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10年前は"とがってた先輩" 阪神・岩田稔との緊張の時間も今となっては大切な宝物

[ 2021年10月27日 05:30 ]

セ・リーグ 阪神0ー4中日 ( 2021年10月26日 甲子園 )

笑顔で場内を1周する阪神・岩田稔(撮影・北條 貴史)
Photo By スポニチ

<記者フリートーク 阪神担当・遠藤 礼>

"不審者"と化したあの日からもう10年...。阪神担当を拝命して間もない11年の開幕直後、先輩記者から「関大の先輩やし、岩田担当やな」と突然告げられた。当時は新米。1軍のローテーションを守る「大学の先輩」はとんでもなく大きな存在に感じていた。

名刺すら渡していないのに「試合の取材はいいから、新大阪まで同行して取材してこい」と指令された。横浜遠征中で登板予定のない岩田さんはナイター中に帰阪するとのこと。横浜スタジアムから新横浜駅に急行した。改札口は2つあって、駅構内を行ったり来たり、周囲をキョロキョロ...。そこに突然、エスカレーターに乗った岩田さんが現れた。今思えば、幸運以外の何物でもなかった。

とにかく追いかけた。"誰やねん、こいつ"の厳しい視線を感じながら...。ようやく「スポニチの遠藤です。関大出身で...」と名刺を差し出した時には、岩田さんはグリーン車の座席に腰を降ろそうとしていた。「関大なんや。よろしく」の返答までで、そこから何を聞いたかは覚えていない。「うん」とか「いや」とか意味もないフレーズをノートに書き記し「失礼しました」と数分で退散した。

そんな恥ずかしい初対面だった。その後、顔と名前を覚えてもらい「これ、やるわ」とスニーカーをいただいたり「このブランド、ええで」と教えてもらった色違いのTシャツを購入したり...。記事もたくさん書かせてもらったが、そんな何気ないやりとりばかりが後輩にはうれしく、記憶に残っている。とはいえ、10年たった今でも何とも言えない緊張感は変わっていない。引退を決断した直後、電話で少しだけ会話させてもらった。

「ずっと緊張して質問してましたけど、岩田さんのキャリアを記者として見届けることができて良かったです。ありがとうございました」と伝えると「そうなんや。俺も若い時はとがってたからな」と笑った。10年前の苦い経験は、今となっては大切な「宝物」だ。

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