アイテム番号: SCP-1910-JP
オブジェクトクラス: Euclid
SCP-1910-JPに入店する波戸崎研究員
特別収容プロトコル: SCP-1910-JPの営業時間中は最低でも1名は財団職員が店内にいる状態にしてください。職員がSCP-1910-JPを利用する場合、衣服や金銭以外を持ち込むことは禁止されています。この時、SCP-1910-JPへの入店経路は転送装置経路のみを利用してください。転送装置が置かれる部屋には常に武装した警備員が待機します。SCP-1910-JPにおける調査目的以外の飲食時には情報流出を避けるために他者との接触は同じ財団職員であっても禁止されます。接触した場合、取り調べ後罰せられます。
SCP-1910-JPで用いる食材や器具などは財団が一括して供給します。また、SCP-1910-JP-1らしき飛行物体を目撃した場合は速やかにSCP-1910-JPもしくは担当職員に連絡してください。
財団職員はSCP-1910-JPを利用する団体間で交わされた協定を厳守しなければなりません。食事をする場合や、調査を行う場合では節度ある行動をしてください。問題を起こした場合、財団は関与しない場合があります。
説明: SCP-1910-JPは『UFOラーメン』というラーメン店です。SCP-1910-JPの店舗は現在の科学技術では建造不可能な飛行物体(SCP-1910-JP-1)内に存在しています。SCP-1910-JPで確認することのできるメニューは全て通常のラーメン店と比べても目立った差異はなく、調理時に使用する器具や設備にも異常性は確認されません。一方で東京都の正式な営業許可は下りていません。
この報告書の執筆当時、SCP-1910-JPでは3名の知的生命体が確認されています。SCP-1910-JPに入店する際には2種類の手段を用いることになります。1つ目は電話をしてSCP-1910-JP-1に迎えに来てもらう手段です。一般人がこの手段で入店してくる場合があるため、現在ではSCP-1910-JPの電話番号が書かれた看板は全て撤去してあります。収容の関係上、財団も実験を除いてこの手段を用いることはありません。2つ目は転送装置を介する手段です。SCP-1910-JP-Aの主張によりこの転送装置は複数存在していることが判明しており、主にSCP-1910-JPの常連客が使用しています。財団はサイト-8104とサイト-8107に設置された転送装置を使用します。この転送装置を再現する試みは成功していません。また、実験により転送装置を利用した人物は入店時に使用した転送装置にしか戻ることができず、転送装置を用いて別の場所に行くことはできません。この性質により、転送装置を介して財団職員以外の人物が侵入してくるようなことはありません。
財団が最初にSCP-1910-JPと接触したのは1986年初頭でした。当時、財団は世界各国で発生していたミステリーサークルおよびキャトルミューティレーションの調査を行っており、未確認飛行物体の出現予測地点に発信機を取り付けた牛を放牧していました。最初に接触をしたのは牧場を巡回監視していたエージェント・カルキンでした。エージェント・カルキンはSCP-1910-JP-1が牛を回収していた際に、牛に飛び乗ることで内部への侵入に成功しました。この時、エージェント・カルキンはすぐに地上に戻されましたが、関係者と思われる人間と接触しており、戻される寸前に「今度は営業時間内に来てください」と話しかけられたと報告しています。また、映像記録装置にはグレイタイプの宇宙人が日本語の関西訛りで「外国人が来た」と話していました。その後、発信機からの反応を頼りに捜索を行ったところ、東京都八王子市の高尾山近辺でSCP-1910-JPの電話番号と『UFOラーメン』と書かれた看板を発見しました。
財団が発見した当時、すでに複数の要注意団体がSCP-1910-JPを利用していました。財団は収容を行った場合の被害を鑑み、使用団体内で交わされていた協定への参加を決定しました。現在、SCP-1910-JPはある種の中立地帯として成立しています。
付録1910-JP-01 SCP-1910-JPを利用する勢力間で交わされた協定の内容。(重要な箇所を抜粋)
1. 協定参加団体は全て『食事』以外の目的で『UFOラーメン』を使用してはならない。例外として、協定締結を目的とした使用は認められる。また、協定参加団体は地球を主に活動拠点としているもののみとする。
2. 『UFOラーメン』を利用する全ての人類は地球に居住する生命体として自覚を持った行動をしなければならない。問題行動を起こした個人または団体は地球生命体としての責任を負わなければならない。
協定の残りは上記の内容を破った場合の罰則、及び使用団体内における役割に関する内容となっています。財団はこの協定締結時には後発団体でしたが、SCP-1910-JPが使用する食材の供給および監視を条件に協定参加団体内における発言権を得ました。また、財団加入後にこの協定を違反した参加団体は存在しませんが、財団が1984年に観測した████爆発事件は協定違反団体に対する報復措置であることが推測されています。この団体の活動は同年以降確認されていません。
補遺1: 以下は財団がSCP-1910-JPを最初に利用した際の記録です。
映像記録1910-JP-01
探索者: D-1910-1
通信: 小池博士
付記: 今回の探索では電話をすることでSCP-1910-JPに入店する経路を使用しています。またD-1910-1にはビデオカメラと食品を回収するための容器を持たせてあります。
<記録開始>
小池博士: では電話でSCP-1910-JP-1を呼び出してください。
D-1910-1: 分かった。本当に問題ないんだよな?
