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オマーン掘削プロジェクト(Oman Drilling Project)(※(注記)1)の一環として、本年7月5日(木)〜9月5日(水)にかけて、同プロジェクトによって掘削された岩石コア試料を「ちきゅう」の船上ラボ設備において、詳細に記載・解析するプロジェクト(第2期)が実施されます。
本プロジェクトは国際陸上科学掘削計画(ICDP:International Continental Scientific Drilling Program)(※(注記)2)と国際深海科学掘削計画(IODP:International Ocean Discovery Program)(※(注記)3)の連携の下で、昨年7月から9月にかけて「ちきゅう」船上で実施したオマーン陸上掘削コア記載・解析(2017年 7月 14日既報)に引き続いて実施されるものです。
昨年実施した第1期では、300〜400m長の4本の掘削孔から得られた合計1,500mを超える、海洋下部地殻を構成する斑れい岩と呼ばれる岩石などの掘削コアの記載、化学分析、物性計測を実施しました。科学掘削船では「ちきゅう」船上ラボにのみ搭載されている医療用X線CT装置などを駆使した精密な岩石物性測定や化学分析と研究者による詳細な岩石記載を統合した解析を行い、海底下の物質(元素)移動の様子や、岩石の変成度と物性の相関関係を示すことに成功しました。
本年の第2期では、米国、欧州、オマーン等から計80名以上の研究者が参加(日本からは海洋研究開発機構、新潟大学、名古屋大学、金沢大学、広島大学、九州大学、北海道大学、東北大学、千葉大学、静岡大学等から、学生・ポスドクを含む計23名が参加)し、「ちきゅう」の船上設備を生かして、2か月間24時間体制で集中的にオマーンの岩石コア試料を詳細に記載・解析します。解析するコア試料は斑れい岩や蛇紋岩等全長1,800m分におよび、この岩体には海底に存在していた当時のモホロビチッチ地震波不連続面(モホ面、※(注記)4)を構成する試料を含みます。これらのコア試料を詳細に解析することで、かつての海洋モホ面の岩石学的実態や海洋地殻形成過程の解明が期待されます。
なお、本プロジェクトは、日本学術振興会科学研究費助成事業 基盤研究(A)「オマーンオフィオライト陸上掘削による地殻-マントル境界の物性とモホ面の実態解明(※(注記)5)」(JP16H02742)、基盤研究(S)「最上部マントルの構造とモホ面の形成過程の研究〜海と陸からのアプローチ〜(※(注記)6)」(JP16H06347)および基盤研究(B)「記載岩石学的特徴を加味した岩石物性計測:モホ面構造解析への寄与(※(注記)7)」(JP18H01321)の一環としても行われ、それぞれの先端研究の発展に繋がる基礎的な成果が得られると期待されます。
国際陸上科学掘削計画(ICDP: International Continental Scientific Drilling Program)の一環として、2016年〜2018年に実施された科学掘削計画。白亜紀の海洋地殻とマントルから構成される海洋プレートがアラビアプレートの大陸縁辺に位置するオマーンに乗り上げて露出する、オマーンオフィオライトと呼ばれる地層を複数の地点で掘削して、地殻から上部マントルまで連続的に情報を取得し、地殻-マントル境界とモホロビチッチ不連続面(モホ面)との関係、海洋プレートの形成と熱水変質の過程、風化作用への生物の関与などの広範な科学的課題に取り組む計画(2016年11月30日既報)。
ドイツ、米国、中国が主導国となり、1996年2月から始動した多国間科学研究協力プロジェクト。日本は1998年から加盟。「気候と生態系」「持続可能な地下資源」「自然災害」の3つの科学テーマを掲げ、地球変動の歴史を知り地下の活動的プロセスをとらえるために、各種陸上科学掘削計画を推進している。日本では、海洋研究開発機構が代表機関を、日本地球掘削科学コンソーシアム(※(注記)8)の陸上掘削部会が代表窓口を担当している。
2013年10月から開始された多国間科学研究協力プロジェクト。日本(地球深部探査船「ちきゅう」)、アメリカ(ジョイデス・レゾリューション号)、ヨーロッパ(特定任務掘削船)がそれぞれ提供する掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、海底下生命圏等の解明を目的とした研究を推進している。
地下深部において地震波の速度が急激に変化する面のことで、大陸で地下約25〜75km、海洋で約5〜6kmの深さのところにある。モホ面と略される。
2016年度から4年間の予定で実施される研究プロジェクト(代表: 高澤栄一、新潟大学自然科学系・教授)。マントル−地殻境界相当層を掘削し、コア試料の岩石学・地球化学・構造地質学的解析から、地球科学の未解決問題であるモホ不連続面の実態と、地殻−マントル境界の構造と物理的特性を明らかにすることを目的とする。また、掘削試料を地球深部探査船「ちきゅう」で記載・解析することにより、学生・若手研究者の育成および日本の海洋掘削技術の向上・発展に貢献する。
2016年度から5年間の予定で実施される研究プロジェクト(代表: 道林克禎、名古屋大学・教授)。小笠原・マリアナ海溝とオマーンオフィオライトのかんらん岩について、岩石構造組織の発達過程、弾性・電気伝導度・透水率等の物性測定、岩石−水反応実験等の多角的アプローチから、マントルとモホ面の形成過程を解明することを目的とする。この海と陸のかんらん岩の構造岩石学的特徴を比較検討して、最上部マントルの発達過程とそれを支配する要因を考察する。
2018年度から3年間の予定で実施される研究プロジェクト(代表:阿部なつ江、海洋研究開発機構・主任技術研究員)。オマーン掘削試料や、過去に海底から掘削された下部地殻〜最上部マントル物質を用いて、その記載岩石学的特徴を踏まえた岩石物性計測を行う。海域における海洋プレートの地下構造解析データと合わせて、海洋モホの岩石学的実態の解明に取り組む。
地球掘削科学の推進や各組織・研究者の連携強化を目的として、国内の大学や研究機関が中心となって2003年に設立されたコンソーシアム。IODPをサポートするIODP部会と、ICDPをはじめとする陸上掘削科学をサポートする陸上掘削部会から構成されている。主な活動は、地球掘削科学に関する科学計画・研究基盤の検討、関係機関への提言、地球掘削科学に関する科学研究等の有機的な連携、研究人材育成、国際プロジェクトへの支援および協力、情報発信・普及啓発の実施等。
図:オマーンオフィオライトの分布図。丸印が掘削地点。地殻、マントル、その境界であるモホ面を掘削し、採取されたコア試料を解析することにより連続的な情報取得を狙う。
[画像:図2]写真:オマーンオフィオライトの地殻-マントル境界付近コア試料。下部地殻を代表する斑れい岩(白)と最上部マントル試料のダナイト(かんらん岩、黒)が接している。