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コンテンツ警告
以下の記事には物理的拷問、感情を掻き立てかねないトピックの描写及びゴア表現が含まれます。
ご自分の判断でお読みください
クレジット
ソース: SCP-6086 - Errata
リビジョン: 20
著者: Arcydziegiel Arcydziegiel
作成年: 2021
邦題: エラッタ
以下の文書は1906年6月12日に初めて編纂されました。1912年10月2日の異常実体の無力化以後、ファイルのデジタルフォーマットへの転写を除いて文書に変更は加えられていません。
上記理由により以下のファイルはアーカイブ済に分類されており、財団の行う現代及び現在の収容基準を表しているという訳ではありません。
SCP-6086に対して執られた行いとアノマリーの取扱に関する倫理委員会へのあらゆる苦情は受理されません。
特別収容プロトコル: SCP-6086は人間大の実体が容易に出入りし運動できる部屋に収容されます。扉は耐衝撃素材からなり、室内を見渡せる覗き窓を持ちます。収容室には窓やそれに類する物品があってはなりません。
部屋の推奨される家具は以下の通りです。
- ベッド
- 自動洗浄トイレ
- 道具を使用せずに取り外せない排水溝付きシャワー
- 机1つ
- 椅子2つ
室内の電灯は常時点灯されます。電源故障のような緊急事態では消灯しても全く問題ありません。
自傷または他者の攻撃に潜在的に使用しうる物品を収容室内に保管することは許されません。そのような物品を室内に持ち込む必要がある場合、可及的速やかに除去されねばなりません。
SCP-6086に与えられる栄養と水分量は、実験を目的として、アノマリー主任研究員の管轄にあります。
説明: SCP-6086は人間高度に生物学的にHomo sapiensに近似した実体であり、イングランド南部のコーンウォールに起源を持ちます。対象の身長はおよそ1.76m、体重は1日平均48kgであり、記載時点で約71歳であると信じられています。
SCP-6086, 1910年07月17日
対象は複数の起源不明な異常な性質を保有しています。これら性質は主に実体の体内の細胞の超自然的成長に由来していると信じられています。結果として切り傷や軽い火傷のような小さな組織損傷に対するほぼ即時の治癒から数時間を掛けた四肢全体の再生治癒まで含む高度な再生能力をSCP-6086は呈します。対象はその身体のあらゆる部分を再生可能であると信じられています。身体の自然免疫系と同様にがん細胞の形成の可能性に対しても増強細胞増殖は影響しているように見え、しばしば腫瘍結節が作られますが速やかに崩壊します。
多くの見かけ上の付属器がSCP-6086の身体に見つかりますが、そのほとんどは調節されていない細胞分割の結果であり、黒く硬い突起物またはうろこ状の被覆物として表れることがほとんどです。切り開けば体内の異なる部分に実際の生理機能を何も果たしていない複数の疑似臓器が存在しているとわかります。
増強細胞増殖が表出する際に、身体は必要な臓器を創造するために大量の栄養を消費します。増強細胞増殖が間断なく行われた場合もしくは広範な身体部分にて行われた場合、重度の体重減少をきたします。結果としてSCP-6086は再生に用いる脂肪と筋組織の使用に伴って大量の栄養摂取を必要とします。このプロセスを維持するため、体重に比して通常の20倍の量の物質を消化可能な異常な代謝機能を実体は持つと信じられています。
SCP-6086の2番目の主要な異常効果は生物学上の死への抵抗能力であり、見かけ上の不死性を齎しています。この効果の限界は不明ですが、細胞再生を通常終了させ、アノマリーを終了できるであろうプロセスの後であっても、この能力により完全に生物学的に機能する状態に復帰できることが示されています。その手段とはたとえば頸部切断、重度全身焼灼、または強酸性物質への溶解などです。SCP-6086の細胞は成長し続け、通常の存在でそのような効果が発生する際に必要とする前提条件を満たさずとも再生します。死後状態における再生に用いられる物質をいかなる場所から実体が入手しているのかは不明です。終了以前の状態と比較して、このイベント中にSCP-6086の全身質量は縮小せず、それどころか増大すらします。部分的に、または大部分が破壊された細胞が未だ再生可能であることも観察されています。
それにも関わらず、高水準の機能を果たすには睡眠と水分及び栄養摂取をSCP-6086は未だに必要としています。それら要素の剥奪は実体の緊張病性混迷を引き起こします。
死後蘇生を迂回しうる潜在的効果が恐らく存在すると判断されていますが、SCP-6086は標準の容易に入手しうる手段では無力化できないと信じられています。高齢故に実体が最終的に自己終了するか否かはわかっていません。
SCP-6086の発見
SCP-6086は1906年6月2日にプリマスにて発見されました。実体には存命の家族または親しい友人はなく、不規則な労働時間かつ不安定な雇用の下、自営業の大工として働いてきたと信じられています。異常効果は街に駐留していたフィールド・エージェントがSCP-6086の関与する労災を目の当たりにした際に発見されました。無関係な火災が商業ビルのほとんどを破壊した後、「パーキンソン・アンド・マクスウェル・ユナイテッド・レストレイション」による修復作業を補助する契約を実体は結びました。事前にはわからなかった構造的脆弱性により、上述の日に支柱が倒壊してSCP-6086に重大な怪我を負わせ、瓦礫の下に生き埋めにしました。実体は倒壊した建物の下から脚と左手及び顔面の骨と皮膚の一部を失いつつも逃れることに成功しましたが、一部始終を偶然フィールド・エージェントに観察されていました。
SCP-6086はアルヴィントン通りの自宅に戻り、そこで失われた肉体部分を再生しました。このプロセスは工夫して家に侵入したエージェントに目撃され記録されました。サイト-37に駐留していた財団職員は通知を受け、収容手順が開始されました。
財団の管轄下にこれまで人間様異常実体がいなかったため、このようなシナリオに対するプロトコルは存在せず、何も実施できませんでした。SCP-6086に関する行動指針を決定するための危機解決会議がサイト-37の最高レベル職員により行われました。会議の転写は以下のファイルにて入手できます。
5人の追加フィールド・エージェントが実体を収容するために派遣され、1906年6月8日の午前2時に家に接近しました。担当職員たちは物理的手段を用いてSCP-6086を失神させ、その拘束に成功しました。その後実体は確保されてサイト-37の待機房に移送されました。
会議参加者:
- サイト-37総合管理官: ドナルド・ミラー
- 補助総合管理官: ジョシュア・ベイリー
- 研究管理官: ファビアン・ターナー
- 警備管理官: サイモン・リドリー
<転写開始>
ミラー: 我々の認識が一致していることを確かめるため、何が起きたのかを振り返ることでこの会議を始めようか。最近、近くの街でフィールド・エージェントのアルバート・ノーウィンが異常な性質を示す人間を発見した。そのような個人が実在しても全くおかしくはないと考えてきており、それらのある程度の証拠、筆記または口頭の記録のようなものだ、も持っていたが、優れた情報網を持たないが故に我々はそのような存在の収容に決して成功してこなかった。これ故に我々は現在そのような実体に対処するためのプロトコルを何も持っておらず、行動を進めることもできないでいる。さらに、アノマリーが高度な知性を持つ可能性により、我々の上司からの命令を待つ猶予などないと私は信じている。だから発見された実体に対してどのような活動を執るべきかを話し合うためにこの緊急会議を招集したのだ。
ターナー: 「異常な性質を示す人間」の意味についてもうちょっと詳しくしてもらえませんかぁ?運が悪いことに会議の前に報告書を手に入れられなかったんですよぅ。
ミラー: 存在は労働者階級老年男性の姿を持つと信じられており、未知のポテンシャルを秘めた異常再生能力がある。この性質は前に言及したフィールド・エージェントにより直接観察された。
ターナー: どうやって彼が実際に人間であると知ったんですかぁ?
