SCP-4217

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タイトル: SCP-4217 - ビスマルク号を収容せよ!
翻訳責任者: Flips_0122 Flips_0122
翻訳年: 2024
著作権者: Gentleman Thief Gentleman Thief
原題: SCP-4217 - Contain the Bismarck!
作成年: 2018
初訳時参照リビジョン: 37
元記事リンク: ソース


評価: +7
アイテム番号: 4217
レベル2
収容クラス:
keter
副次クラス:
none
撹乱クラス:
vlam
リスククラス:
danger

特別収容プロトコル: SCP-4217が出没する海域は、英国王立海軍を装った財団の海上部隊が最低でも3隻の戦艦を動員して哨戒を行います。SCP-4217が敵対状態にある間は、不活性状態に戻るまで海上部隊によるSCP-4217との交戦が行われます。SCP-4217による攻撃を受けた民間船舶の生存者は回収され、海事偽情報プロトコルに応じた処理が行われます。

bismarck.jpg

SCP-4217(1940年頃)

説明: SCP-4217は1941年5月27日に沈没した異常性を有するドイツ海軍の戦艦「ビスマルク」(以下SCP-4217-A)およびその船体の内部に結合している巨大な頭足類に属する生物(以下SCP-4217-B)の総体です。SCP-4217-Bは、SCP-4217-Aの船楼の基部から突出したタコのものに類似した一対の眼と、船尾の開口部から伸びる12本の長さ100〜200mの筋肉包骨格を有します。SCP-4217-Bの存在を除けば、SCP-4217-Aには戦闘および沈没後の数十年にわたる水没に起因する損傷の形跡が見られません。

SCP-4217-BはSCP-4217-Aの設備群を操作する能力を有します。SCP-4217-Bが操作可能なシステムには、主砲8基、副砲44基、高角砲12基からなる全兵装が含まれます。加えて、SCP-4217-BはSCP-4217-Aのスクリュープロペラを操作することによって速度40ノットにまで達することが可能ですが、これは浮上時のみです。海中においては、SCP-4217はSCP-4217-Bの体腔から水を噴出させることによって移動を行います(平均速度は30ノット程度)。

通常時のSCP-4217は、水深500-1100mにおいて潜水した状態を保ちつつある特定の海域を航行しています。しかしながら、SCP-4217は定期的に浮上し、敵対状態に入ります。この期間中、SCP-4217は非武装の標的(民間の貨物船など)を捜索し、攻撃を行います。十分な損傷が与えられると、SCP-4217は不活性状態に戻ります。それ以外の場合、ある程度の時間(中央値9時間)が経過すると敵対状態は解除されます。

補遺1 - 歴史: 以前、SCP-4217の指定はビスマルクのみに適用されており、1941年に無力化したものと考えられていました。以下から本報告書の旧版が閲覧可能です。

アイテム番号: SCP-4217

オブジェクトクラス: 推定Neutralized (旧指定Keter)

特別収容プロトコル: SCP-4217の異常性に関する情報は標準プロトコルに則って隠蔽が行われます。英国王立海軍はこの活動の実行において財団を援助することに合意しています。

ドイツ軍に潜入している財団エージェントは、ティルピッツ号がSCP-4217の第二の実例か否かを確認するために、同艦に関する情報へのアクセスの獲得を試みます。

必要な潜水艇技術が開発され次第、SCP-4217の無力化の確証を得るため、その残骸に対する調査が行われます。

説明: SCP-4217はドイツ海軍によって設計・建造された戦艦「ビスマルク」号です。同艦の設計には以下のような複数の異常技術が組み込まれたと思われます。

  • SCP-4217の装甲帯を強化するため、船体の外殻の要所に刻印された奇跡論的シンボル群。これらのシンボル群はほとんどの場合視認できないが、活性化時には損傷の軽減度合いに比例して発光する。
  • 半径20kmを超える弱いサイオニック場。この力場は、SCP-4217に対する害意を持つ人物に対して同艦の素性に関する混乱を引き起こし、僚艦をSCP-4217と取り違えさせることで誤射の可能性を増す効果を有しているように見受けられる。
  • 潜在的な自己修復能力。デンマーク海峡海戦で生じた損傷は、その後の海戦において、生物組織の創傷が治癒する様子と外見上似た形で部分的に修復されていることが確認された。
  • 変異原性を有する不明な気体を内包した砲弾。この物質に曝露した生物(以下SCP-4217-1個体)は速やかな変異を遂げる。これまでに観測されている変異の例には、体肢や感覚器の発達/喪失、皮膚における獣毛、羽毛および/または鱗の発達、そして — 1件の信憑性の不明な報告によれば — 複数の犠牲者が単一の実体へ融合したことが含まれる。
  • 不明な、おそらくは生物学的性質を有する、仮説上の異常な動力源。生存した乗員への尋問では、SCP-4217は独自のタイプの燃料を必要としていた旨の証言が得られた。この「燃料」の化学分析を行ったところ、主に有機的栄養素で構成されていることが判明した。捕虜となった乗員に動力室の内部を見たことがあると述べた者はなかったものの、2名が艦内のその付近の領域で心拍に類似した音を聞いたと主張した。

