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クレジット
タイトル: SCP-5555 - メイド・イン・ヘブン (Made in Heaven)
原著者: A Random Day A Random Day 、Rounderhouse Rounderhouse 、Uncle Nicolini Uncle Nicolini
翻訳者: mochizkyy mochizkyy
原記事: http://www.scp-wiki.net/scp-5555
作成年: 2020
初訳時参照リビジョン: 70(2024年10月21日)
From: | o5-01@overwatch.scp.int |
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To: | 職員 (全員、グループ) |
件名: | 皆の努力に感謝! |
日付: | 2006年01月17日 |
本日、財団が人類のため活動を始めて以降、再び新たな10年の節目を迎えることとなった。長い年月の間、我々は暗闇の中から密かに世界を守り続け、社会に壊滅的な影響を及ぼしかねないアノマリーを、より安全に、より効率的に収容する努力を重ねてきたのだ。この10年はまさにその努力の結晶である——ただの一度も収容違反はなく、一体もアノマリーは脱走せず、どのサイトも壊滅することはなかった。財団は確保・収容・保護するための機械のような存在であり続け、これはひとえに皆の協力のおかげである。研究者、エージェント、警備員、作業員らの弛まぬ努力により、ここにこの成果が実現したのだ。
次なる10年に乾杯。
O5-01
確保、収容、保護
From: | o5-01@overwatch.scp.int |
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To: | O5評議会 (全員、グループ) |
件名: | 気かがりな件について |
日付: | 2006年01月18日 |
諸君、
本日午後、とある厄介な事実を発見した。添付ファイルを参照し、監督司令部まで急行されたし。
O5-01
確保、収容、保護
SCP-5555に続くエレベーター。
特別収容プロトコル: SCP-5555は発見された地点にて収容されています。
説明: SCP-5555は、監督司令部最下層の北西端にある、異常性のある死体で埋まった共同墓地です。SCP-5555内部の死体は概ね問題なく除去できるものの、墓地の発掘調査は必ずさらなる遺体の発見に繋がります。年代、深さ、またSCP-5555内の死体の出自はいずれも不明です。SCP-5555に関する記録は財団データベース内に存在せず、またSCP-5555へアクセスできる部屋も監督司令部の設計図に存在していません。
補遺: 発掘調査の結果
死体の説明 | 死因 | 追記 |
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年齢・人種不明の男性。死体は完全に保存処理されており、外傷、疾病および腐敗の兆候は見られない。 | 不明。 | |
黄色の服に身を包んだ身元不明の遺体。顔は麻布の袋で覆われ、縄で締め付けられている。袋と縄を外すと、その下からも同じ袋と縄が現れる。 | 絞殺。 | 死因から考察するに、死亡する寸前に長い時間苦しむように意図されていた可能性がある。 |
骨格が氷で構成されている、中年のアルティーク族女性。氷が気温によって融けることはない。 | ショック、失血または低体温症とみられる。 | 更新: いかなる状況下においても、骨格系の一部分も外に晒してはならない。 |
内臓の80%以上が精巧な歯車の機械に置き換えられた男性の遺体。これらの機構は停止しておらず、死後であるのにも関わらず大きな傷が付けば稼働する。 | ゼロ除算の結果生じたフィードバック・ループにより、真鍮のピストンが左眼窩から繰り返し押し出された。 | 死体の様相はSCP-217の末期症状を思わせるが、内臓部分はすべて人工物であり、外科手術を経て移植されたとみられる。 |
黒い石棺。内側からの力により開けることはできない。 | N/A | 棺の内部に何があるかは不明だが、発掘場所からして人の身体が入っているものと思われる。 |
紺色の肌をした民族不明の青年女性。全身性脱毛症(体毛が抜け落ちる症状で知られる病状)を患っており、切断された2つの手が自らの喉を掴んでいる。 | 窒息。 | 死体を認識している間、(性自認が)女性である人間と、人間でない物体との区別がつかなくなる。手を取り除こうとする試みはすべて失敗した。 |
眼の抉られた白人の10代少女。 | 眼窩への圧迫による頭蓋骨骨折。 | 死体を撮影すると青い眼が写る。動画で撮影した際には眼がカメラを追う。 |
From: | o5-01@overwatch.scp.int |
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To: | administrator@site01.scp.int |
件名: | 直近の事項について |
日付: | 2006年01月19日 |
今朝0500、15箇所のサイトが、顕著なアノマリーをシベリア・ツンドラ地帯の新サイトへ移送するよう、貴方の署名入りの指令を受け取った。座標は監督司令部を示していた。貴方の認可を偽造できるような者が仮に居るのだとすれば、既に何回もこういった事が起きているはずだろう。一体これは何のつもりだ?気がかりでならない。何の目的があってのことだ?至急、返信されたし。
O5-01
確保、収容、保護
WSJ.
The Wall Street Journal Magazine
アンダーソン・ロボティクス
大暴落
これを読んでいるということは、君は新しい監督官1号なのだろう。私はエヴァレット・マン(Everett Mann)。"管理者"フランシス・フリッツウィリアムズ(Francis Fritzwilliams)に追放されるまで、君の前任であった者だ。奴は友人にフリッツ(Fritz)と呼ばせていた。嵌められるその時までは、私もその友人の一人だとばかりだと思っていたが。
詳細を語りたいところだが。残念ながら、今分かっていることと言えば、奴の手で100を超えるアノマリーが監督司令部に移されたということだけだ。そして奴は、他の監督官を――私の友人たちを殺害するための巧妙な陰謀の罪を、私に着せたのだ。
私は今逃亡中の身であり、前任者が私にしたように多くの事を教えてやることはできない。可能な限り多くのログは送る。どうやって送られてくるかは考えるな。重要なのは中身だ。フリッツは間違いなく君を強く縛り付けんとしているが、我々の使命は依然世界を守ることである。君は彼を殺し、財団を救わなくてはならない。さすれば、再び人類を救う活動に戻れるだろう。
数えきれないほどの失敗を犯しながらも、フリッツは常に優れた指揮能力があった。君は監督官だ。すなわち、計画を立てる知恵と、それを実行する狡猾さと信念を持ち、さらに自らの足跡を残さぬだけの病的なまでの警戒心も備えている。それだけでなく、君にはなおも正しい事を成し遂げようとする意志が残っている。
だが私は少々先走ってしまったようだ。無鉄砲に飛び出してみすみす命を落としては元も子もない。奴に立ち向かうことを考えるよりまず先に、君は3つの重要なものを用意しなければならない。拠点、逃走経路、そしてセーフハウスだ。
拠点は防衛の最前線になる。警備で固め、罠を並べて、フリッツがやってきた時に逃げる時間を確保する。いや、実際のところ警備は要らないな。罠は、君が自分から引っ掛かりに行くほど愚かでなければ、特に問題はない。フリッツが私を裏切った時、奴は自身の暗殺部隊を送り込んできた。私は――極北の掘建て小屋に30年近くも引き篭もっていた隠者は、まさに格好の餌だった。ファクトタムが糞以外のことなら何でもこなしてくれていた。まだその名で呼ぶのだろうか?外見も声も喋り方も我々にそっくりで、我々のために行動し、我々のために死ぬ人々。きっと君も使っていることだろう。
結局、私はあれこれ考えを巡らせ、決断を思いついたり、その決断を無かったことにしたりするのに時間を割きすぎたのだ。フリッツが私の元に来た時、私は銃の持ち方はおろか、パンチの繰り出し方すらおぼつかなった。だが私は『猟奇島』を愛読していたので、それに影響を受けて拠点への入り口に"マレーの人間捕り機"や"ビルマの狼穽"を仕掛けた。これらは粗雑で単純な罠だったが――単純すぎて、暗殺部隊の連中は全員、見事に引っ掛かった。そのおかげで、私は逃げ延びるための時間を手に入れたのだ。
逃走経路はパズルの次なるピースだ。いつでも、どこでも脱出できる準備をしておけ。トイレや会議の最中であっても、だ。近しいお友達には偽の逃走経路を教えろ。「絶対に口外するなよ」と念を押せ。そうすれば、まずそれがフリッツの耳に入ることになる。拠点を脱出する作戦は拠点そのものよりも重要だ。私は秘密のトンネルを通って逃げたが、フリッツにその手はもう通用しないだろう。すまないな。ただトンネル自体は掘っておけ。囮としてなら使える。もしかすると君の時代ではテレポートも実用化されているかもな。そうでないなら、テレポートできるようなSCPを探しておけ。今すぐに。
それから先は、セーフハウスだけが唯一の避難先だ。世界が終わるものと想定して動け。多くのセーフハウスを確保し、可能な限り多くの物資を詰め込め――異常性を問わずな。偽のセーフハウスも作れ。いかなるサイトにもアクセスできる内通者を用意しろ。2、3人居ても構わない。信用に足りなければ、脅迫しろ。世界を裏から支配する者の一人として、君は想像しうる限りの資源が手に入るのだから。積極的に――かつ、慎重に使っていけ。
私は幸運なことに、フリッツのメールボックスの中身をダウンロードし、実質的に透明になれる帽子を拝借できた。しかし不幸なことに、他の保険策は奴に託してしまっていた。私の失敗から学び、君自身の幸運を活かせ。手に入れられるものなら、何でも使え。晴れて逃げ果せた後に返せばよいだけの話だ。
気の遠くなるような作戦に思えるかもしれない。君の敵はその背後に財団全体を従え、もしかすると他の異常コミュニティ全てをも仲間にしているかもしれない。君を安心させたり激励したいものだがそれもできない。ただ一つ言えるのは、自らが監督官になった以上は、それに相応しい人物なのであろうという事だけだ。この事実が私の苦しい時を支えてくれた。君にもそうであることを願う。
From: | wondertainment_ceo@wonderworld.dwt.int |
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To: | administrator@site01.scp.int |
CC: | サイクル (グループ、全員) |
件名: | 時間ね! |
日付: | 2006年01月19日 |
フリッツ、いいゲームだったわ!いつも惚れ惚れする腕前ね!今回ばかりは勝てると思っていたんだけどね、うちのビルダー・ブリーズどもが「ワンダー・メイカーTM︎」の建設にかかった時間といえば、糖蜜の落ちるのと同じくらい長かったの。残念なものね。想像してみてほしいの、世界が彩られ、老若男女がとびきりワンダータスティックTM︎な笑顔を浮かべる姿を。それからリトル・ミスターズTM︎のNYでのコンサート・ライブを!きっと素晴らしいものになったのでしょうね。でも悲しいかな、君の勝ちよ。私が何を言おうと負け惜しみに過ぎないわ。
ま、それはさておき、、、ロボ男TM︎がワンダー・ワールドTM︎を更地にするのは今月末までくらいだから、君や他の人のためにお土産を用意するだけの時間はたっぷりあるわ。確か、ブマロは「チョコワンダー エクスプロージョン: マシュマロ バイツ!TM︎」が欲しいんだったかしら?それから、ジュードはミスター・おさかなのフィギュアが欲しいんだったはず。フリッツ、君はどうするの?何か欲しいものはあるかい、それともあの坊や一人で十分?
