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Info
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タイトル: 皆さんはマーシャル・カーター&ダーク社を誤解してらっしゃる!
翻訳責任者: C-Dives C-Dives
翻訳年: 2025
著作権者: TheCommunity TheCommunity (匿名希望の著者の代理投稿)
原題: You're Wrong About Marshall, Carter and Dark!
作成年: 2025
初訳時参照リビジョン: 5
元記事リンク: ソース
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釣りタイトルで恐縮です - 匿名のエッセイはタイトルだけで注目を集めなきゃいけないものですから。
私がこのタイトルで実際に言わんとしているのは、オークションハウス (競売会社) の実際の在り方に多少なりとも似通ったものを描写している人が、SCP Wikiに全く存在しないということです。これは信じられないほど大規模な問題で、MC&DのGoIフォーマットには、オークションハウスという概念に真っ向から対立しているように思われる要素が含まれます。MC&Dをオークションハウスらしく修正するより、いっそオークションハウス扱いするのを止めた方が良いレベルです。
現実のオークション業界はとっても狭いので、公にその一員であることを明かしたくはないのですが (だからこのエッセイは匿名投稿です) 、私は数年間そこで働いています。この分野の専門家でこそありませんが、少なくとも業務フローや、高級志向のオークションハウス (クリスティーズやサザビーズなど) がどのように運営されているかという初歩的な知識はあります... どうやら他のサイトメンバーには無いようですが。クリスティーズとサザビーズは最大手・最高級のオークションハウスなので、マーシャル・カーター&ダーク社が本当はどう機能すべきかを知る上で、最適な参考資料となるでしょう。
明確にしておきますが、これは皆さんにマーシャル・カーター&ダーク社の書き方を改めるべきだと言うためのエッセイではありません。多くのサイトメンバーは、MC&Dを珍品販売店が併設された高級紳士クラブのように描写する傾向がありますが - 全く問題ありません! オークションハウスよりも、むしろそちらの方がMC&Dの役割のより現実的な解釈かもしれません。オークションハウスのビジネスモデルは潜在的な買い手が大勢いるのを前提としています - だから、マスカレード・プロトコルのせいで不可思議の存在が周知されていない世界観にはそぐわない可能性があります。もしこの記事を読んで "興味深いけど、自分の物語/ヘッドカノンには自分流の書き方が合ってるな" と思ったら、是非そうしてください。ただし、次に説明する観念から逸脱するのなら、MC&Dを"オークションハウス"と呼ぶべきかどうかを、もう一度考えてみてくださいね!
委託販売モデル
大前提: オークションハウスは商品を購入しません。商品を所有しません。在庫を保有しません。
これこそMC&Dを描写する際にありがちな最大の誤解であり、MC&Dの魅力を殺し、オークションハウスの実際の仕組みから遠ざけている致命的な欠点です。オークションハウスは、大抵の場合、匿名の売り手と匿名の買い手を仲介するために活動する中立的な第三者機関です。販売する商品を手元に置くことはあっても、その所有権を握ることはありません。更に、彼らは通常、既に市場に出回っている商品しか販売しません (例外もありますが) 。
"スペシャリスト" - 品物を鑑定し、それを委託するように所有者を説得するオークションハウスのベテラン代表者 - と委託者が、何かを売却するという合意に達すると、オークションハウスは委託者との契約を結び、 "リザーブ" と見積価格を取り決めます。リザーブとは売り手が希望する最低落札価格のことで、通常は公表されません。このような商品を "ロット" と呼び、複数の物品の一括購入枠として扱われる場合もあります。ロットは "ノー・リザーブ" 、つまり最低落札価格の設定無しで競売に掛けられ、入札額の多寡に関係なく売却される場合もありますが、ロットがノー・リザーブであることは普通は開示されます。リザーブが最低見積価格を上回ることは決してありません。見積価格はオークションハウスが予想する売値の範囲であり、公表されますが、数多くの要素を考慮に入れて設定されるので、時として誤解を招きます。ロットへの関心を高めるために、見積価格がかなり低く設定されることもあるからです。