ミラー: 残念ながら、確かであるとは言えない。
リドリー: 何か他に心配すべき異常効果はありますか?
ミラー: 現時点ではそれに関する情報は何も受け取っていない。
ベイリー: 思うに最高優先度で実体を確保することを優先すべきなのではないですかね。最初の人間の被収容者は大変有意義であると示すでしょうし、少なくとも歴史的出来事にはなるでしょう。
ミラー: そうだな。警備プロトコルはどうする?
ターナー: 最も適切であるのは、保安のためにですがぁ、それを標準高度セキュリティ収容プロトコルで取り扱うことだと思いますねぇ。他になにかしなくてはならない理由が出てこない限りですけれどもぉ。
リドリー: 標準プロトコルでは足りないのではないかと心配です。
ベイリー: どういう意味ですか?
リドリー: ほとんどの収容プロトコルはアノマリーの高度な知性を勘定に入れていませんから。ほとんどの収容されている存命の実体が高度な問題解決能力を示していませんしね。脱走のリスクを避けるために、より厳格な収容を確立する必要があると思います。
ターナー: あなたの意見では何をすれば十分となりますかぁ?
リドリー: 最低限ですか?強化ドア、窓はなく、鉄で強化した壁ですかね。ですがもし実際の適切で安全な収容について私たちが話していると言うなら、守衛の駐屯、定常光源、不規則な食事、そして隔離が必要でしょう。
ベイリー: それはなぜです?
リドリー: もし彼が救いようなく惨めであるならば、脱走することはできないでしょうから。直面している潜在的脅威であるわけですし、このような活動も認められると思います。
ベイリー: これは逆の効果を発揮しませんか?協調の方が良い行動指針なのでは?
リドリー: 良く言ってナイーブですねそれは、ベイリー。あなたが言ってるのは、アノマリーを信じなくてはならないと命令しているのでしょうか。それは我々には許されない譲歩というものではないでしょうか。
ターナー: 警備管理官リドリーに賛成ですねぇ。我々はサイトと一般民衆の安全を一個人より優先する必要がありますからねぇ。
ベイリー: 私の好みではないです。あなたがたが言っていることは野蛮です。安全のためにこのようなことを人に科すだなんて。
ターナー: 管理官の言ったことを聞いてたでしょー実体が人間である証拠などないって。我々がしまっている普通の異常なオブジェクトとそれがどう違うってんですかぁ?
ベイリー: 彼が人間でないという証拠もまたないのですよ、ファビアン。危険であるとの疑いはそのような取扱を是認しません。
ターナー: 我々が実体を人間であると推定したシナリオでは、そうではないと推定した場合のそれより大きなリスクに曝されますねぇ。状況の現実の必要性から、我々はあらゆる起こりうる安全の用心を念頭に置かねばなりませんね。
ミラー: この存在の逮捕には我々はどのようにするべきだろうか?
リドリー: 現在の情報を考慮すると、それを捕まえるにはほんの少しのフィールド・エージェントで十分ではないでしょうか。なぜならばアノマリーの効果のお陰で偶然に終了する恐れがないためです。もしそれを一時的にでも無力化できたならば、施設に移送するのはあまり問題にはならないはずです。
ベイリー: 「一時的に無力化」?「彼を殺す」つもりなのですか?
リドリー: 言い換える意義もまるで感じませんが、そうです。
ミラー: リドリーの提案したものに賛成する。我々は疑いはすれども、理想主義の思いつきは脇に置いて現実に集中せねばならない。追加の増援をフィールド・エージェント・ノーウィンに送り、可能な限り最も高いセキュリティ基準でアノマリーを確保する。他に何か議論すべきことはあるかね?
ターナー: 緊急事態の収拾に成功しましたらぁ、私はぁこのアノマリーのプロジェクトの管理官のポジションを確保したいんですけどぉ。
ミラー: よろしい、認めよう。
<転写終了>
収容記録
被尋問者: SCP-6086
尋問者: ファビアン・ターナー博士
尋問内容: SCP-6086から基礎的な情報を見極めます。
<転写開始>
ターナー: よぉこそミスター・デラット。あなたに降り掛かった状況についてご存知だと思いますがぁ。
6086: テメエはミスター......?
ターナー: ターナー。サイト-37の主任研究管理官ですぅ。
6086: ミスター・ターナー。ナニ、については教えてもらったがよ、だけれども話した奴らはナゼについては教えようとはせんかったがね。
ターナー: 人類種の保存を確かなものとするためにぃ、異常な現象を確保して研究するっていう任務が我々にはありましてねぇ。
6086: もしそれがテメエラの目標なら、なんでワシんチで攻撃してきて取っ捕まえるんだ?
ターナー: 全ての超自然現象が広義の意味で世界と人間の脅威だからですぅ。それに公衆の目から取り除かれなくちゃいけないからなんですぅ。
6086: もしそうなら、なんでサイキッカーとか他の奇妙な連中がいるんだ?
ターナー: 残念ながらサイキッカーってほんとはリアルじゃないんですよぅ。少なくともこれまで我々が調べてきた限りではねー。
6086: そうなのか?まあいい、ガッカリストがまた増えたがな。直前の話題に戻ろうや坊主。もしテメエが人様を助けたいってんなら、ほらワシは人間だ。
ターナー: それはまだ決まってないんですー。あなたの持っている異常な能力について私にもっと教えてもらえますかぁ?
6086: そこまで変だとは気付かんかった、坊主に正直に言うとな。治りがただ速かった、大したことじゃあない。すこしばかし、たとえばハンマーとかのこぎりで自分をぶっ叩いた時とかすぐに治った。デカイと治るのにいくらか時間は掛かったがね。
ターナー: 最初にこの能力について知ったのはいつですかぁ?