冗談よ!
ところで――ちょっと頼みを聞いて欲しいんだけの、あのファイルのコピーを私のところまで送って欲しいの。どうもどこかに置き忘れてしまったみたいで、引き受けてくれるととっても助かるわ。メールの方が早いだろうけど、やはり紙のありがたみって物があるじゃない?実際に手に持つってのが、たまらなく良いのよ。
送り先:
MA 12321、ワンダー・ワールド、ウィムシー通り108
Dr. H. L. ワンダーテインメント
最高にワクワクする発明家!
Deer College Odyssey
The Buck Stops Here
フラーのサーカス 閉鎖
綱渡り営業の末に
少々、私の文章に付き合ってはもらえないだろうか。読書と執筆だけが、この責務の重圧を紛らわせる唯一の手段なのだ。さて、次のステップに進もう。君は今頃、どこかのセーフハウスに籠りながら次の一手を考えていることだろう。管理者を殺せ――実に称賛に値する目標だ。だが、それに至る道筋はどうだろう?
監督官になる前、私は"サイレンサー"、すなわち財団の極秘の特殊部隊の一員として、カオス・インサージェンシーの指導部を抹殺する任務に従事していた。その過程で、私はフリッツと共にきわめて効果的な暗殺の規則を確立したのだ。皮肉なものだ、今それを奴自身に使おうというのだから。
サイレンサーの第一にして最も重要なルールは、正しい問いを立てること。孫子はこう言った――"彼を知り己を知れば百戦殆からず"。ただ、孫子の時代には盗聴器もメールログインも、その他手元にある無数のツールも存在しなかった。問題は敵を知らないことではない。むしろ、知りすぎていることだ。そこで、5つの"W"を問うのだ――who、what、where、when、why?そしてこれらの問いを解決するのだ。
この観点から、私はフリッツのメールを漁り、添付したワンダーテインメント博士からのメッセージを発見したのだ。フリッツの計画が何であれ、異常存在の世界を牛耳る"影の支配者たち"が関与しているのには間違いない。しかし不運にも、フリッツはそのファイルをメールではなく通常の郵便で送ることを選択していた。その重要性からして、私はワンダー・ワールドに向かいそれを直接回収するほかなかった。
ひょっとすると君はワンダーテインメントを暗殺するべきだと考えるているかもしれない。それは理解できる。フリッツは君に半月ごとにチェスを指させていただろう?だからこれはチェスのようなものだと思うに違いない。キングを詰めるためには、まず周囲の駒を排除していかなければならない。一つずつ駒を狙い、泥臭く進める。
君ならそれで良いのかもしれない。君にはレーザー搭載のデス・サテライト部隊があるのかもしれない。それなら結構。私はただ透明になれる帽子を持った一介の老人に過ぎず、戦うべき場面を慎重に選ばねばならない。監督官として長年生きてきたが、"Dr."について学んだことはたった一つ。彼女は果てしない気まぐれと悪意を持つということだ。彼女が何をするのかを知り、それについてフリッツと争わせるだけで十分だ。
ワンダーテインメントの活動拠点はワンダー・ワールドにある。それは彼女の家と企業本部があるポケットディメンションだ。だが、我々がその存在を知ってより数十年、内部へ送り込んだ機動部隊は一つだけだった。ワンダー・ワールドに長く留まるほど、人間は変異する――人間ではない何かに変わっていくのだ。迅速に動かねばならない。
To do: 陰謀を暴け。
サイレンサー第二のルールは、目と耳を開き、口を閉じることだ。ワンダー・ワールドへの入り口はチェルシー・ポイントのバーチ通りとローリング通りの交差点にある。G.I.ジョーとバービー人形の頭を同時に引きちぎり、交差点の路地にあるゴミ箱に放り込めばゲートが開く。私はこの入り口を見つけるのに数週間かかった。
博士の部下をただのブルーカラーの中から見つけ出す間、手元にはジャケット一枚とスキットルのみだった。だがその苦労は報われた。寒さは身に染みたが、久しぶりの現場は悪くなかった。
チェルシー・ポイントのポータルを抜けると、ワンダー・タワーと呼ばれる博士の活動拠点の東1.5kmの地点に出た。ボストンは悲惨な都市で、道路も住人も寒さも最悪だ。だが、ボストンのナマの悲惨さも、ワンダー・ワールドの偽りの幸福よりは比べ物にならないほどマシなのだ。あの場所に太陽は無く、紫色の空にタンバリンが吊るされているだけだった。建物はダリやエッシャーの悪夢の絵から引き剝がしてきたかのような代物だった。もしかすると本当にそうなのかもしれない。それでも、街は都市特有の喧噪に脈動しており、博士ですらそれを砂糖で覆い隠すことはできなかったのだ。文明社会から離れて久しい身として、このエネルギーを忘れかけていたものだ。
ワンダー・タワーは博士の傲慢の象徴であった――不格好な紫の尖塔が空を劈き、街のスカイラインを醜く縁取っていた。巨大な階段と、同じく巨大なロビーがそれに続いた。私はずっと透明の帽子に頼りきりだったが、ロビーを超え、受付へと向かい、博士の個人オフィスのキーカードを要求した。受付はキーを手渡したが、その直後に博士は外出中であるはずではと述べた。
第三のルールは、辛抱強くあることだ。私は待つべきだった。博士の行動パターンを確立できるまで待つべきだった。だが私は慢心していた。年を重ねるうちに技術は衰え、帽子の力だけではこのミスを補いきれなかった。焦り、判断力を失い――危うく死ぬところであった。
監視カメラ 13: オフィス外部
[カメラがエレベーターへ向く。エレベーターのドアが開くと、カメラの映像が急激に劣化し、画質が粗くなり焦点が定まらなくなる。それでも一部の映像が視認可能である。輪郭が不鮮明な人物がエレベーターから出て、カメラの視界の外へと急ぐ。カメラはオフィスの扉へと向く。人物はドアノブを前にしゃがみ込み、扉が開くまでそのまま49秒間待つと、オフィスへと入っていく。カメラの映像が回復する。]
監視カメラ 14: オフィス内部
[カメラが扉へ向く。カメラ映像はカメラ13と同様に劣化する。人物は豪華なカーペットの上を急ぎ、大きなマホガニー材のデスクへ向かう。人物はチャールズ・ワンダーテインメント4世の肖像画を前に立ち止まるが、首を振った後にデスクへと戻る。人物は数分間引き出しを漁ったのち、マニラ紙のフォルダを取り出す。人物はデスクのコンピューターのタイプを始める。]
監視カメラ 13: オフィス外部
[カメラがエレベーターへ向く。ホリィ・ワンダーテインメントがエレベーターを出て、素早くオフィスの扉へ向かい、中へ入ると扉をかける。]
マイク 4: デスク
[タイピング音と紙をめくる音が聞こえる。]
マン: 早く、早く、早く......
