SCP-5668。写真記録からは、異常性はほとんどないし全く検出されていない。
特別収容プロトコル: SCP-5668は標準的な文書収容ロッカーに保管されます。付近でスコパエスセシアを経験した職員は、速やかに場所を移動するものとします。
映画 "天使たちは我らを見ている" のフィルムの行方は現在も調査中です。補遺2668-3の事件以降、更なる人命損失を防ぐために、フィルムと接触する際には細心の注意を払うべきです。
説明: SCP-5668は1924年の無声ホラー映画 "天使たちは我らを見ている" の唯一既知の宣伝ポスターです。この映画のフィルムの現存は確認されていません。SCP-5668の付近に長時間留まっている人物は、短期的なスコパエスセシアを経験しますが、この感覚は数時間程度で解消されます。
SCP-5668の長時間かつ直接的な視認は、幻視という形で、より強固な妄想を生じさせます。この幻覚は、複数の実体がSCP-5668のアートワークに描かれている店舗の中に出現した後、店舗を退出し、最終的にはSCP-5668自体の外部へと歩いて出て来るという内容です。
問題の実体群を知覚した人物は、一様にそれらを"天使"と呼び、曖昧かつ概ね言語では言い表せない物理的外観を有し、強烈な多彩色の光を発散していると説明します。また、これらの実体群の目は、その他の特徴と同じように形容しがたい外見であるにも拘らず、対象者は実体群が絶えず自分を見つめていると考えます。
実体群は敵意を示さず、代わりに対象者を非侵襲的に観察し続け、物理的に触れようとすると遠ざかります。SCP-5668を退出してからある程度の時間が経過すると、実体群は対象者の頭を通り抜けて去ります。このプロセスの正確な説明は、いずれもそれ以上のニュアンスを含んでいません。
ロン・チェイニー、1923年頃。
補遺5668-1 - 経歴: "天使たちは我らを見ている"は、ミシガン州ブルー・スプリングスにおいて、42人の観客の前で一度だけ上映されたと考えられています。鑑賞者の証言はほとんど残されておらず、大多数の鑑賞者は既に死亡しているか、上映に立ち会ったことが証明されていても、連絡を受けた際にはこの映画について完全に忘却していました。映画の製作に携わった撮影班や出演者の証言も、同様に希少です。
この上映会が批評家から絶賛されたにも拘らず、"天使たちは我らを見ている"はその後二度と上映されませんでした。脚本家、監督、主演俳優のロン・チェイニーが唯一公に語った理由は、この映画が"もっと是正する努力をすべきだった、とんでもない過ち"であるというものでした。
"天使たちは我らを見ている"のフィルムを発見するために、独立した民間人と財団の双方が懸命な捜索活動を行ったにも拘らず、現存フィルムは発見されませんでした。"天使たちは我らを見ている"の最後のフィルムは、メトロ・ゴールドウィン・メイヤー・スタジオが所有していた保管施設の火災で、他数作品の最後のフィルムと共に焼失したものと想定されました。この火災は古い硝酸塩系フィルムの発火が原因だと判断されましたが、更なる調査は隠蔽された放火の証拠を明らかにしました。
この映画には不完全な要約が幾つか存在することが知られており、その中でも最もまとまりがある記述2つが以下に掲載されています。どちらの著者も既に故人です。
- 簡潔なあらすじ - ミズーリ州ブルー・スプリングスの新聞 "ジ・エグザミナー" 1924年版に掲載された、近日公開予定の映画広告群より発見:
"ロン・チェイニー主演の最新作 "天使たちは我らを見ている" は、天使が行く先々で自分を見つめていると考えている狂った女の物語。ロン・チェイニーが演じる心理学者は、彼女が精神異常と宣告される前に妄想を鎮めなければならないのだが、成果は上がらない。"
- 映画の批評 - 損傷の激しい1924年版 "ボーイズ・シネマ" 誌より発見