6086: まだガキだった頃に、言わせてもらえば、多分10か11か。親父とボートに乗ってな。親父は船乗りだった、すげえ上等なヤツでな。ワシらは出掛けては良い釣果を家に持って帰ったもんだった。水路のどこを見りゃ良いのか知ってりゃあ凄えもんを見つけられるもんだ。ある時ワシらが出掛けたら、嵐がやってきて岸に慌てて戻ったんだわ。脚を掬われないように得たもん全部蹴り落としすらしたな。海が近くのボートの船乗りたち連れてった際の彼らの叫び声をまだ覚えとるよ。波がテメエの身体と顔にぶつかって、風が肺を潰したがってっから舵取りすんのはすげえ大変でよう。なんとかかんとか浜に着けて、南の方の砂さ、えぃ、で人心地ついたんだわ。親父が家にカンテラを取りに戻るからってんでワシに帆を集めて乾かしておけって言った。突然、泣きっ面に蜂、マストがぶっ壊れてよ、しゃがんだら手の上に落ちてきたんだよ。地獄3回分は痛かったなあ、だけれどもなんとか丸太を退かしたら手が突然勝手に治りだした。あんまり気持ち良い感覚じゃあないが、数分後には新品同然だった、親父が戻ってくる前にはな。
ターナー: わかりました...... この能力の原因は何だと思いますぅ?
6086: 知らんよ坊主。ただそうだ。
ターナー: 家族の誰かが異常な効果を示していませんでした?
6086: ワシの知る限りでは、いないな。
ターナー: ご家族について話してくださいますかぁ?
6086: 死んだ、ワシの大事なのは全員な。
ターナー: どのようにして?
6086: 流行り病が持ってった。ワシが30の時にほとんどみんなが突然病気になった。ワシと街全部もだ。身の毛がよだつものだった、ワシと親父だけが生き抜いた。親父は数年後に赤痢で亡くなったと医者は言ったよ、流行り病で弱ったんだと。だけれども遺体は二度と見なかった。ある日姿を消してそれっきりさ。
ターナー: ありがとうございましたミスター・デラット。これで以上です。
6086: 少し待て若者。今やお互い助け合ったし、何もかも明らかとなったから、ワシは家に帰りたい。
ターナー: 残念ですが、それは無理ですぅ。
6086: 無理ってなんだクソッタレ、テメエはワシを捕まえた。テメエは戻せるんだろ。ワシにはこの窮屈な房にぐずぐず居座る理由なんざないんだよ。
ターナー: 先程も言いましたようにぃ、異常な現象を確保して研究する任務があるんですよねぇ。これには超自然の力を研究して拘束する必要が付随するのでぇ、どちらにせよあなたにはぁ、そのまま施設にいてもらわなくちゃいけないんですよぅ。
6086: フェアじゃねえな?
ターナー: そーですねー。そうであることは決して意図されてませんしねー、私たちは最も安全な活動方針に沿っていますからねぇ。
6086: たのむ。このドン底の生活なんかじゃなく平和裏に死なせてくれよ。
<短い間>
ターナー: これで以上です、ミスター・デラット。
<転写終了>
モルヒネのくも膜下投与により収容室内にてSCP-6086は無力化されています。実体はプロセスに対して非協力的態度を示し、オピオイドの強制投与を必要としました。アノマリーの再生能力を研究するために安全な研究実験室に移送されました。
メスを使用して皮膚の小さな部分約1cm2を胸部・前腕・下背部・内側大腿部より切除します。前述の部位の再生時間に異なる領域間での顕著な時間の逸脱はなく、約4.5秒でした。
同じ領域にて1cm2の筋組織を、採集した皮膚断片と同様の大きさで除去し再生を観測しました。筋肉の種類に応じて再生に必要な時間が変化しました。より複雑で緻密な組織はより多くの時間を必要としました。95.2秒から193.8秒までです。
SCP-6086の再生は細胞と全体の領域の量に依存しているだけでなく、より複雑な組織はより多くの時間を必要としていると、これによりある程度確かめられました。これはまた、肝臓の一部分である1cm2を除去した際に543.1秒再生に掛かったことにより、さらに確かめられました。
2時間以内に実体は収容室に戻され、その2時間後に意識を取り戻しました。
オピオイド及びその他類似物質が対象の再生及び肉体的反応に影響を与える可能性があるため、生理的活動の変化を導きかねないモルヒネまたは他のあらゆる種類の物質を使用せずに前回の実験が繰り返されます。
対象に投薬した場合と投薬していない場合の再生時間の間に大きな差異が表れ、再生速度が157%上昇しました。最も重要な変化は筋組織の修復に表れました。SCP-6086の再生はその精神状態の影響も受けているようです。強い情動たとえば恐怖や痛みは産生細胞量と全体の進行速度を増大させるようですこの効果がおそらく無意識状態で再生能力が低下していると観察された理由なのでしょう。
誤解を招くデータを作成せず研究のポテンシャルを最大化するため、さらなる実験はあらゆる種類の化学的抑制剤を用いずに行われます。
SCP-6086の生物学的欲求を判定するために、実体は1ヶ月間食料なしで放置されました。07/01の朝に始まり、食事と水分が08/01の朝まで運ばれませんでした。5日毎に07/01から対照データを作成するため始まります左肩甲骨の皮膚斑点を切除して再生に関するデータを集めます。
第1週後、実体は生存に食料を必要としないことが明らかとなりました。これは実験の後の週で確認されました。体重減少が記録されましたが、実際の生物学的プロセスは機能を停止した代謝器官を例外として減速や停止する兆候を示しませんでした。再生もまた栄養と水分摂取不足の影響を受けませんでした。前回記録されたデータのペースに合致するままに実験期間全体を通して変化なく進行しました。
SCP-6086は最初の3日間の後に、不安と極度の苦痛の兆候を示し始めました。喉と胃部に焼けるような痛みを報告しました。おそらくは想像上の未知の人物に話し掛け、おそらくはそのようにして自らを慰めようとしている様が観察されました。ドアを通って脱走しようとする試みがなされましたが成功しませんでした。
5日目の後、実体はほとんどの肉体的活動を辞め、ほとんどの時間をベッドに横たわり限られた動作だけをして過ごしました。実体は組織標本切除の間のみ活動をしました。7日目まで会話は持続しました。この日に、瞬きなど無意識に筋肉を動かすことを除き、SCP-6086は生存している明らかな兆候を示すことを辞めました
11日目に、SCP-6086は他の組織標本収集中で皮膚と筋組織1片を右肩から切り出していた研究者に噛みつこうとしました。高度な飢餓がありながらも、実体は肉を食べることを拒み、代わりに吐き出すことを選びました。
16日目に、以前SCP-6086に噛みつかれた研究者が組織収集期間中に秘密裏に収容室に食事を持ち込もうとして見つかりました。問題の研究者は研究プロジェクトに影響を及ぼしたため処分され、他のプロジェクトに移籍されました。
20日目の後、翌日の組織収集中にすら実体はあらゆる活動の兆候をもはや示さなくなりました。必要な安全水準を満たすため、SCP-6086のバイタルを医療職員により6時間毎に確認し始めました。実験のあらゆる時点において、実体の生命に対する脅威は何も検出されませんでした。
08/01に実験が終了した後、実体は1人で栄養摂取できました。必要量の栄養が経静脈注射を用いて届けられました。
SCP-6086の精神が不安定であるため、全てのさらなる実験は独占的にその収容室内にて執り行われます。実験期間中は必要な器具が内側に持ち込まれます。
「実験3」から回復した後、SCP-6086は手術台に拘束されていました。より広範な身体部分の再生に関するデータ収集中の実体の安全を確保するため、プロセスは小さな部分から始められ、後により大きな部分へと進みました。