ホリィ: マニー(Manny)!久しぶりね、ダーリン!
[重い物体が床に落ちる音。]
マン: う――ホリィ。
ホリィ: すっかりくつろいでくれてるみたいで嬉しいわ!ちょうどお迎えに行こうと思ってたのよ!
マン: ......久しぶりだな。
ホリィ: 間に合ってよかったわ、ホント!私たちの楽しい仕掛けに水を差してくれたのね、マニー。
マン: "仕掛け"だと?
ホリィ: [くすくす笑う。] まあ、そのうち分かるわ。
マン: どうせ突き止めることにはなる。ホリィ、私は既に――
ホリィ: マニー、ハニー、ベイビー。私を見て?
マン: 何のつもりだ?
ホリィ: アナタって自分が何を知らないのかも知らないのよ。
マン: ではご教授願いたいところだな、ホリィ。お前のその粉まみれの首を絞め上げてでもな。
ホリィ: 酷いわ!ママに教わらなかったの?女性のメイクは貶すものじゃないのよ。ぷんぷん。
マン: お前とフリッツの仲間に誰がいる?イレブンか?シックス?
ホリィ: あら、まあ。私達をそんなくだらない数字遊びクラブなんかと一緒にしないでちょうだい。ねえダーリン、アナタ達のやってる子供の遊びよりずっと大きなゲームなのよ。
マン: 説明しろ。今すぐに。
ホリィ: [くすくす笑う。] バットマン気取り?北でのご隠居が長すぎて腕がなまっちゃったのね。私は簡単にビビるようなおバカさんとは違うのよ、ハニー。
[ちゃぷちゃぷという液体の音。カメラ映像によると、ワンダーテインメントは大型の「スーパー・スカーター」製の水鉄砲を取り出し、マンに向けている。]
マン: お前は以前にも増してイカれたようだな。
ホリィ: マニー、アナタ昔私を殺そうとしたじゃない。そりゃあムカつくに決まってるわよ。言うでしょう?女の怒りは恐ろし――
マン: お前はおもちゃの部品を手に入れるためだけにサイトを丸ごと惨殺しただろう、ホリィ。そして突撃部隊を皆殺しにし、その死体で作戦ごっこをしたんだったな?
[ホリィはくすくす笑い、肩をすくめる。]
ホリィ: まあまあ、ごめんなさいね?アナタのかわいいおもちゃの兵隊さん、壊しちゃって。楽しくはなかったけどね。みんな退屈で――
マン: あの縦穴を何に使っている?目的は?何の意味がある?
ホリィ: [沈黙。] あら、アナタあれを読んだのね。
マン: 二度は聞かんぞ。
ホリィ: 地面に伏せなさい。
マン: これが最後のチャンスだ。
ホリィ: 銃を持ってるのは私よ、このおバカ――
[ピストルの装填音、発砲音。デスクがひっくり返り、マイク 4は破壊される。]
監視カメラ 14: オフィス内部
[カメラがデスクへ向く。ワンダーテインメントは大型のスーパー・スカーターを手にひっくり返ったデスクへ近づく。人物はデスクの裏に隠れ、顔を覗かせては繰り返しピストルを撃つ。ワンダーテインメントは水鉄砲で応戦する。デスクに当たると、その着弾地点は溶けて煙を上げる。人物は弾をリロードし、デスクの裏から飛び出すとワンダーテインメントの胴体めがけて6発の弾を発砲する。ワンダーテインメントは後ろに倒れる。コートに大きく赤い染みが広がる。]
[人物はワンダーテインメントとの距離を詰めるが、弾の再装填はしていない。人物が近づくと、ワンダーテインメントはコートの下からブーブークッションを取り出して投げつける。胸部に当たると盛大に爆発し、人物は壁に叩きつけられる。燃えた断片が近くの本棚に飛び散り、炎が燃え広がる。]
[ワンダーテインメントはゆっくり立ち上がると、脚を引きずりながら人物の方へと向かう。歩きながらネクタイを外し、即席の絞殺ひもを作る。突然、人物が壁を蹴って勢いをつけ、ワンダーテインメントの腹部を捉え地面に叩き伏せる。炎が壁やカーテンに広がり、オフィスは瞬く間に火の海になる。]
[オフィスが炎に包まれる中、両者は激しくもがき合う。ワンダーテインメントが押し返し人物の上に馬乗りになると、笑いながら何度も顔を殴りつける。人物がワンダーテインメントを床に転がし、胸骨に膝蹴りを食らわす。人物は落ちているスーパー・スカーターに手を伸ばし、キャップを外してひっくり返し、中の酸性溶液を彼女の顔にぶち撒ける。ワンダーテインメントは悲鳴を上げる。人物は彼女を押さえつけている。数秒もがいたのち、ワンダーテインメントは動かなくなる。人物は崩れ落ちるが、カメラの存在に気づき発砲する。カメラの映像が終了する。]
SCP-5555に続くエレベーター。
特別収容プロトコル: 職員の再配置と偽装工作が再確立したのち、SCP-5555はコンクリートで封鎖されます。いかなるアノマリーも、SCP-5555を二度以上訪れてはなりません。
SCP-5555についての準備フェーズ外での議論は禁止されています。
説明: SCP-5555は監督司令部の地下27階に存在する巨大な縦穴です。登録済みのSCPが自らの意思でSCP-5555に入った場合、そのSCPは死亡します。その能力、人格、および異常性がわずかな変更を加えられた形で、新たな実体へと引き継がれ、元のSCPが最初に発見された場所に即座に再出現します。これらの特性により、SCP-5555はラウンドを進めるために必要不可欠な存在となっています。
SCP-5555は1台の貨物用エレベーターによりアクセス可能です。地下27階およびSCP-5555は監督司令部の設計図に存在していません。年代、深さ、またSCP-5555内の死体の出自はいずれも不明であり、またこれらは重要でもありません。
この時点をもってラウンドが終了となり、準備フェーズが開始されました。すべての職員は割り当てられたSCP-5555指示に従ってください。
並び替え: 降順(日時)
並び替え: 分類: アノマリー
実体 | 移送の確認 | 代替存在に関する備考 |
---|---|---|
"医師" | 俺の持っている薬瓶が治療に必要不可欠だと信じ込ませ、それを穴に投げ入れた。それを追って転がり落ちた。 | 調査隊がフランスのモントーバンで黒いローブを被った実体を発見。どうも触れたものを殺すことができるようだ。新しいペスト医師のマスクは今までのガスマスクよりずっとイカしてる。 |
"アベル" | 石棺を穴の方に向けて開けてやった。奴は外へ足を踏み出すとそのまま落ちていった。"自らの意思で"ってことでいいよな。 | モンゴル北部の先住民の部族から、ブチ切れた刺青の戦士の霊だかみたいな話が入っている。どうやら今回は銃を捨てて剣を選んだらしい――今度は確保が楽だと良いんだがな。 |
"彫像" | Dクラスを吊るして穴に誘い込んだ。 | 代替存在は京都の美術展に出現し、収容するまでに23人の民間人が死んだ。今はサイト-19地下の輸送用コンテナの中にある。今回はコンクリート製だったので、運ぶのがクソほど厄介だった。 |
"ブラックウッド卿" | モグラってのは視力が悪い。ステーキを穴に落としたら何も疑わず飛び込んだ。 | コテージは常に監視しており、次に何が出てきても捕まえる準備ができている。 |
"椅子の残骸" | 俺たちが向かったときには既にワンダーテインメントがくたばっていたので、トーマスが再生している間に椅子の修理を頼んでみた。 | ファクトリーの作業員曰く1か月はかかるらしく、しかもできるのは"女性の形をした椅子"が精一杯だとか。フラーは別の誰かがまた椅子を壊してくれるだろうと言っていた。 |
"不死の宝石" | ジェイソンに「永遠の死が手に入るぞ」とか言った途端に飛び込んだ。むしろ嬉しそうだった。 | 宝石は首飾りの形で再出現した。とりあえず箱に入れてサイト-19の地下に放置しておいた。見つけた奴は哀れだな。 |
"種子" | 融けた金属のタンクに入れて蹴り落した。人間みたいな悲鳴を上げた。 | イングランド、デリントンに落下。ブマロが回収に向かった――MEKHANEとの結びつきを強固にするアイデアが浮かんだんだとか。 |
From: | alfine@command.goc.int |
---|---|
To: | administrator@site01.scp.int |
件名: | ブラボー! |
日付: | 24/01/06 |
いやはや、「ブラボー」としか言うほかない。
自らの命を狙うものがいる――その事実からくるアドレナリンの奔流......なんと素晴らしいことか。生きていると実感できるよ。ホリィとブマロはこの進展にすこぶるビビっているようだが、これは我々のゲームにとって完璧なスパイスになると、私は彼らを代表して述べたい。君がなぜこのマンというキャラクターに興味を持ったが分かるな。
