アイテム番号: SCP-4640
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-4640-1は現在、ハワイ州マウイ郡マカワオの自宅に居住しています。フィークス夫妻を装うフィールドエージェント2名が、SCP-4640-1の世話を行い、またSCP-4640-2を彼らに引き渡すように説得を継続します。これらの説得試行は穏便、非対立的、かつ断続的に行われます (SCP-4640-3の出現を防ぐため) 。エージェントは毎週1回、SCP-4640-1と、対象のSCP-4640-2を引き渡す意思に関して報告を行うものとします。
SCP-4640-3の出現を防ぐため、追加のエージェントがSCP-4640-1を隠密に監視します。SCP-4640-1が財団の監視措置を認知した場合、SMK-クラス"一人対全員"シナリオが発生する可能性があります。
実験は、指定された財団のセーフスポットに、前述したエージェント2名が家族旅行/修学旅行を装ってSCP-4640-1を連行して実施されます。 全ての実験は追って通知があるまで中止されます。
説明: SCP-4640は1個の異常な物品を介して現在結び付いている2体の実体を指す総称です。各要素にSCP-4640-1から-3の下位指定が付与されています。
SCP-4640-1はハワイ先住民系の11歳男性、アンドリュー・フィークスです。SCP-4640-1は異常性を帯びていませんが、SCP-4640-2の所有者です。SCP-4640-1からSCP-4640-2を強制的に没収する試みは、SCP-4640-3の出現を招きます。
SCP-4640-2は紫の飾り文字で"W"が記された黄色い円形のプラスチック製ピンバッジです。SCP-4640-1は、このピンバッジには元々、自身の所有下に入るまで着色や"W"はなかったと主張しています。本稿執筆現在、SCP-4640-2はSCP-4640-1が常に着用しているパーカーの左上部分に取り付けられています。SCP-4640-2の現時点での所有者が (肉体的・精神的・感情的に) 危害に晒される時、SCP-4640-3が出現します。
SCP-4640-3は身長約1.8mの筋肉質な体格をしたヒト型実体です。SCP-4640-3は濃い紫の体色で、胸部には金色の"W"が描かれており、両手足と骨盤領域には黄色の色素沈着があります。特筆すべき点として、人間男性の容姿を有するにも拘らず、SCP-4640-3には生殖器や臀裂が存在しません。SCP-4640-3は"ワンダーマン"を自称し、古典的なスーパーヒーローの類型に属する多種多様な異常能力を発揮します。これらには以下が含まれます。
- 異常な体力。
- 異常な速度。
- 異常な耐久力。
- 傷害を負わない。
- 両目から自在に光線を発射する。
- 記憶処理。
- 直接的な皮膚接触を介して人間を治癒する。
出現すると、SCP-4640-3はあらゆる手段を講じてSCP-4640-1を保護し、必要に応じて建造物や他の生物に危害を加えます。また、SCP-4640-3は記憶処理能力をSCP-4640-1に対して使用し、"トラウマ的な"体験の記憶を排除します。
SCP-4640-2及び-3の外見は、SCP-4640-1がスーパーヒーローの在るべき姿という概念について抱く理想像に基づいているという仮説が立てられています。しかしながら、これら2つのオブジェクトはどちらも、様々なワンダーテインメント博士関連製品と同じブランド配色を有しています。SCP-4640-2がワンダーテインメント博士の製品であるか、SCP-4640-1が以前から同社についての知識を持っていたかについて、調査が進められています。
補遺4640/1: 発見
SCP-4640-3の記録上最初の目撃事例は、█████小学校にて、SCP-4640-1が誤って飲料を自分の身体にこぼしたのを複数の生徒が笑った際に、自発的に出現したというものです。SCP-4640-3は生徒たちに謝罪を命じた後、SCP-4640-1からこの出来事の記憶を消去しました。財団の対応班が派遣され、全ての目撃者に記憶処理を施し、当該事件を超常現象に分類しました。
SCP-4640-1との直接的な繋がりは、"紫色のスーパーヒーロー、致命的な自動車事故から子供を救う"と報じられた2018年7月6日の事故まで判明しませんでした。フィークス夫妻が運転する自動車の側面からタンクローリーが衝突したこの事故で、SCP-4640-1以外の関係者は全員死亡しました。SCP-4640-3はその後、SCP-4640-1に記憶処理を施し、SCP-4640-1が頻繁に訪れるビデオゲーム販売店に連れて行きました。
補遺4640/2: インタビューログ
回答者: SCP-4640-1
質問者: エージェント ヒラ (小学校の臨床心理士を装っている)
序: インタビューはSCP-4640-2の起源に関する情報を得る目的で行われた。SCP-4640-1には、精神鑑定対象の生徒として無作為に選ばれたと伝えられた。
<記録開始>
エージェント ヒラ: こんにちは、アンドリュー。近頃の調子はどうですか?
