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アラブ首長国連邦アブダビ環境庁ハイレベル代表団と資源循環・廃棄物管理や大気環境保全手法に関する意見交換を行いました
(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会同時配付)
国立研究開発法人国立環境研究所
NIESは、資源循環・廃棄物研究分野及び大気環境研究分野での国際連携強化を目的に来所した代表団に対し、NIESの資源循環・廃棄物管理の研究や大気観測技術とモデル開発について説明し、意見交換を行いました。また、レーザー光を利用して上空の微粒子の分布をリアルタイムで把握し、黄砂と人為汚染粒子の区別などが可能な小型ライダーを紹介しました。
今回の代表団の訪問は、日本の環境研究の知見を、アブダビ市における廃棄物管理や大気観測技術の向上に活用する新たな共同研究の可能性を模索する重要な一歩となりました。
1. 訪問の概要
訪問日:2025年1月14日(火)
訪問者:アラブ首長国連邦アブダビ環境庁(EAD)の事務次官ら幹部8名
目的:国際的な連携強化と環境技術についての意見交換及び施設見学
主催:NIES資源循環領域
2. 意見交換の内容
1.EAD事務次官によるアブダビ市における環境政策の取組と課題の紹介
2.NIES資源循環領域長によるNIES及び資源循環領域の概要説明
3.資源循環・廃棄物分野の現状と課題
(1)NIES資源循環領域の職員より資源循環・廃棄物研究分野での最新の研究成果と取組を紹介
(2)アブダビ市における廃棄物管理の現状や課題及びNIESとの共同研究の可能性について議論
4.大気環境分野の現状と課題
(1)NIES地域環境保全領域の職員より大気環境研究分野での最新の研究成果と取組を紹介
(2)アブダビ市における大気汚染対策の現状や課題及びAI技術導入による対策強化について議論
3. 施設見学の内容
小型ライダーによる大気中の微粒子観測デモンストレーションを実施しました。
4. 訪問の意義と成果
今回の訪問は、NIESとEADの代表団が環境保全に関する知見を共有し、資源循環・廃棄物管理及び大気環境保全における連携を強化する重要な機会となりました。EADは、2040年までに廃棄物の90%削減、循環経済の推進、大気汚染管理を優先事項として掲げており、今回の訪問ではこれらを中心に議論を進めました。
特に廃棄物管理分野では、次のようなテーマを活発に議論しました。
・日本は廃棄物焼却が主流である理由と現状の分別収集との関係性について解説し、熱処理技術がエネルギー回収や環境負担削減に果たす役割について議論しました。
・日本の廃棄物処理の状況や、脱炭素化に向けて焼却処理若しくは焼却を代替する資源化処理から二酸化炭素を回収・再利用する技術(CCUS)の実現可能性について議論しました。
また、大気環境保全分野については、次の点に焦点を当てた議論を行いました。
・衛星・地上観測データとシミュレーションモデルを組み合わせる同化技術によって、大気汚染予測モデルの精度を向上させる手法について議論しました。
・ライダー技術を用いた微粒子(エアロゾル)の鉛直観測により、微粒子の高度分布を高精度で測定できる点が注目されました。さらに、粒子の形状を区別できる技術や、ライダーネットワークの事例を共有し、アブダビ市での適用可能性が検討されました。
さらに、EADの強みとして、環境テクノロジーの活用とAIの導入が挙げられます。特に、高度な大気浄化タワーや研究船「偉大なる真珠」を活用したデータ収集と政策立案が議論の中で大きな注目を集めました。これらの議論を通じ、両国の技術的強みや研究手法の共有が深まり、将来的な協力の基盤が築かれました。
5. 今後の展望
今回の訪問を契機に、両機関は継続的な意見交換を行い、具体的な協力プロジェクトを模索する方針です。中東諸国との環境分野での協力は、今後さらに重要性を増していくと考えられています。特に、廃棄物管理の改善、大気質のリモートセンシング、脱炭素及び気候変動適応の分野では、日本の技術や知見が具体的な貢献を果たすと期待されています。一方で、NIESにとっても今回の協力は、循環産業の国際展開やカーボンニュートラルに向けた取組を推進するうえで大きなメリットをもたらすものです。特に、アブダビ市の砂漠環境を対象にした技術適用は、地球規模での課題解決に向けた貴重な実証の場となる可能性を秘めています。
また、今回の交流を通じて、将来的にNIESの職員がアブダビ市を訪問する可能性も議論されており、現地で実際の課題を共有しながら連携を深める契機となることが期待されています。EADのテクノロジー活用やAIの導入といった強みを、日本の研究技術と融合させることで、地域及び地球規模での環境課題解決に向けた新たなアプローチを開拓することが可能となるでしょう。これにより、環境保全への貢献だけでなく、持続可能な社会の構築に向けた国際的な協力が一層深まる見通しです。
6. 発表者
本報道発表の発表者は以下のとおりです。
国立環境研究所
資源循環領域
領域長 南齋 規介
副領域長 倉持 秀敏
資源循環・廃棄物研究国際支援オフィス
オフィスマネージャー 石垣 智基
国際研究支援専門員(資源循環領域)青木 多美
7. 問合せ先
【研究に関する問合せ】
国立研究開発法人国立環境研究所 資源循環領域
副領域長 倉持 秀敏
資源循環・廃棄物研究国際支援オフィス
オフィスマネージャー 石垣 智基
国際研究支援専門員(資源循環領域)青木 多美
intwaste_ra(末尾に"@nies.go.jp"をつけてください)
【報道に関する問合せ】
国立研究開発法人国立環境研究所 企画部広報室
kouhou0(末尾に"@nies.go.jp"をつけてください)
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