クレジット
翻訳責任者: Tetsu1 Tetsu1
翻訳年: 2023
著作権者: Uncle Nicolini Uncle Nicolini
原題: Señor Boom
作成年: 2021
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-6057
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SCP-6057が引き起こした爆発を撮影した画像。
アイテム番号: SCP-6057
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-6057はサイト-55内のKeter棟の、標準人型オブジェクト用の物品が備え付けられた鉄筋コンクリート製の収容室に収容されます。SCP-6057と交流を試みる職員は突発的な行動を起こしてはならず、時間をかけて落ち着いて会話する必要があります。
現在、SCP-6057は毎週火曜日と木曜日の午後2時にリー博士による週2回の心理療法セッションが予定されています。
説明: SCP-6057は、漫画的な様式の爆弾に類似したポリプロピレン製のオートマトンです。SCP-6057は最大14キロトンの力で爆発することが可能です。SCP-6057は通常の大規模な爆発に予想される音を発しませんが、代わりに大きな破裂音、続いて吹き戻しの音と識別される音を発します。また、爆発後には大量の発生源不明の紙吹雪が残ります。SCP-6057は爆発後に自身を再構成することができ、爆発によって損傷することはありません。
SCP-6057は極度の不安感に苦しんでおり、動揺したり狼狽すると爆発する傾向があります。
補遺6057.01: 発見時のメモ
財団エージェントによるSCP-6057の発見時、以下のメモがその背中に貼り付けられていました。SCP-6057はニューメキシコ州のアルバカーキでの一連の異常な爆発の後に発見されました。
やあ、子どもたち! 今日から君が、ファン・タスティックFuntastic教授の小さなセニョールライン、セニョール・たのしいの正当な持ち主だ! 何時間も楽しいを全部集めるしよう!
楽しいのために君のセニョールをここへ! セニョールを全部集めたら超楽しい! 楽しいは君のために! 君の友達の楽しい!
- セニョール・どかーん!
- セニョール・ふわふわ!
- セニョール・せにょーる!!
- セニョール・せにょりーた!!
- セニョール・たのしい!
- セニョール・あな!
- セニョール・ぶたさん!
- セニョール・むらさき!
- セニョール・あじ!
補遺6057.02: 直近の心理療法セッションの音声記録
以下はリー博士とSCP-6057の間で行われた最新の心理療法セッションの対話記録です。
<記録開始>
リー: こんにちは、セニョール・どかーん。
SCP-6057: ああ、こんにちは、博士。
リー: 今日の気分はどうですか?
SCP-6057: わからない。良い、かな?正解はあるのかな?
リー: いいえ、正解はありません。気分が良くないのならそれでもいいんですよ、ええ。
SCP-6057: じゃ-じゃあ良くないな。窮屈な気がする。この壁…閉所恐怖症になりそうだ。
リー: 景色を変えてみたらいいかもしれません。外に出られるよう要請してみましょうか?
SCP-6057: それが良いかも…
リー: 私もそう思います。では、始めましょうか?
SCP-6057: わかった。
リー: 先週のような息苦しさは感じていますか?
SCP-6057: 少し…教えてもらった呼吸法を試してみたけどそれでもまだ苦しい感じがする。
リー: それが普通です。そういうものです。心理療法というのはすぐにあなたを良くするというものではなく、何かあったときに自分をうまくコントロールするためのテクニックを学ぶものなんですよ、覚えておいてください。
SCP-6057: わかってる、わかってる、でも…博士が近くにいてくれないといつだって爆発してしまいそうに感じるんだ。
リー: 私がいなくてもやっていけるはずです。私はあなたを助けるためにここにいますが、いつまでもあなたの杖となって支えることはできません。ポジティブなことに目を向けてみましょう。将来の外での旅行とか!楽しいものになりそうです。新鮮な空気はいつだって体に良いものです。
SCP-6057: ここの空気は嫌いだ…かび臭い…
リー: ここの嫌いなことではなく、何かポジティブなことに目を向けてみませんか?
SCP-6057: わかった…外…外…でも博士、もし外で爆発したら?二度と外に連れ出してもらえなくなる…
リー: ポジティブなことを見つけてみましょう。
SCP-6057: そうしてるよ!そうしてる!ごめんなさい…
リー: 謝らなくてもいいんですよ。外に出るという良いこととか、それがどれだけ良いものだろうとかといったことに目を向けてください。これを前に踏み出し続けるための目標としてください。
SCP-6057: でも何が起きるのかはわからない…何が起きるかわからないならどうやって自分をコントロールすればいいの?
リー: それは日々を生きる上でとることになるリスクです。何が起きるかは決してわかりませんが、それでも外に出て生きていく必要があるのです。そうしないと、あなたは一生を収容チャンバー内に閉じこもって過ごすことになります。それに、あなたがいつもここにいたくないことはわかっていますよ。
SCP-6057: いたくない…でも…
リー: でも?
SCP-6057: でも…わからない…何もかもに圧倒されそうで、それに外に出ることは認めてもらえそうもないのに何の意味があるの?いっそ爆発してそれでおしまいになってしまえば…
リー: どうか落ち着いてください、どかーん。外出を承認されるか否かはわかりません。思い出してください、あなたは3か月間大きな爆発を起こしていません。実に大きな進歩です!自分を卑下しないでください。
SCP-6057: …でも…
リー: 「もしも」のシナリオや「でも」などと考え続けていても良くなりませんよ。
SCP-6057: じゃあ僕はもう良くならないの?永遠にここから抜け出せない運命だっていうの?