対照群として、1cm2の皮膚組織が左大腿部から除去されました。再生に逸脱は認められませんでした。最初に除去された目標は左示指の末節骨でした。そしてさらに進んでは中手骨全体ともう一方の一方の手の骨も目標となりました。特筆すべきことは肉体の止血効率です。ほぼ瞬間的に全ての静脈を遮断しました。このプロセスは血小板により生じたものではなく、通常組織の物質が成長することによりなされたと観察されました。後に血液検査にてSCP-6086の血液にはあらゆる種類の血小板がないことが確認されました。
左示指の再生が完了した後、手根骨と前腕の骨の間で手全体が切断されました。感覚的観察は一番最初に身体で再生を経験する部位が神経であると示しました。これは再生中の肢への物理的接触に対するSCP-6086の多大なる苦痛により示されました。
右腕のさらなる除去中に、プロセス全体を通じて意識を完全に保ったSCP-6086はショックの兆候を示しませんでした。実体を特徴づける他の実験の状況を踏まえてその異常な性質を考慮すると、このような効果に対して免疫があるという可能性は高いです。
足を足首や膝より高くに保たれ、腕を手首やひじよりも高くに保たれた状態でSCP-6086は金属製ストラップにより手術台に拘束されています。元々は計画されていませんでしたが、実体が身悶えする可能性についての安全上の懸念から首元・骨盤・肩に対して追加のストラップが発給されました。
メスを使用し、腹部中央と乳首とみぞおちの間のラインに沿ってY字形に実体の胸部を切り開きました。筋肉と皮膚組織が切り離され、外側に折りたたまれるか切断されて胸腔と腹腔にアクセスできるようにされました。骨の間の不必要な組織はハサミを使用して取り除かれています。
肋骨と胸骨は骨のこぎりを使用して取り除かれています。下腹部から始め、まずは大腸から器官が取り出され始めます。実体の生命に対する直接的脅威が医療職員に観察されなかったため、小腸と共に両腎もまた取り除かれました。特筆すべきことは痛みとそれに関連した苦痛以外のものであり、SCP-6086が特に代謝器官の除去に特別な苦しみを示さなかったということです。これ以前の実験で収集されたデータは実体がこれらの器官やあらゆる種類の代謝を生存に必要しないと示唆しています。
膵臓・胃・肝臓を除去された後すらもSCP-6086は同様の状態であり続けました。肺を取り出した後にのみ顕著な変化が発生しました。これにより実体は窒息し始めました。身体の幾つかの部分にて細胞の腐敗が観察されましたが、SCP-6086の生命全体は危うくはなりませんでした。
心臓の除去後、実体は強硬症性麻痺に陥り表面上死に類似した水準に達しました。完全再生がなされるまでその状態であり続けました。特筆すべきことは、この状態であっても既に存在する物質を使用せずに細胞分割が発生し、何もない所から新しい細胞を創造しているように見えるという事実です。
SCP-6086の器官は抗菌薬の混入された氷水の溶液に安置されます。細胞再生がメインの身体から切り離された後も止まらないように見えることから、追加ステップは不要であると考えられます。
D-1231はオピオイドを使用して鎮静され、手術台に固定されていました。SCP-6086に処置する場合にはない死の危険性があるため、研究チームは実験を左腎移植に限定することを選びました。
合併症なく器官は移植され、D-1231は覚醒しました。意識を取り戻すにつれて、彼は胃に燃えるような痛みと嘔気を訴えました。それにも関わらず、胃の内容物を除去するであろう腹部運動は発生しませんでした。影響は素早く増大し対象が説明するには虫に似ているそうです彼の身体を侵食しました。ヒリヒリするような刺す痛みと切られるような痛みが混在したものだったそうです。
D-1231は覚醒後2時間して突然死亡しました。SCP-6086の細胞が腎臓から身体の他の部分に転移していたことと器官自体が元のサイズの3倍に育っていたことが剖検により明らかとなりました。多くの腫瘍様細胞塊が身体の異なる部分にて発見され、D-1231の組織をゆっくりと消費していました。対象の死は6086の細胞が脳に浸潤したこととほぼ紐付けられました。
異なる種類の身体損傷からのSCP-6086の回復能力を検証するため、実体は座位にて縛り付けられ、脚と腕を利用可能にしました。
SCP-6086の細胞は高温に抵抗性を持たないように思われましたので、それを火・金属棒・加熱ガスの中に入れました。未知の酸化剤が細胞壁中に発見されたため、実体の身体が通常の人間よりも熱に抵抗できない可能性はあります。それでもなお、ほぼ破壊されているにも関わらず、ある種の細胞内小器官が生き残る限り細胞は火などの中に入ることが未だ可能であり、それ故に再生できました。極端な例では、細胞の一部はその質量の87%が破壊されていても再生可能であるとわかりました。
対照的に、細胞内で見つかった酸化剤は化学物質に対する抵抗性を提供しているようです。通常の人間の組織物質にかかる時間の65倍まで実体の細胞は長時間細胞壁の破壊に抵抗できるようです。燃焼される代わりに酸に溶解した組織でも同様の再生クオリティが発見されました。特定の場合では細胞再生が酸を圧倒しうるとわかりました。
SCP-6086の生存能力の限界を試すため、3ヶ月の期間に渡り幾つかの実験が行われました。それらはこのエントリに要約されています。特定の実験の詳細については補足資料集にて入手できます。
この実験により収集されたデータに対して作成された論文によると、SCP-6086を現在終了可能な既知の非異常手段は存在しません。
実体を無力化する複数の試行により、その生命へのより大きな脅威であるほどに、より大きな反動が生じるとわかりました。その例としては細胞の損傷抵抗性増大であり、細胞分割速度の増大であり、そして特定の場合では、「1が2になる」分割タイプから変化して「1が15になる」分割にすらなるのです。
再生要因を構成する主要な部分が脳であると証明されました。これは11月7日と15日の間に行われた頸部切断によりほとんど明らかに示されました。頭部が残りの身体から離された場合、遺体による新しい頭部の再生の試みはなされませんでした。代わりに頸部で切断された頭部が残りの身体を生やして元に戻りました。加えて切断部に直接離断された身体を置く場合は、いくつかの場合では頭部を再接合することも可能でした。
SCP-6086への脅威がより大きくなったための細胞の損傷に対する抵抗性の増大のため、化学または熱因子による無力化の可能性は良く言えば疑わしいものとなっています。より多くの細胞が破壊されるにつれ、組織全体の強度は、90%以上の一貫した損傷を達成することが極めて考えにくくなる程度に頑丈になります。
実体を酸素不足にすることもまた、高水準機能が不可能となるような他の状況では観察された強硬症性麻痺をもたらす恒久的ダメージを引き起こさないように思われます。これは溺れさせることとペルフルオロブタン投毒の両方で試されました。
「実験5」により証明されたように、SCP-6086はほぼ全ての活動状態である臓器を持たず、かつ全ての臓器が緊張病性状態にあろうとも生存できます。さらにその上、脳の除去は上述した通り、脳からの急速な再生を引き起こし残りの身体を創造します。脳を複数部分に分割した場合には、最も組織が結合しているものが再生を始めます。形而上学的原因によりSCP-6086の再生が引き起こされている可能性もあります。
SCP-6086の真の性質について結論づけるにはさらなる実験が必要です。
会議参加者:
- サイト-37総合管理官: ドナルド・ミラー
- 補助総合管理官: ジョシュア・ベイリー
- 研究管理官: ファビアン・ターナー
- 警備管理官: サイモン・リドリー
<転写開始>
ターナー: この会議のポイントはなんなのです、ベイリーさーん?サイト-█からの新しい供給ラインの監督業をやらなくちゃいけないんですよぅ。それは、思い出させたげましょう、あなたが私に監督させたんですよぅ。
ベイリー: あなたです。
ターナー: もう一度仰ってくださいな?