SCP-4640-1: 元気だと思うよ。どうして僕をここに呼んだの?
エージェント ヒラ: それはね、私がまだこの学校に来て間もないからです。そこで、みんなのことをもっとよく知るために、適当に選んだ生徒たちからお話を聞いているんですよ。だから、将来また呼ばれても怖がったり驚いたりしなくて大丈夫ですからね。
SCP-4640-1: そっか、分かった。
エージェント ヒラ: さて、あなたは自分をどんな生徒だと思いますか? 他の生徒の椅子に画鋲を置いたりする意地悪ないたずらっ子? それとも、突拍子もないことを言ってみんなを笑わせるのが好きなタイプですか?
SCP-4640-1: んー... 僕はただ大人しいだけだと思う。
エージェント ヒラ: ああ、それは全く大丈夫ですよ! 誰もが奇抜な性格を必要とするわけじゃありませんしね。実際、控えめな性格の人は大抵賢いって知ってましたか?
SCP-4640-1: ホントに?
エージェント ヒラ: まあ、私はそう思いますよ。あなたは成績も優秀ですから!
SCP-4640-1: (含み笑いする) ありがとう!
エージェント ヒラ: それに、あなたはクリエイティブな人だという気がします。ノートに落描きをするのが好きだと聞いていますよ。
SCP-4640-1: うん! 見せてあげよっか! 算数のノートを取って来ていい? あれに一番沢山描いてあるよ。
エージェント ヒラ: また後でね、アンドリュー。服になかなか面白いピンバッジを付けていますね、それを見てあなたの趣味に興味が湧いてきました。何かの番組のグッズですか?
SCP-4640-1: 違うよ。これはワンダーマン・ピンバッジ!
エージェント ヒラ: ワンダーマンって何ですか? 今まで聞いたことがありませんね。
SCP-4640-1: 昔は僕の絵の中にしかいなかったんだけど、ピンバッジを手に入れてからは本物になったんだ! 来てほしい時はいつでもテレポートで駆け付けてくれるの!
エージェント ヒラ: そうなんですか? じゃあ、どこでそのピンバッジを見つけたんですか? つまり、自分だけのスーパーヒーローなんて誰だって欲しいじゃないですか。私にもいてくれたらいいのに!
SCP-4640-1: 母ちゃんが一度買ってきた変なシリアルの中に、プラスチックの箱に入って混ざってた。シリアルは美味しかったけど、母ちゃんはそれっきり見つからないって言ってた。マシュマロが面白かったな。目を開けたり閉じたりするたびに色が変わったんだけど、母ちゃんは青にしか見えないって言ってたよ。
エージェント ヒラ: お母さんは普段行かないようなお店で見つけたんじゃないですか?