このリストは交戦時のSCP-4217に対する限定的な観察、および生存した僅かな乗員に対して行われた尋問に基づいたものであり、従って網羅的なものではないと考えられています。設計文書の原本を取得する取り組みが進行中です。

1941年5月27日以降、SCP-4217は大西洋、フランス沖約500-600kmの海底に存在しているものと思われます。財団は現時点で残骸に到達しその現状を確認する技術を保有していませんが、沈没以前に被った損傷を考慮するとSCP-4217が異常性をなお示している可能性は低いと見られています。

年表:

1937年: ドイツ国内で秘密活動を行う財団エージェント マルクス・シュトラウプが、戦艦の建造に使用する目的でハンブルク市に輸送中の深妙物質の貨物を差し押さえる。いくつかの物質は奇跡論的構造物の重要な部品と識別される。エージェント・シュトラウプには建造の監視命令が下される。船体の完成に伴い、戦艦は「ビスマルク」と命名される。

1937年5月7日: オブスクラ軍団の徽章が描かれた、厳重に警備された大型の貨物がビスマルク号に輸送される。エージェント・シュトラウプは貨物が心拍に類似した音を発した旨を報告するが、それ以上の観察を行える程度には接近できない状況にあった。

1940年9月15日 - 1940年9月17日: ビスマルク号がハンブルク港を出航し、海上公試を開始する。高速航行の最中と思われる状況で、 ビスマルク号は大規模な放電を行い航行を停止する。直後の数秒間、船体に沿って複数のシンボルが輝く様子が視認されるが、 艦との距離が大きくエージェント・シュトラウプはその内容を識別できない。動力は1時間以内に回復した。

1940年9月18日: 指定番号SCP-4217が割り当てられる。O5評議会は無力化を承認する。ドイツ国内に駐留するすべてのエージェントに、SCP-4217を完成前に発見・破壊するよう命令が下される。

1940年9月28日: エージェントらより任務開始の準備が完了した旨の報告がなされる。さらなる連絡はなし。

1940年10月1日 - 1940年10月11日: チームのMIAが宣言され、任務は失敗と見做される。さらなる試みは進行中の戦争により遅延している。O5評議会は7対4対2の投票結果により、SCP-4217の呈しうる脅威は英国政府への情報提供を正当化するに足るものであると結論付ける。

1941年5月20日 - 1941年5月23日: SCP-4217がスウェーデンの偵察機により発見される。この情報は英国にリークされ、英国より財団に連絡が取られる。英国海軍はSCP-4217を迎撃する目的でHMSフッド/号/およびHMSプリンス・オブ・ウェールズ//号の率いる艦隊を出撃させる。 英国と連携してSCP-4217の無力化にあたるべく、財団の代表者と英国海軍本部委員会(アドミラルティ・ボード)による会談が行われる。本国艦隊の選抜された艦艇に、財団エージェントがアドバイザーとして搭乗する。

1941年5月24日 0552-0604: HMSフッド号およびHMSプリンス・オブ・ウェールズ号が、デンマーク海峡海戦においてSCP-4217およびプリンツ・オイゲン号と交戦する。サイオニック場および奇跡論的強化を受けた装甲の効果により、SCP-4217の損害は軽微なものに留まる。SCP-4217がフッド号の乗員の大部分をSCP-4217-1に変換したことにより、艦橋の乗員は制圧される。その後、フッド号は敵方の砲撃により沈没する。プリンス・オブ・ウェールズ号は戦闘から離脱する。

1941年5月24日 1100: SCP-4217から何らかの物質が漏出していることが確認される。当時この物質は油であると判断され、残存する艦隊によりその跡はSCP-4217の追跡に利用された。