小池博士: 勿論です。
(D-1910-1がSCP-1910-JPに電話をする。1分後、北の方から光る飛行物体が出現する)
D-1910-1: おい。何か来たぞ。大丈夫なんだよな。
小池博士: 大丈夫です。
(D-1910-1の体が宙に浮いていく)
D-1910-1: おいおいおいおい。浮いてるぞ。おい。
小池博士: 大丈夫ですから落ち着いてください。
D-1910-1: 無理だって。おい。な、何だ。
(周囲一帯が光りに包まれる。次の瞬間、目の前に顔の周りが靄で覆われた存在が出現する。SCP-1910-JPの来店客と思われる。D-1910-1は悲鳴を上げて尻もちをついた)
来店客: 大丈夫ですか?(D-1910-1に向けて手を差し出す)
D-1910-1: ああ。(手を握って立ち上がった)
来店客: いやあ。帰りがけにいきなり現れるから驚きましたよ。それでは。
(来店客はD-1910-1と入れ替わるように転送装置へと入っていく。その後、中の装置を操作して消失する)
D-1910-1: 消えた......。
小池博士: D-1910-1、店内の様子を撮影してください。
D-1910-1: わかった。
(店内の様子が映し出された。厨房付近はカウンター席、窓側付近は座敷席となっている。客の存在は確認できない。厨房の奥の方ではSCP-1910-JP-Aが調理している姿が確認できるが、D-1910-1は気づいていないようである)
D-1910-1: 博士、俺には普通のラーメン屋のようにしか見えないんだが。
小池博士: そう見えるだけなのかもしれません。とりあえず食事をしてください。何処でも構いませんので。
D-1910-1: し、死ぬようなもんじゃねえよな。
小池博士: 大丈夫です。あなたが考えているような現象は確認されていません。
D-1910-1: 信じるぜ、博士。
(D-1910-1は座敷席を選択する。カメラは窓の方に向けられる。窓の外には山岳地帯が広がっており、空を飛んでいることがわかる)
D-1910-1: 本当に飛んでやがる......。とりあえず、メニューを映すぞ。
小池博士: お願いします。
(映されたメニューには簡略化されたUFOのイラストが各所に描かれている。メニューの内容に不審な点は見られない)
D-1910-1: 何か変なのはあったか?
小池博士: ありませんね。注文はそちらの好きにして構いません。酒類はだめですが。
D-1910-1: わかった。......博士、何か来たぞ。
(SCP-1910-JP-Bが水とおしぼりを持ってくる)
SCP-1910-JP-B: はい。どうぞ。
D-1910-1: あ、ああ。すまん。
SCP-1910-JP-B: 注文が決まったら呼んでください。それと撮影は周りの迷惑にならないようにしてくださいね。
D-1910-1: わかりました。あと注文良いですか? このUFOラーメンと餃子1人前、おねがいします。
SCP-1910-JP-B: はい。しばらくお待ちください。
(SCP-1910-JP-Bは注文をメモに書きつけると厨房の方に去っていった)
D-1910-1: 博士、宇宙人だ。グレイってやつだ。
小池博士: そのようですね。
D-1910-1: なあ。本当に大丈夫なんだよな。他のやつみたいに変なことになるやつじゃないよな。
小池博士: 大丈夫だと思います。ただ、命令には従ってください。
D-1910-1: わかった。本当、頼むぜ。
(数分後、SCP-1910-JP-Bがラーメンをお盆にのせて持ってくる)
SCP-1910-JP-B: はい。お待たせしました。
D-1910-1: ありがとよ。
小池博士: 画面越しだと異常性は確認できませんね。そちらには何かありませんか?