これはMC&DのGoIフォーマットの大きな問題点の一つです。"価格"の欄はある (そして名目上、価格幅を許容している) ものの、リザーブへの言及がありません。公正な市場価格を提示しなければならない極々稀なケースを除いて、オークションハウスは"価格"という用語を使用しないのです。MC&Dのフォーマットは次のようにした方が適切でしょう。
リザーブ | XXXX USD/GBP/HKD |
---|---|
最低見積価格 | XXXX USD/GBP/HKD |
最高見積価格 | XXXX USD/GBP/HKD |
また、スペシャリストと委託者の間では "ベンダーズ・コミッション" も取り決められます。これはオークションハウスが落札価格 ("ハンマープライス"と呼ばれる) から受け取る手数料を指しており、一般的には0〜10%で、大抵は委託されるロットの好ましさによって決まります。現実世界では、これはしばしば特定のオークションハウスに顧客を誘致し、品物を委託させる手段として利用されます。例えば、サザビーズが顧客に7%のベンダーズ・コミッションを提案したと知ったクリスティーズが、それを下回る4%の手数料を提示するという具合ですね。マーシャル・カーター&ダーク社には競合相手が存在しないので、この点においてもっと冷徹な態度を貫き、各顧客と交渉するのではなく、全員に一律の手数料を請求する可能性もあります (ヘリテージ・オークションズはこの方針を取っていますし、サザビーズもごく短期間これを試みました) 。
オークションハウスのもう一つの主要な収入源は "バイヤーズ・プレミアム" 、つまりハンマープライスに上乗せされる手数料です。バイヤーズ・プレミアムは全ての落札者に請求され、通常は26〜28%ですが、際立って高額なロットの場合は14〜15%ほどです。一律のベンダーズ・コミッションを請求するオークションハウスでは、バイヤーズ・プレミアムも一律20%の傾向があります。これらの料率は上昇傾向にあるため、過去のMC&Dに関する作品を書く場合は異なる可能性があります。では実際にどんな感じか、簡略化してみましょう!
アリスはロット1及び2に入札し、両方の最高額入札者となった。
ロット1はリザーブ100ドル、見積価格120〜200ドルで、アリスは90ドルを入札した。入札額がリザーブを下回ったので、ロット1の落札は成立しなかった。委託者はオークション後にロットを返却された。
ロット2はリザーブ70ドル、見積価格80〜120ドルで、アリスは100ドルを入札した。入札額がリザーブを上回ったので、アリスはロット2を落札した。MC&Dが25%のバイヤーズ・プレミアムを設定し、委託者に10%のベンダーズ・コミッションを課すと仮定した場合、アリスはMC&Dに125ドルを支払う必要がある。MC&Dはそこから90ドルを委託者に支払い、35ドルを自社の利益とする。
委託品そのものに話を戻しますが、品物自体は一般的にオークションハウスに預けられ、オークション開催まで一時的な在庫として保管されます。これは通常、MC&D関連記事における在庫の描かれ方とは一致しません。GoIフォーマットの"入手可能性"欄にはこのような記述があります。
入手可能性 | 無し/唯一無二/現在在庫あり(数量を記入)、世界中に(数量を記入)あると見積もられる/供給チェーンが確立している |
---|
オークション業界では、この欄に当て嵌まるのは"無し/唯一無二"だけです。それ以外の項目はオークションハウスの役割と全く合致しません。オークションハウスは供給チェーンを持たず、同一の品物を複数在庫として保有することもありません。オークションハウス複数の人が欲しがるユニークな品物に関心があります。これは些細な問題ではなく、ビジネスモデルにとって極めて重要なことです。 オークションハウスは他所で買える物や複数ある物ではなく、一点物の希少品を売っています。 これは鉄則でこそありませんが、MC&Dは普段は唯一無二の品物を売っており、それ以外は例外的なケースだと仮定すべきでしょう。
年間のオークション回数
現実世界のほとんどのオークションハウスには、美術品、ワイン、時計などを専門的に扱う部署があり、各々が毎年、個別にオークションを企画します。通常、1つの部署は年に2〜4回のオークションを開催し、ロット数は100〜200点の範囲に収まる傾向があります。しかし、この点において、私はMC&Dが現実のオークションハウスと同じように運営されているとは思えません。"異常存在"は既にかなり明確に定義された特殊なカテゴリなので、MC&Dはありとあらゆる種類のアノマリーを扱う大規模な専門部署を1つだけ有することになるでしょう。おまけに、アノマリーは美術品よりも遥かに入手困難なので、オークションも小規模になります - 現実味のあるロット数は50〜100点ぐらいですかね。オークション1回あたりの平均ロット数として私が想像できる絶対的な下限は25点です - それ以下だとオークションを開催するのに不十分です - そして広告などの支出を賄うには一定の諸経費が必要です。MC&Dが常設のオークション会場をどこにも構えておらず、オークションごとに異なる会場を借り切っていると考えても不合理ではないでしょう。会場の維持は物凄い出費になりますから。
