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2015年 10月 23日
国立研究開発法人海洋研究開発機構
この度、国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)(※(注記)1)の一環として、「北大西洋アトランティス岩体掘削による蛇紋岩化作用と海底下微生物活動との関連性の解明」(別紙参照)を実施するため、欧州が提供する特定任務掘削船(※(注記)2)の研究航海が10月26日から開始されます。
本研究航海では、北大西洋中央海嶺域に位置するアトランティス岩体の10地点を掘削し、コア試料の回収・分析を行うことで蛇紋岩化作用と海底下微生物活動との関連性を明らかにすることを目的としています。また、IODPとしては初めて、海底設置型の掘削装置を用いて海底下の岩石試料を採取します。この研究プロジェクトには日本から3名が参加するほか、米国、欧州、中国、韓国、オーストラリアから計32名の研究者が参加する予定です。
※(注記)1 国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)
平成25年(2013年)10月から始動した多国間国際協力プロジェクト。現在、日本、米国、欧州(18ヶ国)、中国、韓国、豪州、インド、NZ 、ブラジルの26ヶ国が参加。日本が運航する地球深部探査船「ちきゅう」と、米国が運航する掘削船ジョイデス・レゾリューション号を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行う。
※(注記)2 特定任務掘削船
IODPに用いる科学掘削船のうち、欧州が提供する特定任務掘削船は研究テーマや掘削海域に適した掘削船を傭船し、運用している。通常、傭船される掘削船に搭載されるのは最低限の研究設備のみのため、掘削されたコア試料のうち、船上ですぐに分析が必要なコア試料以外はそのままの状態でブレーメン大学にあるコア保管庫に移送され、航海終了後、ブレーメン(ドイツ)のコア保管庫においてコア試料の基礎的な記載・分析やサンプリングを行う。そのため、特定任務掘削船の航海には船上で分析を行う一部の研究者のみが参加している。
別紙
北大西洋アトランティス岩体掘削による蛇紋岩化作用と海底下微生物活動との関連性の解明
1.日程(現地時間)
なお、気象条件や調査の進捗状況等によって変更の場合があります。
2.日本から参加する研究者
※(注記)ブレーメンにおける掘削試料の記載・基礎分析のみ参加
3.研究の背景・目的
北大西洋中央海嶺付近(北緯30度)には、マントル物質であるカンラン岩を含む特殊な岩体(アトランティス岩体)が分布し、その周辺にはロストシティーと呼ばれる、90°Cほどの比較的低い温度の熱水が湧き出す熱水噴出域が存在しています(図1)。この熱水噴出域では岩体中のカンラン岩と熱水が接触し、反応することによってカンラン岩が蛇紋岩に変質する蛇紋岩化作用が起こっていると考えられ、微生物などの地下生命圏の存在も知られていますが、それらの詳細は分かっていません。このため、本掘削航海では、熱水活動と蛇紋岩化作用の関連性、及び比較的若い超塩基性〜塩基性岩(カンラン岩、蛇紋岩、はんれい岩、玄武岩など)に存在する地下生命圏の範囲と活動を明らかにすることを主な科学目的としています。
なお、本掘削航海は、イギリスの海洋調査船「ジェームス・クック」(図2)によって実施され、掘削に当たっては、IODPとしては初めてブレーメン大学、及びイギリス地質調査所がそれぞれ保有する海底設置型掘削装置(図3)を用い、ロストシティー熱水噴出域を中心とする10地点(図1、表1)において掘削を行い、コア試料の採取・分析を行います。