クレジット
ソース: SCP-7700
メタタイトル: シメリアン博士危機一髪
著者: Doctor Cimmerian Doctor Cimmerian
作成年: 2022
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SCP-7700-A事案でセーフハウスが受けた損傷の写真。
アイテム番号: SCP-7700
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-7700-1は如何なる理由でも財団からの退職を許可されません。SCP-7700-1は常時監視され、通常あり得ないような事象は記録する必要があります。
SCP-7700に関連する中核的なアノマリーがより深く理解された時点で、更なる措置を講じるものとします。
説明: SCP-7700はジェレミア・シメリアン博士 (以下SCP-7700-1とする) を取り巻く未解明の確率的現象です。この現象は、SCP-7700-1の生命が危険に晒されている状況において、特異かつ通常起こりそうもない出来事を発生させます。
これらの異常な確率的結果は、必ずしもSCP-7700-1が負傷しないことを意味しませんが、記録された全ての状況下で一貫して彼の生存に繋がっています。 この効果はSCP-7700-1の周囲や近くにいる他の人間や資産には及びません。
SCP-7700は、SCP-7700-1の意識的な思考を必要とせず、彼の望みとは一切関係なく発生します。更に、SCP-7700-1が意図的に自らの生命を危険に晒した場合も、SCP-7700はSCP-7700-1の死を防止します。現在、この効果はSCP-7700-1が誕生した時点で既に存在したと理解されています。また、SCP-7700-1が財団に就職する以前の人生に関する情報は、一部または全部が捏造されたものだと考えられています。
財団に雇用されていた10年間で、SCP-7700-1は目に見える老化を示していません (ただし、期間が短いため、決定的な指標ではありません) 。短期的な緊急事態に際してSCP-7700-1を生存させる現象が、長期的には不十分・不完全な細胞複製を防ぐ作用を及ぼしていると推測されます。SCP-7700-1から採取した組織サンプルはSCP-7700の影響を受けておらず、正常に複製・死滅しているように見受けられます。
以下はSCP-7700の発見に至った調査の記録です。
2022年7月21日、シメリアン博士はアラバマ州中央部にある財団のセーフハウスに滞在していました。現地時間16:00頃、短時間の嵐による暴風が発生しました。この風で木の一部が大きく切り離され、SCP-7700-1が作業していた部屋に落下しました。部屋は全壊したものの、SCP-7700-1に大きな怪我はありませんでした。
シメリアン博士が倫理委員会の巡回連絡員として調査していたプロジェクトの一環として、前月に攻撃を敢行した蛇の手のエージェントからセーフハウスを保護するため、セーフハウスの周囲には巨視的確率検出器が複数設置されていました。これらの検出器は事案発生時に16ド・モアブルという数値の急上昇を記録しました。ド・モアブルの基準値は1であるため、これは十分な調査対象であると判断されました。
この調査で3つの結論が導き出されました。
- 確率事象は重大な性質のものであり、SCP-7700-1を危害から保護した。
- 事案発生当時、蛇の手はこの地域で活動しておらず、この確率事象と6月のセーフハウス襲撃に因果関係があるとは考えにくい。
- 財団に雇用される前、及び雇用中のシメリアン博士の経歴からは、頻繁に同様の出来事が起きていることが伺える。
これを念頭に、倫理委員会は本件及び類似事象の調査が完了するまで、シメリアン博士を休職処分としています。
以下は、過去48時間以内に収集された、SCP財団に勤務する前と勤務期間中のシメリアン博士が関わった出来事の不完全な記録です。
発生日時 | 場所 | 推定ド・モアブル値 | 出来事の概要 |
---|---|---|---|
2009年12月8日 | モザンビーク、マプト | 4 | シメリアン博士が搭乗していたヘリコプターが、ロケット推進グレネードの衝突による深刻な機械的損傷を被ったものの、問題のグレネードは起爆しなかった。ヘリコプターは安全に着陸し、乗員・乗客は全員無事だった。 |
