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和田唱 ビートルズ番組DJ 「ポップかつマニアックに」

[ 2023年9月5日 08:00 ]

自ら購入したビートルズのレコードを番組に生かしている和田唱
Photo By スポニチ

【牧 元一の孤人焦点】NHK─FM「ディスカバー・ビートルズ2」(日曜後1・00)でDJを務めるロックバンド「TRICERATOPS」の和田唱(47)がインタビューに応じ、ビートルズと番組への思いを明かした。

「ビートルズはロックバンドなのにロックバンドらしからぬ名曲をいっぱい作ったところが凄い」

確かに、「イエスタデイ」「イン・マイ・ライフ」「ヘイ・ジュード」「サムシング」など、ロックの分野に収まりきらない名曲が多い。

「ローリング・ストーンズやレッド・ツェッペリンが残した名曲とはちょっと違う。むしろバート・バカラックのような作曲の専門家と肩を並べるような曲、もしくはそれ以上の曲を生み出している。ロックバンドだけれど偉大な作曲家なんですよね。普通は交わらないものが奇跡的なバランスで交わっている不思議なバンドなんですよ。そこが最大の魅力だと思います」

番組の第1弾は2020年4月から21年3月まで放送された。DJはミュージシャンの杉真理(69)と和田の2人。第1弾では毎月の単独出演の回数が杉3対和田1の割合だったが、今年4月にスタートした第2弾では杉2対和田2と同じ割合になった。

「前回にやりがいを感じたことと、3回の杉さんは大変だろうと思ったことから増やしてもらいました。今回の方が気合が入っています(笑)。自由でマニアックなところは前回と変わっていないけれど、今回の方がより緻密に練っている気がします」

番組でビートルズの曲を流す時、NHKにあるCDを使用するのではなく、和田が個人的に所有するアナログ盤を使用する場合があることが特徴のひとつだ。

「元々持っていたものもありますが、この番組が始まってさらに買いました。僕としては、UK盤で、最初にプレスされたもの、ファーストプレスと呼ばれるものをコンプリートしたいという願望がありました。例えば『リボルバー』はイギリスのオリジナル盤を2枚持っているけれど、プレスされた時期が違うと少しだけ音が違うんですよ。人によっては『どこが違うの?』と思うでしょうし、僕も最初の頃は『そんなに変わらないでしょ?』と思っていたんですけど、だんだん違いが分かるようになってきました。レコードで聴くと、CDで聴いた時には通り過ぎていた細かい音が分かります」

番組は主にビートルズの楽曲を研究する内容だが、評論家らがDJを務める場合とは決定的に異なる。自身が音楽家であるため、曲の分析が極めて緻密で、スタジオに持ち込んだギターを弾きながら歌って再現することで聴取者に理解しやすくもしている。

「へたをすると堅っ苦しい番組になりかねないので、なるべくポップに行こうとしています。とはいえ、マニアの人も聴いているから、その人たちがある程度納得する内容にしなくちゃいけない。だから、マニアックなことをしゃべる時ほどテンションを上げるようにしています。収録なので、自分で納得のいくグルーブが出るまでやり直すこともあります。あまり詳しくしゃべり過ぎると研究者のようになってしまうので『どうなんでしょうね。ちょっと分からないけど...』と余白を残すようにもしています。番組でデモンストレーションできるのはミュージシャンの特権だと思います。ただ、へたな演奏はできないので、そこはぐっと集中してますね。心の中で気合を入れてからやってますけど、なるべく軽くやっているように聞こえるようにすることが大事です(笑)」

8月20日の放送にはゲストとして人気シンガー・ソングライターの小田和正(75)が出演した。TBSの音楽番組「クリスマスの約束」で何度も共演したことによる人脈が生かされた形だ。番組では小田がバンド「オフコース」時代にビートルズの音楽プロデューサーのジョージ・マーティンさんとロンドンで会ったエピソードを話すなど盛り上がりを見せた。

「小田さんとは『クリ約』で何度もリハーサルをしてディープな時間を過ごしてきました。音楽で共演すると、ただ一緒に飲みに行ったのとは違う絆が生まれるんですよ。ジョン・レノンとポール・マッカートニーはビートルズ解散後に共演しなかったけれど、2人にもずっと絆はあったんだと思います。小田さんが出てくれた時は小田さんのファンが聴いてくれて『初めてビートルズを聴きました』という反響があって、この番組をやって良かったと思いました」

自身のバンド「TRICERATOPS」は9月16日の神奈川・横浜BAYHALLを皮切りに全国ツアーを行う。1998年に発売されてバンドの知名度を上げたセカンドアルバム「THE GREAT SKELETON’S MUSIC GUIDE BOOK」発売25周年を記念し、このアルバムの再現を盛り込んだ形となる。

「再現と言っても、25年たってますから、今の解釈でやるんでしょうね。僕らの曲からはあまりビートルズを感じないかもしれない。影響されたのは、姿勢です。彼らはデビューから解散までずっと変わり続けた。ルックスも含め変わっていくことの格好良さがありました。僕らもなるべく変わろうとしています」

番組のDJは来年3月まで続く。

「毎回変化し、一定のクオリティーを保ちながら、ポップかつマニアックにやりたいです(笑)」

今後もビートルズのファンがさらに増えていくに違いない。

だいやまーく牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

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