皆さまこんにちは。サイト管理者の islandsmaster islandsmaster です。
過日、スタッフ業務の一環として、CCライセンスの部分的な適用に関して、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン(以下、CCジャパン)に問い合わせを行う機会がありました。
その際に得られた回答は、これまで日本語圏のSCPコミュニティでライセンス利用に関して共有されてきた内容・見解と大きく異なるものでした。サイト内外における創作活動に大きな影響を与えうるものであるため、ここにCCジャパンの許可を得て質問及び回答の要約を掲載、共有させていただきます。
前提として、CCジャパンから得られた回答は回答作成者様個人の見解であり、クリエイティブ・コモンズおよびCCジャパンの公式見解、または弁護士などの専門家の見解として示されるものではありません。本件の内容は既に現在のライセンスガイドに反映されており、本件の告知に伴うガイド文面や運用の変更、サイト内のコンテンツに対する追加の規制等は行われません。
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以下、Qはスタッフの質問、AはCCジャパン担当者様からの回答をそれぞれ要約したものです。「編集物」「翻案物」という単語はスタッフが独自に置いた訳であり、公式の用語ではありません。
Q1. 書籍等の印刷物について、CC BY-SA 3.0でライセンスされたイラストの上に被さるように文章等を掲載した場合、これを複数の作品の編集物(Collection)とみなし、文章部分にはCC BY-SA 3.0ライセンスを適用しないことは可能か。
A1. 両者の関係にもよるため、断定できるものではないが、編集物にはあたらないと思われる。編集物の定義上、作品が変更されることなく収録されており、他の作品と独立した状態であることが求められていると解釈できる。例示された内容は両者が独立しているとは考えにくく、編集物にはあてはまりにくい。
Q2. 映像作品について、CC BY-SA 3.0でライセンスされた動画のBGMとして、非CCライセンス下の音楽作品を利用した場合、音声にのみCC BY-SA 3.0ライセンスを適用しないことは可能か。
A2. 翻案物(Adaptation)の定義を参照すると、作品が動画と時間的に同期するものは翻案物とみなされると記述されている。このため、明確に断定できるものではないが、動画がCC BY-SA 3.0ライセンスで提供されている場合、そこに音楽を組み込むと、その結果作成された音楽付き動画にもCC BY-SA 3.0ライセンスを付与する必要があると考えられる。
この場合は、使用される楽曲全体が必ずしもCCライセンスで公開されている必要はないが、楽曲のうち少なくとも動画に使用されている部分については、CCライセンス下で公開される旨の同意が必要であると考えられる。
ただし、動画の利用方法として、公に配布・公開する等ではなく特定少数の範囲内で使用・共有する場合には、(利用許諾自体は当然必要であるにしても) 使用楽曲自体にCC BY-SAライセンスでの公開の同意は必要ないと思われる。
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SCP財団で公開されているコンテンツは、ごく少数の例外を除きCC BY-SA 3.0または4.0を付与されており、サイト内・外を問わず、その派生作品にもCC BY-SAライセンスの適用が求められます。ただし、CC BY-SA 3.0ライセンスには『ライセンスを適用する作品を用いて複数の作品が含まれる編集物を作成した場合に、作品のライセンスを編集物全体に適用する必要はない』という規定があり、スタッフはこの規定を根拠に、「SCP関連コンテンツとそうでないものを組み合わせた作品は編集物にあたり、したがってSCP関連コンテンツの含まれる部分のみをCCライセンスで提供すれば、それ以外の部分はCCライセンスを付与しない/できないコンテンツでも問題ない」とみなしてきました。
しかしながら、今回CCジャパンから得られた回答によれば、(1) CCライセンスが付与されたイラストの上にそのイラストに関連する文章を載せている場合 (2) CCライセンスが付与された動画に音楽を組み合わせる場合 のいずれも翻案物にあたる可能性が高く、これらの作品においては、文章やBGM等も含め、作品を構成するすべての要素に対してCCライセンスまたはそれに類するライセンスの付与が必要になると考えられます。
上述の内容を考慮し、スタッフはCCライセンスの部分的な適用に関する解釈の変更と、それに伴うライセンスガイドの更新を行いました。具体的には、2023年9月のライセンスガイド改訂において「二次創作者に向けたガイド」内のCCライセンスの部分的な適用に関する記述が更新され、『単一の著作物について、SCPに関連する内容が含まれる一部分についてのみCCライセンスを適用することはできない』旨が明記されました。
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SCP財団サイト内のコンテンツは、ごく少数の例外を除きCC BY-SA 3.0または4.0を付与されており、CCライセンスを付与できないメディアは原則として使用できません。スタッフとしては、今回の解釈変更に伴うサイト内のコンテンツに対する影響は基本的にないものと考えています。
サイト外におけるSCP関連作品については、動画コンテンツやクロスオーバー作品等、複数のライセンスが混在しうる形態をとっている作品の一部に関して、ライセンス上の懸念が生じる可能性があります。
このお知らせは、皆様がこれまで作成されたSCP関連作品について、サイトとして何らかの対処をお願いするものではありません。このお知らせをお読みになり、ご自身の作成された作品について対応をお考えの場合には、必ず最新のバージョンのライセンスガイドをご確認いただき、必要に応じて各自の判断でご実施いただくようお願いいたします。
以下、リーガルコードより、1(b)項のサイトスタッフによる私家翻訳(一部編集):
編集物(Collection)
CC BY-SA 3.0ライセンスにおける編集物(編集著作物)とは、以下のような著作物を集めたものを指します:
- 文学作品や芸術作品(百科事典やアンソロジーなど)
- 実演
- レコード
- 放送
- その他の著作物
これらは、その内容の選択と配列によって知的創造物を構成するものです。編集物には、ライセンス対象物である作品が改変されることなく全体として含まれ、さらに一つ以上の他の寄与作品が加えられます。各寄与作品は、それ自体が独立した別個の著作物であり、これらが集まって全体を形成します。
本ライセンスの目的上、編集物を構成する著作物は、本ライセンスで定義された翻案物とはみなされません。
以下、リーガルコードより、1(a)項のサイトスタッフによる私家翻訳(一部編集):
翻案物(Adaptation)
CC BY-SA 3.0ライセンスにおける翻案物とは、著作権法における許諾(原著作者の許可)が必要な形で、原作品、または原作品と他の既存の作品に基づいて創作された著作物を指します。これには以下のようなものが含まれます:
- 翻訳
- 脚色
- 派生作品
- 音楽の編曲
- その他の文学的または芸術的作品の改変
- レコード製作や実演
- 映画化など、原作品を再構成、変形、または翻案したあらゆる形態
原作品から派生したと認識できるいかなる形態も翻案物に含まれます。ただし、本ライセンスにおいては、編集物(編集著作物)を構成する作品は翻案物とみなされません。
なお、原作品が音楽作品、実演、またはレコード製作物である場合、動画映像と時間的に同期させること(いわゆる「シンクロ」)は、本ライセンスの目的上、翻案物とみなされます。