SCP-4640-1 分かんない。その話は一度も聞いてないし。ねえ、シリアルを買ったのが母ちゃんだけなのっておかしくない? 普通は一番手前の箱の後ろにもっと沢山並んでるよね。
エージェント ヒラ: 確かにおかしな話です。もしかしたら、そのシリアルは生産中止になったのかもしれませんよ。おや、見てください! もうすぐ休み時間ですよ! お話はここでいったん切り上げましょう。今度いつ会えるか、私の方で確認しておきますね。あなたの言う"ワンダーマン"がすごく気になるんです。もう戻って構いませんよ。
SCP-4640-1: オッケー、ありがとう! じゃあね、ヤンシー先生!
エージェント ヒラ: さようなら、アンドリュー!
<記録終了>
結: SCP-4640-1の住居近辺にある全てのスーパーマーケットが調査されたが、インタビューで説明された特徴を有するシリアルの存在を証明できる従業員や文書記録は確認できなかった。しかしながら、█████████ ██████から、フィークス夫人が困惑した様子でハニーナッツ・チェリオ・シリアルの箱を眺め回してから買い物カートに入れる様子を捉えた監視カメラ映像が発見された。この映像に関連性があるか否かはまだ議論されている。
補遺4640/3: 実験ログ
以下は、失敗に終わった一連のSCP-4640-2回収試行です。このリストは最近簡略化されました。完全版の実験ログについてはオコア博士にご連絡ください。
実験#: 1
手順: SCP-4640-1の両親を装うエージェント キリワ及びガーシュが、SCP-4640-1の睡眠中にSCP-4640-2の回収を試みる。
結果: SCP-4640-1はパジャマにSCP-4640-2を付け替えていた。SCP-4640-2を除去しようとすると、SCP-4640-3が出現し、右手の人差指を口に当てて、エージェントたちが退室するまで"静かに"の身振りを続けた。再入室の試みは、SCP-4640-3が再出現して前記プロセスを繰り返す結果となった。
実験#: 5
手順: エージェント フォロスが臨時教師を装い、SCP-4640-1からSCP-4640-2を没収しようとする。
結果: SCP-4640-1はこれに応じて、SCP-4640-2をパーカーから外してポケットに入れ、SCP-4640-2を着用していたことを謝罪した。
実験#: 6
手順: 上記実験の続き。エージェント フォロスがSCP-4640-1に対し、SCP-4640-2を引き渡すように要求する。
結果: SCP-4640-1が恐怖反応を示し、SCP-4640-3の出現を誘発した。SCP-4640-3はエージェント フォロスに謝罪を要求し、続けて教室の隅に座るように口頭で強要した。SCP-4640-3はエージェントを監視し続け、下校時刻になるまで彼女が立ち上がるのを妨げた。
実験#: 9
手順: ロバート・フローという人物 (申し立てによるとSCP-4640-1の"大親友") に10ドルを支払い、SCP-4640-1からSCP-4640-2を借りられるかどうかを訊ねさせる。
結果: SCP-4640-1は「ダメ」と回答し、それ以上は発言しなかった。
実験#: 10
手順: フローに、10ドルを使ってSCP-4640-1からSCP-4640-2を買い取るように指示する。
結果: SCP-4640-1はフローに対して、自分に近付かないように明確に伝えた。
実験#: 16
手順: エージェント マッケルソンが、SCP-4640-1がよく訪れる雑貨品店の店員を装い、好みの菓子と交換でSCP-4640-2を渡すようにSCP-4640-1の説得を試みる。
結果: SCP-4640-1は申し出を断り、SCP-4640-2は「キャンディよりも大切」だと述べた。SCP-4640-1に対する危害や悪意がなかったにも拘らず、SCP-4640-3は依然として出現し、SCP-4640-1のコメントに付け加えて「それに砂糖の摂り過ぎは[SCP-4640-1の]健康に悪い」と述べた。その後、SCP-4640-3はSCP-4640-1に対して"サムズアップ"の仕草を示し、SCP-4640-1も同じハンドジェスチャーを返した。
実験#: 23
