SCP-095-UA
評価: +7

クレジット

訳題: SCP-095-UA – Crazy Bee
翻訳責任者: Gipolibidemia Gipolibidemia

  • ミリタリー用語などの翻訳でharvester_blandish harvester_blandish さんからのアドバイスをいただいた。説明第一パラグラフはウクライナ語話者と日本語話者の言語的バックグラウンドを踏まえて原文から若干の改変を加えたが、これは氏のアイデアによるものである。

翻訳年: 2025


原題: SCP-095-UA – Шалена бджілка
著作権者:Comrade Xander Comrade Xander
作成年:
 2021
初訳時参照リビジョン: 10
元記事リンク: http://scp-ukrainian.wikidot.com/scp-095-ua


英題: SCP-095-UA – Crazy Bee
英訳者: Comrade Xander Comrade Xander
英訳年:
 2021
重訳元の参照リビジョン: 19
英訳リンク: http://scp-int.wikidot.com/scp-095-ua

評価: +7
SCP-095_fire_resized.png

実験 095-UA-3参加中の機動部隊員ナーシ-29 (ウクライナ キーウ州 ビーラ・ツェールクヴァ地区 メードヴィン村出身である) が、SCP-095-UAの起動を待機している。

SCP-095_result.jpeg

実験 095-UA-3参加中のD-1952-107 (ロシア連邦 トヴェリ州 カリーニン地区 ブラシェヴォ村の出身である)。

アイテム番号: SCP-095-UA

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-095-UAの実例 8 3基はすべてサイト-██の兵器・弾薬保管庫において、他の兵器から隔離し適切なマーキングが施された状態で保管するものとします。研究が完了した場合、その時点で残存するSCP-095-UAはすべて武装サイト-UA-44に輸送し保管します。

当オブジェクトの起動条件、および起動に付随するリスクについての研究調査の実施を申請する際には、事前にサイト-██ 医務課課長による参加者名簿への承認を受ける必要があります。更新: オブジェクトの実例数が減少したことに鑑み、実験およびオブジェクトに何らかの変化を及ぼしうる言及は、一時的に禁止されています。現在サイト-██ 渉外課により、当オブジェクトのバッチの追加発注先となりうるサードパーティに対し、交渉が行われています。

説明: このオブジェクトはRPO-A シュメーリロケットランチャーを素体とする兵器です。RPO-A シュメーリロケットランチャーとは、サーモバリック弾頭を発射する個人携行型ロケット弾発射機であり、製造元のソヴィエト・ロシアおよびロシア連邦では、火炎放射器の後継となる焼夷兵器として運用されています。SCP-095-UAには非異常のRPO-Aと異なり、蓋に黄・黒・黄の3本の実線からなる特徴的なマーキングが施されています。既存の情報から当オブジェクトは今なお活発に生産され続けていることが示唆されるものの、その生産速度および生産設備の所在地は特定できていません。

SCP-095-UAの内部構造は非異常のRPO-A シュメーリロケットランチャーのそれとほぼ同一であるものの、少ないながら、以下の特筆すべき例外があります。

  • ガラス繊維製の発射筒の表面に彫り込まれた奇跡論的シンボル。これは1〜3世紀の埋葬地にて発見された、サルマティア人貴族の鉄製武具に彫られていたものと酷似している。
  • 通常の保持具 (コレット) の代わりに取り付けられた、高強度・可燃性・骨由来の材料で作られた有機質の保持具。解析可能なサンプルから得られた限りの情報によればこの骨はヒトから採集されたようであるものの、その採取元の特定には至っていない。
  • ロケット弾の表面に、微量ながら乾燥したヒトの血滴がみられる。これら血滴は撒き散らされたかのように点在しているため、アスペルギールやそれに類する器具を用いて意図的に振り掛けられたものである可能性が高い。

これらの特徴が当オブジェクトの異常性の原因と見られています。第一の異常性はその長い射程にあり、非異常のRPO-A シュメーリロケットランチャー実例の有効射程が600m、最大射程が1,000mであるのに対し、SCP-095-UAは距離1,200mまでのターゲットを有効かつ正確に撃つ能力を呈しています。このオブジェクトは非異常のRPO-A シュメーリロケットランチャーと同一規格のジェットエンジンを搭載しており、その作動中に有機質の保持具 (コレット) が発火および燃焼することで、弾道距離が延長されているものと考えられます。このオブジェクトの第2の異常性はそのロケット弾が、非異常のRPO-Aにおいては構造上実現し得ない、自動ホーミング機能を有する点にあります。かつSCP-095-UAの自動ホーミング機能は、発射筒の方向やオブジェクトの照準器で捉えたターゲットに依らず、ロケット弾が発射筒から出た後即座に、そのロケット弾に散布された血液と遺伝子的な一致度が最も高いと見られ、かつ射程圏内で最もオブジェクトから近い位置にいる人物に向かうよう、その進行方向を調整するという特殊なかたちで作用します。ロケット弾はターゲットとの間にある障害物を複雑かつ高精度な軌道を描いて回避することができ、かつ自律追尾をも可能とすること (およびロケット弾の特徴的なマーキング) から、実験参加者から俗に "Crazy Bee"と呼ばれています。以上からこのオブジェクトは、高度に要塞化・遮蔽された場所に潜伏している、潜在的敵性人物を殺傷する際に極めて有効な兵器となりえます。ただし自動ホーミング機能の原理から、人口密集地で使用する際に高いリスクが伴うのに加え、適切に調整された環境でなければロケット弾の最大射程距離を発揮できません。