1941年5月24日 2200: SCP-4217の異常な防衛機構により、雷撃機が試みた攻撃が妨害される。観察を行った財団エージェントがこの防衛機構を識別し、その情報をサイト-41に伝達する。サイオニック場への対抗手段としてSCP-████の使用が提言され、同オブジェクトの輸送の準備が行われる。サイト-41所属の奇跡論の専門家が、SCP-4217の装甲の強化部に過負荷を与えられる魚雷の改造案を作成する。

1941年5月25日 0300 - 1941年5月26日 1030: SCP-4217の反応が一時的にレーダーから消失するが、その後英国の諜報機関により発見される。この期間中に発生した事象は歴史的記録から逸脱していない。

1941年5月26日 1839: 財団の補給艦が要求された対抗手段を積載して到着する。SCP-████がサイオニック場を無効化する。改造魚雷が強化シンボルに過負荷を与える。続いて発生した奇跡論的放電により、船体に中程度の損傷が生じる。SCP-4217が不規則に動いていることが注目される。

1941年5月27日 0843: HMSキング・ジョージ5世号率いる英国の軍艦がSCP-4217を包囲し、砲撃を開始する。

1941年5月27日 0931: SCP-4217は最早応射が不可能なほどに損傷しているが、未だ沈没していない。英国方の砲撃は継続している。

1941年5月27日 1007: SCP-4217の変異原性弾薬庫に被弾する。乗員の大半が異常物質に曝露し、SCP-4217-1個体に変化する。残存する乗員は艦を放棄する。

1941年5月27日 1035: SCP-4217が沈没し始める。英国艦艇は砲撃を停止し、救助を開始する。

1941年5月27日 1039: SCP-4217が完全に沈水する。財団のチームがSCP-4217-1の遺骸を回収する。

英国海軍所属の乗員のうち大将未満の階級の者に関しては、全員に対する記憶処理の後に下船が許可されました。

SCP-4217の乗員のうち121名が救助されました。尋問の後、109名は記憶処理後に英国の拘留下に引き渡され、残る12名はさらなる調査のためにサイト-23に移送されました。74体のSCP-4217-1の死骸が回収され、研究のためにサイト-23に移送されました。SCP-4217の本来の乗員のうち、最低でも1500名余りの行方が未だ分かっていません。

1985年2月16日、機動部隊ガンマ-6 ("大食らい")のチームがSCP-4217の現状の確認に派遣されました。1985年2月19日、酸素供給を考慮して許容可能な潜水時間を数時間超過しても潜水チームが海中にいる旨を海上の隊員が報告しました。その直後、海上チームは潜水艇のブラックボックスレコーダーから発信された遭難信号を検知し、回収を行いました。以下はレコーダーの内容の書き起こしです。

序: 本音声はモデルRV-1 海中探査機を搭載したモデルSM-03 潜水艇に搭乗しているエージェント ヴィクター・ミラーおよびチャールズ・テイラーを記録したものである。書き起こしは記録開始後26分時点から開始する。

[ログ開始]

テイラー: おい、あっちにライトを向けてくれ。何か見えたと思う。

ミラー: OK。 (沈黙) やった。やったぞ、多分あれだ!

テイラー: いやぁ、まさか鉤十字スワスティカを見て喜ぶ日が来るとは思わなかったな。

ミラー: (笑う) まったくだ。それじゃ、えーと、(咳払い)改めて述べるが、SCP-4217の残骸を発見した。これより同オブジェクトの現状の調査を行う。

テイラー: 見たところ船尾は砂に埋まってるらしい。多分この山の麓に船がぶつかった時に起きた地滑りのせいだろう。いや、ここは海の中だから、「地滑り」って言うのは間違ってるか?

ミラー: 同じく改めて述べておくと、こちらは二人とも「水中の地滑り」を表す正しい表現を知らない。

テイラー: ハッ。それはそうと、無力化を確認するから艦内に入ってくれ。それが終わればここを出られる。

ミラー: 今やる。そうだ、ファイルにサイオニック場の話があっただろ。ケイス計数器をチェックしてくれ。

テイラー: 了解、どれどれ...表示値は通常の背景強度と同じだ。

ミラー: よし、サイオニック効果が存在しないことを確認。

テイラー: ARIによるとEVEレベルの値が通常よりわずかに高いが、これも防衛ルーンが稼動してる証拠になるって値よりは低いな。

ミラー: よっしゃ、ここまで2打数2安打だ。

テイラー: あぁ、この探検は完全に時間の無駄になりそうだな。にしても、なんでこいつがまだ危険かもしれないなんて話になったんだろうな。2時間ぐらい砲撃を食らい続けて、 その後は40年ずっと海の底に鎮座してるってのに。

ミラー: それは怪しいかもな。船体を見てみろ。

テイラー: 何が言いたい?ただの普通の船体に見えるが。

ミラー: あぁ、そうなんだよ。普通40年も経ったら、表面はフジツボやらなんやらがびっしりになるんじゃないか?