ブラボー、フリッツ。ブラボー。
また会おう、
D.C. アルフィーネ
From: | theassembler.ofgod@WAN.net.int |
---|---|
To: | administrator@site01.scp.int |
件名: | (件名なし) |
日付: | 2006年01月24日 |
他の連中と話したのだが、皆お前はやりすぎだと思っている。前回はゲームにスパイスを加えるということで許したが、今回は本当に我々の中から死者が出るだなんて。これまでの話に無かったはずだ。死ぬのが不快であるのもそうだが(ホリィが目覚めたときにしかと教えられた)、勝利条件を達成した上で不確定要素を足すのは、お前が我々を足蹴にしながら凱旋パレードをしているようなものだ。要するに、つまらない。
この件について、至急話し合う必要がある。
我々を完成させ給う、MEKHANEの祝福があらんことを
ロバート・ブマロ、神官にして壊れたる神の構築者、救世主
😩 | |
---|---|
From: | bluntfiend@gaw.fuckyou.int |
To: | administrator@site01.scp.int |
Re: | バカがよ |
よお、 アイツどうにかしろよ、このボケ - JK (BF) |
TORONTO STAR
ベネット湖、赤く変色—原因は依然不明
ワンダーテインメントに銃を向けられ、私は彼女を殺す羽目になった。さらに悪いことに、彼女のせいで帽子がダメになった。何とかタワーを脱出するまでは耐えたが。極彩色の街で銃殺されるものとばかり思っていたが、逃げのびることができた。大失敗の中、唯一の収穫はファイルを手にしたことだ。それに加え、彼女の個人的な"おもちゃ"、爆発するブーブークッションや酸の詰まった水鉄砲などをもいくつか盗んでくることができた。第四のルール: 道具は要領よく使え。
ファイルのナンバーは5555だった。ただし我々の知るそれとは違った、最悪な代物だ。それ自体も最悪だが、問題は何がこの縦穴に投げ込まれたのかという点だ。例えば"種子"についてだが、恐らくは宇宙から来たSCP-3179を指している。私は歯車仕掛正教がアレを財団に引き渡す現場に居た。フリッツと奴の仲間は何十年も前から――ひょっとすると、何世紀も前からずっと計画を進めていたのかもしれない。006を以てすらそこまでの長寿はあり得ないだろう。
サイレンサー第五のルール: 優先順位を付けよ。第六のルール: 息の根は必ず止めよ。ファイルにSCP-5555と名が付けられている以上、フリッツが陰謀の本当の首謀者に違いない。奴は最優先で始末しなければならない。その後、奴がどれ程財団(と要注意団体、その度合いを問わず)に浸食していたかを調べねばならない。
このファイルをコンタクトの取れる全ての監督官と上級職員に送れ。きっと連中は自分から騒ぎ立ててくれる。もしファイルが正しければ、ブマロは今イングランドにいる。彼からフリッツの居場所を絞り出せるかもしれない。そしてフリッツを生きたまま火炙りにしてやる。これは無謀な賭けだ。だが我々にはこれしかない。
このような仕事に必要な技術は自転車の乗り方と同じで、一度身につければそう忘れるものではない。年を取ったとはいえ、私もまだ戦える――ワンダーテインメントとの一戦で、私の腕も研ぎ澄まされた。それでもなお、老いを補うことはできないが。全身がひどく痛み、帽子はお勉強の代償に失われた。首謀者たちも警戒をしているに違いない。生き残りたければ、若い頃に身につけた全ての技術を総動員せねばならない。
君もそうだ。常に冷静であれ。そして幸運を。
To do: 生き延びろ。
フリッツは奴の仲間に私について警告しているようだ。私はパリに飛び、ユーロスターに乗ったが、歯車仕掛正教の奴らが海のど真ん中で電車を止めやがったのだ。カレーからの不法移民を取り締まる入国審査官を装っていたが、連中の時計仕掛けの四肢が刻むカチカチという音は聞き間違えようがない。しかしどうやって私の居場所を知ったというのだ?
運のよいことに、私は寝台の個室にいた。だから窓を撃ち抜いた。歯車の連中は音を聞きつけ、私が窓から逃げたものだと思い込んだ......が、実は私は荷物置き場に身を潜めていたのだ。連中は追跡するために窓から飛び出し、やがて電車は動き始めた。眠っていたパントマイム芸人の荷物から服を拝借することにはなった。厚化粧を塗り、馬鹿馬鹿しい見た目のストライプの服を着込み、あとは雨が降らないことを祈っていた。
サイレンサー第七のルール: 変装が目立つものであるほど、逆に目立たない。ドーバーの街には歯車連中がうじゃうじゃいたが、下手くそなパントマイム芸人が街を忍び足で歩いていたとしても、連中はちらりと見るだけで通り過ぎていった。これだけの数を白昼堂々と動かすだなんて初めて見た。ブマロが慎重さを捨て去るとは、フリッツの計画もいよいよ大詰めのようだ。
私は街のはずれで自転車を盗み、デリントンへ向けて北に走り始めた。10キロもしないうちに足は悲鳴を上げ、肝臓にも負担をかけてやりたいところだったので、宿に立ち寄ることになった。このちょいとした運動と、あの泉を啜ったことで、少しくらい脚が鍛えられていたらよいのだが。
デリントンに辿り着くのには2日かかった。今私は街外れの丘に野営を張り、ブマロの姿を探しながら、箱買いのワインと辺りで採れるもので食いつないでいる。ドーバーに歯車連中がうじゃうじゃいると書いたが、デリントンは奴らに完全に埋め尽くされている。地方当局を完全に乗っ取ってしまったようだ。おそらくGOCがこのニュースを揉み消したのだろう、あの女帝は財団とも壊れたる神とも仲良しではなかったから。この陰謀のスケールにはいまだ戦慄させられる。
しかし、いったい何のために?街のはずれのクレーター跡のためにだと言うのか?私がここに着いた頃に、クレーターに太く短い真鍮のタワーが建てられた――ブマロの仮の住処だろう。歯車連中が多すぎて近づこうにもできない。連中は建物を破壊し、住民を追い出しては、資材をクレーターに運んでいる。3179の当初の収容ユニットを再現しようとしているのかと思ったが、建設の兆候は見られなかった。
ブマロの姿もまだ見ていない。塔に引きこもって、作業が終わるまで待っているつもりなのだろう。しかし忍耐勝負なら腕に覚えがある。第三のルールを覚えているか?私はかつて1発の狙撃のために2週間木の上で過ごしたことがある。あと数日の間星空の下で眠るなど造作もない。
今晩、罠にかかったウサギを捕まえた。実に40年ぶりのことだったが、この所作一つ一つが古い友人のように懐かしく感じられた。
theguardian
ロンドン 包囲下に
鳥類変異体に対し部隊が出動
10日経ってようやくブマロが姿を見せた。奴は夜明けすぐに塔から出てきて、クレーターのひとつを見たあと、すぐに中に戻った。歯車連中がクレーターでやっている作業が何かはわからないが、どうやら大詰めのようだ。日ごとに人数が減っているし、警備のシフトにも穴が出始めている。
そこでブマロを誘拐する計画を立てた。なぜかは知らないが、歯車連中は便所をまだ使っているようだし、それから集団で行動している。私はワンダーテインメントの死体から回収した物資でパイプ爆弾を作り、下水道を調査した。糞ほど臭かったし膝にきたが、クレーター近くの公衆便所へ直通できる道を見つけた。日没までにそこへ向かう。警備が交代したら、便所にパイプ爆弾を仕掛け、闇に紛れてブマロの部屋に近づく。爆破装置がちゃんと機能すれば、部下どもはブリキごと融けて吹き飛ぶだろう。ワンダーテインメントの水鉄砲の残りを使ってブマロを無力化し、下水道に引きずり込む。
久しぶりにやると楽しいものだな。フリッツからパイプ爆弾の作り方を教わったのはもう60年も前の事だ。導火線が短すぎて、自分の手とフリッツの頭を吹っ飛ばしかねなかった。
To do: 常に冷静であれ。
携帯型録音機による転写
[時計仕掛けのカチカチという音が8分と12秒の間にわたって続く。時折、葉の揺れる音が聞こえる。時計の音が遠ざかり、また葉の音が聞こえる。くぐもった爆発音がし、叫び声が聞こえる。荒い息の音、続いてドアが開きすぐに閉じる。いくつもの鍵が閉まる。ブーツが金属を何度も蹴り、別のドアが開く。]
マン: 畜生、マザーファッ――
音声1: [頭上から]ああ!ようやくお出ましかい!