最初の発見時に機動部隊Букиブー ("トレジャー・シーカーシュカーチ・スカルビ")が確保した8基のサンプルは、8基とも複数名の血液の混合物が付着していましたが、のちにこれはドネツク人民共和国のスパルタ大隊の、2015年から行方不明となっている構成員らのものであることが特定されました。結果として、現在この弾薬は最も近くにいるロシア人をホーミング対象としています。財団はSCP-095-UAに血液を散布し新たなホーミング対象を設定しようと試みましたが、自動ホーミング機能が喪失する結果に終わりました。血液に化学的な特異性はないことから、当該の異常性は血液の散布に何らかの特別な手法が用いられたことに起因するとみられます。これを受けR████博士とヤキム博士は、当該効果を生じさせたと考えられるサーキック的および奇跡術的儀式の調査を担当しています。

このアイテムはウクライナ国家警察キーウ中央局 (以下、GU NPU キーウ局; Головне Управління Національної поліції України в м. Києві) が、ウーリツャ・クラシツコホの民家付近で不審なトラックが長い木製の箱を荷下ろししている旨の匿名夜間通報を受けて出動した際に確保されました。当該通報の性質に鑑み、GU NPU キーウ局は現地にKORDの特殊機動班を派遣しました。

現場に到着して間もなく、KORDの武装車両は小火器による自動射撃を受けました。警察隊は車両から緊急脱出し周囲を包囲したのち、拡声器を用いて攻撃者に投降を呼びかけました。これを受け自動射撃が停止したものの、急襲部隊が土地境界線を横切り当該民家に接近しようとしたところ、窓から "ロケット" が射出され、その直後旋回して逆進し、高威力の爆発を起こすのが目撃されました。当該民家に進入した襲撃部隊が見つけたものは著しく焼け焦げ四散した人体の破片のみであり、のちの遺伝子解析の結果これらは単一の人物のものであることが確認されました。当建造物をさらに検証した結果、弾薬が込められ、中程度に損耗したAK-47複数を保管している地下室の存在が確認されました。この地下室にはその他にも9個の木箱が保管されており、うち8個には個人携行型ロケット弾発射機が入っていました。これらはその後SCP-095-UAと指定されました。

KORD上部組織に所属していた財団エージェントはサイト-██に、今回の不可解なインシデントと、その中で発見された武器に描かれた特異なマーキングについて報告しました。機動部隊 ("トレジャー・シーカーシュカーチ・スカルビ") がウクライナ保安庁 (SBU; Служба безпеки України) 職員を装って現場に訪れ、現場検証およびアノマラス・アイテムの可能性がある物品の回収を実行しました。前述の武器に加え、機動部隊員らは手書きのメモを発見しました。書かれていたテキストは以下の通りです。

オパナース氏に告ぐ!


われらが妖占師衆ウォルㇰヴィより、わが国家武器産業の最新の発明を貴君にもたらそう。この見た目を侮る勿れ。また、兵器庫にある他の武器に混ぜること勿れ、さもなくばこのマルハナバチたちが何をしでかすかわからない。所定時刻: "Чチェー" が訪れたなら、貴君はわれらが仇敵のおおよその方向にこれを向け、トリガーを引くのだ。そうすればあとのことはマルハナバチたちが片付けてくれる。ハチたち手際の良さたるや、"愚か者ギウニ, " に対する試験的運用がその輝かしきデモンストレーションとなっている。

規定の時間にシグナルを受け取れなかった際には、クワドラートに連絡し発射筒を渡すこと。こちらで追って対応する。

戦いたまえ戦士たちボリーテシその闘志こそが勝利とならんポボーレ!
兄弟たるヴェレスより

脚注
. 「シュメーリ (Шмель)」はロシア語で「マルハナバチ」を意味する。
. 非異常のRPO-A シュメーリロケットランチャーに規格品の保持具 (コレット) とSCP-095-UAの保持具をそれぞれ使用した場合、ランチャーは前述の異常効果を呈さなかったことから、保持具は当オブジェクトが有する他の特殊内部構造と相乗的に作用しているものと思われます。
. インシデント 12-44-01に関与した車列のうち、数台の車両が搭載していたビデオレコーダーを解析したところ、同インシデントにおいて襲撃者がSCP-095-UAを使用していた可能性が示唆されました。ただし十分な確証を得るには至っていません。
. ウクライナのドネツィク州の一定地域を2014年4月以来実効支配しているテロリスト的準国家主体。
. ウクライナ国家警察緊急機動部隊 (Корпус Оперативно-Раптової Дії)

