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2014年 9月 24日
独立行政法人海洋研究開発機構
日本地球掘削科学コンソーシアム
独立行政法人産業技術総合研究所
国際陸上科学掘削計画(ICDP: International Continental Scientific Drilling Program)(※(注記)1)の一環として、アルパイン断層深部掘削プロジェクト「Alpine Fault, Deep Fault Drilling Project(DFDP)」が10月1日から開始されます。
ニュージーランド南島西海岸のアルパイン断層は、平均330年の間隔で大地震を発生させている活動度の高い断層で、最近では1717年に活動しています。本科学掘削では、アルパイン断層深部における地震発生過程を解明するため、ニュージーランド南島西海岸のファタロア川(Whataroa River)で、深度約1.3 kmの掘削を行います。この掘削では、断層試料の回収や物理検層などを実施する予定です。
日本からは、日本地球掘削科学コンソーシアム(※(注記)2)の海外若手派遣プログラムのサポートを受けた大学院生・ポスドク3名を含む計12名が参加します。日本とニュージーランドのほか、米国、欧州、カナダ、オーストラリアからの研究者も含め、計90名以上が参加します。 なお、本科学掘削の準備として、計画立案段階において国立大学法人東京大学が、掘削実施段階において独立行政法人産業技術総合研究所がそれぞれ中心となり、日本地球掘削科学コンソーシアムのサポートのもと、ニュージーランド側研究者との協議を進めてきました。また、文部科学省の科学研究費補助金事業、新学術領域研究「地殻ダイナミクス-東北沖地震後の内陸変動の統一的理解-(※(注記)3)」の一環としても、本科学掘削研究に取り組みます。
※(注記)1 国際陸上科学掘削計画(ICDP: International Continental Scientific Drilling Program)
ドイツと米国が主導国となり、1996年(平成8年)2月から始動した多国間国際協力プロジェクト。日本は1998年より加盟。現在、日本のほかには、欧州(14カ国)、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、インド、イスラエル、中国、韓国の計23カ国が加盟。地球表層の地殻変動(地震や火山)、地球環境変動、隕石衝突、燃料資源に関する科学掘削研究を推進している。日本では、独立行政法人海洋研究開発機構が代表機関を、日本地球掘削科学コンソーシアムの陸上掘削部会が代表窓口を担当している。
※(注記)2 日本地球掘削科学コンソーシアム(J-DESC: Japan Drilling Earth Science Consortium)
地球掘削科学の推進や各組織・研究者の連携強化を目的として、国内の大学や研究機関が中心となって2003年に設立されたコンソーシアム。現在、55組織が加盟。深海掘削国際共同計画である国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)をサポートするIODP部会と、国際陸上科学掘削計画をはじめとする陸上掘削科学をサポートする陸上掘削部会から構成されている。主な活動は、地球掘削科学に関する科学計画・研究基盤の検討、関係機関への提言、地球掘削科学に関する科学研究などの有機的な連携、研究人材育成、国際プロジェクトへの支援及び協力、情報発信・普及啓発の実施など。
※(注記)3 新学術領域研究「地殻ダイナミクス-東北沖地震後の内陸変動の統一的理解-」
2014年(平成26年)度より5年間の予定で実施される新学術領域研究(代表: 飯尾能久、京都大学防災研究所・教授)。応力と歪・歪速度と弾性定数や粘性係数等の媒質特性との関係及びその時空間分布を明らかにし、東北沖地震後に日本列島の内陸地殻で生起している諸現象を含め、島弧地殻の変動を統一的に理解することを目的とする。アルパイン断層は、断層近傍の応力・歪場の時空間的変化の把握を行う上で重要な研究対象となる。
別紙
1.日程(現地時間)
なお、掘削作業の進捗状況などによって変更される場合があります。
2.日本から参加する研究者(五十音順)
*日本地球掘削科学コンソーシアムの海外若手派遣プログラムによる参加
3. アルパイン断層の概要と科学目的
ニュージーランド南島西海岸のアルパイン断層は、オーストラリア—太平洋のプレート境界をなすトランスフォーム断層(*1)です(右下図)。この断層では地震のたびに、水平方向だけでなく鉛直方向にも大きなずれが生じます。このずれに伴い南東方向に傾斜した断層の上盤 (南東側) は年間平均9-10 mm/年と非常に速い速度で隆起し、標高 3,000 m を超える山岳地帯、サザンアルプスをはじめとした大自然を作っています。
このようなアルパイン断層は、地震発生過程を解明する上でも重要な場所です。岩石は強い力を受けると、地表付近では脆性(ぜいせい)的に(*2)破壊しますが、温度が高い地下深くでは塑性(そせい)流動(*3)を起こし破壊しません。陸域の断層に沿う大地震は多くの場合、塑性流動を起こす領域と脆性的に破壊する領域の境界付近(脆性-塑性遷移領域)が震源となります。
アルパイン断層では、速い隆起によって新しい地質時代に脆性-塑性遷移領域付近で断層運動を被った岩石が浅部まで上昇しています。そのため、深度約1.3 kmにあるアルパイン断層の掘削により断層試料を回収し、試料の観察・分析を行うことで、脆性-塑性遷移領域付近で過去にできた地質構造と地球物理学的観測データの直接比較を行い、断層運動を支配するメカニズムの解明を目指します。これによって、断層周辺の地質構造形成と地震発生過程の関係を明らかにできると期待されます。
*1 トランスフォーム断層
プレート境界における横ずれ断層のこと。アルパイン断層と同様に陸上に見られるトランスフォーム断層としては米国カリフォルニア州のサンアンドレアス断層が有名。
*2 脆性
物質(この場合、岩石)に力が加わったとき、亀裂が急速に進展し最終的に破壊する性質のこと。
*3塑性流動
高温高圧下で物質(この場合、岩石)に生じる永久的な変形のこと。