リー: そういう意味で言ったのではありませんよ。
SCP-6057: それはわかってる、でも…
リー: ここで「でも」を考えてどう感じるかはわかっているはずです。
SCP-6057: わかってる!わかってる!でもどうしても考えちゃうんだ…溺れてるみたいだ…溺れてる、博士、僕にはどうしようもないんだ!試したことは全部無駄だった、それであなたを失望させてる気がしてそれから自分にも失望して、もうわからないんだ!ごめんなさい!
[SCP-6057の導火線に火が付く。]
リー: 一緒に話したことを思い出してください。落ち着いて。深呼吸。
[SCP-6057の導火線は一瞬カチカチと音を立て、火が消える。両者の間に短い沈黙が流れる。]
SCP-6057: 僕の言うことがわかったでしょ、博士?もしあなたがいてくれなかったら、僕は爆発して多分また自分の部屋を壊してた…率直に言って、僕は二度と外に出られないんだ…
リー: 自分で自分を止められたのは大きな進歩です。あなた一人の力で、爆発して問題を起こすのを防ぐことができました。これはあなた一人の功績です。わかりますか?あなたは確かに良くなってきているのですよ。
SCP-6057: 多…多分その通りだと思う…
リー: ほら、セニョール・どかーん。小さな一歩を踏み出していくことが何より大切だということを忘れないでください。今日あなたは大きな一歩を踏み出しました。そうできたことを誇りに思ってください。
SCP-6057: でも…
リー: 「でも」はやめてください!
<記録終了>
付記: リー博士はこの交流の後、SCP-6057の外出を許可するよう要求しました。要求は倫理委員会と収容委員会によって処理された後、承認されました。
前記: SCP-6057はサイト-55の地上周縁部を散歩することが許可されました。SCP-6057にはリー博士と2人の警備員が同伴しました。
<記録開始>
SCP-6057: 信じられない…もう一度太陽を見られるなんて思わなかった…
リー: 自分を誇りに思ってください。あなたの大きな進歩がなければこうしてここにいられることはなかったのですよ。
SCP-6057: そ…そうだと思う。ありがとう、リー博士。
リー: 私は自分の職務を全うしているだけですよ。教えてください、こうして外に出られてどう考えていますか?
SCP-6057: 足下に草があるのを感じたいな。
[SCP-6057は壇上から草の上に降りる。]
リー: どうですか?
SCP-6057: すごい!僕は…僕はこんな素晴らしい思いをするのは作られ…作られ…作られてから初めてだ。
リー: 良い思いができたようでうれしいです。収容されるより前は外に、自然の中にいるのを楽しんだりしましたか?
SCP-6057: うん…まあ、そんな感じ。周りに誰もいないってわかってるときには、外に出て風が顔に当たるのを感じたかった。父さんは、人がいるときは外に出ないよう言ってた。奴らは僕を盗むだろうからって、僕はそれが気がかりだった。
リー: 父さん?ファン・タスティック教授のことですか?
SCP-6057: あの人はそう名乗ってたの?僕はあの人を父さんだとしか知らない…
リー: 話を続けてください。口を挟んですみません。
SCP-6057: 大丈夫。とにかく、父さん、あの人…あの人は僕に絶対に外に出ないよう、さもないと奴らに連れていかれると言った。僕は、そんな風にいきなり父さんのもとから連れ去られるのが怖かった。だから僕は生まれて数週間は外に出なかった。父さんが言ってた「奴ら」が誰なのかはわからなかったけど、今ならわかるかもしれない…あなたたちだ。
[10秒の沈黙。]
SCP-6057: とにかく、そこから全部始まったんだと思う。父さんは僕に連れ去られることの恐ろしさを教えた…父さんは正しかった。外に出るべきじゃなかったんだ。でも、父さんがいないのはとても孤独だった…僕は…僕は何を見つけたかったのかもわからない。父さん以外の人は見たことがなくて、そして…怖かった。今だって怖い。
リー: 今は何を恐れているのですか?
SCP-6057: 父さんが戻ってきて、連れ去られたことで怒られるのが怖いんだ。あの人には僕を誇りに思っていてほしい…
リー: 私は彼が怒るとは思いませんよ。
SCP-6057: 本当に?僕はこんな不安症のやつだってのに?
リー: 彼がそんなことであなたを判断するとは思いません。むしろ、あなたがこんなに自分をコントロールできるようになったと知って誇らしく思うと思いますよ。
SCP-6057: ほ-本当に?
リー: ええ。あなたは不安に苦しんでいるかもしれませんが、そんなことであなたという存在は決まりません。あなたは良い人です。もっと気楽に考えましょう。
SCP-6057: …あ…ありがとう… [SCP-6057は鼻をすする。]
リー: 泣いているのですか?
SCP-6057: いや!うん…ちょっと。
リー: 泣いてもいいのですよ、セニョール・どかーん。
[両者は30秒間沈黙する。]
リー: 今日は良い日ですね。
SCP-6057: そうだね。今日は本当に良い日だ。
<記録終了>