クレジット
████ よしえ氏(画像右側の人物。1979年撮影)
アイテム番号: SCP-1967-JP
オブジェクトクラス: Keter Euclid
特別収容プロトコル: SCP-1967-JPの主な異常性は情報災害であるため、本報告書を含むSCP-1967-JP-Aへのアクセスは特認クリアランスを持つ職員のみに制限され、保持する権限に関わらずクリアランスを所持しない職員の閲覧は禁止されています。SCP-1967-JP担当職員は2週間に1度、研究の継続に必要と見なされる個人情報を財団人事部門に申告する義務があります。虚偽の申告は終了を含む厳罰の対象となります。私生活等の変化によりSCP-1967-JPへの曝露条件を満たす可能性があると見なされた場合、他部署への異動が行われます。
SCP-1967-JP-Aの一部は一般社会に公開されているため、SCP-1967-JP担当エージェントは行政府及び警視庁の担当部員と協力し、SCP-1967-JP-Aに関心を持つ市民の活動を常に監視するとともに、SCP-1967-JP-Aが各種メディアに拡散しないよう情報制限措置を行って下さい。一般市民がSCP-1967-JP-Bとなった可能性がある場合、当該人物を直ちに拘束の上、必要に応じてインタビューやカウンセリングを実施し、イベント-1967-JP-Bの終了まで行動を24時間監視します。イベント-1967-JP-Bの終了後は、βクラス記憶処理を施した上で解放します。
説明: SCP-1967-JPは、1980年12月15日に発生した████ よしえ氏誘拐殺人事件に関連する情報(以下SCP-1967-JP-A)と、情報への曝露が引き起こす様々な異常現象の総称です。
SCP-1967-JP-Aは、████ よしえ氏が何者かに誘拐され殺害されたとされる事件を記録した各種の情報です。事件は同年12月18日よりテレビ・新聞等のメディアに公表され、目的不明の誘拐もしくは失踪事件として取り扱われました。結果として、後述のSCP-1967-JP-Bが現在までに76名発生し、全員が財団の収容下に入ることとなりました。財団の情報工作の結果、事件は快楽目的の誘拐殺人と断定され、法的な解決を見たこととなっていますが、2018年現在も████ よしえ氏の行方と実行犯は明らかになっていません。
SCP-1967-JP-Aを認識した人間のうち、以下の2条件を満たした人物はSCP-1967-JP-Bへと変化し、様々な異常現象を体験します。
- SCP-1967-JP-Aを認識した時点で、満8歳未満の法律上もしくは生物学上の子女が1名以上存在する
- SCP-1967-JP-Aの実行犯が、通常人類とは異なる存在であるという強い確信を抱いている
SCP-1967-JP-Bとなった人物の子女は、満8歳の誕生日の午前0時を迎えた時点で現実世界から消失します。この消失を回避する方法は現在のところ明らかとなっておらず、消失した人物の移動先も不明です。消失後に一連のイベント-1967-JP-Bが発生し、イベント終了後に異常性は消失します。Dクラス職員を用いた実験により、SCP-1967-JP-Bとしての条件を満たし続けていた場合でも、イベント終了後に新たに儲けた子女には異常効果が発現しないことが判明しています。
SCP-1967-JP-Bの子女が消失してから1~6ヶ月後に起こる異常現象をイベント-1967-JP-Bと総称します。発生開始時期に一定の時間的・空間的法則性はありません。主な異常現象及び出現物品は以下の通りです。
- 20〜30回に及ぶ、送信元不明の無言電話。受信先はSCP-1967-JP-Bの自宅、もしくは携帯電話となる。
- SCP-1967-JP-Bの自宅の半径300メートル以内に出現する、消失時に子女が穿いていた靴または靴下の片方。
- SCP-1967-JP-Bの自宅内部に出現する、アカギツネ(Vulpes vulps)と見られる動物の歩行足跡。
- SCP-1967-JP-Bの財布やポーチの内部に出現する、子女が愛好していた菓子類の包装紙。
- HB鉛筆で文章が書かれた新聞紙の郵便受けへの投函。詳細は後述。
- イベント-1967-JP-Bの終了直前に掛かってくる電話。詳細は後述。
いずれの物品も素材等に異常性は見られないものの、物理法則を無視し突如として出現することから、その出現プロセス自体が異常現象の一環であると見なされています。出現物品のうち、特筆すべきは文章の書かれた新聞紙であり、何れの出現例においても暗示的で不明瞭な内容ながら、SCP-1967-JP-B当人もしくは捜査関係者しか知り得ない情報が必ず含まれています。以下は書かれた文章の例です。
出現した新聞紙の例。鉛筆で文章が記載されている(1996年撮影)