ベイリー: SCP-6086研究プロジェクトについて話し合うために皆さんを集めました。
ターナー: なぁにか問題でも?最近数ヶ月で素ぅ晴らしい知見が得られましたよ。何もかもとってもスムーズに進んでいると思いますねぇ。
ベイリー: 研究ファイルに数日前についにアクセスした際にほぼ吐きかけましたよ。文書を実際に読んだことはありますか?何があなたの鼻先で起きているのかお気づきでしょうか、管理官殿?
ミラー: 残念ながら暇がなくてな。特にプロジェクト・███████が今まさに発生中でな。
<補助管理官ベイリーは事前に準備していた書類の束を手渡す。>
ベイリー: お楽しみに。
<総合管理官ミラーと警備管理官リドリーがファイルを読み始める。>
リドリー: 研究に問題は見当たりません。ターナー博士は安全プロトコルまたは規則に何も違反していませんでした。
ベイリー: 問題が見当たらないですと?ここに...... ほら、ここに彼らは生体解剖をしたと、ここでは異なる種類の酸を彼に飲み込ませ続けて内側から彼を傷付けられるかどうかを見たとあります。そしてここでは彼らは文字通り立て続けに23回首を切り落として、ほんの少し異なる種類の断端が再生に影響を与えるかどうかのデータを集めています。
リドリー: ターナー博士はこれら実験を行うに足る完全な能力を持っていましたね。
ベイリー: 良く言えばこれは人権侵害です、悪く言えば単なる虐殺ですよ。
ターナー: いつからアノマリーが人間とみなされるようになったのですかぁ、補助管理官殿ぉ?
ベイリー: たとえ彼がそうではないとしても、何が変わるというのですか?
ターナー: なぜなら、ベイリー、誰の権利も侵害してないんですよぉ、人類の全体的利益を研究対象の快適さよりも優先しているだけですよぉ。
ベイリー: まず私のケツの座りをよくする所からやりなさいよ。これでも拷問されていないと呼べるのですか?
ターナー: この茶番はもうおしまいにしませんか、管理官殿?仕事に戻りたいんですぅ。
ミラー: 君の懸念は理解した、ジョッシュ。リドリーが正しい。君が我々に示した実験は財団の規則を何も犯していない。
ベイリー: そのようなアノマリーについての規則がいつからあるのですか?
ミラー: 緊急会議にて実態に対してあのアプローチを行うと合意した時からだ。
ベイリー: では我々のしていることを変えるのを何が阻んでいるのですか?
ミラー: 必要がないという事実だ。会議は終わりだ、我々には他にやらねばならぬことがある。
<転写終了>
その収容初日から、SCP-6086は非協力的態度を示しています。我々の最善の努力にも関わらず、実体はその合理的拘束と社会的かつ科学的成果、そしてその必要性すらも受け入れませんでした。大いに悔やむべきことですが、これにより人間様アノマリーへの友好的アプローチが現実的ではないと証明され、公衆と財団職員の安全を保証するためにはより極端な手段を執らねばなりません。
SCP-6086の精神状態を制御する警備管理官リドリーの提案は大変有意義であり、知的で意識ある存在の収容に関するリスクを阻害すると証明されました。実体が捕縛された後しばらくするまでは、約4週間でしょうか、多くの脱走試行が観察されました。必要量の物理的かつ精神的苦痛を維持した後、セキュリティ違反行動を始めることに実体は興味がなくなった、あまつさえできなくなったようです。
1日のほとんどの期間、SCP-6086は不活発であり、何時間も位置を変えずにベッドに横たわるか床に座っています。1〜5時間してその状態は終わり、実体は通常暴力的な振る舞いを経験します。ほとんどの場合叫ぶか泣きますが、まれに笑います。場合によってはSCP-6086はランダムなような話題について自分自身に話しかけているかあるいは自身の幼少期を回想している様が観察されますが、この活動の頻度は収容中減少しています。
財団職員と対面する際に実体は恐怖を以て反応し、ほとんどの場合部屋のより遠い端に撤退することにより遭遇した個人から遠ざかろうとします。その事実のため、必要なときには収容からSCP-6086を力尽くで連れ出す必要があります。物理的接触に対する強い反応ほとんどの場合涙ですもまた観察されました。誰が行動を始めたのかは問題ではなく、人間に触れられると実体は相当高度な苦痛を感じているようです。
同様に、物理的物体への恐怖も実体は示しています。最も大きな反応は医療器具に対してのものです。これはメス・白衣・布製フェイスガード・ゴム手袋・手術台や他の医療器具にあまり似ていないあらゆる類似器具などです。
結論としては、6086研究プロジェクトは成功したと私はみなします。前述のアプローチにより、我々は潜在的リスクを最小化しつつ莫大な科学的データを得られました。SCP-6086の収容において検証された一般化されたポリシーの継承を他の人間様アノマリーに対しても使用するべきであると信じます。
SCP-6086研究プロジェクトリーダー
ターナー博士
ベイリー-ローゼンの提言
事前資料
以下の提言ではコンテキストが重要であるため、事前資料が添付されています。読み進める前に読者はそれらを知悉しておくことを強く勧めます。
会議参加者:
- 補助総合管理官: ジョシュア・ベイリー
- 監督官: O5-█
<転写開始>
<O5-█はポケットアラームをセットして机の上に置く。>
O5-█: C5会議が始まるまで時間があります。有意義に使いましょう。
ベイリー: 送った要約からお分かりでしょうが、私はマイケル・ベイリーです。サイト-37の補助管理官をしています。
O5-█: はい、覚えています。SCP-6086のそれでしたね?