和訳注

1. ウクライナの村。様々な時代の遺跡が多く遺されている。村名の「メードヴィン (Медвин)」とは「蜜酒」の意。
2. サイト-██はキーウに所在する、SCP財団ウクライナ語支部の主要施設のひとつ。A.D.渉外長などが所属し、SCP-081-UAなどが収容されている。サイト番号は財団製の強力な反ミームアノマリー・SCP-042-UAにより不可逆的にデータ破損しているため、黒塗りとなっている。
3. 工場等で、ある製品を多数まとめて生産すること。また、そのようにして生産された多数の製品。
4. RPO-Aシュメーリロケットランチャーは現在、ロシア連邦のほか、親ロシア的立場をとるドネツク人民共和国などが保有しているとされる。なお、ウクライナ側がRPO-Aシュメーリロケットランチャーを保有しているかについては諸説ある
5. キリスト教などの宗教で、儀式に使用される道具。聖水を振りかけるために用いられる。アスペルギウム、アスペルギルムとも。
6. 同名のキャンディがウクライナの製菓会社 ("ロシェン") から販売されている。同社は第5代ウクライナ大統領ペトロ・ポロシェンコに所有および管理されている。
7. 製菓会社 ("ロシェン") および極右政治結社型要注意団体-UA ("P.O.R.A.") に関連するアイテムである、SCP-046-UAにまつわるインシデント。
8. 財団の利益となりうる有形資産を異常・非異常問わず回収する機動部隊。奇襲や建物への潜入に秀でる。なおБукиとはグラゴル文字Ⰱのウクライナ語読み。
9. 「クラシツキー通り」とも (Вулиця Красицького)。キーウ市ポディルスキー地区シェフチェンコ村の地名。
10. 「Опанасオパナース」は、ウクライナ語圏で伝統的に名付けに使われてきた人名。
11. スラヴ語圏における占師、妖術師、あるいは呪術師のこと。古くは『原初年代記』にも登場する。
12. ミハイル・トルスティクのコードネーム: "Ґівіギヴィ" と、ウクライナ語の罵言: "гівноヒウノ" を掛けた造語。
13. トルスティクはドネツク人民共和国の軍人だった。2014年から勃発したドンバス戦争において、ソマリア大隊を率いて戦った。2017年にRPO シュメーリロケットランチャーによって暗殺されている。なお後の2021年になってから、ウクライナのジャーナリストにより、この暗殺は「第5代大統領ペトロ・ポロシェンコ氏からの指令を受け取ったウクライナ保安庁によって実行された」とする暴露が出ている。前大統領ポロシェンコはGoI-UA ("P.O.R.A.") からの指示が厚い人物であることに注意されたい。
14. ウクライナ人の詩人タラス・シェフチェンコ (1814-1861) による詩『カフカーズ』からの引用。帝政ロシアから独立すべく戦う諸民族を鼓舞する詩である。特にこの「戦いたまえ (戦士たち)、(その闘志こそが) 勝利とならん!(Борітеся — поборете!)」の一節は、2022年以降続くロシア連邦によるウクライナ侵攻中にも、ウクライナ兵を鼓舞するためにしばしば使われている。
15. Велесヴェレスとはスラヴ神話におけるの一柱。極右愛国主義的GoI-UA ("P.O.R.A.") の構成員のコードネームか。同団体は、その政治的性格から、しばしばウクライナの民族的アイデンティティにかかわる歴史や神話になぞらえてコードネームを付けている。

本ページを引用する際の表記:

SCP-095-UA」著作権者: comrade_xander 出典: SCP財団Wiki http://scp-jp.wikidot.com/scp-095-ua ライセンス: CC BY-SA 3.0

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作者が加工元画像のソースとして挙げているページはリンクが切れており閲覧できない。しかしながら、以下にそれと同一と思われる画像がクリエイティブ・コモンズ下で投稿されており、CCは問題なく適用できると思われる。

タイトル: Підготовка вогнеметників в районі проведення операції Об’єднаних сил
著作権者: Ministry of Defense of Ukraine
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ライセンス: CC BY-SA 2.0
公開年: 2018
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著作権者: Gipolibidemia Gipolibidemia
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公開年: 2024
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補足:


以下の画像を加工して作成

タイトル: Підготовка вогнеметників в районі проведення операції Об’єднаних сил
著作権者: Ministry of Defense of Ukraine
ソース: https://www.flickr.com/photos/ministryofdefenceua/42684498534/
ライセンス: CC BY-SA 2.0
公開年: 2018
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