D-1910-1: 目の前にラーメンと水があるだけだ。
小池博士: ......念のため、同じ光景を見ているか確認しましょうか。具材を教えてください。
D-1910-1: チャーシューが3枚。結構分厚いやつ。メンマが8つにナルトが2つ。茶色い半分のゆで卵が2つ。......意味あるのか、これ?
小池博士: あります。とりあえず、幻覚の類はないようですね。サンプルとしていくつか持って帰っていただけますか。チラシもできればお願いします。
D-1910-1: わかった。タッパーに入れて持ち帰る。あと一応、持ち帰りできるかも聞いてみる。
小池博士: お願いします。
(タッパーにいくらか入れた後に、SCP-1910-JP-Cが奥の方から餃子を運んできた)
SCP-1910-JP-C: へい。餃子お待ち。
D-1910-1: すんません。ここって持ち帰りできますか?
SCP-1910-JP-C: ラーメンは無理ですが、餃子はできますよ。持ち帰りしますか?
D-1910-1: じゃあ、2人前頼みます。
SCP-1910-JP-C: わかりました。......どうかしましたか?
D-1910-1: いや。人間も働いてるんだなあって、思っただけです。
SCP-1910-JP-C: あー。店長たち明らかに宇宙人ですもんねえ。私は人間なんで安心してください。
D-1910-1: あ、ああ。で、でも何で働いてるんですか?
SCP-1910-JP-C: いろいろありましてねえ。あ、そろそろ戻らないといけないんで、失礼します。
D-1910-1: 呼び止めてすんません。
SCP-1910-JP-C: いえ。では、ごゆっくり。
(SCP-1910-JP-Cは簡単にメモをした後、奥の方に戻っていく)
D-1910-1: じゃあ、食べるな。ちょっと、伸びちまったかな。
小池博士: すいません。味はどんな感じかも教えてください。
D-1910-1: わかったよ。レポーターじゃないんだぞ、たく。
(D-1910-1はラーメンを食べる)
D-1910-1: 醤油ラーメンだな。こってり系の。魚介系の感じじゃない。でも豚骨とか鶏がらの感じでもないなあ。もしかして牛か?
D-1910-1: 味はさっぱりしている。でもインパクトがすごい。何杯でも食べられる。そんな感じだ。
小池博士: そういうことじゃないんですが......。まあいいでしょう。異常があれば教えてください。
D-1910-1: 了解。
(数分後、D-1910-1は全て食べ終える。SCP-1910-JP-Bが近くの席の水を補充している)
D-1910-1: すいません。勘定お願いします。
SCP-1910-JP-B: はい。少々お待ちください。
(D-1910-1はレジに向かう。画面にはチラシが映された)
D-1910-1: 回収するのはこのチラシでいいか?
小池博士: 大丈夫です。お願いします。
SCP-1910-JP-B: はい。お待たせしました。えーと、お持ち帰りも含めて、1200円です。
D-1910-1: はいよ。(D-1910-1は2000円を支払う)
(SCP-1910-JP-Bの白く細い腕がD-1910-1を掴んだ)
SCP-1910-JP-B: ......お客さん、まだ出す物がありますよね?
