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プレスリリース

2019年 9月 12日
国立研究開発法人海洋研究開発機構

国際深海科学掘削計画(IODP)第385次研究航海の開始について
〜グアイマス海盆のテクトニクスと海底下生命圏〜

国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)((注記)1)の一環として、「グアイマス海盆のテクトニクスと海底下生命圏」(別紙参照)を実施するため、米国が提供するジョイデス・レゾリューション号((注記)2)の研究航海が9月16日から開始されます。 UNESCOの世界遺産として登録されている「カリフォルニア湾の島々と自然保護区群」でも知られるカリフォルニア湾は、活発な海底の拡大と、表層海水からの有機物に富んだ堆積物の急速な堆積が同時に起こっている場所です。その中央部に位置するグアイマス海盆(海盆とは凹んでいる海底地形のこと)では、マリンスノー等に由来する堆積した有機物とマグマの熱の作用により、エネルギー豊富な環境が形成され微生物の生命活動を支えていると共に、海底下・海底表層・海水の間での熱と物質の交換に大きな影響を及ぼしていると考えられています。本研究航海では、カリフォルニア湾グアイマス海盆(図1)を掘削し、地質試料(コア)の採取・分析を行うことで、それらの具体的なプロセス、相互作用、及びそれらが地球の炭素循環に及ぼす影響を調べることを目的としています。

この研究航海には日本、米国、メキシコ、ヨーロッパ、中国、インド、韓国から計32名の研究者が乗船し、うち日本からは3名が参加予定です。

(注記)1 国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)

平成25年(2013年)10月から開始された多国間科学研究協力プロジェクト。日本(地球深部探査船「ちきゅう」)、米国(ジョイデス・レゾリューション号)、ヨーロッパ(特定任務掘削船)がそれぞれ提供する掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を推進する。

(注記)2 ジョイデス・レゾリューション号
[画像:ジョイデス・レゾリューション号]
JOIDES Resolution ©IODP

IODPの科学掘削に米国が提供する掘削船。日本が提供する地球深部探査船「ちきゅう」と比べて浅部の掘削を多数行う役割を担う。

別紙

グアイマス海盆のテクトニクスと生命圏:
海底拡大、マグマ活動、有機物の堆積と熱変成、微生物活動の連関
Guaymas Basin Tectonics and Biosphere:
feedbacks between continental rifting, magmatism, sedimentation, thermal alteration of organic matter, and microbial activity

1.日程(現地時間)

第385次研究航海

2019年9年16日
研究航海開始(首席研究者が乗船)
9月17日
日本からの研究者が米国カリフォルニア州サンディエゴにて乗船
(数日の準備の後出港)
カリフォルニア湾において掘削
2019年11月16日
カリフォルニア州サンディエゴに入港

なお、航海準備状況、気象条件や調査の進捗状況等によって変更の場合があります。

2.日本から参加する研究者(氏名50音順)

氏名 所属/役職 担当専門分野
Myriam A.C. Kars 高知大学/助教 古地磁気学者
諸野 祐樹 海洋研究開発機構/主任研究員 微生物学者
山中 寿郎 東京海洋大学/教授 無機地球化学者

3.研究の背景・目的

カリフォルニア湾のグアイマス海盆は、活発な海底の広がりと生産性の高い表層海水からの有機物に富んだ堆積物の急速な堆積が特徴の海盆です。活発な拡大システムと組み合わさった高い堆積速度は、海底下において堆積物へマグマが火成岩として貫入する独特な海洋地殻を生み出します。どろどろの流動状態にあるマグマが有機物豊富な堆積物に貫入(入り込むこと)することで、マグマによる堆積物の過熱が起こり、様々な反応が起こります。その結果、元々は静的な海底下が動的な環境となり、拡大軸(海底が広がっている中心)上の熱水帯だけでなく、その周辺においても炭素を含む様々な元素のサイクルを駆動します。貫入したマグマからの熱は有機物に富む堆積物を熱的に変化させ、二酸化炭素、メタン、石油、その他の変質生成物を形成します。この熱はまた、移流(物が流れること)による物質移動を推進し、海底下環境、及び海水中への拡散をもたらします。海底下堆積物中では、上記プロセスにより形成した温度及び化学勾配によりエネルギー豊富な環境が形成され、海底及び海底下において微生物の生命活動を支えていると考えられます。また、これらの微生物群集は岩石生命圏において炭素の安定性や移動を司る化学反応に重要な役割を果たしているとも考えられます。これらのプロセスは、リソスフェア(岩石圏)と上層の海水との間の熱と質量の交換に大きな影響を及ぼし、有機物に富む堆積物中の炭素蓄積において長期的な動態を決定する可能性が高いと考えられています。

本研究航海ではグアイマス海盆においてコアサンプルを掘削採取することで、上記プロセス、それらの相互作用、及びそれらが炭素循環に及ぼす影響を調べることを目的としています。

[画像:図1]

図1 本研究航海の掘削サイトの位置

表1 本研究航海の掘削サイト・孔の一覧(掘削順)

サイト・孔名 水深 目標掘削深度 作業予定日数
GUAYM-01B 1,600m 600m 7.5日
GUAYM-02B 1,600m 600m 7.6日
GUAYM-03B 1,750m 200m 4.2日
GUAYM-12A 1,750m 200m 4日
GUAYM-16A 1,839m 182m 2.8日
GUAYM-06B 2,013m 250m 5日
GUAYM-15A 1,821m 670m 6.3日
GUAYM-04B 1,850m 650m 6.2日
GUAYM-11A 1,821m 450m 5日
GUAYM-10B 1,845m 200m 4.2日

(航海準備状況、気象条件や調査の進捗状況等によって変更する場合があります。)

*図1はIODPウェブサイトより引用したものを改変
IODP JRSO・Expeditions・Guaymas Basin Tectonics and Biospehere
http://iodp.tamu.edu/scienceops/expeditions/guaymas_basin_tectonics_biosphere.html
【参考】IODP Copyright Statement
http://iodp.tamu.edu/about/copyright.html

国立研究開発法人海洋研究開発機構
(IODP及び本航海の科学計画について)
研究プラットフォーム運用開発部門 運用部 調査役 斎藤 実篤
(報道担当)
海洋科学技術戦略部 広報課

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