テイラー: ...なら、あれには異常なフジツボ避け効果があるってことか。そりゃ一大事だ。

ミラー: 他の効果もまだ生きてるってことなら、それこそ一大事だろ。

テイラー: ああ、分かってるよ。ちょっと待ってくれ、ファイルの他のところも読んでみる。

[紙をめくる音]

ミラー: 覚えてる限りでは、具体的な情報はそんなに無かったと思うが。

テイラー: えーと、ここによるとあれには再生能力があるらしい。それがフジツボ避けになってるのかもな。あとは弾薬庫があったけど吹き飛んだらしいってのと、謎の動力供給源。これに関しては異常じゃない可能性すらある。なら、 もう見るべきところはそんなに残ってないな。残り2つは船体の中にありそうだ。

ミラー: うーん、この潜水艇が入れるところはないから、ここがロボットの出番か。

テイラー: そうだな。開いてるハッチとかを探してくれ。俺は起動の方をやるから。

ミラー: さっき舳先の方で見た気がするが...あった、あれだ。大きさはあれで十分そうか?

テイラー: いけるいける。よし、船の中身を覗いてみよう。

[長い静寂]

テイラー: おいおい、中の状態はさらに良いぞ。これは再生してないとおかしい。ここまでに何か、戦闘で壊れたらしいところの一つや二つはあるはずだろ。

ミラー: ああ、傷一つない。おまけに錆の一つもないんだ。その辺の標識もまだ読めるぞ。

テイラー: 標識といえば、あの標識が砲塔の場所を表すやつじゃないかと思う。行ってみようぜ。

[長い静寂]

ミラー: そろそろ骸骨があっていい頃だと思うんだが。ファイルには行方不明の船員が1500人いるって書いてあった。

テイラー: ああ、知ってる。クソ、薄気味悪いな。(沈黙) さて、着いたぞ。早速中を— 何だこれ?

ミラー: ... えー、主砲塔の1基の内部構造に何かが固着しているのを発見した。石のように見えるが...こんな場所に石なんか...

テイラー: あそこの隔壁を突き抜けて来てるらしい。 裏に回ってみる。(沈黙)おぉ、こっちにもっと繋がってるぞ。

ミラー: 廊下を抜けてさらに繋がってる。船尾の方に向かって太くなっているように見えるな。

テイラー: これはまるで... あっちの方から伸びてきてるみたいだな。マジかよ、これ絶対石じゃないだろ。

ミラー: ああ。多分サンプルを上まで持って帰るべきだろうな。

テイラー: それはあまりいい考えじゃないと思うな。

ミラー: ほら、やるぞ。目の前にやるべき仕事があるんだから。

テイラー: (ため息)はいはい、やってますよ。(沈黙)おい、これは確実に石なんかじゃない。ゴムみたいな感触だ。

ミラー: ますますこれの正体を解明する必要が出てきたじゃないか。

テイラー: ああもう、よいしょっ、と... ほら、取れたぞ!

ミラー: 何か出てきて... これは。

テイラー: おい... クソが、こいつ血を出してる。ここを出るぞ、ヴィック。

[低い轟音]

テイラー: ここを出るぞ、ヴィック!

ミラー: 待て、ロボットはどうするんだ?

テイラー: ロボットなんか置いてけ!今こっちと繋げてるコードを切ってる、もう行くぞ!

ミラー: ああ、分かった、今やってる!(沈黙)船楼の上のあれ、見たか?

テイラー: ああ。分かってるよ。あの船には目がついてる。なんで目なんかついてる?あぁ、楽な任務のはずだったのに!

ミラー: 1500人...

テイラー: 何だって?

ミラー: もしかしたら—

[轟音、金属の捻じ曲がる音]

ミラー: 掴まれてる!