文章例:SCP-1967-JP-B-2-34(1982年03月13日回収)
きょうは ふみきりのうらで かくれんぼをしていました
たべた おもちのうらがわに ねずみがはりついていました
きつねさんの 鳴き声が きこえてくるよ
████ちゃんは かくれんぼの 鬼でした
神社の裏に 鏡があって 骨が隠されています
とても おいしい骨
文章例:SCP-1967-JP-B-2-41(1982年06月08日回収)
[判読不能]
おべんきょうをしていたのに 字が書けなくなっちゃった
[判読不能]どうして
かみさまが [判読不能]なのに お祈りをして
みんな ただのねずみになった
ねずみは 一つと残らず 噛み殺さなければいけない
イベント開始から1〜6ヶ月後、SCP-1967-JP-Bの自宅もしくは携帯電話に、正体不明の人物からの架電があります。通話先の人物をSCP-1967-JP-Xと呼称します。SCP-1967-JP-Xの声は「不明瞭」「合成音声的」と評され、性別や年齢の推測は困難です。SCP-1967-JP-Xはしばしば事件と無関係の第三者を自称しますが、何れの通信もTDMAフレームが不明な手段で暗号化されているため、2018年現在、送信元の特定には成功していません。
通話例:SCP-1967-JP-X-48(1983年01月25日記録)
<記録開始>
SCP-1967-JP-B-48: もしもし?
SCP-1967-JP-X: ██████ちゃんのお父さんですか。
SCP-1967-JP-B-48: はい、そうです。
SCP-1967-JP-X: ██████ちゃんと隠れん坊をしていたのにみつかりません。お父さん、どこにいるのかわかりませんか。
SCP-1967-JP-B-48: え? 貴方は誰ですか。██████のお友達ですか。
SCP-1967-JP-X: ああ、██████ちゃんがオボボリを噛んでしまいました。早く迎えに来てくれませんか。
SCP-1967-JP-B-48: お前は誰だ。██████がそこにいるのか。どこにいるんだ?
SCP-1967-JP-X: [複数の哺乳類の鳴き声らしき音が聞こえる。正確な種類は判別不能]
SCP-1967-JP-B-48: おい!
SCP-1967-JP-X: 鼠は噛み殺さなければいけない。
<記録終了>
SCP-1967-JP-Xは、後述するインシデントを除く全ての例で、自身の居所や素性に関する質問には回答せず、一方的に通話を打ち切っています。通話を最後にイベント-1967-JP-Bは終了し、一連の異常現象は収束します。
補遺1: 収容タイムライン:1967-JP
1980年12月15日: ████ よしえ氏が夕方4時頃、自宅付近で行方不明となる。外出する直前、母親に対し、「友達と遊ぶ約束がある」と告げていた事が判明する。
1980年12月18日: ████ よしえ氏の失踪が各種マスメディアで報じられる。
1981年01月10日: ████ よしえ氏に対する大規模な捜索が警察により実施されるも、手がかりはなく、目的不明の怪事件として世間の耳目を集める。
1981/02〜07: ████ よしえ氏の両親に対し、20回以上に渡る無言電話、文書の書かれた新聞紙の投函、SCP-1967-JP-Xと見られる人物からの架電が行われる。包装紙等の物品の出現は無し。マスメディアは事件報道を過熱させるも、当時の財団には本件が異常事件という認知はなく、情報収集に留める。
1981年10月07日: 民間人のオカルティストであったH氏の子女が、満8歳の誕生日に突如消失する。
1981年11月22日: H氏が常連投稿者であったオカルト雑誌に、子女の消失についてのレポートを投稿、掲載される。内容が財団の注視を引き、同氏の拘束が財団日本支部超常現象管理部門により命じられる。
1981年11月23日: 超常現象管理部門により、H氏のインタビューが実施される。████ よしえ氏の失踪事件について、「神隠し」という見解を持っていることが確認されるも、この時点ではSCP-1967-JPの発見には至らず。数日後、記憶処理を施しH氏を解放する。
1982年01月16日: H氏にイベント-1967-JP-Bが発生する。
1982年03月22日: H氏が雑誌にイベント-1967-JP-Bについての寄稿を投稿。直ちにH氏を再度拘束する。
1982年03月23日: H氏へのインタビュー内容から、一連の異常現象は子女の失踪と関連しているとの推定が為される。異常現象を正式にSCP-1967-JPと指定する。インタビュー後、サイト-8159の標準人型収容セルに拘束する。
1982年03月24日: ████ よしえ氏の両親を拘束し、インタビューを実施するも、有益な情報は得られず、記憶処理の後開放する。両親は以後エージェントの監視下に置かれる。新聞紙などの物品は警察許可のもと全て財団が回収する。
