ユグドラシル・ピーク "レーヴァテイン"
評価: +28

クレジット

タイトル: ユグドラシル・ピーク "レーヴァテイン"
著者: indonootoko indonootoko
作成年: 2021

評価: +28
評価: +28

翻訳者: バース研究員(エリア-81JH考古学部門所属)

発見地: ローレンツ・ストレージ

付記: ノルウェー王国のロフォーテン諸島に存在する異常領域"ローレンツ・ストレージ"より発見された文書。紙は羊皮紙に似た特徴を持つが、組成物から未知の植物の繊維が確認されている。また、この紙はタラヨウ(Ilex latifolia)の葉に似た特徴を有しており、表面を鋭利なもので引掻くとその軌道上が黒色に染まる。

当該文書は存在未確認要注意文明"ユグドラシル・ピーク"によって作成されたと推測されている。放射性炭素年代測定の結果、紀元前2500年から紀元前2000年までの間に作成された紙であることが明らかになっており、ユグドラシール・ピーク末期に作成されたことが明らかになっている。


だいやまーく1枚目

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1段落目:
レーヴァテインの苗木は、スルトの樹から分けられた神樹。スルトの樹と同じく赤色の花を咲かせ、花と葉は時折発火する。レーヴァテインの苗木は十分成熟しておらず、花粉が生成されないが、成熟した際はスルトの樹と同じく火の粉の花粉をまき散らし、太陽光を含める何らかの熱で受粉する。レーヴァテインの果実は黒色であり、花と葉とは対照的に発火しない。この果実は、スルトの果実と同じく、煌族以外の生物に対して有害な魔力を持つ。

2段落目:
レーヴァテインの苗木は2本存在したが、内1本は東方における戦闘で消失した。

3段落目:
ユグドラシルには1匹の賢いオスの猿が住んでいた。この猿は煌族の文字を理解し、神樹の声を聴くことが出来た。猿はメスの猿と番を成し、メスの猿の腹には子が宿っていた。しかし、2匹の猿が新居となる樹を探している最中、メスの猿が足場にしたスルトの樹の枝が折れ、メスの猿は落下してしまう。スルトの樹は既に年老いており、葉も花も無く枯れ木も同然だったのだ。メスの猿は腹を庇い無理な体制で落下し、結果的に母子共に死んでしまった。

4段落目:
母子の亡骸を抱え、泣き叫ぶ猿を見て、スルトの樹は心を痛めた。不甲斐ない老いた自身の枝が原因で若い命を2つも摘んでしまったのだ。居ても立っても居られなかったスルトの樹は、根を動かし折れた自身の枝を拾うと、猿の抱える母子へと翳した。すると母子の亡骸は光に溶けて無くなり、折れた枯れ枝に花と2つの実が成った。スルトの樹は驚く猿に枝を差し出すと、2匹の魂を枝に回帰させたと説明し、2つの実を育てることを勧めた。

5段目:
最初は腑に落ちなかった猿だったが、育てる内に愛着が湧き始め、最終的には亡くなった妻と子供だと思うようになった。毎日水を与え、虫を取り除き、嵐が襲えば身を挺して苗木を守った。この2つの苗木こそレーヴァテインである。




だいやまーく2枚目

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1段落目:
魔術師ロキが注目したのは、この苗木に畜生の魂が宿っているという点だった。フレイの樹の果実の持つ成長促進作用は畜生には過剰に作用する傾向にある。神樹を成長させるほどの力を持つ果実は、畜生には過分なものであるためだ。

2段落目:
若き日のスルトの樹の枝はそもそも危険な兵器になりうる代物であった。スルトの樹は自らの危険さを知っていたため、実や枝を煌族には決して渡さなかった。そんなスルトの樹が苗木として存在し、しかも暴走の可能性を秘めている。ロキが見逃すはずもない。

3段落目:
ロキは猿の目を盗んで苗木を持ち出すと、東方の地へ出征した。東方の地に現地の地畜がスィンドゥと呼ぶ河川があり、その流域に地畜共が国を築き、金を採掘していた。都市に着いたロキは苗木を大地に植えると、フレイの果実を絞り、果汁を苗木与えた。すると苗木はみるみる巨大化し、遂に正午の太陽を隠すほど高く伸びていった。都市の地畜たちは突然の異常事態に恐れおののき、神樹を見上げることしか出来ない。

4段落目:
急速に育った神樹から花が咲き、火の粉の花粉が都市に降り注ぐ。死の果実が大量に実りはじめ、神樹の至る所から火があがる。そして、神樹の急速すぎる成長は、神樹自身に過分な力を与え、蓄えすぎた力は暴走という形で神樹の外へ放出された。都市の上空で巨大な爆発が発生し、周囲一帯を爆炎が包んだのだ。この衝撃で神樹の死の果実は周囲に飛び散り、都市は爆炎で壊滅、神樹自身も衝撃で砕け焼失した。

