SCP-5338
評価: +15

クレジット

タイトル: SCP-5338 - Sleight of the Bumblebee
著者: PeppersGhost PeppersGhost
作成年: 2020

評価: +15
評価: +15

SCP-5338 - Sleight of the Bumblebee by PeppersGhost PeppersGhost



アイテム番号: 5338
レベル1
収容クラス:
keter
副次クラス:
esoteric
撹乱クラス:
dark
リスククラス:
notice

5338_bumbo.jpg

SCP-5338-אを実行するSCP-5338。


特別収容プロトコル: SCP-5338の収容は、その異常能力が大衆に認知されることを最小限に抑止することにのみ限定されます。SCP-5338は多数の生態系で重要な役割を果たしており、物理的収容は地球上の生態の持続可能性に対して有害に働きかねないため試みるべきではありません。

SCP-5338が非異常的な空気力学的メカニズムにより揚力を発生させているという科学的パラダイムの正当性を、学術界に携わる財団関係者は支持してください。当該のパラダイムが大勢を占める認識であることをより強固にするため、データおよびマルチメディアの記録は捏造されたうえで無期限に生産され続けます。当該のパラダイムに公然と異論を申し立てる人物について、学術出版物・娯楽サービス産業・SNSプラットフォーム・その他の公衆面前における様々な嘲笑の場を通じて、当該人物の信頼性を失墜させて愚弄される状況を作り出してください。

説明: SCP-5338はマルハナバチ属(Bombus)に分類される全ミツバチ種の総称です。SCP-5338は揚力を発生・維持させるのに必要な鉛直気流を生み出す能力を生理学的に持ちえません。その代わりに、空間的破壊を伴う一連の複雑なキネトグリフを翅で素早く実行し、異常な空中静止を引き起こすことでSCP-5338は飛行を実現します。SCP-5338の異常性質は18世紀後半に、ダエーバイト文明の超常生物学的抄録が発見されたことにより初めて財団の注意を惹きました。結果、現在まで主流とされる昆虫学的理論に対し、並行して発展を続ける誤情報収容が早期に確立されました。

SCP-5338-אは、SCP-5338が使用する超常動力学的な動作およびにその動作により構成される仮想言語、その双方を呼称したものです。SCP-5338のキネトグリフ実行順序に内在する言語構造は、ミツバチ個体間のダンス・コミュニケーションに関する画期的な動物行動学的研究から派生した理論として、1973年に初めて提唱されました。その後、SCP-5338-אで観察される動作パターンは二項関係記号モデルが適用されたものとして、その解析を目的とした広範な学際的研究が行われました。最新のエビデンスにより、仮想言語的枠組みと合致する身体的記号体系の存在が支持されており、特定条件への反応として離散的運動が反復されることからキネト目録キネトレキシコンを編纂することができました。

しかしながら、整然とした統語構造を推測する取り組みは失敗に終わり、SCP-5338-אの言語的な妥当性についての論争/が続いている状態です。同様に、SCP-5338に前駆して、または独立して、もしくはその両方を満たして普遍的に発生する奇跡術的個別事象なのか、SCP-5338への進化の過程で生じた直接の副産物なのか、SCP-5338-אについてのコンセンサスは形成できていません。

SCP-5338-אは、人体的構造に起因する物理的な制約が課されていること、およびに文脈依存のキネトグリフ実行順序への理解が不足しているがために効果が大幅に制限されますが、ヒトでも再現可能です。機械的装置でSCP-5338-אの再現を試みた場合、その場合に生じる重力からの解放は無視できるほど微小なものに留まります。


補遺: 1981年6月1日、SCP-5338-אに関して、機動部隊での利用可能性を評価するためにO3裁判所はヒト被験体による実験を承認しました。結果を以下に記載します。

