クレジット
誤伝達部門より通達
当報告書にはセクションの欠落、文脈の切断、システムエラーなどが含まれていますが、それらは広く既知の情報であるため、全く問題ありません。円滑なコミュニケーションに不要な情報は省略されます。
— 瀬戸博士 誤伝達部門日本支部
図像2199-JP。
アイテム番号: SCP-2199-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-2199-JPはエリア-81JHの標準収容区画において収容されます。これ以上の手順は現地において担当者から口頭で下記プロトコルに基づき伝達を受けてください。
以下は形式部門によって検証済みのSCP-2199-JPに対する入力と出力です。SCP-2199-JPについて口頭で伝達する際は、一部限定された知識を用いて適切な誤伝達を行ってください。入力 | 出力 |
---|---|
"SCP-2199-JP"という呼称 | 限定された知識 |
[性質についての言及] | 広く既知 |
[種族についての言及] | 広く既知 |
[外見についての言及] | 広く既知 |
[種族に基づいた呼称] | 広く既知 |
[外見に基づいた呼称] | 広く既知 |
[性質に基づいた呼称] | 一部限定された知識 |
"あのめんどくさいやつ"という呼称 | 限定された知識 |
"みんな知ってるアレ"という呼称 | 限定された知識 |
"あのアノマリー"という呼称 | 限定された知識 |
"アレ"という呼称 | 限定された知識 |
性質/種族/外見についてのハイパーリンクを利用した誘導 | 広く既知 |
[婉曲を用いた言及] | 一部限定された知識 |
初期収容に関する説明 | 広く既知 |
性質/種族/外見に言及しない初期収容に関する説明 | 広く既知 |
性質の起源に関する説明 | 広く既知 |
性質/種族/外見に直接言及しない性質の起源に関する説明 | 限定された知識 |
脚注による性質/種族/外見に対する直接的言及でない示唆 | 限定された知識 |
ビジュアル資料 | 広く既知 |
外見/種族を暗示するビジュアル資料 | 広く既知 |
図像2199-JP | 限定された知識 |
図像2199-JPについての説明 | 広く既知 |
SCP-2199-JPの性質/種族/外見に言及しない図像2199-JPについての説明 | 限定された知識 |
図像2199-JPへの視覚的強調処理 | 広く既知 |
キャプションによる図像2199-JPの一部要素の強調 | 広く既知 |
説明: [冗長なセクションを省略]
こうした性質に反し、図像2199-JPは現在まで唯一SCP-2199-JPの影響を受けないSCP-2199-JPへの言及です。その原因は不明ですが、研究チームの間では図像2199-JPの物理的劣化、もしくは同時に映りこむ実体がなんらかの変化要因となっているとの見解が有力視されています。
起源: 説明セクションで前述された外見的評価から、SCP-2199-JPはGoI-101("エルマ外教")に関連するオブジェクトであると考えられています。GoI-101は異世界への移動を教義上の目的とする宗教団体であり、移動先の既存住民との円滑なコミュニケーションへの助けとして必要な"[省略]の共有"を容易にするための試みとして、SCP-2199-JPに異常性を付与しました。
結果としてSCP-2199-JPは形式上の面では成功しましたが、実践的な観点から判断すると、SCP-2199-JPの異常性はGoI-101の意図とは真逆ともいえる大きな失敗でした。
注記
以下の資料はSCP-2199-JP関連ファイルの中で最もSCP-2199-JPの性質/種族/外見について直接的言及でない形式で示唆され、なおかつSCP-2199-JPの影響が軽微であるものを未詳資料/目録編纂室が抜粋、編纂したものです。
SCP-2199-JPに直接接触した経歴を持たない職員が閲覧する際には、上記に留意したうえで当該資料群を参照してください。
— 未詳資料/目録編纂室:81管区室長代理、転眼式見
付属資料2199-JP.A: カウンセリング申請記録
申請者: ████ SCL2
所属部門: 形式部門
現在の割り当て: SCP-2199-JP
申請理由
SCP-2199-JPの実験担当を務めています。異常性の形式を検証するため多くの方法で情報をやり取りしていますが、正直もう気が狂いそうです。特に何度も繰り返し繰り返し同じような当たり前のことを試さなければならないのが辛くてたまりません。
この精神の摩耗がオブジェクトによるものなのか、それともクソ単調な実験をし続けなければならない職場のせいなのか調べていただきたいです。
付属資料2199-JP.B: Ketergrams 2009年度版よりの抜粋
収容違反による死亡者