2010年3月19日 | ロシア、ウラジオストク | 12 | ロシア東部での実情調査中、シメリアン博士はロシア連邦軍参謀本部情報総局 (GRU) の某エージェントと短い交際関係を結んだ。このエージェントが列車内で爆発物を起爆させたために脱線事故が発生し、シメリアン博士は入院した。彼はこの事故における生存者2名のうちの1人である。 |
2012年4月26日 | インディアナ州、エリー | 不明 | 3柱1組の神格を召喚しようと試みるオカルト組織の調査中、シメリアン博士はチームからはぐれた。彼は死亡したエージェントの銃を使い、出現した実体が完全に形成される前に無力化した。 |
2014年10月11日 | アラバマ州、モービル | 3-6 | 買い物中、シメリアン博士は3枚のシーリー・ポスチャーペディック・ハイブリッド・マットレスの下敷きになり、そのまま28時間店内に閉じ込められた。シメリアン博士は月曜日の朝に戻ってきた店長によって解放された。当該事案は後日その経緯を知った人々によって逸話的に語られているものの、財団の独自検証はまだ行われていない。 |
2016年2月29日 | アラバマ州、モンゴメリー近郊の州間高速道路65号線 | 8 | シメリアン博士は極めて危険なSCPオブジェクトの輸送中に銃撃戦に巻き込まれた。彼は追跡者の排除に成功したが、乗っていた車両は石炭を積んだセミトレーラートラックに追突された。襲撃とその後の交通事故の生存者はシメリアン博士のみだった。 |
2019年1月12日 | ミシシッピ州、ビロクシ | 24 | シメリアン博士は、海抜およそ2.5km地点の飛行機から、カオス・インサージェンシーのエージェントによって投げ出された。彼は数本の木の枝にぶつかり、民家の裏庭のトランポリンに落下し、そのまま弾んでプールに叩き付けられた際に重傷を負ったが、命に別状はなかった。 |
2021年7月25日 | アラバマ州、サイト-88 | 32 | シメリアン博士は、ジェラルド博士が使用法の実践を試みていたゴトラックス社製ホバーボードの爆発から生還した。 |
2022年7月22日 | アラバマ州、バーミンガム | 16 | 上記の-Aログの通り。 |
ギアーズ博士がSCP-7700-1への事案後インタビューを担当した。対話ログは次の通りである。
インタビュー日時: 2022年7月24日
対象者: SCP-7700-1
質問者: ギアーズ博士
記録開始
ギアーズ博士: セーフハウスでの出来事について話し合いたいと思います。
SCP-7700-1: ああ。危うく屋根に殺されかけた。
ギアーズ博士: 何が起きたのですか? 木が原因ですか?
SCP-7700-1: 見たところ、隣家の庭木が裂けたらしい。それが別な木に倒れ掛かって、そっちがまた裂けてセーフハウスにぶつかったんだ。
ギアーズ博士: 被害はどの程度でしたか?
SCP-7700-1: 壊滅的だった。正直な話、とっくに蛇の手にあの場所が割れているのなら、もう損失扱いにしてもいいと思うね。
ギアーズ博士: そうかもしれません。体調は大丈夫ですか?
SCP-7700-1: 少し動揺している。だってそうだろう、私は確実な死からほんの5フィートしか離れていなかったんだ。まだ完全に実感が湧いた気がしないよ。
ギアーズ博士: 私も想像できます。しかし、今回のような出来事が起きたのは初めてではありませんね?
SCP-7700-1: あの飛行機の話か?
ギアーズ博士: その他にも幾つかあります。ロシアで起きた爆弾事件などが頭に浮かびます。
数秒の遅延の後、インタビューが再開する。
SCP-7700-1: 私がどう負傷したかを知りたいのか?
ギアーズ博士: いいえ、私はただ不自然な点を解析したいだけです。
SCP-7700-1: ギアーズ、もし私のオブジェクト指定が検討中なら、君は私にそう教えてくれるよな?
ギアーズ博士: オブジェクト指定が必要だと感じているのですか?
SCP-7700-1: 私は幾度も生き延びられないような状況から生還した。だが統計的に見れば、そういう事は時々起こるのが当たり前だ。
ギアーズ博士: しかし、あなたには他の人々よりもそれが頻繁に起きているように思えますが?
SCP-7700-1: 我々は財団で働いている。定期的に生きるか死ぬかの状況に身を置く。生き延びられなければ、こんな風に生き延びた理由を質問される機会さえない。
ギアーズ博士: ド・モアブル値センサーについてご存知ですか?
SCP-7700-1: 知っている。
ギアーズ博士: そして?
SCP-7700-1: そして、キャラクターが生還した方が面白いと思う。
ギアーズ博士: 何が面白いのですか?
