なんとあらゆる見込みに反して、アメリカ中央情報局はこれまで一度もヴェールを越えた試しがないのである。
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アイテム番号: SCP-8172
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-8172はその影響に晒されている内集団からは知覚不可能であるため、財団は第三者の証言を抑制し、開示される文書を一般公開前に精査することに注力します。
FBI 異常事件課やアメリカ国防総省 超自然戦対応軍の直接介入が無い限り、SCP-8172-AはワシントンD.C.の連邦議会墓地 セクション1、ヘンダーソン・ストリートの西側に、鉛張りの棺に納められ、埋葬された状態に保たれます。当該エリアにはセンサーが隠匿されており、いかなる事件も記録します。エリアに進入したCIAエージェントは彼ら自身の安全のために拘留されます。
説明: SCP-8172はアメリカ合衆国中央情報局 (CIA) がオカルト抗争活動に関与するのを妨げる持続性の現実改変効果です。長年の調査にも拘らず、CIAはこれまで一度も超常現象を決定的に発見しておらず、異常な職員を雇用しておらず、運用可能な超常技術を配備したことがなく、ヴェール内社会での地位を確立していません。
留意すべき点として、SCP-8172にはCIAとアノマリーの接触を阻止する効果はありません。しかしながら、実際の超常現象を経験したCIA工作員はそれを正しく認識できず、代わりにこれらの事件はごく平凡な欺瞞、悪戯、または誤解だと合理化します。これらの制約が複合した結果、現場では多数の不幸な事件が引き起こされています。
- 最初の特筆すべき事件は1956年に発生しました。当時、KGB特殊現象部門の指示を受けて活動していた精神工学工作員 ヤニック・ガイストは、ベルリンでCIAエージェント ウィリアム・キング・ハーヴェイの飲料に神経化学追跡子トレーサーを混入させ、彼を解析しようと試みました。問題の化合物はハーヴェイの体内に入った時点で効力を喪失したようです。ガイストはその後、混雑した部屋の中からハーヴェイの存在を検出しようとしている最中に脳卒中を起こしました。
- 1968年から1970年にかけて、CIAはアーノルド・フィッツウィリアムズ共和国の主権国家体制を不安定化させる試みを3回実行に移しました。CIA工作員はSCP-1761-1を強盗殺人に見せかけた暗殺の標的とし、ガス漏れでSCP-1761-2Cを窒息死させようとし、SCP-1761-2Eの車に爆弾を仕掛けました。秘密工作は正式な宣戦布告とは見做されないため、これらの暗殺試行はいずれもターゲットに危害を及ぼすことができませんでした。
- 1989年、イスラム・アーティファクト開発事務局 (ORIA) は、ミーム的な刺激を利用した消去法テストによって、イラン軍に潜入していた数名のCIA工作員を特定しました。これらの二重スパイは認識災害を脳内で処理できず、期待されていたコードフレーズで応じることができませんでした。特定されたスパイと入れ替わったORIA工作員らは、CIAに虚偽の情報を流しながら残りのスパイネットワークを解体に追い込みました。
SCP-8172がCIAの作戦遂行能力やオカルト的脅威を現実的に評価する能力を損なうことは自明です。しかしながら、CIAの過剰に暴力を行使する傾向は、彼らがヴェール内の問題に関与すれば正味マイナスの影響が及ぶことを示唆します。更に重要な点として、理論上CIAに割り振られる役割は既にペンタグラムが担っており、ペンタグラムはCIAの超常抗争活動への移行を支援することにいかなる関心も示していません。匿名の情報筋によると、アメリカ国防総省は現状に満足しており、その理由の一つは"ヴェール・プロトコル違反が組織構造上不可能である機関の存在は、超常現象は実在しないという一般社会の認識の補強に役立つ"ためです。
SCP-8172-A
