき友人から送られた酒だった。
会社の業績や、社長の娘との恋仲を競い合った友人。
勝負に勝ったのは自分だったが、その友人から送られた酒。
しかも送ってきたときは友人が精神的におかしい時期だった。

毒が入っているかもしれない。
しかしそれは自分の思い込みかもしれない。
男は悩んで結局、飲まなかった。成分分析して確かめたりもしなかった。

その後、友人とは無二の親友のように付き合った。
そして友人は数年前に他界した。


もし毒入りではなくただの酒だったら、唯一の親友を疑ったことになり、自分は卑しい存在で、彼は崇高な人物だったことになる。
逆に毒入りだったら友人は唾棄すべき存在で、自分は一生許さなかっただろう。
どちらなのか確かめる勇気が湧かず、そのままになっていた。


老人は酒を口にした。
そのうち、老人は苦しみはじめた。
しかしそれは毒のせいなのか、酒を飲んだせいなのか、もともとの病気のせいなのか、それとも長年の謎の答えを知ったせいなのか、見ただけではわからなかった。

老人は症状を話すことも拒み、医者も手当てが出来なかった。
老人は次第に弱っていく。注射をしても効果がなかった。

看護は顔を近づけて老人の表情から読み取ろうとしたけれど、あまりにも複雑な顔をしていて、何も読み取れなかった。
終わり。


うーん、難しい。
感想が書きにくい。

短いけれど良く出来た話。
表面上は親友として付き合いながら、心の中では疑い続けていた。
もし酒が毒入りなら、殺人の証拠になるから相手をこき使えると判断するのが、さすが社長になるほどの人物だと思わされます。


それにしても。
いったい答えはどうだったのか、明かされないまま終わりますが。
でも、答えはおそらく重要ではないと思います。

答えがどちらであったにしろ、
男が手に入れたものは後悔だったはずです。

酒が毒入りであってもなかっても、友情が失われるからです。

毒入りなら友人の友情は偽りだったことになり、
普通の酒なら自分が友人の友情を裏切り続けていたことになります。


男が友情の杯を飲み干して積年の疑問の答えを手に入れたとき、長い人生を共に歩いた友情は消え去った。
後に残るは真実に対する苦悩ばかり。

この世の中には知らないほうがいいことがある、という事なのかもしれません。
考えさせられる作品でした。さすが星新一。

終わり。

「プレゼント」は星新一が1962年に「週刊漫画サンデー」に発表した作品。
短編集「ボッコちゃん」に収録。
あらすじはこんな感じ。


地球で核爆発が起こったのを発見したラール星人たちは、ぐずぐずしてはいられないと地球へ一台のロケットを送りつける。

地球に突然百階建てぐらいの大きさのロケットが現れる。
人々は驚きつつ見守る中、ロケットからトカゲとカバを足したような猛獣が出てくる。大きさはビルほどもあった。
怪獣は暴れ回り、辺りのすべては踏み潰される。しかも十匹近くいた。

人々は避難しつつも、銃やロケット弾を打ち込んだが怪獣には効かない。
一国の手には負えなかった。
すでに怪物たちは繁殖を始める気配を示している。

世界各国は人類の危機に際して、戦争などの問題を棚上げして一致団結した。
ありとあらゆる方法を動員して何とか怪獣を退治する。
今後も宇宙から攻めて来ることを視野にいれ、地球上での争いを打ち切りにして人類は一致団結することになった。


一方、怪獣を送りつけたラール星では、核爆発が止んだのは可愛いペットを送り込んだおかげと考えていた。
こんな可愛い生き物を見たら誰だって心が和やかになる。住民たちも喜んでくれただろう。
終わり。


文化の相違。
身体的な相違。
考え方の相違。

親切心からのプレゼントが逆の効果を生み出す。
しかし過程は逆になっているのに、
争いを止めさせるという求める結果にはなっていた。


なので間違いの連鎖は止まらない。
またどこかの星での核実験を検知したら怪物を送り込むだろう。
皮肉が効いている。

さらに小さな親切大きなお世話はこれからも起こり続けるだろう。
ラール星人は自分たちを宇宙の平和の守り人と考え続け、
プレゼントを貰った星々からは、脅威の侵略者として思われ続けるだろう。


そして地球の戦争のばからしさを解いて平和を望むと同時に、
平和の正体も暴いているのかもしれない。
互いの勘違いによる平和。
戦争も平和も案外そういうことかもしれない。

終わり。










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当ブログ管理人
広岡威吹のデビュー作!!
第6回GA文庫大賞受賞者五人目!! ついに管理人である広岡威吹の本が出ました! 魔界最弱だけど超強い?主人公グレイと、お目付け役でありヒロインでもあるサラ。本性はひた隠しにしつつ勇者学校でのチートな生活を繰り広げます! ドジっ子ミレーヌも健気で可愛いです。でもエロいらしいので注意が必要ですっ! ――可愛いイラストはAn2Aさんに描いていただきました。デザインは柊椋さんにしていただきました!

受賞作第二弾!目先の脅威は退けたものの封印を解除できないグレイ。王女の悩みを解決する代わりに魔法を知ろうとする。しかしその悩みは何者かによる国を揺るがす企みだった――。二巻の注目はなんと言っても新キャラ。とても面白いキャラになりました、乞うご期待です!

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受賞作第三巻!
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しかし突如として大量の魔物が魔界から押し寄せてくる!
いったい何が起きたのか!?
そして対処できるのか――なぜか魔界に詳しいグレイが作戦立案、ついに勇者として立ち上がる!
......まあ、魔界の王子なんだから詳しいの当たり前なんですけどね。三巻の見所は魔王子だとバレないようにしながら活躍するグレイと、万単位の大規模戦闘かな。
ヒロイン全員の大活躍も目が離せない! 乞うご期待です!


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