[コンピューター解析により、音声1をPoI-827、ハーマン・フラーと特定。]
マン: ハーマンか。この悪趣味なトラップを見てお前だとわかったよ。
フラー: おいおい、そんな口のきき方で大丈夫か?今の君に悪態ついてる暇は無いだろう。
マン: ブマロはどこだ?
フラー: あのマヌケなら、奥の方で引きこもってるよ。まったく、あのアホの泣き言にはウンザリだ。マンがどうした、フリッツがどうした、って。はぁ、マジに面倒くさい。おいロビー(Robby)!
音声2: ほ――本当に捕まえたのか?
[コンピューター解析により、音声2をPoI-096、ロバート・ブマロと特定。]
フラー: ああ、この通りだよ、このクソビビり。
ブマロ: やはり、最初から私の歯車仕掛け達を動員していたほうが——
フラー: 黙れ、このバカ。お前はマジに玉無しだな。で、マニー。君ともあろう者が、こんなベタな罠にかかるとはな。笑えるだろう?
マン: ある意味ではな。で、その物騒なものを頭からどけてくれないか――
フラー: おいおいおい、私を見くびってるのか?あのイカれ女に、ホリィに何をしたのか見たんだぞ。一歩も動くんじゃない。
ブマロ: こいつがそんなに危険なら、さっさと脳天をブチ抜けよ!
フラー: ロブ、お前何も分かってないな。いきなり殺すやつがあるか?
ブマロ: むしろなぜ生かしているんだ!?
フラー: この坊主はフリッツの傍でウン十年も働いてたんだぞ、ロビー!次のラウンドでどれ程のアドバンテージになるか分かっているのか?彼のやり口、戦術......すべてを知っているんだぞ!それすらも要らないと言うのか?
ブマロ: もう一度死んででも欲しい情報か?ホリィの様子を見ただろう、彼女ですら幽霊みたいになっていたじゃないか!本当に、割に合わない――
フラー: つまらない奴だな。
ブマロ: 私はただ、もう死ぬのは御免だというだけだ。
フラー: じゃあフリッツの犬として余生を過ごすのか?そっちの方が御免だね。風穴を開けられたくなけりゃ、黙っておきな。
ブマロ: 私をこき使ったんだ、発言権の一つや二つ――
フラー: お前には踊る権利くらいしかねえよ。さて――ミスター・エヴァレット・マン、監督者ゼロイチ、オーファイブ・ワン......君はフランシス・フリッツウィリアムズという男について何を教えてくれるんだ?
マン: なぜ私が?
[殴打の音、その後にマンのうめき声。]
フラー: フリッツについて知ってることを全部話すか、死ぬかの二択だ。お分かりかい?
マン: お前らは皆グルではなかったのか?私が知っていて、お前らが知らないことなどあるのか?
フラー: まあ"取引"はあったが......親しい仲とは言えない。少なくとも君ら二人ほど仲良くはない。
マン: 親しくなどなかった。
ブマロ: [あざ笑う。] 嘘をつけ。
フラー: お、コイツもようやく興味が湧いたようだ。ただブマロの言う通り。
[更なる暴行の音、その後にマンの苦しむ音がする。]
フラー: 同じ釜の飯を食った仲なんだろう?さっさと吐きな。
マン: もし親しい仲だったとして......私を殺そうとするはずが無いだろう。
フラー: いいや、それは違うね。少なくともそれは知っておきな。アイツが本気で誰かを殺そうと思ったなら、そいつはとっくに棺桶の中だ。
マン: 私の方が賢かったから、生き延びたのだ。
フラー: 君が生き延びたのは、アイツがそう望んだからさ。
マン: 私はフリッツを実の父よりも知っている。好きな黒ビール、サッカーチーム、初恋の相手。絞殺紐の結び方、爆弾の作り方、拷問の方法も教わった。フリッツが殺したかった奴の人数も正確に把握している。なぜなら、私もそいつらを殺したいと思っていたからだ。だから知っておけ、このクソデブ、フリッツは本当に私を殺したがっていた。
音声3: [背後から] おいおい、嬉しい事言ってくれるじゃねーか。
[コンピューター解析により、音声3を財団管理者、フランシス・フリッツウィリアムズと特定。]
フラー & ブマロ: クソっ。
マン: フリッツ。
フリッツウィリアムズ: やあ、レット(Rhett)。しばらく連絡できずすまんかったな。仲間の後始末に手こずっちまってたんだ。痛くは無いか?
マン: 暗殺チームに比べればマシだ。
[フリッツウィリアムズが笑う。]
フリッツウィリアムズ: そりゃいい、そりゃいい。まだ腕が訛ってねえみたいでな。ワンダーテインメントの件、見事だったぜ。芸術作品かと思ったくらいだ。あのアマの口を5分以上黙らせるなんて、これ以上ない快挙だぜ。
マン: 私の知っているフリッツは、暴力を賛美するような奴じゃなかった。
フリッツウィリアムズ: まーそうだな、現場に出ると人間変わっちまうもんだろ?とにかく、お二人さん、俺はミスター・マンを引き取りに来たんだ。
フラー: ふざけるなよ。コイツは正真正銘、我々で捕まえたんだ。
フリッツウィリアムズ: ハッ、そうだな、お見事。賢い奴だっただろ?だがな、勝者には、あー、特権ってモンがあるだろ?お前らに照準を向ける梁の上のスナイパー、とかな。
[ブマロが金切り声を上げる。]
フラー: そんなので死ぬと思うか?
フリッツウィリアムズ: いーや、流石にな。でも俺とレットが逃げる時間くれーは稼げるさ。さてどうするよ?楽に済ませるか、怠い方にするか。どっちか選びなよ、お二人さん。
[沈黙。]
ブマロ: いいだろう、連れていけ、だからさっさと――
フラー: くたばりやがれ!
[ショットガンの装填音、発砲音。銃撃の応酬、それに続いて怒号が飛び交う。金属が肉に当たる音、それに続く悲鳴、そして誰かが床に倒れる音。銃弾が飛び交う中、誰かが引きずられる音。1分と57秒後、銃声がやむ。荒い息遣いが聞こえる。]
フリッツウィリアムズ: マン、レット、おい起きろよ、坊や。
[荒い息の音。]
フリッツウィリアムズ: ......はぁ、しんどいな。
Trip Through the BackDoor
Step On Through
財団は何処へ?