D-1910-1: な、なんだよ。
(D-1910-1がSCP-1910-JP-Bの腕を振り払う。結果、SCP-1910-JP-Bは後ろに倒れ、大きな音を出してしまう。見た目から軽傷と思われる)
SCP-1910-JP-C: 女将さん、どうしたんですか。(SCP-1910-JP-Cが厨房から顔を覗かせる。手には包丁が握られていた)
D-1910-1: ち、違う。わざとじゃないんだ。
(D-1910-1の腕をSCP-1910-JP-Bのものとは異なる腕が掴む。D-1910-1は暴れるが、近寄って来るSCP-1910-JP-Cを最後に映してカメラは破壊された)
<録音終了>
終了報告書: この2時間後、D-1910-1は解放されました。D-1910-1の話を要約すると一連の騒動は『タッパーでラーメンを持って帰ろうとしたことをSCP-1910-JP-Bが咎めようとしたためにD-1910-1が誤解した』ことにより発生したことが判明しました。後日、SCP-1910-JPから餃子1人前無料券10枚と謝罪の手紙が財団に送られてきました。この餃子1人前無料券10枚は異常性がないことが確認された後、破棄されました。
追記: この探索後、4回の調査を行いましたが全てにおいてラーメンを食べて帰ってくる以上に特筆すべきことは確認されませんでした。5回目探索時、SCP-1910-JP-Aから転送装置の設置が提案されました。協議の結果、サイト-8104とサイト-8107、そして解体調査用に1台転送装置を設置することが決定しました。決定した3日後、サイト-8104とサイト-8107にSCP-1910-JPと酷似した飛行物体が出現し、設置マニュアルと一緒に転送装置を置いていきました。財団はこの転送装置を解体しましたが、現在の技術力では再現が不可能と判明するだけでした。
補遺2: SCP-1910-JPの営業は1983年から行われています。インタビューの結果、1983年以降に発生したミステリーサークルおよびキャトルミューティレーションの7割にSCP-1910-JPが関与していることが確認されました。SCP-1910-JP-Aの主張により小麦や肉類等の『食材集め』だと判明しています。現在では財団がこれら具材の供給を行っているため発生は減少しています。財団が関与する以前のSCP-1910-JPと被害農家の帳簿を確認した結果、中間業者を介して合法的な金銭取引が行われていました。しかし、この中間業者は正式な記録には存在しておらず、現在も調査中です。
補遺3: SCP-1910-JP-1が有する機能の一つとして不可視化があります。この機能はSCP-1910-JP-1の装置を用いることで操作することができます。しかし、SCP-1910-JPに電話で入店する際は装置を切らねばならないため、従業員がスイッチを戻し忘れていることがあります。この頻度は緩やかではありますが年々増加傾向にあります。
補遺4: 現在SCP-1910-JPに来る客の多くは転送装置を使用した人物がほとんどです。この転送装置はインタビュー等から同一宇宙に複数存在していると考えられています。以下はSCP-1910-JPを利用した存在の記録です。
来店記録1910-1
利用した存在: 金髪の白人女性。見た目は20代で白衣を着ていた。
注文したラーメン: ジャンボUFOラーメンチャレンジ(20分で完食することで無料になる)
様子: 3杯完食した。食事後に行っていた電話の会話内容から『ワンダーテインメント株式会社』の関係者と思われる。
来店記録1910-2
利用した存在: 眼鏡をかけたゴールデンレトリーバー1頭。
注文したラーメン: UFOラーメン(醤油ラーメン)
様子: 席に座り、紙を出す。この時、SCP-1910-JP-Bが「いつもお使いえらいねえ」と発言している。その後、出されたラーメンを箸を用いて完食し、代金を支払ってから帰った。お使いの内容は不明。
来店記録1910-3
利用した存在: 前原博士と酷似した姿の存在10名。
注文したラーメン: 全員、ジャンボUFOラーメンチャレンジを注文した。
様子: 全員ラーメンを完食した。所属は不明。
来店記録1910-4
利用した存在: 人型に集まった虫の群れ。多種多様な虫が確認されたが、サンプルは回収できなかった。
注文したラーメン: チャーシューメン
様子: 食事をする際、頭部が器の中に落ちる。その際、隣の席までスープが飛び散ったため、SCP-1910-JP-Aから注意を受けていた。完食後、器に入った虫たちが再び頭部を形成した。
来店記録1910-5
利用した存在: 全身に刺青が彫られたセム人男性と5歳前後の少女。少女の発言から親子関係にあると思われる。
注文したラーメン: 少女はお子様ラーメンセット、男性はジャンボUFOラーメンチャレンジを注文した。
様子: 2人で手を繋いで入店した。注文を決める際、男性の方は最初味噌ラーメンを選んでいたが、少女の強い勧めでジャンボUFOラーメンチャレンジを選んだ。この時、少女は「おじさんは完食したよ」と発言している。その後、男性はジャンボUFOラーメンチャレンジを行ったが失敗している。会計時、SCP-1910-JP-Bは男性の方に色紙を渡してサインを求めていた。この時、「いつも見ています」と発言している。
来店記録1910-6
