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羽生九段の8六歩に感じた入念な準備と信念 "苦い思い出"要の一局で再度登用

[ 2023年2月26日 05:20 ]

第72期ALSOK杯王将戦第5局第1日 ( 2023年2月25日 島根県大田市「さんべ荘」 )

対局する藤井聡太王将(右)と羽生善治九段(代表撮影)
Photo By 代表撮影

【関口武史・第1日のポイント】7番勝負の行方を占う天王山の一局、羽生善治九段(52)が選んだのは横歩取り。近年、研究が進み、一触即発の変化が多数ある戦型で、午前中から緊張感が走る。

羽生がしろさんかく7四飛とぶつけ、早々に飛車角が駒台に乗る華々しいオープニング。対して藤井聡太王将(20)は桂馬を2枚、さんかく3七とさんかく7七に跳ね出して将来の二丁拳銃に期待の駒組み。羽生は勝てばタイトル通算100期獲得となった広瀬章人八段との大一番(2018年12月の竜王戦7番勝負第6局)をベースに進め、しろさんかく8六歩(A図)と歩を垂らした局面が分岐点。広瀬は以下さんかく6五桂しろさんかく8七歩成さんかく同金しろさんかく8九飛さんかく8八角と進め、羽生を破っている。

苦い思い出のある将棋を要の一局で再度登用したことに、羽生の入念な準備と信念を感じる。本譜で再びしろさんかく8六歩を決行し、対局室に緊迫感が漂う。藤井は決戦策を見送り、さんかく8八歩と丁寧に受けて乱戦の変化は回避された。

そしてしろさんかく6四角と好位置に据え、羽生は局面を収めて三度、後手番で力将棋に誘導した。午前中の最後に放ったしろさんかく2六歩がくせもので、しろさんかく2七歩成さんかく同銀しろさんかく3七角成が厳しい狙い。控室ではさんかく2五飛と自陣飛車の受けも予想されたが、120分使って藤井は初志を貫き、さんかく4五桂と勇躍。対して羽生も141分の長考でしろさんかく2七歩成と応戦し、盤上は再び激戦となり、一気に終盤戦へと突入した。

事前準備を掘り下げるだけでなく、8時間の持ち時間に耐え得る進行を拾い上げる羽生の独自の視点が、7番勝負を盛り上げている。本局も歩垂らしから研究勝負を離れ、午後は一手一手考慮を重ねる2日制ならではの密度の濃い応酬となった。 (スポニチ本紙観戦記者)

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