ベイリー: はい。アノマリーの取り扱いに関して告発するためにこれは理由の一部ですが連絡を取らせていただきました。
O5-█: この面談がそれについての正しい窓口だと思っているのですか?通常の被収容者に関するプロトコルは私の責任より下のレベルにあります。なぜ君はより...... 適切なアプローチを試さないのですか?私に連絡を取るのも簡単ではなかったと思われますが。
ベイリー: もちろんしましたが、良くても丁寧に拒否されましたし、悪ければバカにされました。
O5-█: ではなぜ君はそれでも追及することを選んだのですか?
ベイリー: これが1つのアノマリーの1つの問題だとは思いません。SCP-6086と創造しているそれは、この先何年も、いえ、何十年も先から来るものの先触れなのです。この...... 人物に対してしてきたこととこれからすることは、ほとんどの人が無視しているレベルにおいて財団に影響するはずです。
O5-█: 意味はわかります。研究チームがこれまでしてきたことを誤りであると考えるに至った切っ掛けはなんなのでしょうか?
ベイリー: 「我々と対抗する彼ら」という物語を創造しており、アノマリーが敵であるかのように取り扱われています。それは敵対的不信感を醸成します。そこでは私たちは客観的に悪役と見られるようになりましょう。そこでは喜んで我々の所に来たかもしれないそれらアノマリーは、当然そうするのを恐れるようになるでしょう。
O5-█: 既に我々は多数に対して敵ではないのですか?ここではなにが異なると言うのでしょうか?
ベイリー: モラルというものです、マム。
O5-█: くわしく。
ベイリー: 疑わしい利益のためにSCP-6086に対して私たちは甚大な暴力を振るっています他の選択肢を求めることもせずに。私たちは邪悪であることを選んでいます善良であることに失敗した後という訳でもなく第一選択として。私たちが常にモラルの裁定者になれると考えるほど私はナイーブでも理想主義でもありませんが、フェアなものであることは義務だと信じています。最終手段に代わる道徳的に忌まわしい行いが開始地点になりつつあります。極論を求める人が皆を納得させずともよく、そうではない人がそうせねばならないという地点に。
O5-█: より手緩い態度ではリスクがあるのではないですか?
ベイリー: もちろんあります。ですが私たちの、特にあなたの業務ではいつものことではありませんか?リスクを秤にかけ、できることとしなくてはならないことの狭間の線を歩むのでは?
O5-█: 事実に基づく議論に留めてください。
ベイリー: もちろんです。つまりリスクそれ自体は決断するに相応しい物差しではないのです。私たちがどれを実行可能であるのかを判断できるように、他の可能な選択肢の背景を作るために使われるべきですより道徳的に受け入れられるアプローチを執れる特権的地位にあろうと非道徳的なそれを強制されていようとも。ラジカルな選択肢を調べなくてはならない状況も確かにありますが、間違いなく常にそうであるというわけではありません。
O5-█: SCP-6086の状況においては?
ベイリー: 可能な限り最も明るくそれを説明すれば、サイト-37職員全体の誤判断です。彼らは認めたがりも正したがりもしないようなリスク計算のミスです。そしてなお悪いことに、今や正すことは不可能です。
O5-█: くわしく。
ベイリー: 通常のアノマリーは本質的に影響を与えることなくあらゆる収容の対象となりえますが、命ある、あるいは人間のアノマリーは扱われ方に応じて変化することがあります。SCP-6086の取り扱いは監禁以前の彼の精神を破壊するという精神的傷跡を残しました。これは元に戻せません。
O5-█: このようなアノマリーへの取り扱いに関して君は何をしてほしいのでしょうか?
ベイリー: 一番の問題は、私が思うに、このような問題を扱うインフラが存在しないことです。接触時点の失敗後、サイト-37では、サイト役員会にアピールすること以外の他の行動をしようがありませんでした。既に役員会で合意に達していたのですから。仮に他の部門研究・物流・収容やその他内で誤った決定がなされるならば、次の段階では問題をそれに適した部門に持ち込むでしょう。そこでは告発を検討し、必要があれば問題を正すための手段を執るでしょう。SCP-6086の場合では、訴える先の機関は存在せず、他部門は何もできませんでした。なぜなら、彼らの立場からすると規則違反は何も発生していなかったからですアノマリーは安全に収容され適切に研究され、技術的問題は存在していなかったからです。これは問題が実務的なそれではなくモラルの問題だからです。もう一方では他の財団施設も何も行動できませんでした。それは彼らのサイトの管轄を超えて統制を円滑に進められるようになったからです。
O5-█: では、もう一度繰り返しますが、組織の現在の仕組みでは道徳的ジレンマの解消を手助けできるようになっていない、と君は言っているのですね?
ベイリー: はい、マム。
O5-█: それでは君はなにを提案しますか?
ベイリー: 財団の道徳上の問題を監督する独立評議会の設立を提案したく思います。
O5-█: この「評議会」はどのような権限を保持するのですか?
ベイリー: 可能な限り高く。必要があれば、情報への完全アクセス、そして全研究プロジェクトと収容プロトコルに対する完全な統制です。O5評議会直属の、ある種の諮問機関です。
O5-█: 君に教えなくてはいけませんね。セキュリティ上の理由から君やこの提言に関して大いに協力した人は、予算案が通過したとしても、誰もこの評議会に加わることは許されません。
ベイリー: 私と仲間は皆覚悟しています。
O5-█: よろしい。君の提言は大変革命的なものです。
ベイリー: わかっています。そうでもしないと無意味になるでしょう。道徳を押し付けようとする機関が実行手段を持たないだなんて。
<アラームが鳴る。>
O5-█: これで終わりとしましょう。今週中に連絡します。もしアイデアが受領されたなら、君はO5評議会に評価される正式な提言を書類で作成するよう求められます。通知が来た時に必要な情報を提出できるよう準備をしてください。
<O5-█は部屋から退出する。>
<転写終了>
会議参加者:
- 研究者:
- ファビアン・ターナー博士
- トーマス・ローゼン
- 監督官: O5-█
<転写開始>
O5-█: 記録のために認証情報を宣言してください。
ターナー: 私はファビアン・ターナー博士、レベル4クリアランス。サイト-37の研究管理官、現在SCP-6086、SCP-████、そしてSCP-████の研究プロジェクトリーダーであると共に物流部門英国サブセクションの役員でもあります。プロジェクト・███████と最初の人間様アノマリーの収容に関するプロトコル作成を監督しました。
ローゼン: 私はトーマス・ローゼン、レベル2クリアランスです。研究の妨害と説明される理由で解任され、別のプロジェクト、主にSCP-████に移籍する以前はSCP-6086の研究チームの一員でした。
O5-█: 君が解任されることとなった出来事について説明してください。
ローゼン: 計画された実験の性質を考慮し、外科医としての経験が有用であると思われたため、私はSCP-6086プロジェクトに異動されました。実験番号3の開始時点で異動し、実体の健康を監督する医療職員たちに合流しました。私の仕事は皮膚の断片などの標本を実体の身体から強制的に除去して回収することでした。実験では大変過酷な状況たとえば飢餓、口渇感、適切な睡眠周期の欠如、そして似たような状況ですに実体がどのように反応するのかを検証していました。実体の再生がそれらの影響を受けるのか否かを監視することが任務でした。私はSCP-6086に食料と水を与えようとしている所を見つけられたため解任されました。
O5-█: この行動の理由を説明してください。
ローゼン: 間違っていると感じたからです。ひどい間違いだと。私たちは基本的に彼を見込みのある仮説のために拷問していましたし、未だにしています。それに関して何もしてやれないとわかっていました。ですので私は自分にできる唯一のことをしました。このようなことをして許される者がいるとは思いません。人間の良心に反しています。ハーグ条約すらこのような行動を禁じていました。
O5-█: ローゼン研究員。私たちは国家でも戦争中でもありませんし、SCP-6086が人間であると確認されたわけでもありません。そして、より重要なことは、私たちはハーグ条約に参加せず、調印もしていません。私たちは積極的に国際法に従わないと決断しました。ターナー博士、あなたの立場から説明してくださいませんか?