5段落目:
猿はこの様子を少し遠くから見ていた。苗木が無くなっていることに気付いた猿は、神樹達から情報を集め、ロキが苗木を持って東へ旅立ったことを知り、ロキを探してこの地まで赴いていたのだ。

6段落目:
樹の最期を眺めていた猿の心境は明らかではない。亡くした家族の形見があの様になったことを嘆いたか、それとも危険すぎるそれを見て、樹が本当の家族ではないと悟ったか。何れにせよ、猿はその後ユグドラシルには戻らず、レーヴァテインの苗木がロキの手元に残った。猿の名はヴァナラ、ユグドラシルの樹々は帰らぬその名を悔やんでいる。




補足
. 北欧神話における世界樹と同一の名称を持つ超巨木(或いは同一の存在)"ユグドラシル"の頂上に存在していたとされる超古代文明。ユグドラシルはモーリタニア・イスラム共和国のリシャット構造体の位置に存在していたと考えられており、当該文明は異常植物を利用することで繁栄したとされている。当初は北欧神話の二次創作であると推測されていたが、財団はこれまで入手した資料/調査結果/アーティファクトの存在から、実在した文明であると結論付けている。
. 北欧神話に登場する武器レーヴァテイン(古ノルド語で"裏切りの魔の枝")と同一の名称。雄鶏ヴィゾーヴニルを殺害することが出来る唯一の武器とされているが、入手には雄鶏ヴィゾーヴニルの尾羽を要求されることから堂々巡りのエピドードを持つ武器として知られる。
. 北欧神話に登場する巨人スルト(古ノルド語で"黒い者")と同一の名称。火を司る巨人とされ、北欧神話における最終戦争"ラグナロク"において、世界をユグドラシルごと焼き尽くし、両軍全滅で戦争を終わらせたとされる。ここで言及される樹についての情報は入手できていない。
. ユグドラシル・ピークを支配する種族を指す名称。どのような種の生物であったか不明であり、人間を見下し軽蔑する思想が強く見受けられる。
. 北欧神話に登場する神ロキ(古ノルド語で"終わらせる者")と同一の名称。神々が敵視する巨人の血を引いていたが神として扱われている。北欧神話の重要人物であり、悪戯好きで嘘つき。最終戦争ラグナロクが勃発する切っ掛けを作ったとされている。
. 北欧神話に登場する神フレイ(古ノルド語で"主")と同一の名称。豊穣の神とされており、外見も眉目秀麗。ここで言及される樹についての情報は入手できていない。
. 人間を指す名称。
. サンスクリッド語でインダス川。
. インド神話に登場する猿の一族と同一名称。文化圏が大きく異なる神話の固有名詞が登場する理由は明らかになっていない。



補遺: 当該情報資料は要注意領域"ローレンツ・ストレージ"から発見されました。ローレンツ・ストレージは、19世紀の冒険家でアノマリーハンターであるPoI-0104"ロレンツ・エルドリッヂ"が蒐集したアノマリーを収蔵していた倉庫であり、現在は財団によって管理されています。

発見当時、当該情報資料は、不明なサルの遺体と不明な果実と共に収蔵されていました。サルの遺体は、バーバリーマカク(Macaca sylvanus)の祖先に該当すると思われる未知のサルの遺体であり、不明な防腐処理が施されています。この遺体には火傷痕や刃物による刺突痕が確認されており、高度な医療技術で治療され、治癒した痕跡が確認されています。これら痕跡は、このサルが高度な文明同士の戦闘行為に参加していたことを示すものであり、地球上の古代文明に関する重要な情報資料であると評価されています。

不明な果実は、近縁種が存在しない植物の果実です。果実には不明な防腐処理が施されており、極めて良好な保存状態を維持しています。特筆すべき点として、この果実は、高温に対して強い耐性を持つ他、原子核内に92個の陽子と142個の中性子を保持しており、放射能を持つ放射性物質であることが明らかになっています。また、果実には砂が付着しており、この砂はインダス川中域で採取されるものと組成が一致します。

これら情報資料は、モヘンジョダロ遺跡の滅亡と関連していると考察されています。モヘンジョダロ遺跡には高い放射線濃度を示すエリアが存在する他、高温によって生成されたトリニタイトが採取されています。また、市街地の跡地では往来に放置された遺体が発見されおり、発見されている全43体の遺体の内9体からは高温に晒された痕跡が確認されています。財団は、ユグドラシル・ピークがレーヴァテインと呼称される異常植物を利用し、モヘンジョダロを模擬的な核兵器で襲撃したと推測しています。

ページリビジョン: 6, 最終更新: 28 Jan 2024 06:46
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