実験番号 被験者 年齢 性別
001 ウォール博士 52 F
手法
屋内で浮遊するため、ウォール博士は自身の腕・掌・指でSCP-5338-א実行順序を模倣した。安全性を鑑みて動作の全ては通常のジェスチャーの1/3750の速度で実行された。
結果
異常効果は観測されなかった。
実験番号 被験者 年齢 性別
002 D-5338-01 39 M
手法
前回実験のビデオ映像の再生速度を速めたもの(通常のジェスチャーの1/1750の速度)を被験者に見せ、1週間かけて動きを記憶するように指示した。被験者はトレーニング期間終了に際してSCP-5338-אの実行を試みた。
結果

開始からほどなくして、被験者は顔面を紅潮させながら重度の頭痛とめまいを訴えた。実験開始から1分41秒後、被験者はこれ以上の実行ができない旨を発言し、実験室の床に横たわって一時的に意識を喪失した。

頭蓋内圧の上昇が前駆して、静脈系血液の頭部への強制的還流が増悪したために心臓への血液流入量の急速な減少が引き起こされたことが失神の原因と判断された。即座に医療措置を受けた後、被験者は完全に快復した。

実験番号 被験者 年齢 性別
003 D-5338-01 39 M
手法
前回実験と同様。研究期間を3カ月に延長している。
結果
SCP-5338-אを通常のジェスチャーの1/1750の速度で5分間実行したが、被験者に悪性の影響はなかった。質量を維持しているにもかかわらず、実験中の被験者の体重が最大で14kg減少したことを測定器が示した。
実験番号 被験者 年齢 性別
004 D-5338-01 39 M
手法
被験者に1/1750のジェスチャー速度でさらに3ヶ月間練習を継続させた後、1/400の速度で試行するように指示した。テスト001の映像が適切な速度に調整されたうえで研究用に与えられた。
結果

SCP-5338-אを1/400の速度で試行した数秒後、突如として被験者は終了した。それに際して頭頂部から血液の爆発的噴出が観測された。実験映像のスローモーション再生により、被験者の脊柱がマッハ5を超える速度で身体より鉛直方向へ排出されたことが判明した。脊柱は実験室の屋根を突き抜けて上昇し続け、地球の大気圏に到達した時点で崩壊したと推測されている。

上記から数日後、2つ離れた郡に位置する公園で、1セット分のヒトの脊椎が樹幹に尾骨を埋め込めた状態で発見された。分析結果により、D-5338-01と一致することが確定した。

上記から1週間後、民間所有のフラワーガーデンから2本目の脊椎が発見された。脊椎は当該庭園の植物相に合致する花粉にまみれており、1本目の脊椎と形状および遺伝子構成が完全に一致した。

追っての通知があるまで、実験は延期される。

Footnotes
. ミツバチ(Anthophila)の分岐群(訳注: 分子系統学的に共通祖先を持つ生物群)では異常現象の発生率異常に高いため、1種のマルハナバチ実体が2つ以上のSCP指定を受けることがありえます。
. 実行された際に異常効果を発生させる特定の動作やジェスチャーです。
. 遺伝的共通祖先を持つ非異常のミツバチ種に並行してSCP-5338が進化したという説が、超常ハチ学的Para-Melittologicalコンセンサスとされています。非異常のミツハチとSCP-5338、どちらの飛行方法が祖先種と同一のものであるかは諸説ありますが、現存する文献の大半により空気力学的な飛行方法は適応的形質の1つであるという論説が支持されています。
. 特筆すべき点として、ミツバチ上科全体が人間・動物・植物・不可触の肉intangible fleshとは異なる「餐たるもの」meat-beingとして抄録作成者により分類されていました。
. 訳注: ミツバチの8の字ダンスを指します。
. 訳注: dyadic sign model、記号学者・言語学者であるソシュールにより提唱された記号論に関する二項関係モデルを指します。記号論において、記号表現(記号がとる具象物)と記号内容(記号の持つ概念)の2要素により記号が構成されると論じられています。つまり、SCP-5338-אの動作とSCP-5338-אの仮想言語性、両項の連関によりSCP-5338-אが構成されることを意味します。
. 形式言語としてのSCP-5338-אに関して、キネトグリフと離散的概念(例えば「木」や「上昇気流」など)との間に生じる意味的関連性(訳注: 脚注6、または記号論に関する二項関係を参照してください。)をSCP-5338が認識しているか、または、当該の動きは特定の外的刺激に対する本能的生理反応にすぎないものなのか、その判断ができないことが最も一般的な論点とされています。よりシンプルに言い換えれば、SCP-5338は必ずしも特定の動きの実行を意味あるものと見做しているわけではないようです。その代わりに、与えられた刺激への反応としてキネトグリフを用い、その実行を以て望ましい効果を引き起こす習性を持っています。同様に、この二項対立は生物言語学の分野で複数の財団専門家に疑問視されています。