ターナー: もちろんですぅ。全ての私の行いはぁ、SCP-6086に関して、あらゆる観点から見ても当時と現在存在する財団の規則に違反していません。私の権限の範囲内でこのような方針を選択しましてぇ、より大事なことに、非ぃの打ち所のない成果をお届けましたねぇ。実体の収容を始めてから脱走のリスクはこれまでありませんでしたし、アノマリー内部の仕組みについて素晴らしい洞察が得られましたよ。
O5-█: 道徳上の問題は?
ターナー: このような議論では道徳の存在する余地はないと思いますねぇ。我々の仕事はそのような気まぐれな主観的物事をくよくよ考える暇のないほど大事ですぅ。代わりに客観的利益を優先すべきですねぇ。アノマリーを無意味に大事に扱って得られるものはないですしぃ、ですのでぇ、大事にするべきではないですね物理的資源と職員、同じく時間の浪費ですよぉ。
O5-█: SCP-6086の現在の状態を君はどう説明しますか?
ターナー: 管理が楽ですねぇ。
O5-█: アノマリーに対する君の取り扱いによって不可逆的に知能を傷付けたという申し立てにたいして君はどう答えますか?
ターナー: SCP-6086の精神状態はその異常な性質全体に影響を与えませんのでぇ、申し立ては無視できますぅ。研究に影響はありませんからねぇ。高等数学をできて詩を暗唱できることと完全な昏睡との間に差がありませんしぃ。
O5-█: ローゼン研究員?
ローゼン: はい?
O5-█: 提示された問題についての君の見解を示してください。
ローゼン: たとえアノマリーがSCP-6086の知能と直接的関係がないとしても、アノマリーに関連した可能性は未だその認知によって制限されています適切なコミュニケーションの不足は、たとえば彼から情報を得られなくしています。
ターナー: 必要な尋問は全て、知能を損ないかねない行動の前に行われましたが。
ローゼン: そしてそれにも関わらず、彼が持ちえたかも知れず、あるいは将来持つかもしれない全てのたとえばその内心の説明などのデータは今や完全に手に入らないのです。あなたはSCP-6086の潜在的形而上学的側面について説明しました。それを彼からの情報抜きに研究することは不可能かもしれません。
ターナー: 根拠のない仮説ですねぇ。
ローゼン: どうしてあなたにわかるのです?あなたは都合のいい時だけ「研究成果」を優先し続け、あなたの方針に合致しない時は無視しているではないですか。
O5-█: 以上で終わりとします。下がりなさい。
<転写終了>
提言要約
以下の提言は「倫理委員会」と呼ばれる独立した財団部門を創設するよう唱えます。倫理委員会は主に監督評議会の諮問機関として働き、可及的最高度にその義務を果たすために必要な全ての資源を有します。
倫理委員会の全構成員は「内部委員会」と呼ばれる行政体の全面的承認を必要とする内部の投票処理を通じて選出されます。倫理委員会構成員を内部委員会以外の者は強制的に解任することはできません。もし倫理委員会構成員にある人物が選ばれた場合、当該人物は現在の全ての任務を中止し、可及的速やかに指定された会合に参加してください。倫理委員会への任命に疑問の余地はなく、選出された個人の意志とは無関係です。
倫理委員会に10年間勤めた後ならば、構成員はいかなる時であろうと辞職を選択できます。このような行動が執られた場合、当該人物は標準退職手続きに従い財団の指揮系統から除外されます。財団職員としての以前の業務への復帰は認められません。
内部委員会の仕事は財団および倫理委員会の規則への内部違反を取り締まり、そして組織に与えられた権力を濫用する構成員を取り除くことです。
「道徳委員会」は倫理委員会の外部の違反を監督する行政体です。道徳委員会の仕事は、最も許容できる方針を決めるために財団の全活動を監督し監査することです。
倫理委員会の全ての構成員は、委員会に加入し次第自動的に第5レベルクリアランスを与えられ、財団の過去と未来の行いについて安全に閲覧可能である全ての情報に対する完全な閲覧権を提供されます。
違反が観察された場合、道徳委員会の構成員が派遣され、当該人物に対してその罪について通知します。合理的な期間内に適切な行動が行われなかった場合、道徳委員会の派遣された構成員の選ぶ必要な手段全てにより、倫理委員会は裁定を執行します。
潜在的に曖昧な道徳的背景を持つ財団職員により行われる全ての将来の行動は、実行前に道徳委員会から承認されねばなりません。
監督官票決要約
状態 |
---|
承認 |
倫理委員会命令
倫理委員会創設に続いて、SCP-6086と当該アノマリー関連職員についての裁定が道徳委員会の構成員たちにより議論されました。本命令の示す情報は独占的ではなく、明らかに宣言された問題に関するものに限られています。言及された全職員の容疑が晴れた訳ではなく、表明されていない事柄は将来訴追される根拠となりえます。
本命令に対して不服申し立てはできず、以後30年間他の規則の根拠として利用可能です。
倫理委員会による最初の裁定として、私たちはSCP-6086の事例を取り扱う際に特別な関心を寄せていると表明したく思います。過去数ヶ月、私たちは実体と関連問題全てに入念な調査を行い、SCP-6086の収容と研究に参加した職員に32回のインタビューを行いました。
本委員会が裁定した最初の問題は、SCP-6086を事実上人間とみなしうるかというものでした。人間であることを支持する意見は以下の通りです。
- 実体が、臨床検査以外では区別の付かない肉体的外見を持つこと。
- 実体が、収容以前に人間として生活し、人間社会に参加していたこと。
- 実体の精神が、人間と区別が付かない働きをしていると信じられていること。収容前後で乖離が見つかっていないこと。
- 実体が自身を人間であると見做していること。
反対に人間ではないことを支持する意見以下の通りです。
- 実体の存在全体がアノマリーに依存していること。底流する実体の生理が異常な効果により形成されていること。
- アノマリーが外部の影響ではなく実体の固有の要素であること。
これら全ての意見を真実であると受理し、私たちはSCP-6086が人間ではない、そしてこのような存在が将来の文書及び規則において人間であるとみなされてはならない、という結論に達しました。