集中しろ。書くのは助けになる。書くのは良い。紙に考えを書き出すのが好きだ。手首が痛むが、集中するのだ。
立ち止まれ。考えろ。整理しろ。
要約せよ。
目が覚めたら偏頭痛がした。背中が痛み、肩が痛み、全身が悲鳴を上げていた。しかし包帯が巻かれてもいた。私は四角い部屋の中にいて、壁は特徴のない石膏ボード、床にはカーペットがある。右手には水と鎮痛剤の置かれた箪笥がある。
隣の部屋はバスルームだった。鏡に映った自分はひどい姿だった。が、歯磨き粉と歯ブラシ、シャワーがあった。シャワーを1時間も浴びた。熱い湯が気持ちよい。石鹸が心地よい。柔らかいタオルは素晴らしい。箪笥にはジーンズとチェック柄のシャツがあった。Wrangler製。サイズもピッタリだった。
部屋を出ると、そこはセーフハウスだった。私のセーフハウスではないが、居心地は良かった。ベッドルーム、バスルーム、キッチン、ダイニングテーブル、リビング。ダイニングテーブルにはハワイアンピザとホットソースがあった。ビールは無かったが、エルディンガーがあった。水を飲むことにした。
リビングには、フリッツの残したメモと更新されたファイルのコピーが置かれていた。
よおレット、
お前が起きるまで居られなくてすまんな。手当てしたときにはぐっすり眠りこけてたし、俺も用事があったもので。トロントにいる"批評家"がどうも潰しにかかって来てるようでな。グラフィティ通りあたりに出張ってるらしい。お前の飛行機は今晩出発だ。俺のお古のジャケットを置いた――「次の持ち主はこいつだ」と伝えてある。財布とチケット、それから必要そうなものを入れておいた。ハーマンとロブの一件で動揺してるかもしれないが、さっさと切り替えろ。お前は世界を救わなくちゃいけないし、財団に仇討ちもしなきゃいけないんだからな。
愛をこめて、
フリッツ
追伸: あのメモ、良くまとめたな。俺のレッスンをまだ覚えてるみたいで嬉しいぜ。
SCP-5555に続くエレベーター。
特別収容プロトコル: 職員の再配置と偽装工作が再確立したのち、SCP-5555はコンクリートで封鎖されます。いかなるアノマリーも、SCP-5555を二度以上訪れてはなりません。
SCP-5555についての準備フェーズ外での議論は禁止されています。
説明: SCP-5555は監督司令部の地下27階に存在する巨大な縦穴です。登録済みのSCPが自らの意思でSCP-5555に入った場合、そのSCPは死亡します。その能力、人格、および異常性がわずかな変更を加えられた形で、新たな実体へと引き継がれ、元のSCPが最初に発見された場所に即座に再出現します。これらの特性により、SCP-5555はラウンドを進めるために必要不可欠な存在となっています。
SCP-5555は1台の貨物用エレベーターによりアクセス可能です。地下27階およびSCP-5555は監督司令部の設計図に存在していません。年代、深さ、またSCP-5555内の死体の出自はいずれも不明であり、またこれらは重要でもありません。
この時点をもってラウンドが終了となり、準備フェーズが開始されました。すべての職員は割り当てられたSCP-5555指示に従ってください。並び替え: 降順(日時)
並び替え: 分類: 職員: 上級スタッフ
職員 | 後任者 | 配置転換に関する備考 |
---|---|---|
サイト-67管理官 | サイモン・グラス | 現職者は結婚し一児の父となった。後任は熱心な学者であり、また家庭を持てるとは到底思えない。 |
研究開発部責任者 | ケイン・パトス・クロウ | 研究の天才である。ロボット工学、生化学、超常技術、歴史、そしてその他多岐にわたる分野のプロジェクトを進めている。この職に最適な人物。 |
分類委員会責任者 | ジーン・カーライル・アクタス | セキュリティの専門家であり、超常現象に関して一般社会での経験を持つ。彼の健康状態には難があるが、それが逆に良い影響力になるかもしれない。 |
応用影響部門責任者 | アルト・クレフ | 元GOC。このラウンド中ずっとマークしていたが、次に管理者役をやるやつのためにあいつをこっそり確保しておいても誰も気づかんだろう。最高の駒になるかもしれないし、バチギレてサイトを破壊して回るかもしれない。賭ける分には面白い。 |
サイト-19管理官 | ティルダ・ムース | 「蛇の手」の手先、タイプ・ブルー。奇跡論と魔術だかなんだかに秀でている。異常存在を収容する側の立場になるのは皮肉が効いてるな。 |
並び替え: 昇順(日時)
並び替え: 分類: 職員: 監督官
職員 | 殺害の確認 | 後任に関する備考 |
---|---|---|
O5-13 | 一応縦穴に入ってみたが、無駄足だったみたいだな? | お前の知る財団は既に存在しない。 |
O5-12~O5-2 | 一人に青酸一錠ずつ。5、9、12は楽に逝った。 | 自分で後片付けはしておいた。 |
O5-1 | "絆"を結んだ。 | 息子よ、次の一手を見せてみろ。 |
私は何と愚かだったのか。財団は芯から腐りきっていた。それがいつからなのかすら分からない。もっと積極的に動いていれば。たまには極北を離れていれば。もしかしたらもっと早く気が付けたのかもしれない。手を打つことができたのかもしれない。
なぜ奴が私を助けたのかはまだわからない。元仲間よりも役に立つと思われたのかもしれない。フリッツのゲームは終わりを迎えつつある。だからもうそいつらは切り捨てるのだろう。
だが私も指を咥えてみているだけではない。フリッツはカオス・インサージェンシーの殺し方を教えた――そしてそのカオス・インサージェンシーは財団を模していた。つまり、フリッツの帝国を破壊する方法も、私には叩き込まれているのだ。
私はもう監督者ではない。私はサイレンサー。目を覚まさせてくれてありがとう、フリッツ。現場に戻るのが楽しみだ。
To do: 財団を破壊せよ。
From: | administrator@site01.scp.int |
---|---|
To: | サイクル (グループ、全員) |
CC: | |
件名: | 直近の事件について |
日付: | 2006年02月01日 |
君らが今、俺が何をしているのか気になっているのはよくわかっている。数人から厳しい言葉を貰っているのも承知だが、ちと説明させてほしい。
俺は君らを裏切ろうとしているわけじゃないし、ロブの言うような"凱旋パレード"をしているわけでもない。ただ、俺が提案する追加要素についてみてもらいたいだけなんだ。新しいゲームを始める前のお片付けの時間がマジに一番退屈ってのは、皆思ってることだろ?だのに、俺がちょっと面白おかしくしようとしただけで炊いてんじゃねーよ。それに、アイツがこれまでにしてきたことを見てみろよ。俺が手塩にかけて形作り、磨き上げ、ゲームにとっての完璧な変数に仕立て上げた結果さ。
それに、知れば知るほど面白い奴だぜ、アイツは。
敬具
フリッツ
From: | the-critic@awcy.int |
---|---|
To: | administrator@site01.scp.int |
件名: | 何のつもりだ? |
日付: | 2006年02月05日 |
想像してくれたまえよ。私がスタジオのドアを開けた瞬間、君の肝いりの"マン"とかいうのに白昼堂々殺されたのだ。
彼は私の血で歩道を抽象画のように塗りたくった挙句、腕を引き裂こうとすらした。新たな身体で目覚めた時も、まだ頭が縁石に蹴りつけられた痛みで疼いたのだ。君がどこにいるのかという情報を掴むためだけにだぞ。最初は君の試みに態度を決めかねていたが、今となっては一つ言っておかねばなるまい。そのやり口は全くもってクールではない。
敬具、
批評家
😩 | |
---|---|
From: | bluntfiend@gaw.fuckyou.int |
To: | administrator@site01.scp.int |
Re: | バカがよ |
よお、 お前んとこのガキが好き放題やってるみたいじゃん、バカ乙w 自分の犬の手綱も握れないわけ?マジでどうにかしろよw ま、別にどうでもいいけどね?俺はお前のパパじゃねーしwwwwww - JK (BF) |
From: | alfine@command.goc.int |
---|---|
To: | administrator@site01.scp.int |
件名: | 念のため確認 |
日付: | 2006年02月10日 |
フリッツ、
まず明確にしておくが、私が君のサイトを爆破したのではない。その様な陰湿な真似は私には似合わないだろう。残りの調査班に調べさせたが、君のところのマンの仕業のようだ。彼が昨晩0300時にサイト-81をヘリコプターで脱出したのが目撃されており、その数分後にサイトで核爆発が起きたのだ。正直、私を狙ってくれた方が良かったのだがね。一目見てみたかったものだ。それでは、また近々。
いずれにせよ、君には確認を取っておきたかったのだ。私は負け惜しみなど言わない。
D.C. アルフィーネ
メモ | |||
---|---|---|---|
重要メッセージ | |||
送信者 | エイモス・マーシャル | 受信者 | tni.pcs.10etis|rotartsinimda#tni.pcs.10etis|rotartsinimda |
君の御贔屓のオモチャが、君の居所を知るためだけにカーターとダークを襲撃したことを知らせておこう。二人とも生き残ったが、カーターは液状化寸前で、ダークに関しては「もう一度やらせてみようか?」などと言っている。残念ながら私はラウンジの設備を満喫していたもので、全くの無傷だ。ともあれ、私は二人と合流して"最初の場所"へ向かうとする。 近いうちに会えるだろう。 |
|||
マーシャル・カーター&ダーク有限責任事業組合 |
From: | maria_jones@scp.raisa.int |
---|---|
To: | administrator@site01.scp.int |
件名: | 侵入の件 |
日付: | 2006年02月16日 |
フリッツウィリアムズ様
誠に遺憾ながら、EL-028-1125に関する進捗が深刻なる後退を強いられましたことを、ここにご報告させていただきます。昨夜0100時頃、正体不明の人物がサイト-19に侵入し、鈍器を用いてAICサーバーファームを破壊した後、メインフレーム内で即席起爆装置を作動させました。当然のことながら、ハットボットは当面の間機能停止となり、現在応用部隊部門が当該侵入に関して調査を進めております。
進展があり次第、直ちにご報告させていただきます。
マリア・ジョーンズ
RAISA
確保、収容、保護
From: | alto_clef@scp.int |
---|---|
To: | administrator@site01.scp.int |
件名: | 侵入の件 |
日付: | 2006年02月21日 |
フリッツへ
お前が誰をそんなに怒らせたのかはマジで知らんが、ふざけんじゃねえぞ。件の奴が、誰にも気づかれずにサイト-67に侵入したんだ。サイト、シックスティ・ファッキン・セヴン。警備の全員が俺がクソしてるタイミングを知れるような場所だぞ。ここに潜り込んで幹部連中を全員人質にとるような奴がどこにいるってんだよ?なんでアイツはお前の場所を名指しで尋ねたんだ?それに、一体アイツはどうやって逃げたってんだよ?