[ガラスのひび割れる音]

テイラー: クソ、クソ!何かそこに—

[水の流れ込む音、続いて音声が途絶し空電となる]

[ログ終了]

その後程なくして、現在の形態のSCP-4217が初めて目撃されました。現行の収容プロトコルが確立されるまでに貨物船2隻とクルーズ客船1隻が沈没する被害が生じました。

これら船舶の遭難についてのカバーストーリーが流布されました。財団の偽情報チームがビスマルクの複製を建造し、SCP-4217が再発見された場所から約100 km東の地点に沈没させました。その後、著名な民間の海洋学者が1989年6月8日に複製を発見するよう各種手配がなされました。

補遺2 - 回収された文書: ソビエト連邦の崩壊およびその後行われたGRU"P"部局の解体に伴い、財団はGRU-Pがソ連によるドイツ占領期間に回収した多数の文書を取得しました。この文書群には、オブスクラ軍団内で交わされた、SCP-4217に関連していると思われる内容の多数の書簡が含まれていました。一部を以下に添付します(原文のドイツ語より翻訳)。

発: ディートリヒ・クロスナー
宛: カール・ロイター
題: "シュヴァルツヴァルト"検体

ロイター中佐

問題の検体の状態がやっと安定しましたが、基本的に昏睡状態を保ったままです。幸い、この状況の方が我々の目的には適しています。妙なことに損傷の大部分が墜落以外の原因によるもののようなのですが、これに関しては話が逸れるのでここには記しません。もし興味をお持ちであれば、来週の視察の際に説明いたします。

検体とともに回収された栄養補給品についてですが、少なくとも今後1ヶ月は保つものと推定されます。サンプルの分析結果によれば、栄養素のほとんどは炭素が主要元素であり、そこに加えて我々で合成可能な少数の外来成分が混ざっているものと思われます。さらに、現代的な電気システムと検体の統合についても予定通りに進行しています。"F"契約に関して、年内にエンジンが必要な旨をB+Vにお伝えください。

HH

発: オットー・シュミット
宛: カール・ロイター
題: アーティファクト

ロイター中佐

例のアーティファクトに関する中佐の計画について、いくつか懸念があります。えぇ、確かに試験ではあれの効果をあなたの望む範囲まで広げられることが証明されました。しかし、その効果は大幅に減衰していました。加えて、こちらの被験者の肉体的・精神的健康は最善の状態からは程遠く、実戦では敵軍の兵を僅かに混乱させる以上のことができるのかも未知数です。お願いいたします。あれの利用を試みる前に、まだ研究を重ねる必要があるかと存じます。

HH

発: カール・ロイター
宛: ハンス・マイヤー
題 : 化合物17

マイヤー博士

君が肝煎りの強化兵士計画を始めて3年になるが、残念ながらこれまで私は失望させられてばかりだった。だが、最新の失敗に関する報告書を読んで、君が偶然にも有用なものを生み出したのではないかと考えるようになった。今週の木曜そちらの施設で行われる、化合物17とその「興味深い副次影響」の実演の場に私も出席する予定だ。仮に満足の行くものが見られれば、君の期限の延長を考えてもいい。

この機会を存分に活用することをお勧めする。

HH

この発見を踏まえ、財団は上の書簡で名の挙がった人物に対する調査を行いました。記録によればオットー・シュミットは1940年、ハンス・マイヤーは1941年にそれぞれ死亡しており、この情報に矛盾する証拠は発見されていません。ディートリヒ・クロスナーはペーパークリップ作戦によって米軍に雇用され、その後1976年に自然死しました。アメリカ国防総省は現在まで彼の戦後の業績に関する情報開示を拒否しています。カール・ロイターの名は1944年までは他のオブスクラ軍団の文書においても言及が見られますが、それ以降の文書では彼に関する新規の情報は発見されていません。

補遺3 - インシデント4217-09: 1993年7月22日、SCP-4217が敵対状態に入ったように思われ、これに応じて財団海上部隊が特別収容プロトコル発動の準備を行いました。しかし、各艦が射程距離内に入る前に、SCPSネヴェズの艦長であるクルト・ウェグナーがSCP-4217が浮上地点から移動していないことに気付きました。これは過去に観察されたものと異なる行動であることから、ウェグナー艦長は自身が調査を行う間その場に留まるようSCPSケサルとSCPSパルサローンに命令しました。SCP-4217はSCPSネヴェズの存在に対して無反応であり、その状況はネヴェズがオブジェクトの200メートル圏内に侵入しても変化しませんでした。短時間の観察の後、ウェグナー艦長は無線を介してSCP-4217との交信を試みました。以下は通信の書き起こしです。

注記: « »内の発言はドイツ語より翻訳

[ログ開始]

ウェグナー艦長: こちらはSCPSネヴェズのクルト・ウェグナー艦長である。こちらの通信が理解できるか?