それでもなお、この裁決の後に問題が生じました。SCP-6086が人間ではないならば何であるのかという問題です。目下の所、人間の収容に関する規則とSCPの例は存在しませんが、本裁決が宣言するように実体は人間ではありませんので、この疑問は本事例において重要ではないことが明らかです。
代わりに生体標本の収容に関する規則が使用されます。特定の規則を別として、所定の標準プロトコルが「収容されている実体の生存を十分に注意して保証する」ものとして制定されています。それに基づくと、SCP-6086の取り扱いはあらゆる定められた基準に違反していません。それ故に、実体の研究と収容中にファビアン・ターナー博士の行ったあらゆる行動をあらゆる懲戒処分の根拠として用いることはできません。
もう一方では、トーマス・ローゼン研究員もまた全ての嫌疑が晴れました。規則に違反していましたが、ローゼン研究員の行動はサイト、市民、あるいは財団職員の安全を何も脅かさず、また実施中の実験を脅かしもしませんでした。彼の行動の理由は妥当であり、手段自体も財団の利益を懸念して行われたものでした。
多数の財団職員が懸念するため、SCP-6086はサイト-37から退去し、将来の研究をサイト-17にて始めます。加えて、ファビアン・ターナー博士はSCP-6086研究プロジェクトから除名され、サイト-17の適切な職員が割り当てられます。
収容更新
サイト-17への移送中、SCP-6086は合衆国東海岸、より詳細にはボストン、に貨物船「トレローニー」号で移送されていました。
旅行中、SCP-6086は扉に鍵を掛けられ、船舶の第2デッキの一室に監禁されていました。これまでの実体に関する経験から実体のすぐ隣の扉の他に警備手段はありませんでした。不明な手段により、船舶が至近の海岸から約450海里離れた時に、実体は扉から完全に錠と上部のヒンジを取り外し、脱走を試み始めました。
実体はただちに財団職員に発見され警備員に通報されました。SCP-6086が海に身投げをする潜在的リスクがあったため、デッキ外への通路は全て武装職員により封鎖されました。身投げした場合の結果がどのようなものとなるのかは不明です実体は生存可能であり最終的に海岸まで帰還するか、あるいは海底に囚われることとなり、SCP-6086の回収はほぼ不可能となるでしょう。
警備員がデッキに近付き逃走経路を遮断するにつれて、実体は下の貨物室の方向に移動し始めました。実体が船底に進行しているという事実を勘案し、職員は上部デッキ全てへの経路を遮断していた間に、実体は積荷でバリケードを構築しました。「トレローニー」の設計図によると、外部デッキの他に船外への経路は存在しません。
警備員がバリケードを突破した時、彼はSCP-6086と遭遇しました。SCP-6086は扉の横で待ち構えていました。入室するなりすぐに、実体は物理的闘争を開始しました。アノマリーを傷付ける恐れから、警備員は実体を制圧できず、実体はエンジンルームに向けて逃走しました。
警備員は続けて実体を追跡しました。他の3人の警備員が追跡中に合流し、SCP-6086は最終的に追い詰められ、SCP-6086は船舶のエンジンに落下する様を目撃されました。これが意図的な自殺試行であるか事故であるかは不明です。
実体はエンジンピストンと接触し、四肢が千切れ、その身体のほとんどの組織を引き裂かれるか潰されました。同時に身体の再生を開始し、絶えず組織を再結合しては切断される結果になりました。26分間のプロセスの後、エンジンが停められ、実体を引き出せる程度に減速しました。極端な力、高温、過剰な体重量(追加の余計な手足と器官を含みます)、そして一定の再生サイクルが原因である可能性が最も高いのですが、回収直後のSCP-6086はその身体を適切に再生せず、代わりに曖昧な肉塊を産生しました。
現在、実体の体重は約162kgであり、体積は6m3です。ほぼ全ての身体の部分が相互に癒着していましたが、ある程度の運動能を未だに有しています。ランダムな筋肉の痙攣と口と目であると考えられているものの動きとしてほとんどの場合表れます。ターナー博士により収集されたデータは、このプロセスを逆転させることがほぼ不可能であると示しています。
少量の細胞の腐敗が全身にわたって観察されました。この影響を停止または加速しうるプロセスは不明です。SCP-6086は5〜10ヶ月以内に完全に死ぬ可能性が高いです。
現段階では、我々は彼にもう意識がないことを願うことしかできません。
サイト-37補助管理官
ジョシュア・ベイリー
監督評議会通達
1906年6月2日に財団は大きな課題に直面した。そして多くの人の言う所では、この課題に上手く対処できなかった。人間として現れた最初のアノマリー、少なくとも我々が直接対面した最初のそれは我々の任務の節目であり、我々の組織や世界全体の方向性を否応なしに変化させる新たなる潮流だった。
1912年10月2日に、公式にはSCP-6086として知られるアノマリーがneutralizedに指定された。一番最初に収容された者は、同様に一番最初に失われた者だった。この実体の存在は、財団の論者たちの間で侃侃諤諤の論争と争論の火付け役となり、今なおその死の恐怖はさらに語られる話題となっている。結局の所、この存在が我々の道をその先に導いたのだ。恐らくは生きているよりは死ぬことによって。
監督評議会としては、我々は人間様生物意思伝達の簡明さと容易さのために「人型実体」と改称するに関連する新しい規則と規制を導入する。
「独立生物学的実体決議」IBE Actとしても知られるにより定められた基準は、生物学的かつ独立的であるだけでなく知的で認知能力のある存在に対処するには不十分であると明らかになった。安全な収容の基本は、生存する最低限度の基準だけではなくその状況に応じた生きるのに十分な基準を提供せねばならない。最低限度の生理学的欲求を考慮に入れねばならないが、それだけではなく精神的欲求も同様に考慮しなくてはならない。不必要な危害は利益よりも問題を生じるためである。
宣言しなくてはならないこととしては、この変更の根拠は功利主義的背景であり、道徳的背景ではない。全財団職員はアノマリーを人間よりも優先することは、それが収容されているか否かに関わらず、厳に禁じられており最高度の違反である。
人型実体たちは困窮している集団ではない。
人型実体たちは共同社会の隣人ではない。
人型実体たちは犠牲者ではない。
人型実体たちは脅威である。
確保・収容・保護