SCP-8172の例外として知られる事象は、SCP-8172-Aの近傍でのみ発生しています。SCP-8172-Aは捜査局第5代長官、連邦捜査局初代長官、異常事件課の創設者であったJ・エドガー・フーヴァー (1895-1972) の遺体です。長年にわたり影響力の強いキャリアを築いたフーヴァーの遺体は、冒涜行為を防ぐために635kg (1400ポンド) の鉛張りの棺に納められ、連邦議会墓地に埋葬されました。政治的背景については、補遺8172-01を参照してください。
SCP-8172のこの側面を財団が認知したのは、1975年、元CIA長官 リチャード・ヘルムズがMKウルトラ薬物研究計画に関してチャーチ委員会の前で証言した際のことでした。MKウルトラ計画は、人間の行動を変化させるための化学的・生物学的因子の利用を研究したCIAプロジェクトの1つであり、とりわけ尋問に適した生理学的状態の促進に重点を置いていました。多くの被験者は無自覚に薬物を投与され、処置を受けるように脅迫され、もしくはその他の手段で参加を強制されました。ヘルムズが記録の破棄を包括的に命じたこともあって、この研究の全容は現在に至るまで不明確です。
ベイカー上院議員: ヘルムズさん、1973年1月に行われた [MKウルトラ] 薬物研究計画関連の文書破棄について、詳しく教えていただければ大変助かります。
ヘルムズ大使: しばらく前のことですが、あー、ハッと気づきを得た瞬間があったと記憶しています。1972年5月にフーヴァー氏の国葬に参列した際、私は自分の未来を垣間見ました。全てが非常に鮮明でした。私は自分自身が [シドニー・] ゴットリーブ博士と会話している様子を見たのです。話題は博士の退職についてでしたが、彼は私たちが大失態を犯したことを懸念していました。あの薬物計画は何もかも時間の無駄だったと。全てが。私たちは様々な試験にアメリカ人を巻き込み、その人々と - 信任関係を結んでいた。善良な者たちが決して実現し得ないことに懸命に取り組んだ。マインドコントロール。洗脳。不条理だった。もしそんなことが明るみに出たら、それは、あー、途方もない恥晒しとなる。だから、私たちは文書を破棄することに決めました。その後、私はロタンダで正気に戻りました。
ベイカー上院議員: それで... あなたの反応は?
ヘルムズ大使: それはまあ、軽く受け流しましたよ、上院議員。ふとした気の迷いだとね。葬儀ではそういう気分が付き物です。ところが、1月になってからシドニーが私のオフィスを訪れました。後は何もかも同じように話が進んだので、これはいかん、もう止めにしようと思ったのです。
ベイカー上院議員: ヘルムズさん... MKウルトラ計画に使用された化学物質は試料として保管されていますか?
ヘルムズ大使: 私が知る限りでは、そのようなことはありません。
後日、これらの声明は公記録からは削除されました。
SCP-8172-Aの埋葬区画。
この発見に続いて、財団の捜査員らは連邦議会墓地の調査を実施し、エーテル共鳴撮像でフーヴァー家の埋葬区画周辺に顕著な歪みが生じていることを突き止めました。実験によって、この埋葬区画内の現実は極めて柔軟であると確認されました。この結果、ごく稀な状況ではあるものの、SCP-8172-Aの影響範囲内に入ったCIA職員は異常な能力を発揮しました。
- 退職したCIA分析官 ジョセフ・ブライアン3世は1981年に連邦議会墓地を訪れた際、フーヴァーの埋葬地の前で立ち止まって新聞を広げ、特大のパンジーの花束を生成して墓石の上に置きました。この件について問い質されたブライアン氏は、1955年にフーヴァーが隠れ同性愛者であることを公の場で仄めかした後、FBI捜査官の訪問を受けたと明かしました。彼は花束の出所について説明できず、当時はその行動が"自然であるように思った"とだけ述べました。
- 現役のCIA捜査官 ジーン・マルベリーは1995年8月に埋葬地を3回訪れました。最初の訪問中、彼は無意識にタバコの箱を喫煙パイプに変化させました。翌日再訪したマルベリーは、自分の水筒が不可解にもウィスキーで満たされていることに気付きました。同日夜、見たところ躁状態で密かに戻ってきたマルベリーは、シャベルでフーヴァーの墓を掘り返そうと試み、雷に打たれました。専門家は、この落雷はSCP-8172-Aの現実歪曲フィールドと、コロンビア特別区を保護しているソーントン防護結界の相乗効果によるものだったと仮説を立てています。
