一律「管理」から個別「支援」へ――これからのマネジャーのための1on1活用法とは
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部下と向き合って、しっかり踏み込んで話をする1on1は、紛れもなくマネジメントの手法である。一律「管理」から個別「支援」へと変わるマネジメントにとって、いま目の前の部下の様子や意思を知るために1on1は不可欠だといっていい。『部下が自ら成長し、チームが回り出す1on1戦術』の著者である人材・組織開発コンサルタントの由井俊哉氏と、このほど『上司と部下は、なぜすれちがうのか』を上梓した1on1支援クラウドシステム「Kakeai」を開発販売するKAKEAI代表取締役社長兼CEOの本田英貴氏が、コロナ禍におけるマネジャーの困難と、課題解決のあり方について語った。(聞き手、構成/間杉俊彦)
マネジャーはコロナ禍でもっとも激しい変化を迫られた仕事
――由井さんの本は「マネジャーのための『対話の技術』」と銘打っています。一方、本田さんの本では「働く一人ひとりと会社との結節点としてマネジャーの担う責任は非常に大きい」と書かれています。今のマネジャーの悩みや課題について、どのようにお考えでしょうか?
ODソリューションズ代表。1985年株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)入社。人材アセスメントの営業を経て、現リクルートマネジメントソリューションズで、人材・組織開発領域のソリューション営業及びコンサルティング業務に携わる。2012年よりコーチング事業の立ち上げを推進し、事業責任者を務める。2016年に退職し、「リーダーシッップ・組織開発」を事業とする株式会社ODソリューションズを設立。発行部数7万部超の『ヤフーの1on1――部下を成長させるコミュニケーションの技法』(本間浩輔著)、『1on1ミーティング――「対話の質」が組織の強さを決める』(本間浩輔・吉澤幸太著)の刊行をサポート。
由井 会社によって違いはあるでしょうが、おおむね共通しているのは、非常に忙しいことですよね。どこでもマネジメントとプレイングだと後者の比率が高い。そして、人が足りない。つねに適正人員の80%ぐらいで120%ぐらいのことをやろうとしているのが現実ではないでしょうか。聞いていると、本当に過酷です。マネジャーが、自分もプレーヤーとして結果を出さなければならないし、それが組織として期待されていることである。もちろん多くの人がそれに答えようとするのですが、そのことが部下の成長の芽を摘んでしまっているということもある。それでも目の前の仕事を回さなければならないから、もう大変、という感じですね。
本田 本当にその通りですね。そのような状況がありながら、現場の組織に期待されることが大きくなっている。かつてのようにトップダウンで先を見ながら戦略を描いて、そこに対してピラミッド構造の中で仕事を進めていくということでは、なかなか勝てない。つまりは現場が強くないとダメだ、と強いられる過酷さですね。一方で、そうするには適時適切にビジネスの状況もメンバーの様子もつかんでいかないといけないのに、コロナ禍になってメンバーの様子もわからない。しかも、時代がマネジャーに求める役割は、これまでのように「管理」ではなく「支援」へと移ってきています。物理的な忙しさと、メンバーとの距離、そして、マネジメント観の変化という三重苦にさらされ、マネジャーはコロナ禍でいちばん変化した仕事なんだろうと思います。
マネジメントを属人化させないために、マネジャーがまず知るべきこと
由井 「マネジャーはなんでもできなければいけない」「つねに正しい判断ができなければいけない」と、ほとんどのマネジャーが思っていますよね。そして、プレーヤーとしてもそこで一番でなければいけない、と。でも実はそうではなくて、企業としてはマネジャーとして組織をつくっていくとか、人を育てていくというところで、しっかりパフォーマンスを出してほしいのだけど、その手前のところを一生懸命がんばろうという人たちが多いです。なぜかというと、そこで実績を上げた人が選ばれているからそこをやりたいと思っているし、それをやることでメンバーから「頼りになるマネジャーでよかったです」とフィードバックをもらえるからです。そうではなく、プロフェッショナル・マネジャーという意識を持たなければいけないと思います。マネジメントそのものが一種の職種である、ということです。
本田 KAKEAIは「マネジメントを属人化させない」ということを事業のテーマとして掲げていますが、「プロフェッショナル・マネジャーという意識を持たなければいけない」というのは、ほぼ同じことを意味していると思います。マネジメントは1つの職種だ、という認識がないからこそ、特に人に対するマネジメントが属人的なままで、個人の力でなんとなくやってきた。マネジャーという職種が定義できていない、ということは、属人化したままであることを指していると思います。
由井 そのことが「1on1がなかなかうまくいかない」ということの根っこのところにありそうですね。最近、1on1研修と並んでマネジメント研修の案件が増えているのですが、そもそも「マネジメントとはなんなのか」という理解がそろっていません。研修では、「マネジャーの役割は、ビジョンを示して、人を生かして、組織をまとめていく、という3つがあります。マネジャーの責任は、組織の成果を上げることです。そのためにどうしますか?」という問いを投げて、いろいろなワークを通して考えていくのですが、結構みなさん苦労しています。特に、「ビジョンを示す」というところが苦手。ビジョンを示すというのは、自分の存在意義を示すとか、自分はどういう役割で何を実現したいのかということを、自分ごととして考え、それを発信するということですが、それをやってきていない人たちが多いです。それがないなかで「1on1をやれ!」ということだけをインプットしてしまうと、要はマネジャーというのは自分の指針を出すみたいなこととは関係なく話だけ聞いていればいい、と勘違いしてしまうので、余計におかしなことになってしまう。1on1というのは自分のことは言っちゃいけなくて、聞くだけにしろ、という誤解は根深いです。
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