利用した存在: 武装した人間10名(装備の内容から所属は判別できなかった)
注文したラーメン: UFOラーメン。
様子: 1人が入店すると、すぐに周囲を確かめるような素振りを見せる。その後、手で合図を送ると転送装置内にいた残りが出てくる。食事の際には全員が口元だけを出して食事を行っていた。
追記: 同様の集団が6回同様の行動をしているのが確認されている。目的は不明。
来店記録1910-7
利用した存在: 武装した人間10名(来店記録1910-6と同じ装備をしていたため、同じ所属と思われる)
注文したラーメン: なし。
様子: 1人が入店すると、すぐに周囲を確かめるような素振りを見せる。その後、手で合図を送ると転送装置内にいた残りが出てくる。集団の内の一人がSCP-1910-JP-Aに銃口を突き付け、SCP-1910-JPを譲渡するよう要求を行っていた。しかし、彼らはすぐに店内から消失した。行き先は不明。
追記: 当時店内にいた職員の報告ではこの時財団職員しかいなかった。SCP-1910-JP-Aは「迷惑をかけた」と、その場にいた全員に餃子一人前を振舞った。
来店記録1910-8
利用した存在: [編集済]2名
注文したラーメン: 片方はUFOラーメンと餃子1人前、もう片方は精進ラーメン(肉や骨を一切使っていないラーメン)を注文した。
様子: [編集済]
追記: この2名を目撃した財団職員は全員が神の存在を認める旨の発言を行っている。また、全員が2週間以内に退職しており、その後特定の宗教団体関連施設に就職している。
補遺5: SCP-1910-JP-A及びSCP-1910-JP-Cに対して行われたインタビュー記録です。
インタビュー記録1910-JP-01
対象: SCP-1910-JP-A
インタビュアー: 小池博士
付記: インタビュー自体は店内に客がいない状況で行った。また、近くではSCP-1910-JP-Bが作業をしている。
<録音開始>
小池博士: それではよろしくお願いします、SCP-1910-JP-A。
(SCP-1910-JP-Aは返事をせずに作業を続ける)
小池博士: ......よろしくお願いします、店長。
SCP-1910-JP-A: おう。よろしくな。
小池博士: 前回はラーメンに関しての話でしたので、今回は店長に関する話でいいでしょうか?
SCP-1910-JP-A: いいぜ。つっても、こんなおっさんの身の上なんて興味ないだろ。
小池博士: いや。私たちには重要なんですよ。まず、店長はラーメン屋をする前は何をしていたのでしょうか?
SCP-1910-JP-A: 何ってなあ。元々俺はこの星の調査員をしてたんだ。まあ、そこまで優秀じゃなかったが。
小池博士: 具体的にはどのようなことを調査していましたか?
SCP-1910-JP-A: 地球のやつらはみんなそれを心配するなあ。別に変なもんじゃねえよ。文化とか科学レベルが主だ。俺は文化を担当していてよお。そのせいでラーメンに嵌っちまった。(SCP-1910-JP-Aの笑い声)
小池博士: 故郷がどこにあるかわかりますか?
SCP-1910-JP-A: 自動運転にワープで全く分からねえ。俺は下っ端だったからそこまで詳しい話はされちゃあいない。
小池博士: じゃあ、ワープの仕組みはどうですか?
SCP-1910-JP-A: 下っ端にわかるわけないだろ。お前さんは自分が乗ってる車の仕組みを完全に理解してんのか?
小池博士: はい。
SCP-1910-JP-A: そ、そうか。とにかく俺は理解しちゃいねえ。下っ端の下っ端だったからよ。頭使う仕事じゃなくて体を使う仕事ばっかりだ。まあ、そのおかげで美人な嫁さんをもらえたんだけどな。(奥にいるSCP-1910-JP-Bに一瞬だけ視線を向ける)
小池博士: そうですか。話は変わりますが、このUFOに詰み込まれている装置にはやはり危険なものはありますか?
SCP-1910-JP-A: その質問かあ。実のところあんたら以外もそんなこと聞いてくるんだよ。でもな。ラーメン屋にはそんなの必要ないだろ? 開店資金を工面するのに全部売っちまった。(SCP-1910-JP-Aの笑い声)
小池博士: わかりました。
(電話のベルが鳴る。SCP-1910-JP-Bが受話器を取る)
SCP-1910-JP-B: はい。こちらUFOラーメン店です。はい。あなた、大変。見えてるって。
SCP-1910-JP-A: あ、切るの忘れちまってた。
(SCP-1910-JP-Aが厨房にあるスイッチを操作する)
SCP-1910-JP-A: これで良し。すんませんねえ。もう歳なんで物忘れが激しくて。
小池博士: ......できればもう少し注意していただけるとありがたいです。
SCP-1910-JP-A: 本当、すいません。これ、おまけですんで。
(UFOラーメンが出される。通常のものよりチャーシューが3枚多い)
小池博士: ありがとうございます。そうだ。あの転送装置なんですがね。あれって我々以外にも所持していますよね。どのようにして送っているんですか? あ、設置の話です。
SCP-1910-JP-A: あれか? あれは俺の元上司に依頼して送ってもらってんだ。良い人でなあ。この店を開くときも世話になった。今でも一見さんはだいたいその人の紹介だな。あんたらみたいなのは珍しいんだ。
小池博士: どんな姿をしているかわかりますか?