[長い静寂]

ウェグナー艦長: 繰り返す。こちらはSCPSネヴェズのクルト・ウェグナー艦長である。こちらの通信が理解できるか?応答願う。

SCP-4217: «混乱。»

ウェグナー艦長: «あなたはドイツ語を使うのか?»

SCP-4217: «ドイツ語...» (沈黙。直後に『旗を高く掲げよ』の冒頭数小節が流れる)

ウェグナー艦長: «ああ...そうだ。(咳払い) こちらの言っていることを理解しているか?»

SCP-4217: «... 肯定... そちら 艦?»

乗員: 艦長、たった今SCP-4217の目がこちらに注目しました。

ウェグナー艦長: «… ああ、その船が我々だ。 そちらはどうだ?自分が何か、どこから来たかを説明できるか?»

SCP-4217: «...混乱。»

ウェグナー艦長: «それは知らないということか、それともこちらの質問が理解できないという意味か?»

SCP-4217: «理解...記憶 多い...混乱。»

ウェグナー艦長: «「記憶が多い」というのはどういう意味か?»

通信士: 艦長、映像フィードが送られてきました。

ウェグナー艦長: 見せてくれ。記録も頼む。

通信士: イエス、サー。

[映像の内容は、速やかに切り替わる数百枚の画像が連なって構成されている。 特筆すべき被写体には以下が含まれる— 20世紀初頭の様々なドイツの都市、宇宙空間にある不明な人工構造物、演説を行うアドルフ・ヒトラー、HMSキング・ジョージ5世、木星、SCPSケサル。]

ウェグナー艦長: «これは?»

SCP-4217: «記憶 多い。»

ウェグナー艦長: «つまり、これがあなたの記憶ということか?...木星が映った?あなたはそこから来たのか?»

SCP-4217: «混乱。»

ウェグナー艦長: «木星...大きな惑星だ。表面は赤斑—つまり、嵐で覆われている。»

SCP-4217: «嵐...赤い...»

[フィードに木星の画像が表示される頻度が上昇し始め、すぐに単一の映像に変化する。映像の視点は木星、とりわけ大赤斑に接近している。]

SCP-4217: «赤い 嵐...赤い 雲...»

乗員: 艦長、触手がうねり始めました。興奮が高まっているようです。

ウェグナー艦長: 奴との間に多少距離を取れ。兵装は奴に向けたままか?なら良い、私が命令するまで発射は待機だ。ケサルパルサローンにも交戦に備えるよう伝えろ。 «SCP-4217、落ち着いてくれ。どうしたんだ?»

[映像の視点はこの時点で、木星の大赤斑の至近に迫っている。嵐の中心にはSCP-2399が視認できるようになっている。画像が明滅し、何度か変化する。まずSCP-2399がHMSキング・ジョージ5世に置き換えられ、次にSCPSネヴェズに置き換わる。]

SCP-4217: (支離滅裂な金切り声)

[映像の内容が眩い閃光により確認できなくなる。SCP-4217が触手を振り回しながらあらゆる方向に不規則な砲撃を開始する。]

ウェグナー艦長: 砲撃開始。

[ログ終了]


SCPSネヴェズ、SCPSケサル、SCPSパルサローンはそれ以上の問題なくSCP-4217の鎮圧に成功しました。 SCP-4217はこれ以降、通信に応答していません。
Footnotes
. 訳注: 主に筋肉で構成され骨格を有さない器官で、内部に液体が存在しないにもかかわらず流体に類似したふるまいを見せるもの。ヒトの舌やゾウの鼻、タコの腕などが該当する。
. これまでに観測された浮上間隔は最短で2週間、最長で11ヶ月となっており、特定の法則性は確認されていません。
. ある事例においてSCP-4217が瀕死状態のPhyseter macrocephalus(マッコウクジラ)を引っ張りながら浮上し、その後放棄したことにより、この浮上行動は捕食行為の最中であっても発生しうることが示されました。
. 訳注: ビスマルク級戦艦2番艦。1941年竣工。
. この性質に関しては無力化したことが確認されています
. この性質に関しては無力化したことが確認されています
. ナチス政権期のドイツ国政府のオカルト部門。
. サイオニック場が引き起こした混乱により、飛行隊はHMSノーフォーク号及び米国沿岸警備隊の艦艇を、誤って攻撃目標として設定しました。
. 訳注: おそらくハイル・ヒトラー(Heil Hitler)の略か。
. ナチス政権期のドイツ国歌。
ページリビジョン: 6, 最終更新: 16 Jun 2024 03:57
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