1982年04月19日: H氏宛てにSCP-1967-JP-Xからの電話がある。SCP-1967-JP-Xは財団職員との通話を拒否したため、H氏との通話を許可するも、有益な情報は得られず。
1982年06月04日: SCP-1967-JP研究担当主任であった██博士の子女が消失する。財団は██博士を拘束し、従前の研究結果と得られた情報を総合的に分析。SCP-1967-JPへの曝露条件がほぼ同定される。該当する職員に記憶処理を実施、SCP-1967-JPへの情報アクセスにクリアランス制限を設ける。警察庁を通じて各種マスメディアに打診、████ よしえ氏失踪事件に関する報道を全面的に規制。
1982年07月12日: 記憶処理済みであった財団研究員████の子女が消失する。オブジェクトクラスをKeterに正式分類。
1982年08月22日: SCP-1967-JP-Bと見られる一般市民38名を拘束、サイト-8159に収容。継続的な監視下に置く。
1982年11月08日: ████ よしえ氏失踪事件の近傍の都市で、5歳の少女が誘拐され殺害される事件が発生。
1982年11月16日: 上記事件の犯人であるM氏が逮捕される。取り調べにより、快楽目的の犯行と判明。財団は警視庁協力のもと、M氏に記憶処理を実施。████ よしえ氏の殺害を自供させた上で、偽装遺体を含む偽の証拠を提供。刑事犯として訴追するよう誘導する。
1982年11月17日: 各種マスメディアが ████ よしえ氏殺害事件の実行犯としてM氏の写真と実名を報道する。関連情報の報道規制を一時的に解除。
1983年08月05日: SCP-1967-JP-B-73に対するイベント1967-JP-Bが終了。以降、1995年に新興宗教家が異常性に曝露するまで、SCP-1967-JP事象は発生せず。
1993年08月05日: 異常事象が10年間発生していないことを考慮し、オブジェクトクラスがEuclidに再分類される。
1998年03月03日: M氏に対する死刑判決が確定する。
2003年12月20日: M氏が薬物注射により処刑される。
補遺2: インシデントレポート:1967-JP-2(要レベル4/SCP-1967-JP特認クリアランス)
以下は1982年12月30日、SCP-1967-JP研究担当主任であった██博士に対しSCP-1967-JP-Xが行った通話の記録です。本件を除いて、SCP-1967-JP-Xが自身の素性に関わる質問に回答したケースは2018年現在まで確認されていません。
対象: SCP-1967-JP-X
通話者: ██博士
<記録開始>
██博士: もしもし。
SCP-1967-JP-X: ██さんでしょうか。
██博士: はい。
SCP-1967-JP-X: ████ちゃんがどこに行ったのか知りたいですか。
██博士: 教えて下さるのですか。
SCP-1967-JP-X: はい、でも理由があって今は言えないのです。だから██さん、████ちゃんを一緒に探してくれませんか。
██博士: 嘘を吐かないでください。████を誘拐したのは貴方でしょう。
SCP-1967-JP-X: [沈黙]
██博士: 私たちは貴方に関する情報を集めています。貴方に辿り着くのは時間の問題です。正直に仰ってください。何故████を連れ去ったのですか? あの子は今どこにいるんですか?
SCP-1967-JP-X: [複数の動物の鳴き声が聞こえる]
██博士: 答えなさい!
SCP-1967-JP-X: どうして私を見つけてくれなかったの。
██博士: 何を――
SCP-1967-JP-X: お前は私を見つけられなかった。愛しい我が子だったのに。████は8つの祝いにと[不明瞭]へと行った。だから帰って来れなくなった。
██博士: [沈黙]
SCP-1967-JP-X: お前は知っているはずだ。私はもう存在しない。お前の探し求めている何も。
[██博士が実験室の床に昏倒する。電話口からは幼い子供のような笑い声が聞こえる]
SCP-1967-JP-X: 大好きだよ、ママ。
<記録終了>
終了報告書: 通話終了後、██博士には重度の混乱と抑鬱の症状が見られたため、必要なインタビューを行った後に記憶処理が実施されました。インタビューにおいて██博士は、SCP-1967-JP-Xの声について、間違いなく子女である████氏のものであったと証言しました。SCP-1967-JP-Xとの通話による影響が推定され、詳細な分析が行われましたが、認識災害等の異常な効果は認められませんでした。██博士は記憶処理後に別部署へと異動しましたが、半年後に非異常性の自死を遂げています。