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AIをサプライチェーンで鍛えれば、不測の事態に強いモデルができる

[シリーズ対談]Deloitte AI Ignition|vol.13

2023年11月22日
サマリー:多くのプレーヤーが関わり、かつモノとキャッシュ、データの流れが複雑に絡み合うサプライチェーンでは、不測の事態が起きやすい。そのサプライチェーンでAIを鍛えることで、新たな進化が生まれる可能性がある。

パナソニックの持ち株会社化に伴って発足したパナソニック コネクトは、ハードとソフト、クラウドを組み合わせたサイバーフィジカルシステムの構築によって、ビジネスモデルの変革を果たそうとしている。そこでカギを握るのが、システムの自律性を高めるAI(人工知能)である。サプライチェーン領域におけるソリューションの世界大手ブルーヨンダー(Blue Yonder)という切り札を活かすためにも、同社がAIにかける期待は大きい。

同社CTO(最高技術責任者)の榊原彰氏とDeloitte AI Institute所長の森正弥氏の対話から見えてきたのは、サプライチェーン領域でAIを鍛えることによる、AI進化の新たな可能性である。

IBMとマイクロソフトで大きな変革を経験

榊原さんは日本アイ・ビー・エム(IBM)、日本マイクロソフトを経て、パナソニック コネクトの前身であるパナソニックの社内カンパニー、コネクティッドソリューションズ社にCTOとして参画されました。多彩な経歴をお持ちですね。

榊原 IBMではシステムエンジニアとしてキャリアをスタートし、金融機関や製造業のシステム開発を担当しました。その後、社内にシステムアーキテクトという職種ができて、アーキテクトとしてシステムインテグレーションに長く携わった後、東京基礎研究所でサービス・オリエンテッド・アーキテクチャー(サービス指向のシステム設計様式)のモデリングなどを研究しました。

研究所の仕事は面白かったのですが、コンサルティング部門のグローバル・ビジネス・サービス(GBS)に呼び戻されて同事業のCTOを務め、IBMでのキャリアの最後はスマートシティ開発に携わるスマーター・シティ事業のCTOでした。

システム開発の現場から上流工程を主導するアーキテクト、そして基礎研究と、テクノロジー全般の知識を身につけられたうえ、企業コンサルティングの経験まで積まれたわけですから、なるべくしてCTOになられた感じですね。IBMではディスティングイッシュトエンジニア(技術理事)でもあったんですよね。何人くらいいらっしゃったんですか。

榊原 当時は日本で20人くらい、世界で500人ほどだったと思います。

IBMのテクノロジー組織にはどんな特徴がありましたか。

榊原 IBMは世界中の大企業がクライアントで、産業・技術分野ともにカバレッジが広かったので、グローバルにテクニカルコミュニティが形成されていました。横のつながりが強かったですし、経営陣との距離が近かったですね。

たとえば、アカデミー・オブ・テクノロジーというグローバルなコミュニティは、CEOやそのほかのCxOから新技術の動向やビジネスに必要なテクノロジーなどに関して諮問を受け、答申していました。

このアカデミーから選抜されたチームは取締役会直結で、企業を買収する際にテクノロジーのデューデリジェンスなどを行っていて、私も手伝ったことがあります。

その後、日本マイクロソフトのCTOに転身され、ソフトウェア開発拠点であるマイクロソフトディベロップメントの社長を兼務されたわけですが、マイクロソフトにはどんな魅力を感じましたか。

榊原 マイクロソフトはPC用ソフトウェアの開発・販売やライセンス事業が中心の会社でしたが、サティア・ナデラ氏がCEOに就任した2010年代半ば以降、クラウド事業とリカーリング(継続・循環)モデルに大きく舵を切りました。複合現実などの新しいテクノロジーにも積極的に投資していて、そういうスピードとダイナミズムが魅力的でしたね。

IBMとマイクロソフトでの経験は、パナソニック コネクトでどう活きると思いますか。

パナソニック コネクト 執行役員 ヴァイス・プレジデント チーフ・テクノロジー・オフィサー、技術研究開発本部 マネージング・ダイレクター

1986年日本アイ・ビー・エムに入社。金融機関、製造業を中心にシステム開発を担当。2005年、ディスティングイッシュトエンジニア(技術理事)に就任するとともに、東京基礎研究所でソフトウェアの研究に従事。2008年からグローバル・ビジネス・サービス(GBS)事業を担当し、2010年からGBSのCTO(最高技術責任者)、2012年からスマーターシティ事業CTOを務めた。2016年日本マイクロソフト執行役員CTOに就任し、2018年からマイクロソフトディベロップメント社長を兼務。2021年11月パナソニックの社内カンパニー、コネクティッドソリューションズ社常務CTO。2022年4月パナソニック コネクトの発足に伴い、現職。

デロイト トーマツ グループ パートナー、Deloitte AI Institute 所長

外資系コンサルティング会社、グローバルインターネット企業を経て現職。eコマースや金融における先端技術を活用した新規事業創出、大規模組織マネジメントに従事。世界各国のR&Dを指揮していた経験からDX(デジタル・トランスフォーメーション)立案・遂行、ビッグデータ、AI(人工知能)、IoT、5Gのビジネス活用に強みを持つ。東北大学特任教授。日本ディープラーニング協会顧問、企業情報化協会常任幹事。著書に『ウェブ大変化 パワーシフトの始まり』(近代セールス社、2010年)、『両極化時代のデジタル経営』(共著:ダイヤモンド社、2020年)、『信頼できるAIへのアプローチ AI活用で踏まえておきたい9つのチェックポイント』(監訳:共立出版、2023年)など。

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