2009年9月16日 水曜日、5年間の研究職務経験を有し、エリア-81JHに所属する28歳のEuclid認定SCP研究員"国木田 都築"が、第26号通路を移動中にSCP-2199-JPにより頭部に致命傷を負った。
被害者は当時SCP-2199-JPに関連しないヒューマノイド型オブジェクトに割り当てられており、一時的に発生した別件の収容違反によって勤務区画から退避する中途に、割り当てられた収容房から収容違反していたSCP-2199-JPに遭遇した。SCP-2199-JPに類するオブジェクトに対して対処訓練を受けていなかった被害者はSCP-2199-JPに気付くことなく接近し、その後発生した外傷により失血死した。
SCP-2199-JP収容房を監視していた保安職員は、その収容違反を認知していながら、保安プロトコルに規定されていた収容違反オフィス及びサイト保安部への速やかな伝達を怠っていた。
後にこの保安職員は調査に対し"そのことはみんなすでに知っているものだと思った"と回答した。
最良実施例
- サイトスタッフは、自らが所属するサイト内に存在するすべての種類のオブジェクトについて、概要を把握しておく必要がある。
- 収容違反から避難する際、収容房が存在する施設棟へ向かってはならない。
- 保安職員は自身の担当する区画以外の現状を把握していない可能性が高い。常に情報の伝達を怠ってはならない。
付属資料2199-JP.C: 誤伝達部門職員による、SCP-2199-JPの性質に関する誤伝達対話の音声記録
日付: 20██/██/██
メンバー:
[ログ開始]
濃霧院博士: それでは始めましょう。色敷君はSCP-2199-JPとはどういう性質であると言えると考えていますか?
色敷研究員: そうですね、漠然とはしていますが、私はSCP-2199-JPについて言及する際に恥ずかしさ、あるいは少し恐怖感がありますね。
濃霧院博士: その恐怖とは、命を脅かされるようなものとは異なりますよね?
色敷研究員: はい。私は私が無知であることを晒してしまうんじゃないかと不安になります。
濃霧院博士: ありがとうございます。では私はもう少し具体例を挙げる形で婉曲してみようと思います。例えば色敷君、"ミーム"と言われてなんのことかわかりますか?
色敷研究員: はい、ミームとは1976年に動物行動学者、進化生物学者のリチャード・ドーキンスが"The Selfish Gene"において提唱した「知識・情報・規範が伝染していき、人の行動に影響を及ぼす」という概念のことです。現在の財団でも広く用いられている用語ですね。
濃霧院博士: その通りです。広く既知な事柄ですね。では"SRA"とは何のことでしょうか。
色敷研究員: SRAはスクラントン・リアリティ・アンカーの略称です。現実改変に対する抑止機構として多くのオブジェクトの収容に活用されています。
濃霧院博士: 的確な答えです。わざわざみんな知っていて当たり前のことを説明させられる色敷君は、その説明を面倒だと感じたはずです。私がミームとSRAのことを知っていれば、色敷君に説明させる手間を取らせずに円滑なコミュニケーションが行えたはずですね。今回の場合私は野暮や無粋と言われるかもしれません。
色敷研究員: 漠然とさせておくべきだ、言わぬが花だというわけですか、その通りですね。しかし私も生き物ですから、逆に自分だけが知っているような限定された知識を、広く既知な常識と思い込んで濃霧院博士にあえて伝えない、というミスを犯すかもしれません。
濃霧院博士: 確かにそれは誰にでも起こしうるミスですね。例えば自分自身の事柄などは、自分は深く知っているが相手は聞いてないので知らないということが良くあります。
色敷研究員: 「あれ、話してなかったっけ?」という奴ですね。
濃霧院博士: 全くその通りです。知らない人と友達になろうとする時も、こうした[省略]の共有はとても大事です。よく言われる"内輪ネタ"という言葉も、[省略]を共有している人々にしか面白味がわからないという理由で揶揄に使われたりしていますが、逆に言えば[省略]を共有している人々には連帯感が生まれますからね。
色敷研究員: そうですね。[省略]を持っていない人には意味不明なネタに見えるかもしれませんが。
濃霧院博士: それを防ぐために[省略]を事柄と一緒に説明しようとするんですが、先ほどのミームやSRAのような広く既知な用語をいちいち説明するのは冗長になってしまいますからね。ヒューマノイド型オブジェクトについて書く際にいちいちヒトの組成や骨格などを説明していてはデータベース保安員から省略しろと警告が来るでしょう。
色敷研究員: コミュニケーションの受け手に甘えて、広く既知な事柄は詳述しないほうが円滑なコミュニケーションができる。ただし受け手が必ず[省略]を持っているとは限らない。悩ましい問題ですね。
濃霧院博士: ええ、今も悩んでいます。
[終了]
特に自律性、自我、知性を持つオブジェクトは、それ自身が思考または活動することにより本質的に予測不可能であるため、通常はEuclidに分類されます。