何かが起こっているのは確実だ。しかも俺はお前のせいで歯を一本失う羽目になった。説明を受ける権利くらいはある。
Dr. A.クレフ
確保、収容、保護
カメラ映像オフ、音声オン
不特定個人: これ動いてるのか?電源ボタンはどこだ?おい、起動方法を教えろ。
不明: くぐもった、転写不能の声。
不特定個人: ほら、今ほどいてやるから、カメラの付け方を教えろ。
布擦れの音。
サイモン・グラス博士: 助けてくれ!警備員!助けてくれ!セキュリティ!セキュリティ!
不特定個人: はぁ......耳あてはどこだったか......
銃声。続いて悲鳴、生身を殴る音
不特定個人: 少し黙ってろ、どうやってこのクソったれ機械を起動する?
グラス: ジーザス、右のボタンだよ!右のボタンを2秒間押し続けろ。ああああ......クソッタレが!
カメラ映像オン、音声オン
不特定の個人がカメラに身を乗り出し、恐らく画面を確認している。しばらくして、元の位置に戻る。不特定個人は大型のオーバーコート(SCP-262と特定)を身に着けており、耳あてを着用している。顔は隠されている。その隣には椅子に縛り付けられたサイモン・グラスがいる。彼の右ひざには銃創がある。部屋はサイモン・グラスのオフィスのようであるが、ひどく荒らされている。
不特定個人: 最初から教えておけば面倒が省けたものを。
不特定個人のコートから複数本の腕が伸び、グラスの口に猿ぐつわをかませる。不特定個人はカメラに向き直る。
不特定個人: 私の名はエヴァレット・マン。お前らの仲間とサイトを荒らして回っているロクデナシさ。お前らの管理者に伝えたいことがある。
少しの間が空く。
マン: フリッツ、私はもうお前を追いかけて業務をメチャクチャにするのに疲れたんだ。私をこき使っておきながら、恩着せがましい態度を取るのはよせ。サイトのセキュリティを突破するのに、IDバッジを盗んでクリップボードを持ってるだけで済んだんだ。お前は[編集済]を変更すらしなかっただろう!
マンはグラス博士に銃を向ける。
マン: お前はこいつをどこで拾ったんだ?こいつじゃ話にならない。カメラの電源の付け方を知るためだけに一発必要だったんだぞ!
マンは振り返り、グラスを見やる。銃をコートに手渡すと、コートは左の膝蓋骨を撃ち抜く。グラスのくぐもった悲鳴が響く。しばらくして、コートがグラスの猿ぐつわを外す。
マン: お前はどこから来やがったんだ?
グラス: あああああああああああああ!ファック!デトロイトだよ!デトロイト出身!何なんだよ、これで満足か!?
マン: それは質問の答えではない。フリッツがお前をどこで雇ったかと聞いているんだ。
グラス: 俺は、ちが......あいつに雇われたんじゃない!人事部の誰かに雇われたんだよ!連中ももうくたばっちまってるよ!
マンのコートがグラスの股間を撃ち抜き、クーガーの足が口を塞いでグラスの悲鳴をこもらせる。
マン: この連中はどこから仕入れている?一体いつからこんな事が起こっている?これは質問のほんの一部だ。
グラス: [足越しに] やめてくれ!ああ、痛え、痛えよ......うう、頼むから解放してくれ!
マン: [グラスに向かって:] 黙れ。[カメラに向かって:] あの縦穴は何だ?お前の陰謀は何が目的なんだ?なぜ私を殺そうとし、その後助けたのだ? [グラスを指す] 聞かせろ。これ以上答えを求めて疲れ果てるのはごめんだ。
マンはグラスの胴体に向け2回発砲する。
マン: 私は戻るぞ、ジジイ。2日後に会おう。
マンはグラスの頭部に向け1回発砲する。
マン: ディナーは豚の切り身がいいかな。
明かりはついていたが、監督司令部には誰もいなかった。基地のレイアウトは簡潔ながら美麗である。中央にエレベーターがあり、放射状に14個の部屋が配置されていた。うち管理者の部屋と、マンのものであった2つの部屋をを除き、みな監督官の個人オフィスだ。
マンはかつての同僚のオフィスを調べはしなかった。何も面白いものはないからだ。自分の部屋も見なかった。彼は管理者のオフィスに直行し、ドアが開くのを待った。
ドアが開くと、その向こうはアメリカの郊外の家の様相が広がっていた。マンの正面にはキッチンのついたダイニングがあり、右手には小さなリビングが見えた。フリッツはボウルでマッシュポテトを作っており、彼の右にあるレンジからは豚の切り身の匂いが漂っていた。
「冷蔵庫からビールを2本取ってくれ」とフリッツは振り返りもせずに行った。
マンは部屋に入って辺りを見回すと、銃を調理台に置いた。マンはフリッツの左の冷蔵庫を開けると、最下段の棚に並ぶ瓶を調べた。
「エルディンガーか?」マンは苛立たし気に言った。
「世界最高のテーブルビールだろ」とフリッツは返した。
「ギネス・ビールすら無いのか?」
「まさか。ありゃ身体にさわる」
「あれが無いと始まらないんだがな」とマンは言った。彼は2本のボトルを手にすると、ひとつをテーブルに置き、もう一つをテーブルの端を使って開けた。数分後、フリッツはマッシュドポテトと豚の切り身が山盛りのプレートを2枚持ってきた。
マンはホットソースをかけ、豚の切り身の半分を口に詰め込み、残った空間にマッシュドポテトをねじ込んだ。
「お行儀がわりーぞ」とフリッツが言った。
マンはナイフを顔の前で振ると、口の中の物を飲み込んだ。「どう食おうが......私の......勝手だろう。お前は私の父親じゃない」
「みたいなもんだろ」フリッツは自分の分を一口切り取って、ゆっくり噛んで飲み込んだ。「一緒に飯食うのは久しぶりだな?」
「この場所はどうした?」マンは言った。
「堅苦しいデスクなんざ俺の性分に合わんね、北に出かけるのも嫌だったしな。んで、ここをちょっとした家みたいに改造したのさ。窓は開けらんねーけど、景色は最高よ。お前もいつか招こうとは思ってたんだがな、怯えて小屋に引きこもってたんだろ。」
「小屋と言えば、結局何が目的なんだ、ジジイ?」マンはまた食べ物を口に詰め込みながら言い、ビールで流し込んだ。
「お前ももう青っちょろいガキじゃねーんだからさ」フリッツは言った。
「黙って質問に答えろ。」
「じゃあこうしよう。」フリッツはビールを一口飲んで言った。「ひとつゲームをしよう」
「お前らの"ゲーム"とやらには――」マンは言葉を止め、拳を固めると、ため息をついた。「良いだろう。」
「ゲームは単純。お互いに3回まで質問をする。そんで、短い答え、中くらいの答え、長い答えのどれかを選んで正直に答える。答え方は1回ずつしか選べない。」
マンは空になった瓶を見つめた。
「もっと良いものを用意してんだよ」フリッツは言った。彼は冷蔵庫の上にある棚から2本のグレンケアン・グラスとキャラメル色の液体が入った密封されたボトルを取り出した。マンの眉が驚いて跳ね上がった。
「まさかパピー・ヴァン・ウィンクル?」
「お前のために残してたんだよ」フリッツはグラスを置き注ぎ始めた。「氷要るか?」
マンは一口でガラスを空にすると、体を震わせた。
「ちったあ味わって飲めよ。」
「もう一杯注いでくれ、さっさとゲームをしよう」
「お前からでいいぞ」とフリッツはマンのグラスに注ぎながら言った。
「短い質問。どうやったらお前を完全に殺し、陰謀を終わらせることができる?」マンはバーボンを一口啜り、口の中で転がした。
「知らん。」フリッツは言った。「財団が持てる全部の方法を試したさ。その他諸々も。どれも効かんかった。他の連中も同じ」フリッツはグラスから一口飲んだ。「短いの。お前、楽しかったか?」
「どうして私が――」マンは言葉を止め、もう一口啜った。鼻から息を吐いて言った。「ああ。」
「それの何がいけねーってんだよ。男はな、仕事を楽しむもんだろ。」
「これが今の私の仕事なのか?回数にはカウントするなよ。」マンはさらに大きく飲み込んだ。「中くらいの質問。私をお前の陰謀仲間からなぜ救った?」
「陰謀仲間、ねえ?ハーマンはずっと俺よりホリィのお友達だったし、実際仲間とは言えねえな。ロブも一緒に遊ぶとおもろいってだけだ。」
フリッツはグラスからウイスキーを口に含み、指を一本立てた。二人はしばらく味を楽しみ、座っていた。フリッツは飲み込むと若干顔をしかめた。「お前を助けたのはな、アイツらが興醒めだからだ。お前にゃ言っておきたいことがある、レット。お前はこのパピー・ヴァン・ウィンクルみたいなもんだ――可能性に満ち溢れちゃいるが、最高の味を引き出すのは熟成と経験が必要っちゅうこと。今お前さん幾つよ、80?90か?でも、サイトに核をぶっ放した時のお前は30に見えたね。それにあの"ビルマの狼穽"——いや、胸熱だった。俺ぁ誇らしいぜ。」