SCP-1910-JP-A: いろんな姿をしてるからわからねえなあ。でも結構来てるから会ったことはあると思うんだよなあ。
小池博士: わかりました。ありがとうございます。
SCP-1910-JP-A: しかし、大変だねえ。お前さんもこんなおっさんの話につき合わされて。
小池博士: いえ。少なくともラーメンを食べたら死ぬなんてことはない分、楽な部類ですよ。
SCP-1910-JP-A: ......変な店があるんだな。
小池博士: まあ、いつものことです。
<録音終了>
終了報告書: インタビュー後、SCP-1910-JP-Aは餃子をおまけしました。また、SCP-1910-JP-Aが証言する元上司に関しては現在調査中です。
インタビュー記録1910-JP-02
対象: SCP-1910-JP-C
インタビュアー: 小池博士
<録音開始>
小池博士: こんにちは、SCP-1910-JP-C。
SCP-1910-JP-C: あ、先生。お久しぶりです。この呼び方ってことはインタビューですね。
小池博士: まあ、そう言うことです。UFOラーメンと餃子をお願いします。
SCP-1910-JP-C: わかりました。でも、インタビューするにしても店長たちは今は休憩中ですよ。呼んできましょうか?
小池博士: いえ。今日はあなたに会いに来ました。
SCP-1910-JP-C: 俺ですか。何かありましたか?
小池博士: ええ。あなたがどうしてここで働いているのか聞きたいと思いまして。
SCP-1910-JP-C: 何でって、いろいろあったからですね。
小池博士: それを聞きたいんです。
SCP-1910-JP-C: ......楽しい話じゃないですよ?
小池博士: 構いません。
SCP-1910-JP-C: ......いや。飯屋で話すことじゃないですね。とにかく俺はあの2人に拾われました。姿形は関係ありません。とにかくあの2人に恩を返そうと思ってここで働いているんです。
小池博士: なるほど。個人的な質問ですが、自分の店を持ちたいと思ったことはありませんか?
(SCP-1910-JP-Cは考えるような素振りを見せる)
SCP-1910-JP-C: ......ないですね。俺はここでずっと働くつもりです。
小池博士: そうですか。
(奥の方からSCP-1910-JP-Aが現れる)
SCP-1910-JP-C: 店長、休憩もう終わりですか。
SCP-1910-JP-A: いや、そうじゃねえ。お前、そろそろ独立しろ。
SCP-1910-JP-C: えっ。何言ってるんですか。俺がいなかったら。
SCP-1910-JP-A: そこはまあ、何とかする。俺だっていい加減外人さんの接客をしねえといけねえし。
SCP-1910-JP-C: ですが......。
SCP-1910-JP-A: 気にすんな。お前はもう一人前なんだからよ。
SCP-1910-JP-C: ......はい。
SCP-1910-JP-A: 先生、こいつのことお願いします。俺らが関わっちまってるからもう先生の所で世話になるしかないんでしょ?
小池博士: そうなりますね。わかりました。上に雇用できないか交渉させていただきます。
SCP-1910-JP-C: よろしくお願いします。
<録音終了>
終了報告書: 協議の結果、SCP-1910-JP-Cは財団フロント企業で雇用されることに決定しました。SCP-1910-JP-CはSCP-1910-JP-A及びSCP-1910-JP-Bとの交流のため、記憶処理は施されませんでした。
追記: 2004年5月インタビュー記録1910-JP-02を受け、SCP-1910-JP-Cに代わる新しい従業員の募集が行われました。結果、SCP-1910-JPを利用していなかった団体も含め、各団体より従業員候補が面接を受けました。候補者のほとんどは事故などの要因により面接ができず、財団が推薦した人物で無事に面接を受けることができたのは20名中2名のみでした。半年にわたる面接の結果、財団職員及び協定に参加している団体から合格者は出ませんでした。合格した2名の人物は両方ともSCP-1910-JP-Aの元上司が連れてきた人物です。この2名は現在SCP-1910-JP-D及びSCP-1910-JP-Eと指定されています。