「そんなことはない! MC&Dには美術部門、食品部門、兵器部門などが沢山あるはずだ!」という方々もいらっしゃることでしょう。しかし、MC&Dが年間何百種類もの異常な美術品を販売しているとは、私にはどうも想像できません。あらゆる類のアノマリーを年間100点売っている方がもっと妥当な気がします。私個人としては、彼らが専門部署を1つ抱え、オークションを支店の場所ごとに毎年2回開催し、1ヶ所・1回あたり年間75点前後を販売しているだろうと見ています。この数値は、あなたが考えるMC&Dの規模がどの程度か、あなたの物語でアノマリーがどの程度の存在感を持つか、そして虚構が暴かれているか否かによって容易に上下調整できます。
仮にMC&Dが複数の部署を構えているなら、主要な支店にもそれと同じ専門部署があるはずです。彼らは必要に応じて可能な限りお互いを支援しますが、通常は独立して業務を行います。つまり、ニューヨーク支店の異常食品部門と、ロンドン支店の異常食品部門は、ほぼ干渉し合いません。
奇妙なことに、支店の存在は、マーシャル・カーター&ダーク社の最も厳格に定められた要素です。テーマに含まれているロゴには、ニューヨーク、ロンドン、香港の3ヶ所が明記されています。私の見解では、MC&Dがこの3つの拠点以外を維持できるだけのロット委託を受けているとは思えません。他の都市にもっと小さな支店があり、より小規模かつ低頻度のオークションを開いているという見方もできますが、そういうサテライトオフィスは自分たちでオークションを開くよりも、三大都市に品物を送ってしまう可能性の方が高いでしょうね。これらのサテライトオフィスは、主要支部の補佐役として機能しているとすれば、非常に少人数です - 多分5人以下です。
これら全てをまとめた私の見解は "マーシャル・カーター&ダーク社は年間合計6回のオークションを開催し、毎年平均して450点のアノマリーを競売にかけている" です。皆さんは自由にこの数字を変えていただいて結構ですが、ここでの計算とその含意をどうか心に留めてください。もし新しいMC&Dの支店を追加するなら、そこもやはり年2回オークションを開くか、もしくは数人しか務めていない小規模オフィスでしょう。そしてMC&Dが複数の専門部署を抱え、テーマ別でオークションを開くならば、オークションの開催数は急激に増え、部門1つを支えるのに十分な数のアノマリーを毎年準備できていることになります。
余談ですが、そもそもMC&Dがただ存在するだけでも途方もない取引高が想像できます。国際支店3ヶ所、オークションは支店ごとに年1回、アノマリーはオークションごとに平均25点という絶対的な最小規模のMC&Dでさえ、毎年毎年75点のアノマリーを競売にかけます。ここまで極端に低く見積もっても、彼らはかなり多くのアノマリーを出品している! 私がより合理的だと思う数値は毎年450点ですが、やはり相当な数です。MC&Dの多くのバージョンや解釈はそれ以上の規模を暗示しています!
MC&Dが売却する品物の数を考慮すると、彼らが競売にかける物の大多数はSCPオブジェクトの要件を満たさず、恐らくはAnomalousアイテムに該当するという考え方も注目に値します。空中浮揚する石ころの集まりはSCPではないかもしれませんが、裕福な買い手が欲しがる高価なアート・インスタレーションとして売り出せるかもしれません。ダエーバイト文化由来のアーティファクトは、異常性がなくても一般市場に出すわけにはいかないので、MC&Dで売るしかありません。
オークションとその仕組み
これはもう少し基礎的な知識ですが、知っておいても損はありません。
既にお伝えした通り、オークションハウスの主な役割は、匿名の売り手と匿名の買い手の仲介です。売り手が身元の開示に同意した場合を別として、全ての品物は、誰の所有物なのか、オークションに誰が関わっているのかという情報抜きで出品されます。ほとんどのオークションでは、買い手は複数の売り手から同時に購入することが可能であり、その逆もまた同様です。本質的に、オークションとは売り手をその市場で最も強い関心を抱く買い手と結び付ける媒体なのです。
つまり、ほとんどのオークションは、ロット委託者がたった1人しかいないのではなく、多数の人物が所有する様々な品物を扱います。委託者が1人きりのオークションも決してあり得なくはないのですが、ごく稀であり、一般的な開催時期から外れた特別なオークションになりがちです。尤も、MC&Dは特別オークションをもっと頻繁に開く可能性もあります - アノマリーの買い手はそう多くないでしょうし、そういう人物が死んだら、相続人がコレクション全体をオークションにかけるかもしれませんからね。