SCP-5338-אは他の生物種とのコミュニケーションには用いられず、従来の内在コミュニケーション(訳注: オートコミュニケーション、自己対話)のモデルにも合致しないという事実により、こうした意見相違がより複雑化しています。この問題の潜在的な解決策は、奇跡術を行使する未知の知生体(SCP-5338-ξに指定)へ、SCP-5338が自身の願望を伝達しているとすることです。この仮定において、SCP-5338が関心を持っている限りにおいては、SCP-5338-ξの実在の是非は重要なものではありません。SCP-5338がSCP-5338-ξが存在すると考え、SCP-5338-ξと交信する過程でSCP-5338-אが実行される限り、SCP-5338の願望が結果として実現されます。この考えに従って、B・F・スキナーのハトの迷信に関する研究との比較が行われています。しかし、形而上学的体系を認知できる精神構造をミツバチが有しているか、財団が承認した研究でそれを結論付ける結果はまだ得られていません。

(訳注: 本脚注内の解釈については脚注8を参照)

. 訳注(脚注7の補完): 脚注内の二段目前半は、ハチが飛べるのは「"神"が自分を飛ばしてくれる」と信じているからではないか、とほぼ同義です。異常飛行現象をもたらす"神"(=SCP-5338-ξ)が実際にいる/いないにかかわらず、ハチは「この動きをすれば飛べる」と確信を持って翅で特定の動きをしている、とするのが異常飛行現象を説明するに際して最も単純なものと研究者たちは考えています。

二段目後半では、"神"のような形而上的存在を理解できる知性をハチが持っているかを論じています。バラス・スキナーは心理学者であり、行動分析学の創始者です。オペラント条件付けの体系的実験や、スイッチを押せば給餌される装置=スキナー箱を用いた動物の学習行動の研究で有名です。ハトを被験体とした学習行動実験において、ハトの行動とは無関係に一定間隔で給餌する設定をしていたのにもかかわらず、給餌とその直前の行動に誤った因果関係を見出してハトは特定の行動を反復しました。(スキナー箱内を1周するなど) このハトが示した様々な"願掛け"のような行動を指して、ハトの迷信と呼称しています。

つまり、ハト=SCP-5338、"願掛け"=SCP-5338-א、スキナー箱=SCP-5338-ξと読み替えて、"願掛け"すれば願いを叶えてくれる"神"がいると思考できる高等な知性をSCP-5338が持っているかを明らかにしようとした、と理解して問題ありません。

. 訳注: 難解な言い回しが続いてますが、卵が先か鶏が先かと同様に、マルハナバチ(SCP-5338)の種分化が先かキネトグリフ的異常飛行能力(SCP-5338-א)の獲得が先か、もしくは両者に因果関係がないのか、財団学者たちも分からない。程度の認識で読み進めて構いません。
. 訳注: context-sensitive、SCP-5338-אの効果を発現させるためのキネトグリフ実行順序が厳密に規定されていることを意味していると思われます。
. 訳注: 速度1.5km/sec、余談としてマッハ5以上から超音速を超えた極超音速に分類されます。
. 訳注: county、米国における州(state)の下位行政区画です。一概にはいえませんが、その面積は日本における県くらいの認識で問題ありません。
ページリビジョン: 4, 最終更新: 21 Feb 2024 12:32
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