ロン・チェイニーが心理学者 "D・B・ブーレス" 役を、マーシャリーン・デイが "ダイアン・シュルツェン" 役を務める映画 "天使たちは我らを見ている" は、観客をその中に引きずり込むかのような、心を掴んで離さない恐怖の一作である。物語は、ある心理学者と、奇妙な"天使たち"が自分を見ている幻覚に苛まれる患者のダイアンを巡って展開する。観客がダイアンの目を通して見ることになる作中の天使の姿は、良い意味で衝撃的であり、あたかも
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彼女は他人をも同一視し始め、自分の夫さえも信じられなくなってゆく。ブーレスは懸命に彼女の誇大妄想めいた言い分を否定しようとするが、彼女はそれを激しく拒み、
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がスクリーンから飛び出して、観客たちを心底から魅了し、恐れさせた。ある観客は恐怖のあまりに気絶したほどである! このような演出は他の映画にはとても望めまい。彼らはすぐに退散
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血塗れの彼女が、脚を引きずりながらオフィスビルから出てゆくところで幕を閉じる。まさに傑作、実に素晴らしい鑑賞体験であった。"
情報不足のため、SCP-5668の異常性の原因を厳密に断定することは不可能です。
補遺5668-2 - 独立した調査: 2020年01月04日、GoI-1109 ("パラウォッチWiki") にて、"天使たちは我らを見ている"の更なる情報や現存フィルムを探すための統一された議論の場として、専用フォーラムスレッドが開設されました。このスレッドに持ち込まれた証拠のほとんどは虚偽であると証明され、セキュリティ侵害には該当しませんでしたが、"monsterkill00"のユーザーネームで活動する人物が投稿した数件のコメントには信憑性がありました。該当するコメントの書き起こしは次の通りです。
monsterkill00 2020年01月25日 (木) 8:50:51 #92967342
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ワオ! このスレに巡り合えて嬉しいよ。
俺の祖父は初期の無声映画で度々カメラマンを務めてて、小規模な企画の間を行ったり来たりしてた。それこそずっと映画撮影の話ばかりしてたよ。祖父はロン・チェイニーの大親友で (写真を添付しておく。真ん中が祖父、その右側で映画の衣装を着ているのがチェイニー) 、色々と話をしたそうだし、たまにチェイニーが主演や監督を務めた企画にも参加してたんだ。
生憎、祖父は"天使たちは我らを見ている"の撮影には関わってない。ただし、その直後に別な映画でロンと一緒に仕事をしてる。詳細はちょっと曖昧で、話を聞くたびにちょっとずつ変化した。アルツハイマー病のせいで、祖父のそういう細かいとこの記憶はかなりぼんやりしてたんだ。良い人だったよ。まだ多少なりとも記憶に残ってることを、いつでも喜んで話してくれたし、そうやって昔を思い出すのは本人にとっても励みになってたと思う。自分の唾で窒息死してるのを、クソの役にも立たない老人ホームの連中が見つけるまでは。
すまない。とにかく、俺が普段聞かされた話は次の通りだ。
祖父はいつものように撮影現場を訪れ、チェイニーと会話した。チェイニーは普段、そういう映画の撮影ではとてもワクワクしていたそうだ。ところがその日に限って、彼はあまり乗り気ではないように見えた。少し落ち込んでるというか、冷めてるというか - 祖父はいつも"出勤前に仔犬が撃たれるのを見たような面"だったって言ってたっけな。だから祖父はいったいどうしたのかと訊ねて、何かしら話を聞き出そうとしたが、最初は取りつく島も無かった。そのせいでメチャクチャ気まずい雰囲気になったから、祖父は話題を変えようとして、前回の映画はどうだったかと訊いた。するとチェイニーはますます取り乱し、祖父を脇に引っ張っていって、化粧室へと連れて行った。