上記事件の後、SCP財団は収容体制の拡張について協議するため、異常事件課と連絡を取りました。SCP-8172-Aの移転は直ちに現実的ではないと判断され、代わりに埋葬区画は元UIU捜査官 ダニエル・ブレイナードが考案した抑止ミームで囲われました。SCP-8172はCIA職員に対する認識災害の有効性を阻害するため、この抑止ミームは主に通行人が不都合な事象を知覚するのを防ぐ役割を果たしています。
補遺8172-01: そのキャリアを通して、J・エドガー・フーヴァーは、アメリカの諸制度を自らの思惑通りに形作ることに精力的に取り組みました。彼はヴェールの内外双方で個人的に警察活動を調整し、報道機関を通して積極的にFBIの功績を宣伝し、自らの管轄権を全世界的な諜報活動の分野まで拡大するよう政策立案者に働きかけました。彼の指揮の下で、FBIは違法な監視、ハラスメント、脅迫、恐喝などの活動にも従事しました。これらの中で最も悪名を馳せたのが、アメリカ国内の過激派、政治的急進派、公民権運動家などを標的とした潜入捜査や破壊工作で知られる"対敵諜報活動プログラム" (コインテルプロ) です。
フーヴァーが政敵に対しても同様の戦術を取っていた事実はさほど知られていません。彼は競合する諜報機関を、自らの管轄領域を侵害する存在として特に敵視していました。フーヴァーは、ウィリアム・ドノヴァン長官指揮下の戦略情報局 (OSS) が第二次世界大戦中に実施した活動を故意に妨害し、戦後には中央情報グループ (CIG) との情報共有を防ぐために事件ファイルを破棄し、更にその後継組織となった中央情報局 (CIA) の創設に反対する大規模なロビー活動を実施しました。フーヴァーの妨害主義は、今日に至るまで各機関の協力関係に反映されている前例となりました。
1995年のマルベリー事件を受けて、UIUは難色を示しつつも、SCP-8172に関する機密ファイルの共有に同意しました。最も関連性の高い情報は、以下に添付された1ページの覚書です。
1947年7月26日
クライド・トルソン副長官宛覚書
あの無学な養豚屋が"その他の役割・任務"について何をほざこうと知ったことか。俺の部下は1929年からこの縄張りで動いてるんだぞ。俺は何が最善かちゃんと理解してる、あんな頭でっかちのアカもどきどもに魔法が任せられるか。奴らが魔法を使うのは俺の屍を越えてからだ。
H.
本ページを引用する際の表記:
「SCP-8172」著作権者: Tsercele, C-Dives 出典: SCP財団Wiki http://scp-jp.wikidot.com/scp-8172 ライセンス: CC BY-SA 3.0
このコンポーネントの使用方法については、ライセンスボックス を参照してください。ライセンスについては、ライセンスガイド を参照してください。
ファイルページ: SCP-8172
ファイル名: grave.jpg
タイトル: GENERAL VIEW FROM NORTHEAST. NOTE J. EDGAR HOOVER GRAVESITE IN FOREGROUND. - Congressional Cemetery, 1801 E Street, Southeast, Washington, District of Columbia, DC HALS DC-1-20.tif
著作権者: James W. Rosenthal
ソース: https://commons.wikimedia.org/wiki/File:GENERAL_VIEW_FROM_NORTHEAST._NOTE_J._EDGAR_HOOVER_GRAVESITE_IN_FOREGROUND._-_Congressional_Cemetery,_1801_E_Street,_Southeast,_Washington,_District_of_Columbia,_DC_HALS_DC-1-20.tif
ライセンス: パブリックドメイン/CC0
公開年: 11 July 2014