フリッツはさらに一口バーボンを飲んだ。「それに、あのサイト-67に侵入したんだったな?クレフの送ってきたメールを見てみろよ。アイツお前に出し抜かれてブチ切れてたぜ。お前が荒らしまわった他の連中も同じだ。お前さんはまさにワンマンアーミーだが——ちと経験が足りねぇみたいだな。ま、最初は連中もお前にお熱じゃなかったんだがな、まったく、俺の手塩にかけて作り上げた牙城をぶっ壊し始めてから見る目が変わったみてーでよ。お前さんこそ、まさにこのゲームに必要な劇薬なんだ、息子よ——それに、お前がベストな自分になるにゃ、俺たちみたいなのが必要だろうよ」
マンは歯を食いしばるが、ただグラスを飲み干すと、再び注いだ。
「中くらいの質問」フリッツは言った。「楽しかったか?」
「多少。」マンは言った。「旅も悪くは無かったし、また現場に出て自分を試せるのはいいものだ。この両の手を動かして、計画し、侵入を実行に移す。全て自分の責任の下にな。それから、銃を持つのも。」
マンは飲むと、指を立てた。「良くないこともある。なぜ私がこんなところにいるのか。なぜ独りでやらねばならないのか。お前が——財団に何をしたのか。今更父親気取りなんかしやがって。」
フリッツは顔をしかめた。「レット――」
「黙れ」マンは言った。「まだ済んでねえよ。豚肉、パピー、それに包帯?それでお前のしたことが帳消しになると思うなよ。」
マンはグラスを空にするとフリッツのものを手に取った。「私は今まで113人のカオス・インサージェンシーを殺し、20人の替え玉を使い、13人の政治指導者を暗殺し、9人の入れ替わりを作り、19の偽旗作戦を指示し、最後に数えた時には累計6万人以上の民間人を殺していた。お前が私にそのやり方を教えたんだ。それなのに、お前は――」彼はグラスを空にした。「——全部窓から投げ捨てて、あのクソみてえな穴に投げ込んだんだろ。俺も殺そうとした。」
マンはグラスをテーブルに叩きつけ、割った。「長い質問。なぜこんなことをしやがった?」
フリッツはマンの目を正視した。「13億。」
「何のことだ?」マンは言った。
「すげー数だろ?ロブが言うにゃ、俺が生涯で殺した人数らしい。俺のせいで死んだ人間の数。アイツぁずっと数字に強かったからな。でも俺ゃ別にそんな数はどーでもいい。そいつらは所詮ただの人間だからな。」
フリッツは立ち上がり、シンクの下の棚を漁った。「お前さんと俺、俺らはただの人間じゃねえ。一目見た時その日からわかってたさ。100万人に一人なんかじゃねえ、100万年に一人の逸材だってな。ただお前さんはその"共感"っちゅー面倒なのを持ち合わせてる。そいつを一度手放しゃあよ......お前な、すげえ事ができる。」
「何千人も殺すことがか?」マンは言った。
「自分で言ってたじゃねえかよ。」フリッツはちり取りを取り出し、テーブルの周りに散らばったガラスの破片を掃き始めた。「インサージェンシーを潰して、国連の首根っこ掴んで、アルフィーネを脅して強引に北朝鮮の記録を消させただろ。あの時ぁマジにやられたと思ったがよ、お前さんが何とかしてくれんだ。お前は一人で俺のためにゲームを戦ってたんだよ。そのくせお前、良心なんてのが芽生えやがって。北極で引きこもっちゃ何もせず。才能をドブに捨てやがってよ、身に応えたぜ。」
フリッツはゴミ箱に破片を投げ入れた。「俺も何度か――2、3回は行ったがよ。お前がすぐにスランプから立ち直るとは思ってたが、気が付きゃ30年経ってんだ。ゲームの終わりも近ぇし、無駄になんかしたくなかったからよ。でもお前さんには慣性があった。ひとたび動き出せば止まらねえ、ただ最初の一押しが必要だった。」
「一押しだと?」マンは立ち上がり、フリッツの胴体を殴った。「クソ野郎。この最低のクソ野郎。お前が本物の父親だったら、絶縁してやれたのに。」
フリッツは肩をすくめた。「必要なら仕方ねえな。」
マンはフリッツの顔を殴った。
フリッツは顎を擦りながら、マンを見つめた。「今のはいい右フックだったぜ。技術は完璧。お前がいざ親父をぶん殴るって時でも非の打ち所がねえな。感情とかいうのももう克服しちまえよ、レット。お前の弱みなんかそれくらいだぜ」
マンは歯を食いしばりすぎて顎の痛みを感じていた。バーボンが効き始めていた。「一体何が望みなんだ?受け入れるフリをしろってか?お前が——お前が世界をモノポリーのゲーム盤みたいに扱ってるのを。ただ指を咥えて見ていろと?」
「フリをしろだなんて誰がそんな事言ったよ?」フリッツは言った。「ありのままのお前でいい――スパイだろ、暗殺者だろ、ワンマンアーミーだろ。そのままゲームをかき乱してくれよ。お前が世界を股にかけた冒険をしてるのを見てる方が、今までの十数回のゲーム全部合わせたのより面白かったぜ。」
フリッツはバーボンの残りをグラスに注ぎ、マンに差し出した。「長いの。楽しむ用意はできたか?」
マンは銃を発砲した。それまで二人ともマンが銃を掴んだことに気が付いていなかった。フリッツは後ろに倒れ、壁にぶつかると鋭い音がした。バーボンのグラスは粉々になって床に落ちた。
「かき乱してやったぞ、ジジイ。」マンは言った。
しばらくの間が空いた。また音がすると、フリッツの首が元に戻り、額から骨で覆われた弾丸が高い音を立てて飛び出した。フリッツは立ち上がり、首を鳴らし、マンの背中を叩いた。「なんだ、いつもの調子に戻ってんじゃねえか。」
マンは重苦しく席に着いた。
「そんなにクヨクヨすんな、息子よ。」フリッツは言った。「お前は今までどえらい仕事をしてきたんだ、上手くやれるはずだぜ。何なら、楽しみ方を自分で学べるかもしれねえぞ。さ、準備できたらルールを教えてやるからな。」
From: | administrator@site01.scp.int |
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To: | サイクル (グループ、全員) |
件名: | 皆、GG! |
日付: | X |
遊んでくれてありがとう!これまでで最高のゲームだったと皆同意してくれることだろう。最終版の移動表に間違いがないか、確認してほしい。
現在の配役 | 新たな配役 |
---|---|
管理者 (SCP) | ワンダーテインメント博士 |
総職工長 | D.C.アルフィーネ |
カーター | 管理者 (SCP) |
マーシャル | 崇高なるカルキスト・イオン |
ダーク | ハーマン・フラー |
ヴィンセント・アンダーソン | カーター |
批評家 | マーシャル |
ビッグチーズ・ホレス | 批評家 |
ワンダーテインメント博士 | MEKHANEの預言者 |
ジュード・クライヨット | ダーク |
ハーマン・フラー | 総職工長 |
崇高なるカルキスト・イオン | ビッグチーズ・ホレス |
MEKHANEの預言者 | ヴィンセント・アンダーソン |
D.C.アルフィーネ | ジュード・クライヨット |
昨夜、勝手ながらエヴァレットをゲームに迎え入れることに決め、新たな役割に向けて準備を進めているところだ。ネタバレは避けるが、これまでに見たこともないような役回りになるとお約束しよう。
また会おう、
フリッツ
私は不死になった。長命でも、年を取るのが遅いのでもない。年を取らないのだ。奴らの一員となった。どれ程前からこのゲームをしているのか、いつ始まったのか、なぜ始まったのかは分からない。だが、私もその一部となった。
私には「何物でもない」という役が与えられた。「勝利条件」は他の全員を殺すことだ。連中は私をあざ笑っていやがる。
だが笑われるのは奴らの方だ。私が人間を辞めたのは、私よりも優れた存在がこの世界には必要だからだ。私は自分の人生を暴力と死だけで終わらせたくはなかった。だが、奴らは私に現実を教えてくれた。
「大義」、「策略」、「見返り」、「結果」——そんなものは存在しない。しかし冒険の悦び、狩りのスリル、そして私の身を焦がす炎。これらは本物だ。
私はこれまでのメモを君たち新たな監督者への警告としてまとめた。この老人が為したことは分かっただろう。不死身となった私が何をするか想像し、そして一つだけ頼みを聞いてくれ――立ち去るんだ。
フリッツ、読んでるか?お前には恨みがある、そしてこの恨みを晴らすための時間は無限だ。新たなTo doリストも作った。
TO DO:
フリッツを殺せ。