チェイニーは祖父に... 何かを話した。ここに差し掛かると、祖父の話はいつも混乱した。チェイニーが夢を見た、という点は一貫してる。彼は街路を歩いていて、開いていたマンホールに落ちた。ある場所を - 邸宅だったり、映画のセットだったり、バーだったり、祖父の気分次第で色々変わった - 通り抜けていくと、やがて1台の映写機を発見した。チェイニーはその映写機の"中に" (信じてくれ、祖父がどういう意味でこう言ったのか俺にはさっぱり分からない) 歩いていって、そこで衝撃的な何かを発見したんだ。うん、分かるよ、期待外れなオチだよな - 祖父がその話をする時は毎回肩すかしを食らってた - でも祖父はマジでそれしか言わなかったんだ。何度か、詳しくは"秘密"なんだって言ってたけど、ぶっちゃけ覚えてなかっただけだと思う。
ともかく、チェイニーはその夢から着想を得て、そのすぐ後に"天使たちは我らを見ている"を構想したらしい。フィルムは2本あった。ラフカット版と、実際に上映されたやつだ。ところが、チェイニーは映画の何かに失望し、二度とそれを誰かに見せる気にはならなかった。"生きていられたのは運が良かった"、祖父によるとチェイニーはそう言った - この言葉も話をするたびに概ね一貫してたな。チェイニーは、それらのフィルムを誰にも見つからない場所に隠してる、"安全な所に保管しておく"と祖父に語ったそうだ。祖父は大体そのあたりで話を締めくくって、後はもうブツブツ呟くばかりであまり意味が通らなくなった。
もう分かってる情報だったらごめんなww 26ページもあるスレッドなんかいちいち読んでられないからさ。
CHEESEMEISTER 2020年01月25日 (木) 9:00:51 #92967356
ワロタ 誰もお前の狂ってくたばった痴呆ジジイのお話なんか信じねえよ、特に俺はな
この話を扱うスレッドはもう5つもある、自分の唾も飲み込めねえとしたらそいつはろくなソースじゃねえな
ガチの証拠がないなら失せろ
monsterkill00 2020年01月25日 (木) 9:02:30 #92967360
死ねクソ野郎。もしガチの証拠が欲しいなら、お前のために探してやろうじゃねえか。まだ整理できてないけど、祖父の遺品はまだウチの屋根裏にどっさりあるんだ。しばしご辛抱をば、ミスター"CHEESEMEISTER"、おゝ偉大なる陰謀論wiki掲示板の真実の守護者よ
CHEESEMEISTER 2020年01月25日 (木) 9:03:46 #92967365
【悲報】モンスターキルゼロゼロとかいう名前の男、ワイのユーザーネームを馬鹿にする
monsterkill00 2020年01月25日 (木) 9:15:32 #92967389
まじでやべえ フィルムリール見つかった "天使たちは我らを見ているオリジナル安全な場所に保管のこと" 屋根裏には映写機もあるはずだ ちょっと待っえtろよ
パラウォッチWikiのモデレーション・チームに潜入していた財団の工作員は、これらのコメントを把握し、後ほど"monsterkill00"を36歳の男性、ジョナサン・クエンスボロと特定しました。彼の祖父、マーヴィン・クエンスボロは1920〜1930年代にかけて多数の映画撮影に携わっており、その他の詳細も外部情報源と一致しました。
補遺5668-3 - 財団の捜査: 補遺5668-2から得られた情報は、クエンスボロに対する財団の捜査を十分に正当化するものと判断され、エージェント グラーノ及びラングスリーが、ミズーリ州カールトンにあるクエンスボロの住居に派遣されました。以下はこの捜査の書き起こし記録です。
<記録開始>
(グラーノが数分間、クエンスボロ宅の玄関ドアをノックしている間、ラングスリーは住居内を覗き込もうとするが、窓のカーテンが全て閉まっているのを発見する。)
ラングスリー: そいつが在宅なのは確かだろうな?
グラーノ: 車がある。それに一人暮らしだ。
ラングスリー: ふむ。
(グラーノがドアノブを捻る。)
グラーノ: 鍵がかかってないぞ。いっそのこと、もう - カバーストーリーは何だっけ?
ラングスリー: ガス栓の点検。いい加減にしろよ、ガス栓の点検だ。
グラーノ: 分かった分かった、ちょっと確認しただけさ。じゃあもう... 突入するか?