手順: エージェント キリワ及びガーシュがSCP-4640-1を連れて路地に入り、そこで予め仕組まれた強盗事件に遭遇する (強盗役はD-9022) 。
結果: SCP-4640-3が出現して、D-9022の顔を殴り、鼻を骨折させた。D-9022は意識を喪失した。SCP-4640-3はその後、SCP-4640-1に向き直り、低い声で「我こそはワンダーマン」というフレーズを宣言してから消失した。
診察の結果、D-9022の前頭部と後頭部には軽微な頭蓋骨骨折が認められた。これらは最初の顔面へのパンチと、その後地面に頭を打った際に生じたと思われる。
実験#: 30
手順: D-9023に、不審に思われないような素振りでSCP-4640-1に歩み寄り、可能な限り素早くSCP-4640-2を盗むように指示する。
結果: D-9023がSCP-4640-1から1mの距離まで接近した時点で、SCP-4640-3が出現した。SCP-4640-3はD-9023の襟首を掴み、威圧的に睨み付けた後、過剰な勢いを付けて地面に叩きつけた。この結果、D-9023の脊椎に多数の粉砕骨折が生じた。
実験#: 31
手順: D-9024に、不信に思われないような素振りでSCP-4640-1に背後から歩み寄り、提供した野球バットで意識を喪失させるように指示する。
結果: 野球バットがSCP-4640-1の頭部と接触した瞬間に、SCP-4640-3が出現した。SCP-4640-3はバットを奪い取って2つに折り、バットの残骸をD-9023の肋骨が2本折れるのに十分な力で投げ返した。その後、SCP-4640-3はSCP-4640-1に向き直り、異常な手段で治癒し、事件の記憶を消去した。
実験#: 32
手順: D-9025に、SCP-4640-1からは見えない位置から、SCP-4640-1の片脚を狙撃して無力化するように指示する。
結果: 発射された銃弾が標的から10mの位置まで接近した時点で、SCP-4640-3が出現した。銃弾はSCP-4640-3と接触した際に跳弾し、近隣の建造物を損傷させた。その後、SCP-4640-3はD-9025に視線を向けてレーザーを照射し、D-9025を殺害した。数秒後、SCP-4640-3は実験を記録していた隠しカメラの1つに向き直り、5分間凝視した後、SCP-4640-1に近寄ってから消失した。
補遺4640/4: 事件ログ
2018年9月15日、SCP-4640-1は視聴している様々なアニメ番組のキャラクターの集団に追い回される悪夢を経験しました。この結果、SCP-4640-3はSCP-4640-1の半径約6.5km圏内の無作為な場所に出現し始めました。SCP-4640-3は前述のアニメキャラクターと格闘しているかのように振る舞い、SCP-4640-1を"守る"ために頻繁に異常能力を行使しました。SCP-4640-1を"守ろうと"している最中に、SCP-4640-3はそれまで確認されていなかった多数の能力を発揮しました。以下はそれらの一部です。
- 空中飛行。
- 炎の自発的な生成と制御。
- 電気の自発的な生成と制御。
- 呼気による氷粒子の生成。
- 半透明の固体障壁の生成。
- 自己複製。
- 短距離瞬間移動。
これによって複数の建造物が破壊され、██名が死亡、██名が負傷しました。この時点で周辺区域の住民たちが目を覚まし、大半が避難を試みましたが、ごく少数の人物は事件を記録しようと試みました。
複数のSCP-4640-3個体がこの騒ぎによるSCP-4640-1の睡眠妨害を防いでいたにも拘らず、エージェント キリワ及びガーシュはSCP-4640-1を起床させることに成功し、全てのSCP-4640-3個体が直ちに消失しました。
記憶処理薬が空中散布され、地震の偽装記憶が移植されました。当該事件の記録は全て破棄され、コピーが財団の動画アーカイブに保管されています。
本ページを引用する際の表記:
「SCP-4640」著作権者: Dramps, C-Dives 出典: SCP財団Wiki http://scp-jp.wikidot.com/scp-4640 ライセンス: CC BY-SA 3.0
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