SCP-7700-1: 物語さ。悪いことが起こるたびにキャラが死んでいては、読み続ける理由があまり無い。
ギアーズ博士: シメリアン、話が理解できません。
SCP-7700-1: 君に話しかけているのではないからだよ。
SCP-7700-1はこの対話を記録している隠しカメラを直視する。
SCP-7700-1: 私は死にたくない。ああ。遂に言ってしまったな。自慢できる事じゃないが、確かにその通りなんだ。実際、多くの人がそうじゃないかと思うよ。言葉にするのが難しいぐらい根源的な恐怖だ。
よし、この枠からも出てしまおう。思ったより少し窮屈だからね。
昔からぼんやり死にたくないなぁとは思っていたが、それが明確になったのは、SCP Wikiで執筆するようになってからだ。Wikiを発見したのが2012年だから、来月で10年になる。TV Tropesを閲覧している時に、色々なページでSCP絡みのトロープの紹介に何度も出くわした。結局、私はクリックして中に入った。当時のSCP Wikiはそんなに大きくなかったが、それでもかなり人気だった。
それから執筆に挑戦した。酷いものだった。やり尽くされたネタを全部詰め込み、著作権で保護された画像を使った。自分でも少し恥ずかしくなった覚えがある。だからWikiを去った。2014年に戻ってきて、もう一度挑戦した。当時のWikiの姿勢は必ずしも新人に優しくなかったけれども、私は辛抱して、低評価で消えない作品を書き上げた。傑作とまでは行かなかったが、まずまずの出来だったのは確かだ。
しばらくの間、私はWikiに出たり入ったりしていた。好きな著者を見つけ、彼らから学び、彼らがいなくなると足が遠のく。ひたすらその繰り返しだ。そして今、私はこのサイトの有名著者の仲間入りをしている。良くも悪くも、それは事実だ。
しかし、私の死に対する恐怖心とどう関係があるのか?
私は忘却されないために創作する。否定できない存在になるために。私は、自分がいなくなってからも長く語り継がれる世界と物語を作りたい。
私の不死性は著作の中に宿る。私は書くことによって呼吸する。己を嫌悪し、人々からは愛される登場人物を創作する。長く語られてきた歴史を持つ大陸や森や山や国を創り、そして一瞬で粉砕する。全てはそこにある。そして、全ては私の一部なのだ。
いつでもそうだ。いつまでも。執筆を通して、私は自分を知る。
ずっと、それが何かを創作する真の目的だと考えてきた。自分自身を知るため。
私は自分の著作にパターンを見出すようにもなった。私はよく不死身の白人男性の物語を書いている。それは私の何を表しているのだろう? 白人男性の部分は議論の余地があるかもしれないが (多分ある種の自己投影を表しているんだろう) 、不死身というテーマは何度も繰り返し現れる。先程も言った通り、これは私が死にたくないだけなのだと思う。
そして2日前、我が家の屋根は本当に私の頭上で崩れ落ち、私は瓦礫の中に座り込んで、かつてベッドがあった場所に角を食い込ませている重い木造垂木を見つめていた。雨が流れ込んできたので、私物を守るために動かなければいけなかったが、約2時間後、ようやく考える余裕ができた。
私はただその場に座って、遠くを見つめながらその日の事件を振り返っていた。確かに今後の成り行きも心配だったが、自分にとって最大の恐怖に相当近付いたのも分かっていた。
私はとうとう、埃と混沌の中から救い出したノートパソコンを手に取り、開いた。居間の床に腰を下ろし、Discordを読み込んで、事件について話し始めた。そして、私の人生で最も恐ろしい出来事の1つが起こった数時間後、私の主な考えは"これを7000コンテストの作品として書こう。書かなくてどうする"だったのだ。
そして今に至る。気に入ってもらえれば幸いだ。これは、私が心の奥底でずっと知っていたことを証明する作品だから。
どうにかして、永遠に生きてやるさ。
読んでくれてありがとう。そして、心から、全ての人に幸運がありますように。
ギアーズ博士: つまり、あなたが不死身なのは、著者が自分の死後もあなたに生き続けてほしいと願っているからだということですか?
SCP-7700-1は注意をギアーズ博士に戻す。
SCP-7700-1: そんなところかな。
ギアーズ博士: では、考慮に入れておきます。
記録終了
Cite this page as:
"SCP-7700" by Doctor Cimmerian, from the SCP Wiki. Source: https://scpwiki.com/scp-7700. Licensed under CC BY-SA.
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ファイル名: SCP-7700-Incident.JPG
タイトル: SCP-7700 Incident
作者: Doctor Cimmerian
ライセンス: CC SA-BY 3.0
ソース: マジで私の家です。