オークショニア (競売人) は皆さんが期待しているほど早口ではありません。早口で話すのは、数百から数千のロットを扱うオークションでの司会進行スタイルで、典型的には牧畜オークショニアの流儀です。サザビーズやクリスティーズ (そしてマーシャル・カーター&ダーク) が目指すような、贅を尽くした高級オークションとは無縁のスタイルです。もし、あなたのヘッドカノンにおけるMC&Dが、厳選された顧客のための小規模オークションを開くなら尚更です - 彼らにはじっくり時間をかけて入札を待つ余裕があります。高級オークションでは通常1ロットあたり1〜3分程度が費やされますが、入札合戦が起こればもっと長引きます。
全てのオークショニアは最小入札単位を厳守します。一般的に、直前よりもちょっぴり多い程度の入札額は認められません。入札増額は通常10%ずつで、それも一定の幅が標準です。入札額が100ドルだと、増額は通常10ドルなので、オークショニアが次に認める入札は110ドル、その次は120ドル、という流れが200ドルになるまで続き、その時点からオークショニアは220ドルの入札を求めます。 (これはあくまでも簡略化した説明です - 実際はオークションハウスごとにやり方が異なりますし、もっと複雑です。) オークショニアが小刻みの増額を許容する (例えば105ドルの入札を受け付ける) ことは、前代未聞ではありませんが、稀なケースです。
オークションで入札するには幾つかやり方があります。近年のオークションは通常、対面入札、電話入札、オンライン入札に対応していますが、これらは実質的に全て同じ仕組みです。電話入札では、オークショニアが特定のロットを競売にかける直前に、オークションハウスの職員が登録した顧客に電話し、その場に居るのと同じように入札を受け付けます。不在入札も可能であり、それを希望する者は自分が入札可能な最高額を設定したうえで、品物を入手するために必要な最低価格から入札を開始します。オークショニアはそれを正面に表示し、会場・電話・オンラインの顧客たちはそれに対する入札を行います。
オークショニアは大抵、リザーブと最低見積の両方を下回る価格から競売を開始します。不在入札が1件だけの場合、オークショニアはリザーブ価格からの入札を受け付け始めます。不在入札が複数件ある場合、オークショニアは最低不在入札者の1つ上の増額分の入札から始めます。例を挙げましょう。
見積価格が100〜200ドル、リザーブが80ドルの品物があると仮定する。この品物には、アリスが70ドル、ボブが90ドル、チャーリーが120ドルをそれぞれ不在入札している。リザーブを下回っている最低不在入札額は無視され、最初の入札はチャーリーの100ドル (彼がボブの入札を上回るのに必要な最低額) となる。会場にいるデイヴィッドがこれに110ドルの入札で応じると、オークショニアはチャーリーの入札が120ドルに引き上げられたことを通知する。デイヴィッドがここで更に130ドルを入札すると、オークショニアはデイヴィッドが不在入札額を上回ったと通知して130ドルを受け入れ、オークションは会場・電話・オンラインで参加している者たちのみで続行される。
(チャーリーが事前に、例えば240ドルを入札しており、上記の入札合戦がしばらく続くことはもちろんあり得る。その場合は入札額が240ドルに達するまで、デイヴィッドの各入札は即座にチャーリーの新たな入札で上書きされるからだ。)
終わりに
これは、マーシャル・カーター&ダーク社の書き方を改めるべきだという緊急の呼びかけではなく、オークションハウスの基礎についての情報提供を目的としたエッセイです。このエッセイで概説されたものに近い形式で描写されたMC&Dは、より現実世界のオークションハウスに似通った組織となるでしょうが、物語に導入したり、別な方向性にリアリズムを拡張したりするのを困難にする多数のデメリットが伴います。多くの著者やカノンにおいては、MC&Dのビジネス・ロジスティクスが現実味を帯びるのと引き換えに、彼らの規模や毎年販売するアノマリーの数がいきなり現実味を失う羽目になるでしょう。もしかしたら、あなたはどちらも気にせず、これまでと同じようにMC&Dを書き続けるかもしれませんね - それには何の問題もありません。ただ、それを"オークションハウス"と呼ぶのは止めた方がいいかもしれませんよ。
本ページを引用する際の表記:
「皆さんはマーシャル・カーター&ダーク社を誤解してらっしゃる!」著作権者: 匿名、C-Dives 出典: SCP財団Wiki http://scp-jp.wikidot.com/youre-wrong-about-mcd ライセンス: CC BY-SA 3.0
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