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プレスリリース

2014年 6月 25日
独立行政法人海洋研究開発機構

地球深部探査船「ちきゅう」による
「沖縄トラフ熱水性堆積物掘削」の実施について

独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 平 朝彦、以下「JAMSTEC」という)は、戦略的イノベーション創造プログラム((注記)1 SIP)の課題「次世代海洋資源調査技術」(プログラムディレクター 浦辺 徹郎、東京大学名誉教授、国際資源開発研修センター顧問)における「海洋資源の成因に関する科学的研究」(研究代表者:鈴木 勝彦、JAMSTEC海底資源研究開発センター資源成因研究グループリーダー)の一環として、沖縄海域での科学掘削調査を実施します。

1.研究の目的

大規模な海底熱水鉱床が存在する可能性の高い日本近海の海域として、沖縄海域・伊豆小笠原海域等が知られていますが、これらの海域には、非活動的な鉱床や過去に熱水活動を終了し、堆積物に覆われていて海底面に露出していない、規模の大きな鉱床(いわゆる潜頭性鉱床)が存在している可能性があり、事業化・産業化の対象として期待が高まっています。しかしながら、海底熱水鉱床の成因にはいまだ不明点が多いために、非活動的な鉱床や潜頭性鉱床については詳細な分布が明らかになっておらず、確立された探査技術も存在していません。沖縄海域・伊豆小笠原海域等に限定しても、その面積は広大であり、それらの海域に対してくまなく船舶や探査機等を用いた調査を実施することはコストと時間の点から不可能です。したがって、科学的に成因を明らかにし、有望海域を絞り込むのに有効な観測項目を特定して、船舶や探査機を効率的に用いた調査を行う必要があります。

一方、2010年に沖縄海域の伊平屋北海丘北麓において統合国際深海掘削計画(IODP)((注記)2)第331次研究航海で実施した科学掘削調査により、海底下に少なくとも数百m規模の広大な熱水溜まりが発見され(2010年10月5日既報)、さらに2012年から2013年にかけて実施した調査では、同海丘の中央部と南麓で新たに2つの熱水噴出域が発見されています(伊平屋北ナツサイト、伊平屋北アキサイト:2014年3月4日既報)。伊平屋北海丘は基部直径8 km程の火山体であり、これらの熱水域は海丘の頂部を縦断するように配列しています。これら3つの熱水噴出域が共通の熱水溜まりから派生したものであるならば、その広がりは数kmに及ぶこととなり、沖縄海域で発見された中では最大の熱水域となります。この海底下に存在しうる熱水溜まりの有無を検証し、海底下熱水循環系の特性や鉱床を形成する鉱物の分布や組成を明らかにすることは、海底下の鉱体(鉱石の集合体)の成因に関する知見を大きく深めるばかりでなく、これら科学的成因論を調査技術開発へと提供し、有機的に開発を進めることで同等規模の非活動的鉱床あるいは潜頭性鉱床の効率的な調査に必要なセンサー、新たな探査手法の構築に貢献できる可能性があります。

そこで、本調査では、非活動的鉱床や潜頭性鉱床の科学的成因論を確立するための第一段階として、伊平屋北海丘の海底下鉱体とその源となる海底下熱水域の分布を把握するため、2010年の科学掘削調査により発見された海底下熱水溜まりと、2012年から2013年にかけて同海域で新たに発見された熱水噴出域を含むように、海丘全域を対象として、地球深部探査船「ちきゅう」による科学掘削調査を行います。

2.航海の概要

今回の調査では、沖縄海域の伊平屋北海丘で発見された上記熱水域を含む海域(図1)で掘削を行い、海底下における熱水域の連続性を検証します。また、掘削孔の一部では、非活動的鉱床や潜頭性鉱床の成因解明に資する科学的データを得るために、化学分析に用いる海底下の鉱体及び周囲岩石の試料採取を行います。また、掘削前には、「海洋生態系観測と変動予測手法の開発」(研究代表者:山本 啓之、JAMSTEC海底資源研究開発センター環境影響評価研究グループリーダー)の研究の一環として、地球深部探査船「ちきゅう」の無人探査機を用いて、掘削地点周辺において事前の環境ベースラインデータを収集します。

(1)航海日程
平成26年7月9日 静岡県清水港出港
平成26年7月26日沖縄県中城港にて乗船研究チームが下船(研究航海の完了)
全19日間
なお、気象条件や調査の進捗状況によって変更する場合があります。
(2)乗船研究チーム
首席研究者:高井 研(海底資源研究開発センター海底熱水システム研究グループ上席研究員)
他、「次世代海洋資源調査技術」に参画する独立行政法人産業技術総合研究所、独立行政法人国立環境研究所および海底資源研究開発センターを中心としたメンバーで構成

(注記)1 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)

総合科学技術・イノベーション 会議(CSTI)が自らの司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野の枠を超えたマネジメントに主導的な役割を果たすことを通じて、科学技術イノベーションを実現するために新たに創設したプログラム。CSTIにより、「次世代海洋資源調査技術」を含む10課題が選定された。

(注記)2 統合国際深海掘削計画(IODP)

日・米が主導国となり、2003年10月から2013年10月まで実施した多国間国際協力プロジェクト。日本が運航する地球深部探査船「ちきゅう」と、米国が運航する掘削船ジョイデス・レゾリューション号を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行った。2013年10月からは、国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)に引き継がれた。

[画像:図1]
図1 海域図

図の赤枠の海域における3つの熱水域(伊平屋北オリジナルサイト、伊平屋北ナツサイト、伊平屋北アキサイト)の間の海域(水深約960 mから1130 mの海域)で掘削調査を行う予定

独立行政法人海洋研究開発機構
(本内容について)
海底資源研究開発センター 企画調整グループ グループリーダー 中村 亘
(「ちきゅう」について)
地球深部探査センター 企画調整室長 菊田 宏之
(報道担当)
広報部 報道課長 菊地 一成

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