ラングスリー: しちゃダメな理由があんのか?
グラーノ: えっと、プロトコルとか?
ラングスリー: こっちには武器がある。相手はたかが30代の陰謀論オタクだぞ。
(ラングスリーがクエンスボロ宅に進入し、グラーノが後を追って、2人で台所に入る。廊下を右手に進むと、最奥の部屋から映写機の作動音が聞こえる。部屋のドアは閉まっている。ラングスリーが屋内の捜索を開始する。)
グラーノ: ジョナサン・クエンスボロさん? どなたかいらっしゃいますか?
(グラーノが廊下を進むと、ドアの後ろから光が漏れているのが分かる。映写機の作動音は続いている。)
ラングスリー: 他の場所は完全に空っぽだ。
グラーノ: 事が起きているのは廊下の奥らしい。
ラングスリー: だったら何をぐずぐず待ってるんだ? え? 招待状か?
グラーノ: 待てよ、俺たちは -
(ラングスリーがドアハンドルを捻る。すると、ドアの奥の光が消える。映写機は作動音を立て続けている。ラングスリーがドアを開けて入室する。ラングスリーのカメラ映像が途絶するが、音声はそのまま続く。映写機の作動音を除いて、室内では全く物音がしない。)
グラーノ: 大丈夫そうか?
(合間。)
グラーノ: なあ?
(合間。)
グラーノ: あー...
(合間。)
グラーノ: クソッたれ。(グラーノが入室する。グラーノのカメラ映像も途絶する。)
グラーノ: ラングスリー! おい、何が起きた? 呼びかけても - あれがブツか? 例のフィルムリール?
(合間。)
グラーノ: えーと... どうした?
ラングスリー: スクリーンに天使がいる。
グラーノ: へ?
ラングスリー: スクリーンに天使がいる。
グラーノ: ラングスリー、こ - ここを出るぞ。
ラングスリー: スクリーンに天使がいる。
グラーノ: 一体どうしたんだよ? スクリーンに - 何もいない。ただの映画だ。上の連中はあの映画のこと、なんて言ってたっけな?
ラングスリー: スクリーンに天使がいる。
グラーノ: ラングスリー、言われただろ - クソ。もう行かなきゃダメだ。だから用心すべきだったんだ、だから -
ラングスリー: スクリーンに天使がいる。
(合間。)
グラーノとラングスリー: スクリーンに天使がいる。天使が太陽の歌を歌っている。天使が我らを太陽へと導いてくれる。
(映写機が停止し、沈黙が続く。)
<記録終了>
通信の途絶後、増援が直ちに住居へ派遣されました。クエンスボロ宅の一室からは、焦げ跡に覆われたフィルムリール用の映写機が発見されました。室内にフィルムリールは存在せず、"天使たちは我らを見ている"のフィルムは建物内のいかなる場所からも回収されませんでした。映写機の反対側の壁には、投影スクリーンの代用として白いベッドシーツが釘留めされていましたが、その中心部には焼け焦げた穴が空いていました。
エージェント グラーノ及びラングスリー、並びにクエンスボロの行方は、現時点では完全に不明です。SCP-5668の異常性に改めて曝された被験者は、その影響を受けている時、以前よりも多くの目が見つめているのを感じると主張しています。
本ページを引用する際の表記:
「SCP-5668」著作権者: Lamentte、C-Dives 出典: SCP財団Wiki http://scp-jp.wikidot.com/scp-5668 ライセンス: CC BY-SA 3.0
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ファイルページ: SCP-5668 / ロン・チェイニー
ファイル名: chaney.jpg
ソース: https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Lon_chaney_c1923.jpg
ライセンス: パブリックドメイン/CC0
タイトル: Lon chaney c1923.jpg
著作権者: 不明
公開年: 2009
ファイルページ: SCP-5668 / 撮影現場
ファイル名: post.jpg
ソース: https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Christensen_and_Chaney.jpg
ライセンス: パブリックドメイン/CC0
タイトル: Christensen and Chaney.jpg
著作権者: http://www.filmreference.com/
公開年: 2010